前編
前中後編の予定です。
12歳の時、スキル鑑定を行った。
時間は夜の11時半だったが、不安と期待と緊張と
興奮で少しも眠くはなかった。
時計が夜の12時を指した頃、スキル鑑定の結果が
出た。
その結果はー…
『スキル【お掃除】』
どんなゴミでも視界に収めれば異世界に飛ばせる
スキルだ。
誰しもが、これはただのお掃除しかできないハズレ
スキルだと思った。
誰しもが、魔法があるこの世界では、何の役にも立た
ないスキルだと思った。
もともと貧乏だったその家は、その無能と思われた
娘を奴隷として伯爵家に売ることにした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ちょっと!セレスティア。ここの掃除がまだじゃ
ない!」
「申し訳ございません。すぐにそちらに向かい
ます。」
男爵令嬢セレスティア・レイン 18歳。
ハズレスキル【お掃除】を手に入れたため、役に立た
ないと貧乏だった男爵家は、セレスティアを奴隷して
売った。
セレスティアは毎日毎日、掃除だけではなく雑用など
を伯爵夫人ベル・ヴォルツや伯爵閣下
エドワード・ヴォルツに押し付けられる生活をして
いる。
しかし、その生活にセレスティアは一切不満は
なかった。もらえるご飯は男爵家にいた時より豪華
だし、寝るところも、男爵家にいた時より豪華
だった。
むしろ不満があるどころか、やることがあるのは暇が
なく、セレスティアはこの生活がとても幸せと感じて
いた。
そんなある日ー…
「セレスティア、話があるの。こっちに来ない。」
「何でしょう?ベル様。」
「あなた、クビよ。」
「…え?」
ベルは少し席を外してから、またすぐにロボット
らしき物を持って戻ってきた。
「今、魔力式人形ロボットが流行っているのよ。
ほら、魔力を少し込めるだけで、命令したら魔力が
切れるまでずっと働いてくれる便利なロボットなのよ。」
セレスティアの目に絶望の色が浮かぶ。
「…じゃあ、私はこれからどうしたら…?」
「さぁね。知らないわよ。クビにした奴隷が
どうなろうと。」
「ベル様…」
「さあ、早く荷物をまとめて出ていってちょうだい」
「わ……わかりました。」
もうセレスティアには、なにも言えることなど
なかった。
セレスティアは、荷物をまとめながら考えていた。
(これから…どうしよう。雇ってくれるところがある
かしら。食べ物と…住むところも…どうしよう。)
「はぁ…どこかに住むところとまかないを提供して
くれる飲食店とか、ないかなぁ〜。」
(第一私、最近ほぼ外に出てないから外がどんな感じなのかもわからないし…。)
「…はぁ〜あ!」
セレスティアは改めて、大きなため息をついた。
「…ベル様、エドワード様、今までありがとう
ございました。」
セレスティアはベルとエドワードに深い礼をした。
(…ここから、一人で頑張らなきゃ!)
そう決意して、セレスティアが家をでてから30分。
「ここどこ?」
セレスティアは、早くも森に迷った。
「大変…森…ってことは魔物とか出る…?」
「ガルルルルル!」
「ひっ!魔物ほんとに来たぁ!」
(どうしよう!何もしなかったら魔物のエサ、何か
したら…そもそも、できることなんてないんじゃ
ない?だって、ずっと奴隷として働いてきて、勉強も
戦いも、何もできる環境じゃなかった。)
「グルルルル…ギャンッ!」
魔物はセレスティアに襲いかかろうと飛び出した。
絶対絶命の危機。
…そんなセレスティアの頭に、一つだけ、助かる
可能性のある方法が浮かんだ。しかし、成功するか
どうかはわからない。
「でも…何もやらないより、マシだよね。スキル
【お掃除】発動!!」
「ギャッ!?ガ…ル……。」
…魔物は、異世界に飛んでしまった。
「……助かったの?……やったぁ!って、レベル
上がってる…?」
『セレスティア・レイン レベル25』
(一気に…これだけ上がるなんて…)
「もしかしたらこれ、応用でどんな敵でも倒せるの
では?」
(ドロップ品を欲しいとかじゃなく、討伐依頼ならこれ
通用するんじゃない?ほぼ討伐したみたいなわけ
だし。私、冒険者になれるかも!)
「よーし、やってみますか!」
それからセレスティアは、どんどん冒険者への依頼を受け、国一番のお金持ちになり、レベルは千、万と
いつしか世界で一番レベルが高くなっていたー…
そんな生活にも慣れてきた頃。
ピンポーンピンポンピンポーン
(呼び鈴の音…誰かしら?…うげ、エドワード様だ。)
ガチャリ
「なんでしょう、エドワード様。」
「セレスティア、うちに戻ってきてもいいぞ。」
「いやです、エドワード様。」
セレスティアは考えるより前に、反射的に答えて
いた。
(そっちがクビにしておいて、なによ。)
「魔力式ロボットが壊れてしまってな。もう一度買うお金もない。そもそも、セレスティアがうちを出てから、なにも上手くいかなかったんだ。もう、うちは
没落寸前なんだ!助けてくれ!」
(それは、あなたが私に仕事まで押し付けていたから
でしょ。)
ヴォルツ家からクビと言われる前のセレスティア
なら、お世話になったからと助けていただろう。
でも、もうセレスティアは、ヴォルツ家の奴隷で
いた時よりずっといい環境にいる。
いつか、ハズレスキルと言われたスキルを、
セレスティアが大当たりスキルとして使った。
「ごめんなさい、私の才能もわからない貴方方の
もとには、もう絶対に戻りたくないんです。」
「そんな…。」
「では。さようなら。」
バタンッ
「…はぁ。」
セレスティアは体の力がどっと抜けるような感覚に
思わずため息をついた。
「終わったんだ。私は、もう本当に自由なんだ。」
(もう、このままのんびり過ごそうかな。)
しかし、このセレスティアがのんびり過ごすなんて
ことはそう簡単にはできない。
セレスティアの物語は、ここから始まるのだった‐…
感想と評価お待ちしてます(=^・ω・^=)




