黄金の試練 2
迫る閃光に、身体が先に動いた。
俺はただ後ろへ全力で跳んだ。
ソレを避けられたのは奇跡に近い。
閃光が水面に触れた瞬間、円状の衝撃波を撒き散らし、水面を蒸発させ、露わになった地表を砕いてもまだ止まらない。
視界を覆う水蒸気を抜け、砕けちった無数の礫が弾丸のように俺を目掛けて飛んできた。
「──マジか!!」
未だ空中。
俺はジャージのズボンに差していた枝と眼に魔力を叩き込み、礫をまとめて薙ぎ払う。
水蒸気が晴れる。視界がクリアになった。
と同時に、閃光が視界に奔る。
強化した眼はしっかりと閃光の正体を捉えた。
恐ろしく煌る───黄金の剣。
薙ぐように俺の首へ向かう、まっすぐな剣筋。着地を狙った絶妙なタイミング。
迷う暇は無かった。
俺はがむしゃらに枝を剣の軌道に合わせて差し込んだ。
「──!!!」
マズっ───重過ぎる!!!
次の瞬間、景色が弾け飛ぶ。
俺の身体は小石のように吹き飛ばされ、水面を何度もバウンドする。
「クッソ痛てぇ……」
俺より小柄な体格で、この重さ。
ありえねぇ。まさかベティさんたちが豆粒みたいに見えるほど吹き飛ばされるとか、尋常じゃない。
てか説明も無しに始まって、訳もわからず吹き飛ばされて、相棒は砕けて右手が麻痺してる。
「クソイカれてるな、あの精霊王も、黄金の騎士も」
ベティさんに何でもするって宣言した手前、とやかく言うつもりも無いけども! 試練突破条件の説明ぐらい欲しかったぜ。
痺れる右手を振るう。具合は悪いが壊れてない。
そして肝心の武器だが……まだいくつか枝のストックはある。しっかし一撃で砕かれるんじゃ話にならない。まぁ、これしか無いから仕方ないけどな。
ただ悪いことばかりじゃない。この場所は異常な程に魔力で満ちている。吸収がザルな俺でも魔力がどんどん溜まっていくのを感じるほどだ。
だからこういうこともできる。
俺は懐から2本の枝を取り出し魔力を流す、双魔剣スタイルだ。
「だー、休む暇もねぇなぁ!!」
視界に金色が煌めく。
そして一直線、高速で飛来する黄金の騎士。
瞬きも許されない神速、間合いが一瞬にしてゼロになる。
「クソッ、速ッすぎるだろうが!!」
避ける暇は無い。
雷鎚の如く降り注ぐ剣を、俺は二本の枝を交差させることで受け止める。
横薙ぎとは違う、真上からの一撃。
衝撃の逃げ場が無い。全身に衝撃が駆け抜け地面にクレーターが出来上がる。身体がメキメキと悲鳴をあげる。骨が軋み、血管が千切れる音。
「上等だ、イカれ騎士がッ、ラァッ!!!」
俺は歯を食いしばり、全力で騎士の剣をかち打ち上げるように二本の枝を振るった。
すると剣が跳ね、騎士の上体が後方に逸れる。
「喰らえッ!!」
打ち上げた双魔剣を引き戻すように、ガラ空きの騎士の胴体へ振り下ろす。
────結果は、
「なッ──!!」
無傷のまま構えをとる黄金の騎士。
それとジリジリと焼け焦げたような匂いが鼻をついた。その香りの出所は俺の両手に持つ枝。それは黒く炭化していた。
「マッジかよッ!!」
動揺する俺に、容赦なく振り下ろされる金の剣線。
それを俺は全力で横に転がり回避し、なんとか距離を取る。炭化した双剣を捨てて最後の一本になった枝を取り出して構える。
もう一度騎士の姿を観察する。
一体なんだ、あの鎧? 斬りかかった俺の武器の方が死んだ……? てか触れた瞬間に燃やされた? 攻撃が通じない!?
俺は一撃でも直撃喰らえば普通に死ぬってのに、こっちの攻撃は通じない!? それに俺は魔法と呼べる魔法なんて使えない。できるのは肉体と触れたものをエンチャントすることだけ。
とことんッ!! 理不尽な状況だな!!
もうやれる事は一つしかない。
「死ぬ気で、足掻くッ」
言葉と同時に地面を蹴る。
勝てる気なんて、一切しない。
真正面からやりあえば、間違いなく俺が死ぬ。
ただベティさんに言ってしまった。『何でもする』と、情けなくビビって逃げ出すわけにはいかない。
耐える。耐えて、耐えて、耐えて、耐え抜いて。
もう奪うしか無い。
───奴の剣を。




