リベンジ、飯テロ
拙作をお選びくださり、ありがとう(^人^)ございます
再びの飯テロ。献立の組み合わせ、これでどうなんだとも思いつつ、決行
本日の夕食、人参のポタージュ!
いえいえ、別段ポタージュだけではごさいませんわよ。クタクタに、けれども彩り良く茹でた野菜を寒天で固めた寄せ和え。茄子の炒め梅肉和え(〈お花君〉の物は皮を剥いてございます)。領からのお土産、ハンペンの焼き物。卵でキッシュ擬き。何故擬きかと言えば、窯が無いので焼けないからですの。キッシュは蒸しました! 以上!
今回はお道具が粗方揃ったので、調理が楽になりましたわぁ。菜箸、漉し器、蒸籠……ふふふ♡
ああ、お肉やお魚はお出ししません。〈お花君〉の喉にはまだ酷だからですわ。けれど今回はハンペンがお魚の代わりです。原料、お魚ですし。〈お花君〉の分だけ量は少な目にしましたけれど。お一人だけメニューが違うのは、やっぱりお互いに心地悪いと思いますの。
さあ、飯テロ第二弾! 前回は不発でしたので、リベンジです!
結論。飯の進みが皆さん大変宜しゅうございます。勝った!
「今回のポタージュ、前のより味が濃い……」
「そうなのか?」
「お昼のはちょっと薄味でした、かな」
上から〈お花君〉、サイラス様、クラウス様です。サイラス様は突然の来訪でしたけど、きちんとお出ししました。そして、今更第二王子がいらしたとしても、お出ししません。
「私の物には入っていないのに、ラスのスープには何か入っているね」
「え? あ、兄上達の物には入っていませんね」
クルイウィル兄弟ばかりか、(別のテーブルで)一緒に食べている警務のおじ様お兄さん達が一斉にわたくしに視線を向けます。お答えしましょう。
「ラ・ジオラス・クルイウィル様にはまだパンを食すのは無理であろうと判断いたしましたの。けれども薬を盛られてから、まともに食べて居られないのでしょう? そのようにお聞きしましたわ」
わたくしがか申しますと、〈お花君〉はおずおずと頷きました。
「けれどもパン等の炭水化物を摂らないと、満腹感はなかなか得られないと思いますの。仮に得られたとしても、集中力は持続しませんわ」
「それで宿題が捗らないのか!」
「そう言えばお前、夏休みの宿題はどうした?」
「もう終わらせましたわよ。毎年のように、最後の最後で宿題に追われている兄様を見て育ちましたので」
「お前は一言もふた言も多いよ」
兄様からの確認に答えましたらば、頭を平手でぱふんと叩かれてしまいました。
「もう! 食事中ですのに!」
「で? 結局何を入れたんだ?」
「具無しワンタン? 平たい水とん? 短いうどん? そんなような物ですわ」
「要は平たくて薄いパスタか」
「ああ、ラザニアを細かく切った物と言い換える事もできますわね」
結局それは何なんだ、と他のテーブル席から質問が飛んで来ました。兄が小麦粉を水で捏ねた物だと答えています。わたくしはチョンと兄様の袖を摘まんで引っ張りました。
「兄様。パスタとかラザニアって、一般的ではありませんの?」
水とんとかうどんは通じないだろうな、とは分かります。でもパスタの類いはあると思っていましたの。だってパンの種類は色々ありますもの。
「あのな、アリサ。麺という食品を編み出したのはお前だぞ」
「……他の国から伝わったとかはございませんの?」
「少なくとも私は知らない。とにかくこの国で麺と言えば、お前だ」
「……パスタという単語は、麺を意味してますのよ」
「現実逃避しても不味い形で一つ暴露だからな」
「……………不味いですわ」
「ついでに言っとくとな、さっきのタンスイカブツっての、アリサ用語で意味通じてないと思うぞ」
「パンも小麦粉も大麦も何だったらエールもございますのに、どうして炭水化物が通じませんの!」
「タンスイカブツってのは、麦の事なのか?」
「ええと……ざっくり乱暴な表現に変換するなら、澱粉の事ですわ」
「ならデンプンで良いだろ。それともう一つ──」
「まだございますの!?」
「デンプンって何だ?」
「………ざっくり言うと、切ったジャガ芋を水に晒すと、水の底に白い粉が溜まりますでしょう。その底に溜まった白い粉の方です」
「知らん。ジャガ芋は食べる物で切る物じゃない」
「穀物や一部の根物野菜に豊富に含まれている成分ですわ」
「成分。……薬にはなるのか?」
「これと言った成分が無いので、逆の意味で様々な薬に多様できますわ」
「言ってる意味が分からないな」
「お薬には薬効がございますでしょう」
「なければ薬と呼んではいけないな」
「お薬の調合においては、その薬効故に薬同士の相性がございます。そうすると嵩が増えないのですわ」
「飲む量が少ないって話か?」
私はコクリと頷きます。
「飲む量は少ない方が楽だけどなぁ」
「そうすると効き過ぎますの。〈お花君〉が処方されたお薬は、おそらく煎じ薬。煎じ薬はお茶と変わりませんから、効き目は薄くなりますの」
「待て待て待て。お前、煎じ薬にして経口させろって言わなかったか?」
「憶えてませんけれど、経口薬だとは言ったと思います」
「こちらの解釈違いだったか……。──すまない、〈お花君〉。今痺れが残っているのは、私のせいだ」
「いえ、処方箋をいただけただけでありがたい事ですから気になさらないでください」
兄弟の代表者としてでしょう。サイラス様がお優しいお応えをくださいました。お顔とお声から、社交辞令ではないと信じたいです。
「ええと……お薬の事はお医者様か薬師さんにお任せするのが一番ですわ。生兵法は怪我の元でしてよ」
「その生兵法を伝えたお前が言うな」
「お医者様方が居らしたのでしょう? こちらの言葉を鵜呑みにして、確認もせず処方したとは思えませんわ」
「………」
「話を戻しましてよ。魔女の隠し茸を例に上げるなら、煎じた物では効き目が薄過ぎたのですわね。その場合は一度、粉に挽いて経口しますの。けれどこれだと分量がとても難しくなるのだと思いますわ。だからこそお医者様は煎じ薬として処方なされたのですわね。話を再び戻して、粉薬として飲む場合、それその物を直接経口させるには難しいという場合に澱粉が役立つのです。他の薬と合わせても害の無い物ですので、薬効も調節が易しくなるのですわ」
「アリサ嬢。随分と薬学に詳しいのですね」
警務のオッサンの指摘に、わたくし固まります。
「……兄様、兄様。今のって、常識の範疇ではございませんの?」
「父上が今この場に居られたら、きっと叱られてるぞ。そもそも分かる人間が居ないから、お前は滔々と説明するに至ったんだろう」
「だって相手が兄様だったから……。兄様は分かっていてもいなくても、説明させますでしょう」
「あー……確かに」
「どうせ今回の事などすぐに父様にバレますわ。兄様、一緒に怒られてくださいまし」
「まあ、お前を止めなかったのは私の責任だからなぁ。分かった」
「兄様ありがとう!」
おまけ
「〈お花君〉、症状が定着する前に、神殿で解毒していただいた方が宜しいですわ。神官の祈りは、きちんと毒にも効きます」
「経験者は語る。何度も解毒してもらって来たもんな、アリサは」
「無視ですわ。──ついでに炎症も治してもらうと宜しいですわ。炎症が治れば、振る舞える料理の幅が広がりますので」
「〈お花君〉、今すぐ治して来なさい。アリサの兄たる私の為に」
「炎症だけでしたら、本日のポタージュに使用した人参は粘膜の回復に良いのですわよ」
「食べ物は日々の薬、がお前の哲学だったよな」
「はい。医食同源、ですわ」
とうとう兄様まで〈お花君〉呼びが定着。
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