レッツ! キッチン!
拙作をお選びくださりありがとう(^人^)ございます。
本日より暫く飯テロ回を開催しますm(_ _)m
アリサのその後。
ソファで朝寝(二度寝)して目覚めて午前のお茶を飲んで、そのまま食べ続けてお昼に至り、現在魔導師棟食堂兼厨房。因みに現在の彼女の髪型は、騎士程ではないにしても男並みに短いショートカット(三角巾付き)。なかなか似合っているが、正直ドレスには合わない。
話を戻して、厨房とは言ってもほぼ個人使用の台所。強いて言うなら、立派な台所。対して食堂の方はそこそこ広いし、座席数も多い。
現在アリサは兄と共に台所に立ち、大空豆のポタージュを作っていた。
「思えば飯テロは基本。ですのにわたくしはまだテロってませんでしたわ」
兄は一応訊いてみた。
「メシテロって何だ?」
「美味しい御飯を召し上がれ、的な」
「答えになってなくないか? それにお前の絶品食、もはや我が家の名物だからな」
「普通の御令嬢は料理など致しませんものね」
「まあ確かに、その辺の御令嬢じゃ、料理人も吃驚な献立は出てこないだろうな」
今二人はそれぞれジャガイモと大空豆を潰している。
「擂り鉢が欲しいですわぁ。馬の尾の毛で編んだ濾し器も欲しいですわぁ」
「ここには無い!」
「ええ。あれば昨日のプリンももっと滑らかに美味しくできましたのに」
「それは禁句だ。そしてプリンは今朝の話だ。更に、兄は香り付けも欲しかった」
「バニラニか、我等が領の擬きバニラニ……」
「それこそ禁句だ!」
「言い出しっぺ……いえ、それよりここ、何もありませんのね」
実際、この台所には殆どまともな物が無かった。よって今野菜を潰しているのは二人とも木ベラである。
「あの、私に手伝える事があるなら手伝いた──」
「手足の感覚が戻っていないのだろう? 君は席に着いていたまえ」
「そうだぞラス。そちらの兄君の仰る通り、我々は座っていれば良いのだ」
手伝いを申し出たジオラスを、アリサの兄ファルゴルとラスの次兄クラウスで抑えにかかる。勿論、兄達の思惑は全く噛み合っていないのだが。
「でも、俺の──私の為にアリサが作ってくれ──」
「別に君の為などではない」
「あら、今回は〈お花君〉を考えての一品でしてよ、兄様」
「!」✕三
兄は「嘘だろ」と驚愕、ラスは歓喜、クラウスは「マジ?」という戸惑いの驚愕。アリスの言葉に三者三様での驚き。
だが、何となく斜め上にズレて行くのがアリサである。
「〈お花君〉は麻痺のような感覚が残っていて喉が痛いのでしょう? 痛みはおそらく炎症ですわ。そこに軽い麻痺が加わる事で、上手く物を飲み込めないのですわね。上手く飲み込めないのに傷みはある。この麻痺は運動を司る神経には作用しても、痛覚はそのままなのでしょうね。この事、お城の厨房は御存じではないのかしら?」
「いえ、伝えてあります。だから弟の食事は流動食としてスープを出してもらってます」
「スープや飲み物はとろみがなくては苦痛ですわよ」
「え?」
「ポタージュはその物にとろみがございますでしょう。ですから飲み込み易いと思いましてよ」
実は、現在のこの国では〈ポタージュ〉なる料理は無い。よってクラウスは反応に困っているのだが、アリサには分からない。
「〈お花君〉用に塩味もひかえますわ。塩は炎症には毒ですもの。ミルクやチーズで味を調えますから、食べられる物にはなると思いましてよ。同じ塩味でも、チーズでの味付けなら柔らかになる筈ですし、タンパク質も多少は補えますわ」
タンパク質なる言葉の意味も分からない。だがアリサ兄がボソリと呟いた一言で男達は疑問を呑み込んだ。
「タンパク質は、アリサ用語だ」
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本日の昼食。
胡桃パンに苦労して作ったポタージュスープ。レモン汁の手作りドレッシング和えサラダ。鶏胸の香辛料炒め。
〈お花君〉にはサラダの代わりに、ペースト一歩手前まで包丁で叩き同じドレッシングで和えた菜っ葉と、皮を剥いて同じく叩いて和えたトマト。ドレッシングは酸味と塩味が不思議とマイルドに仕上げてある。パンは無い。
いざ実食となった時、父親アリシア伯爵がやって来た。
何故か第二王子と共に……。
アリサは急ぎ父親の前にもメニューを並べた。
王子の前にはお茶すら無かった。




