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【本編完結】とある(残念)イケメン観察…しない残念令嬢  作者: 泉ヶ森 密筑


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転んでもただでは起きない~~~御立腹です

数ある作品の中から拙作をお選びくださり、ありがとう(^人^)ございます。

☆評価、ブクマ、いいね 等ありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ


困ったちゃんを描くのが苦手な作者のため、サセクの力不足が露骨。



 翌日午前。審議室。

 審議室とはいっても、実質は会議室の一つだ。アリサが服毒を強要された部屋でもある。その部屋に宰相、魔導師長、警務管長、アリシア伯爵、宰相補佐官(アリシア伯爵の上司)、そしてアリサが一堂に会していた。勿論警護の騎士達も複数配置されている。事件を起こしたような加害者と大物の取り合わせというのもあるが、被害者のアリサの存在が大きい。普通はあり得ないのだ。事件の翌日、しかも同じ部屋。加害者が被害者に拘り、呼ばねば証言はできないという要求。

 サセク補佐官は一見アリサに執着しているようだが、執着は執着でも方向性が反対で、彼はどうやらアリサを敵視しているようだ。


「宰相殿()も何故このような女を庇うのです!? こ奴は社会に還元されねばならぬ薬剤の権利を独占しているのですよ! しかも領地(ハリシア)の名を盾に使って、自分の存在を隠そうとまでして!」


 色々突っ込み処があり過ぎて、皆それぞれ遠い目になっている。


「あー、何処から説明するべきか……ハリー・デヴィド・サセク()宰相補佐官……彼女もアリシア伯爵も何も問題視されるような事はしていない」

「宰相、問題だらけであると主張します! アリシア伯爵から国へ献上されてしかるべしでありましょう」

「本当に何処から突っ込めば良いのか……。宰相閣下、私はこんな男の為に二年近くもの間、領地へ帰る暇も無く働いて来たのですか……」

「いや、すまん、ユナス」


 アリシア伯爵がハリー・デヴィド・サセクの部下に甘んじていた理由。それはこの頭の固い若者(若者とは言っても二十代後半)に仕事の機微を教える為である。また、今の地位をお膳立てしたのは宰相その人。だが、良くも悪くもハリー・デヴィド・サセクという男はお国第一が過ぎて、人を道具としか思っていない。しかも権威主義。その尻拭いが忙しく、アリシア伯爵は二年近くも領地へ帰れていなかったのだ。


「アリシア嬢もわざわざ来てもらったのに嫌な想いをさせてすまなかった。………アリシア嬢?」

「ああ、これは聞いてないな。閣下、少し失礼する。──アリサ。アリサ?」

「! どうなさいましたの、父様?」

「………今、何処に居るのかは理解できているか?」

「はい、父様。わたくしが同席する意味が全く無い確認の場ですわ」

「……(あなが)ち否定できないのが痛いな。ふむ……お前から彼に説明してやりなさい」


 アリシア伯爵が元上官に視線を向けたので父親が何を言いたいか察したようだ。


「………もしかして、昨日の話の続きですの?」

「彼の主張は何一つ変わらない」

「他者の持つ権利の搾取が目的ですのね?」

「何が搾取だ! 浅ましい女め!」

「サセク元補佐官、少し黙りなさい」


 宰相の注意に、権威に弱いサセク元宰相補佐官は渋々口を閉じる。


「彼は薬の利権を国に差し出すべきだという主張だが?」

「単純に脅迫、いえ、恐喝? ですわね。使える薬が一朝一夕に発見される物でない事はお分かりでしょうに。それとも御存じではない?」


 ここでサセク元補佐官が反応して口を開きかけるが、その他の男達に睨まれて辛うじて再び口を閉じる。


「薬だけでなく、殆どの商品や製品には開発者や発明者に一定の権利が認められます。これは法律で定められての権利です。勿論、御存じですわよね?」

「だから献上しろと──」

「薬の開発には人命が懸ってますの。最終的には人体実験になりますので」

「はっ! 拾い食いをしていただけで、人体実験とは大層な物言いだ」

「拾い食いではなく、毒を採取しての試食です。最初の被験者はまずわたくしですので、その辺りは御心配なく。これは領地にとっても家にとっても、最も被害が小さく納められるからです」

「アリサ──」

「ごめんなさい、父様。けれどもここは譲れません。──領主である父と嫡男である兄は論外。母と祖父は知恵袋ですし、お身体も弱っているので選択からは除外。勿論、まだ小さな弟も、言い方は悪いですけれど、スペアという意味でも重要人物。対してわたくしは領主の娘というだけで価値も無し。当時わたくしはまだ子供という事実も鑑み、小さな子供で死なぬならば使い道もあろうと毒の選別に持ってこい。例えば猛毒で有名なトリカブトなどは、他の生薬と合わせれば心臓の薬や、他にも更年期障害の緩和剤になりますのよ。それに毒を省いて残った物は食用として有用」

「なんと卑しい! やはり拾い食いではないか!」

「これだから食うに困った事の無いボンボンは」

「アリサ」

「口が滑りました。父様、申し訳ありません。話を戻します。領地の城はともかく、領民にとっては薬以前に食料は死活問題に繋がります。以前は豊かであった土地を、王都出身の曾祖父が随分と荒らしましたので──」

「王都出身…って!」


 宰相補佐官まで上り詰めただけはある。アリサから見た曾祖父が王家から出た人間であると気付いたのだろう。アリサの言葉は不敬と取られても仕方の無い物言いだ。


「別に何処の誰とは申し上げておりませんわ。とにかくハリシアは荒れに荒れましたので、親を亡くして生きていくだけで精一杯という領民は珍しくありませんの。そのような領民達に、何が食べられるか、何が薬になるのかを示すは重要。それでも過酷な人生で病気に罹ってしまった者達には、医者や薬師と共同開発した薬剤を使用してでも支える。尤もその段階で人体実験にならざるを得ないのですけれど。とにかく、そのためにもお金は幾らあっても足りませんの」

「貧乏領地の貧乏人を助ける余裕があるなら、王都や王都近郊の貧しい者達の為にも薬を差し出すべきだろう」

「貴方個人の功績にする為にですか? わたくしはハリシアの娘。ハリシアの事だけで手一杯です。お国全体の事は、お国の重鎮が何とかしてください。正規の手続きで」

「だから──」

「恐喝による搾取は法に触れましょう。それとも、貧乏領地から搾取せねばならぬ程にこの国は困窮しておられますの?」

「!?」


 このような言い方をされ、さすがに咄嗟には返す言葉が無かったようだ。

 この馬鹿娘、馬鹿だけれど、馬鹿ではないようだ。


「百歩譲って貴方がわたくしの命を軽んじるのは結構」

「父としては大問題だぞアリサ」

「わたくしといたしましては、無辜なる民の命を軽んじられる方が大問題であり、許せる事ではございません」

「民の命に関して反論はない。領主たる者、領民は守る。──さて、それはそれとして、話をこちらに戻してもらおう」


 唐突ともいえるタイミングでアリシア伯爵が割って入った。相手は最終的に宰相。


「今回の一件を受け、わたくしユナス・フォン・アリシア伯爵は部署移動願いを提出させていただく」

「その件に関しては受付けよう。上司が居なくなってしまったのでは、どのみち移動しかあるまい。全員な」


 サセクの下で尻拭いを余儀なくされていた人員は全て移動が確定した。サセクの後釜に座る新たな人間は配さないという事だ。


「それに付けて加えて──」

「何!?」

「二年分、流れに流れた休暇を纏めて頂く!」

「それは──」

「後程計算して申請しますので、お覚悟を召され」

「……半分くらいなら考慮しよう」

「二年分、全部、です。それと──」

「まだあるのか!?」

「前回の娘への暴行事件に続いての間を置かずの今回の事件。国はアリシア及びハリシアに一物を抱いていると判断し、ハリシアは国と一定の距離を置く事に致します」

「待て!」

「明らかに国はアリシア家を、ひいてはハリシアをどのような目で見て居るのか、一度ならず二度迄も突き付けられてしまいましたからな」


 笑顔のおとんは、大層ご立腹でした。








ハリーはヘンリーの愛称だそうです。

そう、元宰相補佐官の名前もあの人の名前をもじってます。

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