幕間のオッサンズ
拙作をお選びくださり、ありがとう(^人^)ございます
今回は華がありませんm(_ _)m
アリサの昔話、その前振りの回
「やれやれ。漸く娘の手料理が食べられると思っておりましたのに」
わたくしことユナス・フォン・アリシアはアリシア伯爵家の現当主にして、ファルゴル、アリサ、ユージィンの父親である。一応は城勤め。宰相の補佐官……の、補佐。要は事務員兼雑用係だ。
今私は宰相補佐官執務室に呼び出されている。
目の前には上司の小わっぱと、何故か更なる上司の宰相。ついでに警務の上役。どういう顔ぶれだ? ……アリサよ、また何かやらかしたのか? 思い付く原因はお前くらいしかないぞ。
「ユナス、久しいな」
「宰相閣下も御健勝のようで」
「いやいや、お前を補佐官補佐になぞ回さなければと後悔しとるよ」
「年寄りのような仰りようですぞ。まだまだ若いのですから年寄り芝居は通用しませんよ、先輩」
「芝居に入る前の前振りでネタを潰すなっ。本当に可愛げの無い後輩だ」
「閣下、そろそろ本題に移ってください」
「急くなサセク。余裕が無さすぎると足元を見られるぞ」
間に入った宰相補佐官に閣下が軽い薫陶を垂れると、小わっぱ上司がムッとした表情で口を噤んだ。
おいおい、これくらいで感情を表に出すなよ。貴殿より年下のウチの子供達の方がまだ使い物になるぞ。
「そうは言うてもサセクが心配するのも分かる。お前相手に無駄な時間は消費したくない。では本題に入ろうか」
私の周囲には一言多い人間が多いと思うのは、私の被害妄想か?
「ユナン、お前の子供達は面白い人間だそうだな」
「質問が大雑把過ぎますな」
「うむ。では娘の方に話を絞るか」
嗚呼、やはりお前かアリサ……!
「お前の娘は貴族令嬢だな?」
「私の娘ですから伯爵令嬢ですな」
「普通の令嬢は料理などせんな」
「私の娘は変わり者ですから料理もします」
「料理、も?」
しまった……! 単純な手に引っ掛けられた! だが顔には出さん! このまま素っ惚けるぞ。
「ええ。料理は娘の趣味です。変わった料理ばかりですが、なかなかのものですぞ」
この答えに嘘は無い。娘の料理は美味いのだ。親の欲目ではないぞ。
「変わった素材で変わった料理を作るのだな?」
「変わった素材?」
「卵でなんぞプルンと揺れる物体? とか?」
「鶏卵なら普通の材料かと?」
プルンというのは何の事だ? プリンか? 城でも作ったしな。
「丸くて三角」
「は?」
「後は、白くて三角」
「白くて三角……完成品がですか?」
「はじめから白くて三角の何かを調理したという報告だぞ」
私は考える。本日私は屋敷からアリサのお道具一式と、息子が領地より持ちよった土産を持って来た。……土産。我が領地はこの国の貿易拠点の一つでもある。上下に海。他はほぼ山と川。険しい土地だ。陸路よりも海路に重きを置いて来た。私の祖父の代には木材で財を得たという話だが、木々を失った山は災害の宝庫となってしまった。そんな宝庫はいらん! 父も私も領地に私財を投じて民を支えた。しかし思うようには領地は回復せず、ジリジリと痩せ細っていくようであった。一言で、はっきりと窮していた。そのようなジリ貧の窮状に一石を投じたのがアリサだ。小さな頃からやたらと活動的で、良く分からない事ばかりやらかしまくった。だが、じわりじわりと領地は回復して行った。アリサは土地を育てようとしていたのだ。そして土地が育つ前に民が飢えや渇き、寒さで命を落とさぬようにと食の研究にも邁進した。キノコとか鮫とか熊とかクラーケンとか……。今となっては美味しくいただける恵みの一つで、ついでに薬も幾らか新種を市場に出している。他の良く分からん素材も発見した。信じられるか? 魚の皮が革として利用できるとか、信じられるか!? 他にも何かあったな……。今では当たり前になりすぎて上手く思い出せない。
「ユナン、聞いとるか?」
「……はっ! 失礼。つらつらと娘の事を考えていたもので」
「随分と面白い娘児だと聞いたぞ」
「概ね無害な子ですよ」
「害になる事もあると?」
「我々家族の心臓には悪い馬鹿娘ですな」
「悪さでも働くか」
「悪さは働きませんが危なっかしい子です。穴に落ちたり巨木に登って落ちたり、魔法の訓練で爆発騒ぎを起こしたり、崖から滑り落ちたり、ワイバーンに乗って空から落ちたり──」
「待て待て待て待て❗ それは息子殿ではなく、娘児の話か!?」
「家の息子達はどちらもそこまで無謀ではありません」
「……………いったいどんな娘児なのだ?」
「馬鹿と天才は紙一重を具現化したような愛娘です。そうですね……優しい、ですが才光る昔話を一つ思い出しました」
「それはアリサ嬢の話か?」
「はい。先輩に見付かってしまった以上、もう隠してはおけないでしょう。ですからお話しして差し上げます。ですが先輩、あの子の自由は奪わんでください。あの子は心のままに生きてこそ才も活きる子です」
娘の昔話は、頭の固い小わっぱ上司に何かを与える契機になれば良いのだが。
お父さんは大物との繋がり有りの仕事人、の筈だった……
お父さんを少し休憩させてあげよう、というお優しい方はポチっとお願い(。-人-。)します




