【第23話】いざボランティアへ
王都グラン・フォリアに吹き抜ける風が、少しずつ涼しさを帯び始めた、ある日の早朝。
アルノたちは久しぶりの休日に、学園の正門を抜けて王都の中心部へと歩を進めていた。
「いよいよ学年末の合同実習が近づいてきたわね。ワタシたちDクラスは、ここでポイントを稼いでおかないと、Cクラスには手が届かないからね」
ポンチョを羽織り、大きめの魔女帽子を被ったミラが、気合いを入れるように木杖を握りしめる。
「ああ。ただでさえDクラスは普段の授業での加点が少ないからな。協会からのボランティア依頼で手堅くポイントを稼ぐのは定石だ」
大荷物を背負ったカイルが、真面目な顔で頷いた。
彼らが向かっているのは「ローゼン魔導協会」だ。
国内最大のローゼン商会が運営するこの民間協会は、様々な依頼を斡旋する、いわばギルドのような機関である。
プロの探索者だけでなく、学園の生徒向けに用意されたボランティア依頼もあり、これを達成すると学園の成績にポイントが加算される仕組みになっていた。
「ほんまに、すごい人やな……」
協会の大きな両開き扉をくぐると、シルフィアがおずおずと声を漏らした。
吹き抜けの広大なロビーには、武具を帯びたナイトや、埃まみれのシャドウ、交渉に熱を上げるクラフターなど、様々なジョブの大人たちがひしめき合っている。
アルノたちは学生専用の掲示板の前に立った。
「ええっと、ドブさらい、迷子のペット探し、引っ越しの手伝い……色々あるね」
アルノが大きな目を細めて依頼書を眺める。
「カイル君なら、重い荷物運びとか得意そうやね」
「バカ言うな、オレはヘビーナイトだぞ。運搬業のために鍛えてるわけじゃない」
シルフィアののんびりとした提案に、カイルが渋い顔で返す。
他の学生たちは、手っ取り早くポイントが稼げる力仕事や引っ越しの依頼に群がっていた。
そんな中、アルノの視線が、掲示板の隅にひっそりと貼られた一枚のメモで止まった。
「ねえ、これ面白そうじゃない?」
アルノが指差した先には、こう書かれていた。
『素材採取依頼:マギアの知識がある者限定』
「素材採取?しかもマギアの知識限定って、どういうことだ?」
カイルが眉を寄せる。
「クラフター向けの依頼みたいだね。ボクにぴったりだと思わない?」
アルノは右手親指の指輪を無意識に撫でながら、いたずらっぽく笑った。
「まあ、アルノが言うなら間違いないでしょうけど。とりあえず依頼主のところへ話を聞きに行ってみましょうよ」
ミラの鶴の一声で、チームの最初の依頼が決定した。
メモを剥がし、協会の受付で手続きをすませた一行は、依頼書に記された住所へと向かった。
その場所は王都の大通りから一本外れた、少し薄暗い裏路地にあった。
石畳の路地を進むと、古びているが手入れの行き届いた木造の店舗が見えてくる。
レトロな真鍮製の看板には『カルミナ魔導具店』と彫られていた。




