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無能と呼ばれた灰属性の司書、禁書を読む力で幽閉王女を救い王宮の闇を暴く  作者: 関澤諭


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扉の向こう側

 地下最奥。


 誰も触れていないはずの扉が、ゆっくりと開いていく。


 重い音が響くたび、空気が変わっていくのが分かった。


「……嫌な感じしかしないわね」


 リシェリアが低く呟く。


 セリアも無言のまま警戒を強めていた。


 ユイトは、扉を見つめる。


 読む。


 それだけに集中する。


 だが――


「……読めない」


 小さく漏らした言葉に、二人が反応した。


「え?」


「どういうこと?」


 ユイトは眉を寄せる。


「記録が、存在しない」


 違和感だった。


 この世界には、必ず“痕跡”が残る。


 人が歩けば足跡が残るように。


 魔力を使えば揺らぎが残るように。


 どんな存在にも記録はある。


 だが、この扉の向こうには――それがない。


「……空っぽ?」


 リシェリアが聞く。


 ユイトはゆっくり首を振った。


「違います」


 そして、静かに言う。


「“消されている”」


 沈黙。


 空気が冷える。


 セリアが一歩前に出た。


「意図的に?」


「はい。しかも、完全に」


 ありえない。


 本来、記録を完全に消すなど不可能だ。


 灰でさえ“残る”。


 なのに。


 ここには何もない。


「……行くしかないわね」


 リシェリアが息を吐く。


 怖がっていないわけではない。


 だが、それ以上に前を向いていた。


「はい」


 ユイトも頷く。


 三人は、扉の奥へ踏み込んだ。


 その瞬間。


 世界が変わった。


「……っ!」


 リシェリアが目を見開く。


 そこに広がっていたのは、地下空間ではなかった。


 白い。


 どこまでも白い空間。


 床も、壁も、天井もない。


 ただ白だけが広がっている。


「何、ここ……」


 セリアが低く呟く。


 ユイトは周囲を見渡した。


 気配がない。


 音もない。


 だが――


 視線だけがある。


 無数の。


「歓迎します」


 声が響いた。


 三人が同時に振り向く。


 そこに立っていたのは、一人の少女だった。


 白い髪。


 白い服。


 そして。


 感情のない銀色の瞳。


「……誰」


 リシェリアが問う。


 少女は微笑む。


 だが、その笑みには温度がなかった。


「観測管理者、第七位」


 静かな声。


「あなた方の言葉で言うなら、“管理者”です」


 ユイトの表情が変わる。


 観測体とは違う。


 もっと上位。


 明らかに別格の存在。


「……観測体を作った側ですか」


「正確には、管理しています」


 少女は首を傾けた。


「ですが、あなたは興味深い」


 銀色の瞳が、ユイトを見る。


「灰の記録者」


 その呼び方。


 もう隠す必要もないということだ。


「あなたは“誤差”です」


 空気が揺れる。


「本来、この世界に存在してはいけない」


 リシェリアが一歩前に出た。


「ユイトに何する気?」


 少女は視線を移す。


「王家の器」


 感情のない声。


「あなたも同じです」


「……は?」


「強すぎる魔力。観測不能の揺らぎ。あなた方は世界を不安定にする」


 その言葉に。


 ユイトは違和感を覚えた。


「……世界を守っているつもりですか」


「はい」


 即答だった。


「我々は、世界を維持しています」


「人を消してまで?」


「必要な処理です」


 以前の核と同じ答え。


 だが。


 今度は、もっと恐ろしい。


 迷いがまったくない。


「世界は、固定されなければならない」


 少女が言う。


「変化は誤差を生む」


「だから観測する」


「だから記録する」


「だから不要な存在を消す」


 淡々と。


 当たり前のように。


 ユイトは奥歯を噛んだ。


「……ふざけるな」


 初めてだった。


 ユイトが、明確に怒りを見せたのは。


「人は変わるから生きてるんだ」


 灰色の魔力が揺れる。


 静かに。


 だが、確かに。


「失敗して、迷って、それでも進む」


 少女の瞳がわずかに細くなる。


「非効率です」


「だから何ですか」


 ユイトは前へ出る。


「全部固定された世界のどこが生きてるんです」


 空間が震える。


 白い世界に、灰色の魔力が広がっていく。


 少女はしばらく無言だった。


 やがて。


「……やはり危険です」


 小さく呟く。


「灰の記録者」


 その瞬間。


 白い空間に、無数の文字が浮かび上がった。


 観測。


 固定。


 削除。


 記録。


 世界そのものが、書き換わろうとしている。


「排除します」


 少女が手を上げる。


 空間が歪む。


 だが。


 ユイトもまた、一歩前へ出た。


「……読みます」


 灰色の瞳が、真っ直ぐ少女を見据える。


「あなたたちの世界を」


 リシェリアが笑う。


 不敵に。


「言うようになったじゃない」


 セリアも静かに構えた。


「ここからですね」


 三人が並ぶ。


 白い世界の中で。


 そして。


 “管理者”との戦いが、始まった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


第11話では、ついに観測体を管理する存在――“管理者”が姿を現しました。


そして明かされたのは、

観測体たちが「世界を維持するため」に動いていたという事実。


ですが、そのやり方はあまりにも歪んでいます。


変化を許さず、誤差を消し、世界を固定する。

それは本当に“正しい”のか。


ユイトは初めて、自分の意志で真正面から彼らを否定しました。


第12話では

・“管理者”との本格的な衝突

・灰の力のさらなる覚醒

・ユイトの存在に隠された真実

へと踏み込んでいきます。


物語の大きな転換点になっていきますので、ぜひ続きも読んでいただけると嬉しいです!


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