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【本編完結】とある(残念)イケメン観察…しない残念令嬢  作者: 泉ヶ森 密筑


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アリサは昏倒中

拙作をお選びくださりありがとう(^人^)ございます


〈お花君〉の私的な場合の一人称は「俺」です。


パパは後半、最終的に混迷へと導き成功?





 解毒の問題で、俺はまだ家に帰れないらしい。

 暫く後観察をしたいのと、単純に解毒しきれていないらしい事情の為だという。それに誘拐黒幕の影響が何処まで及んでいるのかもはっきりしないので、安全を考慮して城に滞在していろとのお達しだ。

 ……これ、本当のところ実験動物なんじゃないのか?


 ただの解毒なら神殿で解毒してもらえば済むではないか。そう思う一方で、ここに居れば彼女に──アリサに会えるかもしれないとも思う。実際にはまだ(まみ)えていないが……。

 俺の解毒を知識という形で成してくれたのも、誘拐事件で大きな役割を果たし助けてくれたのも、その前の学園での事も、助けてくれたのはアリサ。俺の恩人。

 俺が女性と呼べる生き物で平気なのは、母とダリアと──アリサだけ。いや、アリサは違う意味で平気ではない。側に居ると居たたまれない恥ずかしさが込み上げてくる。でもいざ触れてしまうと離したくない。ずっと一緒に居たい、居られるであろう、唯一の女性。あの纏わり付く嫌な視線を全く向けてこない稀なる乙女。


──欲しい


 はっとした。慌てて自分の中に芽生えた言葉を打ち消す。

 散々、自分がされてきて嫌で堪らない感情を向けるべきではない。抱くべきではない。でも、彼女の側に居たい……。何なのだろうか、この感情は?



 医務室に運んでもらった夏休みの宿題を広げたままぼんやり(そうとは思いもせず)色ボケしていると、(にわか)に向かいの部屋が騒がしくなった。既に世界はオレンジ色。夕方だ。彼女は今日も観測に出ていたのだろう。戻って来たのなら、今日こそ挨拶とお礼を伝えよう。

 そう呑気に考えた俺は、出入口のドアを開けて廊下を覗いた。すると警務隊とかいう数人が険しい顔をしている。「医者の手配」がどうとか……。そうこうする内に看護師らしい婦人達が向かいの部屋に集まり出す。どういう事だ? 自意識過剰であるのを承知で感じる違和感が、婦人達がこちらに見向きもしない事。バタバタと更に人が集まり出す。警務隊と医者らしき人物と、アリサ。アリサはボロボロの状態で若い男(実は兄)に抱えられて運ばれてきた。


 え?

 アリサ!?


「ラス。邪魔になってはいけない。部屋に戻ろう」

「サイラス兄上!?」


 俺は長兄に部屋へ押し込まれた後、何かがあったらしいとだけ聞かされた。

 ()()があった事なんて、一目で分かるじゃないか! 何があったのかを知りたいんだ!!




〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉




 警務隊棟の中にある会議室内。

 アリシア伯爵は今、警務隊次官と数人の警務の人間、そして何故か第二王子(及び護衛騎士)を前に席に着いていた。

 伯爵は鼻で笑って見せる。


「娘への謝罪も無しに何を言い出すかと思えば、娘への濡れ衣ですか。冤罪です」


 アリシア伯爵、どうにか激昂するのを抑えてはいるが、目が吊り上がるのはどうにもなりそうにない。


「アリシア伯爵は冤罪と言い切られますが、御令嬢におかしな点は一切無かったと?」

「ありますよ」

「! なら!」

「娘は貴族令嬢としては普通ではありませんから、貴方方(あなたがた)からしたら元よりおかしな娘でしょう。そうですね……現場で娘に接した警務の人間なら声を揃えて呆れ恐れるでしょうか。──ああ、君はあの場に居たかな? 娘に相対して感じた事を正直に言ってくれたまえ。なに、遠慮はいらん」


 伯爵に話を振られた警務官は僅かに口籠った後、言いずらそうに口を開いた。


(はばか)りながら、〈観測〉への執念が異常であると感じました」

「男狂いしているように見えたかな?」

「いいえ」

「あの気味の悪い子爵令嬢に心酔しているような節は?」

「伯爵、それは貴方が──」

「いいえ」

「証言をありがとう。──娘はあの女疫病神も、その母親の事も酷く嫌っています。そして我が家はガーストン家その物を嫌悪の対象として見ております」

「それはアリシア嬢五歳の時のお披露目会の一件が起因かな?」


 確認の質問は第二王子からのものであった。


「……殿下のお耳にまで届いておりましたか」

偶々(たまたま)聞く機会があっただけだよ」


 警務の人間達は揃って虚を衝かれたような気配を見せた。しかし警務次官だけは何かに思い当たったらしい。だが、口は閉じられたままだ。


「そう言えばアリシア嬢は以前会った時も私との時間より観測を優先していたな」

「殿下、娘がとんだ失礼を働きました。親としてお詫び申し上げます」

「いいよいいよ。こっちの気まぐれに付き合わせるのも可哀想だったからね。でもこちらは彼女の事が殆ど分からないんだ。アリシア嬢の事をもう少し話してもらえるかな、伯爵?」

「どのように表現すべきか考え物の娘、としか……」

「先程そこの彼から〈観測〉に対する執念が凄いっていうのは、具体的にはどんな感じなの?」

「決まった時間に決まった対象を観察して記録を録るのです。今回程の負傷なら、他者ならば数日は寝込みもしましょう。だが十中八九、娘は明朝起き出し出かけます」

「……ちょっと待って。え? 今回かなり派手に遣られたって聞いたし、彼女が残した音声でも相当酷いよ! ああそうだ! あの音声記録、どうなってるのかも聞きたいんだった」

「音声記録用具に関しては、娘の手作りなので一切分かりません。怪我と言っても医務官や神官が治療してくださっていると聞きますし、明日の朝までには意識が戻るでしょう。意識が戻れば娘は動きます。頑として意思を貫きます。そういう娘です」

「いや…いやいやいや、物理的にも精神的にも限度はあってだね」

「娘は人並みには臆病なので、確かに精神的には傷が残るやもしれません。ですが今回は執念のどさくさに紛れて警務隊を足に使ってるくらいでしたから、有耶無耶の内に克服している可能性も無視できません。以前……六年は経ちましたか、領民の猟師と熊を狩って来た事もある娘ですから」

「……………クマ? あの四本足の? 肉食の熊?」

「娘曰く、熊は雑食だそうです」

「………熊って雑食なんだね。あれ? 問答無用で危なくないかい?」

「猟師を共に付けましたから」

「あ、そうだよね。熊を狩るのは猟師の仕事だよね」

「猟師曰く、娘は即戦力だったそうです」

「……………ええと……益々アリシア嬢の事が分からなくなったよ」







 

漸く自分の気持ちに気付き始めた〈お花君〉の明日や如何に?


 そしてお父さんは裏舞台で奮闘してます。かなり御立腹です。


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