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壁ドン バカ殿編

本編との繋がりは一切ありません。

攻略キャラとお姉ちゃんが恋人設定です。

時間軸は真梨香2年の終わり頃。

糖分過剰。

お姉ちゃんがデレ。

キャラ崩壊。

本編との繋がりは一切ありません。(大事な事なので以下略)

「それじゃあ、気を付けて帰れ。…また連絡する。」


 放課後、生徒会の仕事も終わって、廊下を歩いているところで杏一郎きょういちろうに会った。他愛もない立ち話を少しして、別れ際、頭を撫でられた。これはどうやら彼の癖であるらしい。授業の後、質問をしていた生徒に頑張れよ、と同じように頭をなでているのを見かけたことがある。撫でられた方の生徒は反応に困って苦笑いしていた。まあ、男子生徒が男性教師に頭を撫でられても、本人は嬉しくないだろう。見ていた女生徒うち数名が嬉しそうにはしていたが。

 私も子ども扱いされているようで、少し照れくさい。だからと言って避けると無表情にこの世の終わりみたいな顔をされるので、されるがままに任せている。


「…さて、帰ろ。」


 何となく撫でられて乱れた髪を撫でつけながら歩き始めた瞬間、廊下の角から伸びてきた手に腕を掴まれ、物陰へと引き込まれた。壁に背中を押し付けられ、両腕を拘束されそうになって、咄嗟に、相手の顔も見ずに、膝蹴りを繰り出していた。


「がっ…っ!!!?」


 身長が高かった所為か、太ももから腰骨の間に綺麗に決まった蹴りのダメージは大きかったらしく、襲撃者はその場で蹲って悶絶している。そこで初めて相手が誰なのか気づいた。


「……石榴ざくろ先輩じゃないですか。…何してるんですか?」

「………お前……今本気で蹴っただろ。」

「先輩だとは思わなかったもので。急に暴漢に襲われたら躊躇は一切するな、と中学時代に護身術を教えてくれた先生が言っていました。」


 そもそも、先輩が声の一つでもかけてくれればこんなことにはならなかったのに。そういうと何故かふてくされたように目を逸らされた。まだ痛むのか、腰を抑えて座り込んでいるので、こちらもしゃがんで目線を合わせてやる。


「…それで? いきなり声もかけずに物陰に連れ込んだ理由は何なんですか?」

「……あいつ、やけに親しげだったじゃねえか…」


 あいつ…? 誰の事だ…と考えて、杏一郎の事だと気付く。さっきのを見られていたのか。


鵜飼うかい先生は生徒の頭を撫でるのは癖みたいなものですよ。この前も男子生徒が撫でられて困っていました」

「……なんで教師がお前に『連絡する』とか言うんだよ?」


 会話まで聞かれていたのか。やっぱり今度から学校内では言動に気を付けてもらうよう杏一郎に物申しておかないと。その前に目の前で盛大に拗ねている恋人に何と説明したものか。しばらく考えた後、正直に話すことにした。

 付き合っている以上、変な嘘はつきたくない。石榴先輩はバカだけれど、公言できることとできないことの区別はつくだろう。


「従兄です」

「…は? 何だと?」

「鵜飼先生、実は父方の従兄なんです。家庭の事情で他の人とかには秘密にしているんですけど。…ですから、石榴先輩が勘ぐるようなことは何もありません。」


 私の言葉にしばらく真意を探るようにじっと見つめてきた先輩は、それでもまだ納得がいかないと言うように眉間にしわを寄せる。


「従兄って言ったって、男じゃないか…。それにあの眼は…。とにかく! 俺以外の男に気安く頭とか撫でさせんじゃねえ! 従兄でも駄目だ! いいな!!」


 逆切れ気味に主張され、ついデコピンしてしまった。思いのほかクリーンヒットしたらしく、こんどは額を抑えて悶絶し始めた。なんて面倒くさい男だろう。その面倒くさい所も可愛いとか思ってしまった自分も相当末期だ。


「石榴先輩、従兄が頭を撫でたくらいでいちいちヤキモチを妬かないでください。…先輩は、私の恋人でしょう?」


 そう言ってデコピンですこし赤くなった額を撫でてやると、抱き寄せられた。今度は抵抗することなく腕の中に納まってやる。ぎゅうぎゅうに抱きつぶされて少し痛いが、我慢する。背中に回した手で、ポンポンとなだめるように撫でると、更にぎゅうぎゅうに抱きしめられた。だから、痛いって。抗議の意を込めて、背中を叩くと、ようやく少し力を緩めてくれた。


「恋人だから、妬くんだ。お前は中々触れさせてくれないし、互いに忙しくてデートもままならない。たまに仕事が早く終わって、共に過ごそうと探しに来てみれば他の男に頭を撫でられている。そんなもの、妬くに決まってるだろう」


 ぶつぶつと文句を言っているが、内容は完全に拗ねた子供のわがままのようで、可愛らしいのだが、いかんせん、手が段々と不埒な動きをし始めている。


「先輩、何処触ってるんですか。物陰とはいえここは校内です。離してください。ってか、は~な~せ~!」


 言って聞く相手じゃないのは重々承知なので、力任せに引っぺがしにかかる。が、はがれない。くっそ、この馬鹿力!! このままでは本気で校内で押し倒される羽目になりそうで、仕方なく、私は奥の手を使うことにした。


「石榴先輩、私、今日は仕事も終わりましたし、家の家事当番でもありませんので、これから先輩のお宅に伺う時間が取れますが、どうします? ちなみに、この場でこれ以上おかしな真似をするようなら、一週間、放課後デート禁止にしますけど?」


 効果は覿面で、石榴先輩は一瞬で私を離して立ち上がる。


「よし、帰るぞ。家事当番ではないという事は夕食もうちで取れるのか? 何ならいっそ泊って行ってもいいぞ」

「いえ、さすがに帰ります。…怒られるんで」


 夕飯を要らないというだけでも何と言われるか、考えただけで恐ろしい。怒った顔も可愛いんだけど。脳裏で愛しのマイエンジェルを思い浮かべていたら、手をぎゅっと握られ、引き寄せられた。目の前には猛禽を思わせる鋭い瞳の美丈夫。その眼を見て、あ、しまった、と思った。


恋人おれと共にいるというのに別の誰かを思い浮かべてにやけるとはいい度胸だ。…今日は泊まりだ。反論は認めない。なに、お前のとこのおっそろしい家族には俺から電話を入れてやる」


 うわあ、盛大な修羅場フラグしか立たない。何とか回避したくてあれこれと言い募ってみたものの、結局、無理やり恋人繋ぎにされた手を引かれ、お持ち帰りされる羽目になった。

 ちなみに妹から正座で涙目で説教されたのは翌日の夜の事である。

石榴先輩は本編でも番外編でも真梨香さんに暴力を働かれている率がダントツに高い。

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