75 私のお願い事は『200年先の技術を全世界に広める』というもの
「効果が出るのは?」
「研究機関の報告によれば、人間相当だと30分くらいらしい」
「遠足の前の日みてーにワクワクしちまうぜ……」
ルーシ・レイノルズは廃工場の工具の上に座り、葉巻を咥える。
「危ねェクスリはやめたのか?」
「まあな。結局、タバコが一番だ。この場に限るかもしれないが」
「そういえば、まだ訊いてなかったな。オマエが平和の魔術なんて酔狂なものを狙ってたわけをさ」
「ああ? 喋っていなかったか?」ルーシは脚をパタパタ動かし、「私のお願い事は『200年先の技術を全世界に広める』というものだよ。21世紀からやってきた身としては、18世紀末期っていうのはちょいと退屈過ぎる」
「なるほど。そうするとロスト・エンジェルスの技術的優位性がなくなってしまうが?」
「だからふたつの軍をクールにつくってもらったんだよ。『魔術総合軍』と『宇宙方面軍』だ。200年をも上回る技術力を連中が手にしたって、魔法と科学が交わるハイブリット戦争や宇宙開発がいきなりできるわけないだろ?」
「技術力を魔法で大幅向上させ、それに適応できないはずの諸国を最短で征服するってことか?」
「そんなところだ。もちろん外交的な平和が一番だがな」
そんなわけでふたりは数分ほど話したわけだが、もうすでに意識を失っているラッキーナに変化が訪れていた。彼女は口から吐血し、鼻血を垂らしながら白目を剥いている。すなわち、なにかしらの効果はあったというわけだ。
「代わりはいくらでもいる。怪獣みてーに暴れそうならその前にぶち殺す。だから安心して死ね」
*
メビウスとエアーズが激戦を繰り広げていたMIH特別区であったが、その対決はロスト・エンジェルス中を包む警報音で取りやめになった。
「いったいなにが起きてるんだ? ヘリコプターが東街まで飛んでいってらぁ」
「この衝突を無視してまでクールが止めたいこと……。まさかッ」
矢先、爆音が耳に響き渡った。隕石のような物体が戦闘機並みの速度でイースト・ロスト・エンジェルスへ飛んでいる。それらの数は5つ。
『ブリタニカ』『ガリア臨時政府』『帝政ルーシ』『アストラリア帝国』『ロマーナ枢密院』……。世界を代表する列強国家を思い浮かべたのは必然だ。
「ラプラスを……パクス・マギアが起きようとしているのかッ!?」
それに反応したのはエアーズであった。彼は眉をひそめ、メビウスの言っていることを理解できていないかのような態度だ。
「パクス・マギア? 教科書に載ってる、平和への願いならなんでも叶う童話みてーな魔術がなんだって? そんなモンロスト・エンジェルスにァねェだろ」
「いや……ある。あるのだ。高い魔力量を持ち、若く、平和であることを誰よりも祈っており有事の際には命すらも捨てられる。そんな者が身近にいるとは思ってもいなかった……」
「おい、さっきからなに言ってるんだ? 意味分かんねェぞ?」
「……。ロスト・エンジェルス連邦国防軍は、パクス・マギアを成立させるために禁忌を犯しすぎた」
メビウスorモアorルーシの誰かの視点で回ってるような気
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