表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
14/35

【第14話】勘違いの重騎士

「すごいよ二人とも。息ピッタリだったね」


旧修練場の大きな木の裏側から、アルノが嬉しそうにパチパチと手を叩きながら歩み寄ってくる。


「カイルの絶対魔力耐性は本当に強力だから、レシーバーを刻むのにも少し骨が折れたけど……これで証明されたね。カイルはもう、一人で傷つく必要なんてない立派な前衛(盾)だ」


アルノの屈託のない笑顔と、ミラのホッと安堵したような表情。


それを見た瞬間、カイルの胸の奥で、ずっと張り詰めていた太い糸がプツリと切れた。


「アルノ!やっぱりお前、避難してんじゃねぇか!………くっ、…お前ら……っ」


カイルの目から、ボロボロと大粒の涙がこぼれ落ちた。


彼は感情を抑えきれず、歩み寄ってきたアルノの両手を、自分の大きな手でガシッと力強く握りしめた。


「ありがとう、アルノ……それにミラも。オレ、これでやっと……本当の騎士になれる……!」


涙ぐみながら心からの感謝を伝えるカイル。


そして彼は、自分の大きな手を握り返してくるアルノの華奢な手と、その小柄で可愛らしい顔立ちをじっと見つめた。


ずっと一人で気を張ってきた彼にとって、自分の致命的な弱点に向き合い、見事に解決してくれた存在はあまりにも大きかった。


カイルは少し頬を赤らめ、照れくさそうに視線を逸らしながらポツリと口を開く。



「その……今までずっと一人で壁を作ってきちまったからさ。こんな風に、女の子に親切にしてもらったの……初めてだよ」



旧修練場に、心地よい風が吹き抜けた。


アルノはきょとんとした顔で首を傾げ、いつもの涼しい声で答えた。



「え?ボク男だけど」


「…………は?」



カイルの動きが、文字通り石像のようにピタリと停止した。


流れていた感動の涙も一瞬で引っ込み、彼の視線はアルノの顔と、その下半身をゆっくりと往復する。


「おと、こ……?いやいやいや!じゃあ、なんでお前、女子用の短パンなんて穿いてんだよ!ずっと女だと思ってたじゃねえか!!」


カイルの絶叫が旧修練場に響き渡る。


学園指定の軍服調のダブルのブレザーの下。アルノが穿いているのは間違いなく、女子生徒がスカートの代わりに選択できる指定のボトムスだ。


「あぁ、これ?」


アルノは自分の穿いている短い丈のズボンを少しつまんで見せた。


「ボク小柄だから、男子用の長ズボンだと一番小さいサイズでもブカブカでさ。最初に間に合わせで女子用の短パンを借りたんだけど、すごく動きやすくて気に入っちゃって。このままでいいかなって」


「いいわけあるか!紛らわしいんだよ!オレの純情とドキドキを返せ!!」


頭を抱えて地面に突っ伏すカイルを見て、ミラはお腹を抱えてケラケラと笑い転げている。


「くそっ、なんだよこのオチ……!」


顔を真っ赤にしたカイルは、ふと自分の胸当てに刻まれたルーンに目を落とし、さらに顔をしかめた。


「冷静になってきたらこの胸のダーツの的も無性に恥ずかしくなってきたぞ!おいアルノ、お前どんなデザインにも出来るんだろ!?もっとこう、近衛騎士っぽいカッコいい盾のデザインとか、獅子の紋章とかにしてくれよ!」


抗議するカイルに、アルノは「えー」と不満げに口を尖らせた。


「ダメだよ。ミラが一番狙いやすい形にしないと意味ないでしょ?ね、ミラ」


「そうね。ワタシとしては、次はもっと色分けしてくれた方が的として撃ち抜きやすいわ」


「だから的って言うな!お前ら、絶対わざとやってるだろ!!」


カイルの悲痛な叫びに、アルノとミラは顔を見合わせて楽しそうに笑い合った。


「まぁまぁ。実戦の前には、他のデザインを考えてあげるよ」


「本当か!?絶対にカッコいいやつにしてくれよ?」


「うん、じゃあ星型の的とか?」


「的から離れろって言ってんだろ!」


傾いた陽が旧演習場の砂地を橙色に染めて、長く伸びた三つの影が重なる。


落ちこぼれの吹き溜まりだったDクラスの生徒たち。


他者を拒絶する不器用な盾と、すべてを吹き飛ばす過剰な魔法、そして規格外のルーン・ステッチ。


欠陥だらけだった彼らの間に、確かな絆と連携が芽生えた瞬間だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ