第1話 DOORWAY TO ANOTHER WORLD
私の名前は潮見 麗。
幼い頃から海外旅行に行くことが多く、そして、小学生の頃にある1人の航空客室乗務員さんに助けて貰ったのをきっかけに私は「あの人のようにどんな乗客も素敵な旅のスタートにさせる仕事がしたい」と思い、それから私は航空アテンダントを志すようになり、英語に強い大学を卒業した後、日本の大手航空会社に就職して、そして入社してから今年で4年が経ち、私は一人暮らしの27歳。彼氏はいない。
2つ年上の兄が両親を養っており、私は気ままな独身貴族という訳である。
私は客室乗務員を目指していたこともあり、周りから「顔立ちがいい」と言われ、ずっと周囲からモテていて、大人になってからも何回か告白されたこともあったが、私はこの仕事と結婚したようなものだから、告白されても全て断っている。
もっとも、兄には既に子供が出来ていて、両親にとっても孫がいて、さらに幼い頃から夢を応援し続けくれた両親は私には結婚願望を押し付けられることはない。
私にとっても仕事が忙しいというのもあるが、別にいなくて困るというものでもない。
そんな事を何故考えていたかというと、つい最近、新人時代の私の教育係だった先輩が結婚して客室乗務員を仕事を辞めてしまい、寂しい思いをしたからである。
まあ、私はもうそんな先輩に喝を入れられる客室乗務員ではない。
なぜなら、私は客室乗務員の中でも一般CAのよりもワンランク上の役職である、国内線CPである。
国内線CPとは簡単に言うと、国内線のフライト全体の責任者であり、機内の全クルーを統括・マネジメントする役職である。
そして、私は今日は東京ー福岡間を往復する日程になっており、今、午前中の往路の乗務勤務と若手への指導が終わり、お昼休憩に入る。
出発時間まで少し時間があったのか、私は空港の1階にある空港関係者専用の通路を渡って、ある友達と会う。
「麗。久しぶり!」
笑顔で私に向かって歩いて来る、チェックインカウンターの制服を着こなした童顔の女性。
私の友人の中田 由利である。
「由利、久しぶりに福岡遠征になったから、会えて良かったよ。でもね、私は来月からビジネスクラス乗務が始まって、国際線メインになるから、今日の乗務以降しばらく一緒に乗務が出来る機会が限られると思うから、話せることがあったら、今のうちに言ったが方がいいと思うよ。」
私は由利に質問する。
「あの・・・玲、私、最近あまりいい休憩が取れていないと思ってて…玲は休憩中は何で息抜きしている?」
来た!その質問!私は仕事には常に全力投球だが、当然ストレスが溜まる。
そこで、私は業務の休憩時間はいつも、これを携帯している。
「由利、ストレスを解消するには、『なってみよう系』小説を読んで、その世界に入り込んで、爽快感を得ることがいいと思うよ。」
「『なってみよう系』小説はよく聞くけど…特に麗の好きな作品は何なの?」
「色んな『なってみよう系』を読んだことはあるけど、一番好きなのは「スライム戦記」!これは、ある日、異世界に転生したサラリーマンが、スライムになってしまって、そこから敵と戦ったり、国造りに励んだりする、戦記物語でアニメも丁寧に描いているし、まさに今一番勢いのある国民的安心感なんだよ!」
しまった・・・つい話が長くなってしまった。軽いトークのつもりだったのに、思わず推し作品を熱く語ってしまった。
そう・・・これが、私の唯一の弱点と言ってもいいぐらいに私は幼い頃から深夜アニメオタクで、熱中してしまい、オタクトークで周りを置いていくようなスピードで思わず語ってしまうことである。
特に私はもし死んだら、異世界転生出来るものということを信じて、毎日を過ごしているようなものである。おそらく、現世で頑張った分だけ転生スキルが貰えると思っている。
由利はきっと戸惑っているだろう。
しかし、そんな思いとは裏腹に由利は、微笑んでいた。
「なるほど・・・麗は今の主流のラノベ作品が好きなんだね。」
何、由利にもそうゆう好きな作品があるのか。
「ちなみに私がラノベ作品で一番好きなのは『ある落ちこぼれの能力無効ゼロフィックス』という右手で触れるとあらゆる超能力や魔法を打ち消す主人公が次々と泥臭く、解決していくというストーリーで、神の存在などと戦う物語で、今の主流のワンパンで倒す主人公とはまた違ったタイプで私は好きで、最新刊まで全て揃えているガチファンだよ。」
え・・・あれまだ連載されていたのか・・・私も幼い頃、かなり少年漫画のような泥臭い戦いをしたその作品にハマっていた時期もあった。
だが、巻や設定があまりにもややこしくなって、他作品に関心が回ってしまって、最近では見なくなった。
だが、由利は流石だと思う。昔は某忍者漫画や某オサレ漫画のように10年以上続いた作品が人気が高かったのに、最近では若者のタイパを意識してか某呼吸漫画や某呪い漫画のような「短期連載型」の方が多くなってしまっている中で、もう50冊以上続いていて、とんでも執筆スピードを持っているラノベで定期更新していることはいいことだと思うよ。
由利は新人時代からチェックインの応対も完璧な任務な私と並ぶ次世代のエースと言われている。
そして、その後も由利と雑談をしているとふと時計を見ると、時刻は出発時間14:15になっていた。
出発時間まであと1時間であり、1つ前の羽田空港行きの便が出発した。
「ごめんね。もっと話したいことが山ほどあるけど、そろそろ私も勤務時間だから、ここでお別れね。次会った時は海外のお土産持っていくから。」
「うん。じゃあ、また会おうね。」
私はこうして制服を整え直し、搭乗ゲートへのドアを開けて、由利と別れた。
少し早いかもしれないが、私は搭乗ゲートでお客様を見送って、これから飛行機に搭乗する乗客の顔が好きである。
そのため、よく私は勤務便より前に搭乗ゲートに着いて、乗客の顔を眺めながら、挨拶をして見送ることもよくある。
そして、私はこの後、業務に当たる「AJA258」の羽田空港行きは私を入れると9人の客室乗務員が搭乗する。
そして私は国内線CPであるため、他の8人に指導したり、率先して運航中に何か不測の事態が起きた時に乗客を落ち着かせる時の判断する役割がある。
そして、私は他の8人を呼んで、搭乗カウンターでの挨拶と、この後の注意事項を話した。
「・・・最後に運航中に何かあったら、私に相談するようにしてね」
「「「「「「「「はい、先輩わかりました!」」」」」」」」
いい子たちだ。この子たちならば、安心して業務をこなしてから定時帰宅が出来る。
こうして、私たちは乗客に挨拶をして、搭乗時間まで過ぎるのを待った。
そして、出発時刻の20分前の14:55、お馴染みの空港チャイムが鳴った。
『Dターミナルをご利用のお客様にご案内を申し上げます。15:15発羽田空港行きAJA258便は8番ゲートにて、これより搭乗手続きを行います。ご利用のお客様は8番ゲートへお越しください。』
こうして、このアナウンスが流れたと同時にまずは上級会員から続々と搭乗して、その後一般の乗客が搭乗する。
「ご利用ありがとうございます、どうぞごゆっくりお過ごし下さい。」
私たちは次々と乗客に挨拶をした。
今日は平日なのか出張帰りのビジネス客が非常に多いため、私たちが見ても明らかに疲労が溜まっている乗客が多い。どうかこの機内で休んでほしいと思う。
その後、搭乗時間を過ぎると、私たちも客室乗務員も搭乗することになる。
そして、私はマイクを持ち、お約束のアナウンスをする。
『皆様、本日はAJA258便をご利用いただきましてありがとうございます。手荷物は座席の上の収納棚、または前の座席の下にお入れください。電子機器の使用につきましては、運行の妨げにならないようにモバイルデータのご使用はご遠慮いただき、機内モードへの設定やWi-Fiをご利用ください。続いて、非常用設備をご案内いたします。皆様、座席前の案内表をご覧ください。ご用がありましたら、遠慮なくお近くの客室乗務員にお知らせ下さい。』
こうして、15:30に福岡発羽田行きのAJA258便は乗客364人、乗員11人の合わせて375人を乗せて、福岡空港の滑走路を離陸した。
「(この業務が終わったら、明日から2日間の休みか・・・明日は秋葉原で、中古の本でも探しに行こうかな・・・)」
私は、この時、この業務が終わったら、明日、明後日の2日間はどの様に過ごそうかだけを考えていた。
飛行してからおよそ15分後の15:45。
飛行機は九州の陸地らしきところを超えた。
今日の日本列島は雲一つない快晴であるのか、普段ならば雲で見ない地形も今日はやけに綺麗に見える。
飛行はあと5分すれば巡航高度に達して、シートベルト着用のサインが消える。
私は、ドリンクサービスの提供をしようと、乗務員室の近くの席に座っている。
「…さて、この後はドリンクを乗客に提供して、機内販売も販売して…」
その時だった、突然機体が横に揺れた。
そして、何故か、自分の体には通常の飛行では起こらないようなGが発生していた。
「「「キャーーーーーーーーーー!!!」」」
悲鳴。混乱。
何だ?何が起きてるの?!
雨雲や低気圧があるならば、乱気流があることは予想できるため、状況を説明することは容易だが、今日は雲一つない快晴で、乱気流が起きたとは考えにくい。
「お客様、落ち着いて下さい!」
ただ、私はこれ以上乗客をパニックにならないように落ち着かせた。
「みんなは、乗客の混乱を落ち着かせて、私は今からコックピットに連絡して、状況を確認する!」
私は他のCAに乗客のパニックの鎮静化を任せて、コックピットに連絡した。
『これ、どういう状況ですか!?今日は雲一つない快晴で気流も発生しないのでは・・・!』
すると、すぐに副操縦士から連絡を受けた。
『こちらも状況がわかりません!!先ほどから操縦桿を操作しても全くコントロール不能です!エンジンや電気系統、油圧にも異常は無く、原因不明です!』
エンジンや電気系統、油圧にも異常は無く、原因不明・・・?
私は飛行機の操縦の知識は当然薄いが、毎年航空事故の研修を受けていて、そこでパイロットエラーや修復ミスなどの事故原因を教わってもらったため、私がCPとして搭乗するときは常に最悪の事態を想定して、勤務している。
だけど、今回は違う。副操縦士の反応を見ると、パイロットエラーの可能性は低そうで、しかも機体に損傷があるようにも感じられなかった。本当の意味でも想定外の事態・・・
そして、私はふと窓を見渡すと、機体は物凄い勢いで降下していた。
私はすぐさま不時着という文字が浮かんだのか、一人でも多くの命を助けるために私はあるアナウンスをした。
「皆さん!落ち着いて下さい!当機は現在、地上とは交信出来ています・・・緊急着陸をする可能性がございますで、こちらの指示に従って・・・」
その時、「ギギギギギ…ガガガッ!」という機体のフレームが、まるで限界を訴えるような音が聞こえた。
もう助からない・・・と声に発した次の瞬間・・・
機体はソニックブームを起こした瞬間、爆発して、分裂した。
空中分解・・・当然こんな上空で命が助かるはずはない。
私も、機体が分裂した途端に、体は宙に放り出された。
私は、死んだら異世界に転生したいと思っていたが、一般的にはトラックに撥ねられるたり、殺人犯に殺されたりなど、1人で死んで異世界に転生するものだと思っていた。
だけど、まさかこんな大規模な事故で私は死ぬとは思っていなかった・・・
それも、私を含めて、375人の乗員乗客の命と共に・・・
だけど、私は最後は笑って死にたい。だって私は夢が今、叶いかけているから。
私は、落下しながら恐らく、誰でも聞こえないであろう声でこう呟いた。
「・・・私は、夢が叶ったのか・・・」
次の瞬間、私は空が見えた状態で意識を失った。
そうそれが、潮見麗のこの世で発した最後の言葉であった。
To be continued.
小説家になろうのみなさん初めまして、カクヨムで連載中の鱒田悟です。
カクヨムと1日遅れで小説家になろうにも転載することになりました。
作品の応援のほどよろしくお願いいたします。




