27. 中学2年 7月 羽ちゃんと国広
部活に出たけど、ほとんどおしゃべりしてた。
コースターの話題が出て、花弁のは羽ちゃんのだった。羽ちゃんらしいって言ったら、そうだ。
羽ちゃんはいつもニコニコしていて、色白で長い髪を三つ編みにして左右におさげにしている。小学校入学の時からそうだ。幼稚園の頃もそうだったとか。
清楚な女の子って感じ。だけど、けっこう物言いがストレートで、自覚はないようだけど、ちょっとぉ、羽ちゃん…みたいなことがある。
もちろん漫画、アニメ、ゲームも大好きで、ルカンシシーの“ミツ”っていう妹キャラに似てるとよく言われるから、“ミツ”押しだ。
だけど羽ちゃんは、やっぱりハードだ。描くイラストは、“ザ・劇画”だ。好きな話もそっちが多い。コースターのそのやり込み過ぎな感じが、もうそのものだ。
帰り際に羽ちゃんにウイッグのこと聞かれた。志賀先生には被ってること話したけど、他の、加島っちとかに聞かれたことはないし、見られてる感じもなかった。気が付かないのか、見て見ぬふりしてくれているのかわからないけど。
お姉さんがおしゃれ用に持ってる、だからそうかなぁと思ったと言った。双子かと思うほどそっくりな2つ上のお姉さんも小学校の頃は髪が長く、おさげにしていた。中学に入ってすぐに”なんか邪魔“でショートカットにした。
「ちょっと、薄くなっちゃって」
と言ったら
「うん、そうだね」
と言った。意外だったけど、気が付いてたんだ、小学校の頃から。その頃、母にも“気づいている人いると思うよ”と言われてたけど、誰かに指摘されたことはない。
意外でもなんでもないな。皆に気を使わせてたってことかも…小学生なのに。例えば、お家の人に話し“言っちゃばめだよ”とか言われてたかもね。
「眞悠ちゃんは髪の毛大切にね」
とウィッグのこめかみあたりに触れた。
「なんてったって、わたしは“ミツ”だからね。魔法使いだよ」
と言う。どういう意味かもわからないけど、じんわりとした感覚が伝わる。
“わたしは魔法使いだ”なんてことは言えない。羽ちゃんこそ魔法使いだ。
「羽ちゃ〜ん」
って抱きついたら、
「おお、よしよし。魔法が効いてきたようだね」
と“ダケ先生”の声真似をした。
似過ぎてて、まわりにいた人たちにも聞こえたらしく、大笑いして
「なになに?もう一度やってよ!」
と言い、羽ちゃんは調子に乗ってゲーム内のセリフを言い続けた。
優しい。
本当に心配かけちゃってたんだ。
羽ちゃんのせいじゃないよ。美術部のせいじゃないよ。
わかってることだけど、成績表の1学期の部分は、一番上の国語から下の生活(家庭科と技工)まで一気に斜め線が引いてある。1年の3学期がそうだった。“判定ができません”と記入されいたけど、今回はない。
出席日数は8日! 遅刻早退は記入がない。
面談と市内巡り前と当日なんだな。
“月1回の面談に来てくれて、嬉しかったです。2学期も無理せずに活動できれば良いと思います。美術の作品は素晴らしいものでした。評価は付けられませんが、今後もできることがあれば、挑戦してください。”
とコメント欄に書いてあった。
「やっぱり、コースター1個じゃ成績付けられないか」
と母が言った。
「付いたとしても“1”じゃない?“0.5”とかね」
と言うと
「そうかもねぇ」
と言った。いつもだったら、そんなことないよぅって言いそうだけど、やっぱり現実は厳しいと…
「評価って成績だけじゃないしね。出席日数もだけど、授業態度とか見てるでしょ?」
「提出物とかね」って言おうとしてやめた。まるっきり自分のことだ。
羽ちゃんの話もした。
「優しいね。羽田さんも優しいからかな」
羽ちゃんのお母さんのことを言った。
「この間ね、“リーアナ”で善くんママに会ったんだよね」
“リーアナ”はスーパーマーケットとホームセンター。善くんママは国広のお母さん。
国広のお母さんはわたしのことを心配してくれて、母に愚痴でもなんでも聞くよと言ってくれたとか。優しいね。
国広は学級新聞も必ず見せていて、1月号が出た時に、休んでたから出ないと思ってたらしく、嬉しそうだったよと教えてくれた。不登校になった時も心配して『誰かがいじめてんだ』とぶ然としてたから『助けてあげな』って言ったんだって。
国広のお母さんは明るくて元気でおしゃべり大好きで正義感が強い。だから国広もちょっとそんな感じなのかも。小学校の頃から、やはりオタク仲間で、何回か同じクラスになったし、男子だけど仲良しだった。
親子で心配かけちゃって、お世話になっちゃって申し訳ありません。




