スイセンとたんぽぽ
「面白かったけど、濃かった。4年に1回で十分かな」
「長いわ!」
「やだやだ、せめて1年に1回!」
「え?年1でいいの?」というやりとりをしたのが、2週間前くらいか。
本日。二回目のいとこのセレナとガレンとわたしの3人の飲み会です。
セレナがガレンを「推し」だと言い張り、ヒュリも絶対いて!と騒ぐので、飲み会を設定した。あんなに緊張していたのに、セレナ、お酒が入り、暴走。
あの緊張はどこへ? ガレンに絡みまくり、めちゃくちゃ、おもしろかった。
腹筋使いすぎて痛かった。
で、冒頭の会話となったのだ。
セレナはシゴデキの美人さんだ。ただ、働き者の星の下に生まれているらしく、週末には大体爆発する。
今日も誘われて飲みに行く途中、セレナ、ガレン発見、確保。さすがだわ。
年1じゃないのか? といわれても、今日は予定していなかったから、ノーカンと主張するセレナである。
ガレン、諦めて言われるがまま、ついてきて今にいたる。
円卓に座り、何頼もっかな〜と見ていたメニューからふと入口をみると、なんか見覚えのある人が。
あ。詐欺師を捕まえてくれた騎士さんだ。ぺこっと頭を下げたら、あれ、こっち来たよ。
「飲酒は成人になってからだぞ」と言って、ちらっとガレンを見たので
「飲んでないですよ〜」と教えてあげる。
セレナが横から「どなた?」と聞くので
「この前、詐欺師を捕まえてくれた騎士さん」と伝えると、
「カイル・レオンだ」と自己紹介をしてくれる。
「あ〜〜、ヒュリがお世話になりました。ありがとうございました。
わたし、セレナといいます。じゃ、飲みましょうか。座って!」と騎士さんの腕を掴み、座らせにかかる。
「え? いや、勤務中…」と口ごもる騎士さんに
「なわけないだろ。私服じゃないか」とすかさず突っ込むセレナ。
「ほらほら、座って〜。円卓なんだからどこに座ってもよいの〜」といいながら隣に座らせる。
あれ、よく見ると、ガレンとちょっと似てるこの人。二人とも黒髪、背格好も同じくらいだ。
セレナ、ガレン、わたし、騎士さんと丸く座っているのでガレンと騎士さんに挟まれている。
よかったね、ってわたしもか。
「ヒュリはガレンといっしょにいられてうらやましい!」というので、
「別にいつもいっしょにいるわけじゃないよ」というが、聞いちゃいない。
「騎士さんもお仕事大変でしょう? はい、飲んで。飲もう。飲む!」
「あ、三段活用」
今度は騎士さんに向かって、ガレン推しといい、
「なんだかんだ、やさしいよね。さすが、双子のお兄ちゃん」というと、いきなり
「声がよい! ガレンさん、「俺に任せろ」っていって!」と叫ぶ。
……すごい。ガレン情報、押さえてる。さすが推し。
ガレン棒読み「俺に任せろ」
「いい〜。イケボ〜!」
「棒読み〜」
「いいの! これで。ヒュリ、録音しておいて!」
カイルさんが本気で「???」という顔をしている。
「じゃあじゃあ、騎士さまも言ってみて! 俺に任せろ」
「…俺に任せろ」
「……なんかちがう〜」
「ひどい!」
「もう少し棒読みがいいな」などわちゃわちゃ。おかしい。
セレナが「もう仕事でストレスたまりまくり。女の子は〜、お花なんだから、大切にしてください」と男子二人に訴えている。
カイルさんが「???」という顔をしていたので、「シゴデキすぎて、セレナにいろんな仕事がきちゃうみたいなの。働き者の星の下にうまれているの」と説明しておいてあげた。
「お花ねぇ…じゃあ…セレナは水仙かな…あ!ラッパスイセン!」と思いついたら
カイルさんが「声が大きいから?」ガレンが「毒があるぞ」と突っ込んできた。
「えー。うるさい。じゃあじゃあ、ヒュリは…たんぽぽ!」
「もっちょっと高級感があるのがいい〜」
「いんじゃないか。根っこ1.5メートル」
「根っこじゃん!」
「???」
「じゃあ、騎士さんは? ガレンは? どんなお花よ?」と聞くと
うーーーんと考え込むセレナ。
「なんかわかんないけど」と立ち上がり、右カイル、左ガレンの腕をがしっとつかみ、自分に引き寄せて、「両手に花〜!」というセレナ。無双。
「ほら、みんなも両手に花!」といい、セレナ、カイルさんにくっつき、
ほら、ヒュリもというので二人で左右からカイルの腕をつかみ、
くっついて「両手に花〜」
……近かった? カイルさん石化した。
その後、ガレンにも両手に花〜!…ただの酔っ払いです。
一瞬、ガレン固まった?
と思ったけど、普通にグラスを傾けてた。平常運転。
めっちゃ楽しい。セレナ暴走でお腹がよじれる。
まわりのお客も若い騎士がよっぱらいの女の子に翻弄されているのを微笑ましく眺めていた。
あの騎士、融通が効かないかと思ったが、若いからな。いい奴だ、と。
ヒュリたちを送った帰り道
キャラキャラと笑うヒュリたちがいなくなると、男二人静かなものだ。
「…濃かったな」とあらためて呟くカイルにガレンが笑う。
「次で慣れる」
「…あいつ、危なっかしいな」というと、「ん?」という顔をしてくるガレン。
「冒険者になってまだ日が浅いんだろ。自覚なく首を突っ込むタイプだ」
「そうかもな」
「怪我されたくないなら、目、配っておけよ」
「そうだな」と当たり前のような返事がきた。




