新人3人組 お礼と卵クエスト
「ねぇ、受付のお姉さんたちにさ、お礼しようよ」
ご飯会の帰り道、ヒュリが言った。
やっぱり新人冒険者的には何か採集してお礼でしょ!
そんな流れで、採集に行くことになった。
そして、二つ名がついた同期のおこじょと黒テンが、もう私達イタチペアじゃん、とか言い出した。
「おこじょも黒テンもかわいいけどさ〜、いいにくいし」
「いいよ、もうイタチで」
「……え?」
「イタチ科じゃん。白目出し帽のおこじょ、っていわれるなら、もうイタチでいいよ」
「それに、クールな悪役ってかっこよくない?」
「むしろ強そう」
「だよね〜!」
「……本気?」
「うん、ほら、イタチっていうと“こんな女の子がまさかね”ってなる期待もある」
開き直ってる。
いや、変な計算してる。
多分、ヒュリは恥ずかしすぎて振り切り、カヤは何も考えてないな。
「イタチペアで採集するぞ!」
「いぇーい!」
……決定したらしい。
「ルカくんも二つ名つけようよ」
「……いや、それって、つけようって言ってつくものかな?」
三人で何をお礼とするかを話し合い、ラピアケの実とダルナの実にすることになった。
ラピアケはヒュリのおすすめ、ダルナは僕のおすすめだ。
ダルナはそのままでも食べれるけど乾燥させるとねっとり、濃厚な甘さになる。保存食にも向いている。
「それいいね、甘いは正義」
二つとも採集には慣れているから、集めるのはすぐ終わるだろう。
「せっかくだし、クエストもやろうか?」
「あ、それいい!」
「やるやる〜!」
そんな流れで――
魔鳥ガードストリスの卵の採集に行くことになった。
採集前に、三人で下調べをした。
ガードストリスは平原にいる飛べない大型の魔鳥で走るのがやたら速い。
残念なことに頭はあまりよくないが、脚力は凶悪。
蹴られれば骨折、脚の突起で肉をえぐられる。
卵は、親がいない時に取るのがベスト。
栄養価が高くて、売ればそこそこいい値段になる。
ただし、乱獲防止のため、必ず一つか二つは巣に残すこと。
ちゃんと巣にいない時を見計らって採集すれば問題ない。
テリトリーがあるので、万が一の場合でも森まで逃げれば大丈夫。
……うん、見つからなければ問題なし。
ラピアケは十二個以上収穫できた。
一人三個ずつ、ちょうどいい数だ。
ダルナは量で適当に確保。こちらも問題なし。
ラピアケはみんなですこし味見。
甘酸っぱくておいしいね〜、とイタチペアははしゃいでいる。
そして、そのまま卵採集へ。
平原を進み、巣を探す。
巣にある卵は三つ。
「……とりあえず、一つでよくない?」
「だね」
「だね」
必要以上に持ち帰る理由もない。
「一つでも持ってるとこ、親に見られたら、やばいんだろね〜」
「早く退散しよ」
「いざとなれば肉体強化使うし、荷物は全部僕が持つよ」
そう言った時、
――気配。
「――っ!」
気づいたのは、ほぼ同時。
次の瞬間、巨大な影が横から突っ込んできた。
ギリギリで回避。
ヒュリが反射的にシールドを展開する。
平原オオトカゲが、すぐそこまで迫っていた。
草をかき分ける音も、足音もない。
気配だけだ。
――すごい。
透明な壁があの巨体を止めている。
短い脚の一部がシールドからはみ出している。
まずい。
あれに噛まれたら終わる。
よだれがシールドにべっとりと付着し、ゆっくりと垂れていく。
――猛毒。
やばい、やばい。
オオトカゲは横に流れるように着地し、四つ足で体勢を立て直す。
その瞬間を狙って、ヒュリが脚元を凍結させた。
――早い。
でも、余裕はない。かなりギリギリだ。
カヤが斬り込もうとする。
だが、尻尾が唸りを上げて振り回される。
近づけない。
いや、
近づいちゃだめだ。
「退避しよう。ヒュリは僕が背負う。カヤ、援護して」
「わかった」
ヒュリを背負い、移動しようとした――その瞬間。
――嫌な音。
甲高い鳴き声が、平原に響いた。
振り向くまでもない。
親鳥だ。
しかも――こっちに気づいてる。
遠くから怒りの声をあげながら、一直線に突進してくる。
やばい。
やばいやばい。
このままだと、トカゲと親鳥、最悪の挟み撃ちだ。
……と、ヒュリが動いた。
「ぶつける」と一言。歯を食いしばって、手をかざした。
「……こいつ、重っ」といいながら、シールドでトカゲを覆い、魔力で力任せに引きずる。
「いっけーーーーーーっ!!」とそのまま親鳥へと叩きつけた。
「ギャアッ!」
一転、親鳥とオオトカゲの戦いとなる。
へたるヒュリを担ぐ。
「今のうちに逃げる!」
ヒュリのおかげで命拾いした。
そのまま、ヒュリを背負いなおし、駆け出した。
「ごめん。魔力もう殆ど残ってないみたい」
「喋らなくていい!」
カヤは僕達よりちょっと遅れて走り出したが、すぐに追いつき、一緒に並走。
すると、こちらを向き、「いいなぁ〜」と言い出した。
何?
「ヒュリ、またおんぶ……いいなぁ〜」
「そこ!?」
「カヤ、前見て!前!危ないから!」とヒュリが突っ込むが、
「いいなぁ〜」
気にしてない!
「目に光がない。こわいこわいこわい!」
「お姫様じゃ〜ん」
「よく見て……いや、見なくていい。前向いて!」
森まであと半分というところでようやくスピードダウン。ここまで来れば、もう大丈夫だ。
「ヒュリ、いいなぁ〜」
まだ言うか。なぜ、そこまでおんぶにこだわるのか。
「カヤ、あとでルカに好きなだけおんぶしてもらいな」
ヒュリ、諦めたな。
その時、また鳴き声。足音も近い。
ドドド…! 親鳥だ。トカゲとの戦いに勝ったらしい。
「また、来た〜!」とふたたび全力疾走。肉体強化魔法できててよかった!
「でも、なんでこんなにしつこく追ってくるんだろ?」
と息を切らしながら、つい問いかけてしまう。
すると、カヤが並走しながら、
「あ、もしかして、卵追いかけてるのかも」といいながら、卵をだしてきた。
「お前かーーーーーーーーーっ!」
ヒュリと二人、声が重なる。
「なんで、そんなの持ってんの!?」
「え〜、だって、卵とりにきたんじゃーん」
こいつ、状況全然わかってない。こいつもかなりやばかった!
やばい、そう行っている間にかなり距離を詰められてる。闘う? でもこのスピードでこられたら、対応できる自信はない。
「追いつかれそう。斬る?」とカヤ。
いや、無理でしょ!カヤができても、こっちが死ぬわ!
ぐっと距離を詰められている感覚。足音が近い。もうすぐ息がかかる距離だ。
「来る!」と思ったその瞬間、
「お前、しつこいんだよーーーーーー!」ヒュリが叫んだ。
魔力を横から親鳥に叩きつけたらしい。
「ギャアッ!」
親鳥が横に飛ばされ、倒れた。軌道がずれた。
「早く森へ」と全力疾走。ヒュリはもう気を失う寸前だ。
背中にかかる不安定な重さにぐっと堪える。
ギリギリのところで森に到着できて、三人で地面に寝転がる。
「助かった〜」と三人の声がハモった。
しばらく地面に転がっていたが、ようやく落ち着く。
カヤが「ヒュリ、ごめん……」とシュンとして、ポーションキャンディを差し出していた。
ようやく、気付いたか。
ヒュリも「とりあえず、みんな無事でよかったよ。疲れた〜」と言ってるので
カヤのことは許しているみたいだ。
まぁ、カヤ、悪い子じゃないんだよね。
考えてないだけで。
ズレてるだけで。
脳筋なだけで。
ようやっとギルドに戻り、お土産の木の実をお姉さんたちに渡してお礼をいわれながら、卵は買い取ってもらって、そのお金でポーションを購入して、ヒュリに飲ませた。
なんでそんなにボロボロなの?と聞かれ、今日の報告をしたら、思いっきり叱られた。
そして、卵代ではポーション代には足りず、じゃあ、このクエストしよっか?とお姉さんたちにいわれ、幼児警護(子守)の仕事が決まった。
もちろんそれだけでは終わらず、その後また、受付お姉さんたちからガチ説教がかなり続いたのだった。
特にカヤには厳しい指導が入った。当たり前だけど。
トカゲの時より顔がひきつっている。
カヤも人間か。
……ちょっと安心したのは秘密だ。




