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雷の使い方、間違ってると思います!  作者: 焼かれた魚
平和な陽のもとに怠惰を過ごす
7/7

雷は近くに


 「会長のせいだと言うの!?」


悲鳴にも近い甲高い怒声が、俺のうつらうつらした脳に響く。おお、キーンってなるからやめてくれ。


ハッとして閉じていた目を開くと高嶺先輩が椅子から立ち上がる音が聞こえた。

怒り心頭の彼女に目を合わせるものは誰もいないだろう。てか、ちょっと口調が女になってますよ会計さん。インテリキャラは何処へいった。


教師は教員会議で欠席中。ここにいるのは、各クラス委員長、生徒会メンバーだ。と言っても、幾つか空席があるはずだ。


え、何で俺がその中にいるかって?

いやいや、に《・》は《・》いないよ。入れないし。だから、にいる。聞き耳たてて。つまり、盗み聞きである。


しゃがんだ俺の上には朝木が、さらにその上には鳴海が寄っ掛かっている。

重たいんですけど、君たち。

二人の顔は、思ったよりも真剣で、会議の会話を一言も聞き漏らすまいと耳を寄せていた。

まあ、気持ちは解るんだけどな。あいつらがどうなったのか、いや、何処へ行ったのか、気にせずにはいられなかったから。



_________


電車内で俺はひたすら爽太たちに電話をかけていた。少しして俺の嫌な予感を爽太と朝木にも説明すると、眉をかしげながらも二人も協力してくれた。


だが、みんな圏外か電源を切っているらしく誰もでない。折り返しもない。クラス半分と言っても20人弱の全員が携帯の電源切ってるなんて普通はありえないだろう。


生徒が次々に降りていき、電車内も閑散とし始めたところで未だに残っている高嶺先輩に相談した。


 「あらかた、先程の落雷で電波がおかしくなっているのでしょう。そのうち直ると思いますから」


会長がいるから大丈夫。

そう言って取り合ってもらえなかった。引き返そうにも、暴風のせいで反対車線の電車は運行停止になっている。


結局、何も成す術すべ無く帰宅した。爽太の両親はお隣さんで昔からの知り合いだったため、家に帰るとすぐに直接伝えた。


それから何時間経っても、爽太は帰らなかったらしい。しかも、帰宅完了の連絡が会長のグループだけ回ってこなかったことが、奥様方の連絡網で判明した。


落雷したのが、爽太たちがいた駅のホームに停まっていた電車だったことも。ホーム内は、炭をぶちまけたような有り様だったことも。すべてが事後に判明したことだ。

もう遅いと解っていても、あのとき無理にでも電車から降りていたら何かが変わっていたかもという、『もし』を考え後悔する。




警報が解除された翌日から。


学校への苦情、警察の事情聴取、現場の差し押さえ、記事の取材、世間からの批判、テレビニュースの撮影などなど。騒がしいなんてもんじゃない程の荒れっぷりだ。


実際に、校舎の窓からは、門前に殺到しているテレビや記者たちがアリンコのようにらうじゃうじゃと群がっているのが見える。


『学校側はどういった責任をとるつもりですか!』


『雷が落ちた場所に彼らを放置したと言うのは事実ですか!』


『今のお気持ちは?』


そんなくだらないことばかり。口を開けば、責任、責任、責任。根拠のない作り話を、嬉々として取り上げる。

警察も警察で、同じ質問を繰り返してくる。まるで、俺たちが嘘を述べているというかのように。

教師は、生徒たちをなだめているが、俺にとってはご機嫌とりにしか見えなかった。俺たちのクラス担任は例外の話だが。



そういうわけで、役員による会議が緊急に開かれた。


取り仕切るのは、欠席している会長の代わりに副会長が行っている。事件の詳細確認、臨時の役員補充、校内の鎮静化対策についてでだろう。


失踪については、俺たちが知っている以上の情報は挙がらなかった。だが。


 「会長が何故かグループを二手に分けていた」


という、一人の発言に高嶺先輩が突っかかった。

それが、冒頭で高嶺先輩が叫んでいた理由。


思ったことを言っただけだっんだろうが、可哀想に。高嶺先輩を敵にまわしてしまったな。君も晴れて、「背信者」の仲間入りだな。俺もそこに入ってるんだけど。


校内では新たな噂として神隠しだ、とまた変な噂が流れているが、こんな派手な神隠しがあってたまるか!である。

雷使ってまで神隠しとかもはや意味がわからない。


_________



 「はな、落ち着いて」


 「っ。すみません、感情的になりすぎました。ただ、会長に責任を押し付ける発言は、以後慎むように」


副会長の穏やかな口調に冷静になった高嶺先輩は、それでも会長を少しでも批難する輩やからに牽制をかける。さすが会長の信者。盲目的なほど、崇拝してるな。大丈夫か?洗脳されてない?


生徒会メンバーは苦笑するだけで済んだが、委員長たちは高嶺先輩に恐れて口を開けなくなっていた。


これじゃあ、事実確認すらできない。

忍び足でそこを去る。


 「ッチ。あの会計余計なことを言いやがってぇ!」


 「信仰心も行きすぎたらうざいですね~」


 「君たち、遠慮という言葉を知らんのか」


 「あ?なにそれ、旨ぇのか?」


 「じゃあ、言い換えますね〜。会計さんのお《・》か《・》げ《・》で、皆さん静かになりましたね〜。いや~、さすが成績優秀な方は発言力があります。何もかも会長を慕したう心、感服しましたよ~。これならば後の題も恙無つつがなく執り行われるでしょうね~」


余計に酷くなった。


内心では

自分の立場も忘れて脅しまくったから、委員長たちがビビって口をつぐんじゃったじゃん。後の題も、ビビった委員長たちは会計に促されるままどんな発案にも無言の工程をするでしょうね。もう、不安しかねぇよ!

と思っているに違いない。


立て板に水とは、まさにこの事だな。この場合は、水は水でも毒入りの濁った水だけど。

小さく拍手をして満面の笑みの割には、口から出てくる言葉がえげつない。毒しか出てないから。


は鳴海の言葉に嫌みが混ざっているのは解ったようだが、裏の言葉を掴みかねているようで、頭を捻ひねっている。

わからなくていいと思うぞ?



2-Aと書かれたプレートが設置されている教室の扉を少しひいて、中を覗く。廊下では他の教室から興奮した騒ぎが漏れていたが、ここは沈痛な静けさに包まれている。


たぶん、1-Aも3-Aも、同じような雰囲気になっていると思う。

半数が空席という異様な光景。皆黙っているしお通夜みたいだ。


それはそうか。頼りになる委員長も、友達も一気に居なくなったんだし。

先生も、どう声をかければいいのか迷っているようだ。


 「たっだいま帰りましたー!」


勢いよく扉を開ける。不意打ちを喰らったかのような驚いた皆の顔が上がり、一斉に視線を向けられる。なんか、前にもこんなことがあったような・・・。


後ろから戸惑った朝木の声とバカにした鳴海の笑い声が聞こえるが、まるっと無視だ!


教卓の前に座っている先生の方へと向き、ピシィッと敬礼する。


 「教官、屋上や廊下に異常は見られませんでした!」


 「誰が教官だ!お前、またサボりに屋上へ行ってただけだろうが!」


 「失礼な!巡回ですよ、巡回。鳴海と孝也も居たんだから、そんなことできるわけないでしょう?・・・昼寝したかったけど」


 「最後、不満げにボソッと呟くな!」


先生が確認するように鳴海たちを見やる。いつの間にかちゃっかり席についてるし、あいつら!


 「えぇー。高ちゃん俺らを疑ってんのかよ。俺と鳴海ちゃんはずーっと教室にいたぜ?なぁ?」


 「そうですよ~。窿っち、怒られたくないからって私たちを巻き込まないでくださいよ~」


こいつら!芝居がかった仕草までしやがって、ニヤニヤするな!


 「らしいぞ?天野」


笑みをうかべる先生。でも口の端がピクピクしてるし、デコに青筋浮かんでますよ?表情筋鍛えた方がいいと思います、教官。


 「あははー。さぁて、もう一回巡回でもしてきますかねっ」


わざとらしく腕を伸ばす。下ろした瞬間、扉めがけてダッシュ。逃げるが勝ちである、が。


 「ぐぇっ」


元剣道部エースの先生から逃げおおせられるわけもなく。

襟首を捕まれ喉がつまった。カエルの鳴き声のようなうめきがもれる。おっ、カエルが捕まりましたね~、などとほざいているやつがいた。鳴海か!こんな失礼なやつはアイツしかいない。


 「教師の前で堂々とサボろうとするな!」


 「でっ」


脳天に鉄拳が降り下ろされた。結構痛いんだよな。


そのままいつもの流れで生活指導室へとずるずる引きずられて、連行される。


教室から春瀬と朝木の笑い声が聞こえる。


 「皆さんも、私たちが問題児と一緒にサボっていたことは、内緒にしてくださいね~。」


おいおい、聞こえてんぞ、コノヤロウ。

さっきまで呆然とした表情で俺たちの芝居・・を見ていたクラスメイトたちは、今となっては鳴海につられて笑っている。


なんか、カエルが帰った~とかいう台詞に、バカにされている気がするが。まぁ、いいか。


 「引きずられて笑うやつがあるか。・・・ま、ありがとうな」


おっと、口許くちもとがゆるんでいたようだ。

そんなことより、先生の背中を見つめる。照れ臭いのかこちらを振り返ろうとはしない。


 「先生・・・。おっさんのツンデレは受容ないですよ?」


言った瞬間先生が振り返ったが、その表情は照れなんてものは微塵もなくただ真顔だった。俺の襟をつかんでいない空いている手でまたも脳天を貫かれる。


 「ったぁぁあ!」


手刀が拳骨よりも痛いって、どういうことだ!先程の鈍い痛みより、今の鋭い痛みの方が断然耐え難かった。


痛みに暴れる俺を力ずくで引きずって行った。俺の喚きに教室から顔を出した生徒たちが、ああまたか、という呆れ顔で戻っていく。

え、俺の問題児扱いって、他クラスにも認定されてるんだ。




ドナドナされた後、手刀を喰らいながらの説教が待っていた。


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