斜めに落ちた
数ある作品の中から拙作をお選びくださり、ありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ
遅くなりましたが、
明けましておめでとうございますヽ( ・∀・)ノ
今回で最終回ですm(_ _)m
アリサ・テッド・アリシア。
彼女の斜め上(いや、下か?)反応は、身内では割と有名らしい。有り体に云うなら、ハリシア領内ではもはや常識ですらあるとかないとか。
さて、ラ・ジオラス・クルイウィルは無事に学園を卒業した後、取り敢えず騎士の道へ進んでいた。
取り敢えずというのは、初めから文官への転職を想定しているからである。
何も文官試験に落ちた訳ではない。騎士の試験と合わせて受けて、見事合格。それでも騎士になったのは、単純に騎士が肉体勝負の職種であるのを考慮しての事である。ジオラス自身、もしくはジオラスと同期の誰かの昇進、仮にそれが班長程度でも階級を上げたなら剣を置くと宣言しての入隊である。
そう、入隊できてしまったのである。
卒業までハリシア勢に鍛え抜かれた成果とも言えるだろう。
ハリシアの現場は過酷なので、自ずと現場の人間は脳筋気味になりがちである。が、問題なのは経験則により育つので、以外に馬鹿ではない点だ。それぞれが部分的に知恵袋だったり訳の分からない技術が神業だったり……曲者。その曲者達が子守程度だがジオラスの面倒を見たのだ。ほんの三年未満だが。
この三年未満は、ハリシアの風を知らない者と比べて雲泥の差であったりする。入隊試験に際してこの差が、本人の意図せずハッキリ現れてしまった結果でもある。
このジオラス入隊のありましに「はて?」と思った者も居るであろう。実際に試験に関わった者達は揃って首を傾げたものだ。何に? ハリシア出身者の時はどうであったのだ、との疑問にだ。現にハリシア出身の騎士達は冷遇されていたから。ジオラス学生時代に起こった「シメサツシ大精霊御乱心事件」で、誤魔化しようのない実力も彼等は示していたから。で、調べた酔狂な者曰く、現時点では位その物が失われた“元帥”なる人の影響らしい、と。
彼の人の失脚後は色々あったのだ。大掃除とか、鉈が振るわれたりとか、膿出しとか……地味に、しかし着実に。これまた意図せず何処ぞの娘がグリフォンで乗り付け遊びながら暴れて行ったりとかした結果、王都の騎士達のポンコツさ加減が露呈したり何んだり。
つまりジオラスは鳴り物入りでの入隊と言えるだろう。
ハリシア旋風が酷い。
さてはてそのジオラス君および近しい同期は有望株として注目されてしまった。何処ぞのお転婆に振り回されている内に、同期も他年代より動いていた結果だ。グリフォンのおもりをさせられたりワイバーンの遊び相手をさせられたり、まあなかなか体験できないハリシア風の当たり前を撫でるとこうなる、の見本市年代。
問題なのは、風聞が独り歩きしがちであるという事。
実情と、言葉による──しかも人伝で変化していく噂では違うというのに……。
若手の騎士達は往々にしてご婦人令嬢方の目の保養として人気があるものだが……ジオラスと同期は、他年代に同情されるレベルで悪目立ちしていた。
結果として、配属部署を問わずにお呼ばれが殺到する訳だが……ジオラスでも逃げ切れない『婦人会』から“午後のお茶会”に誘われてしまった。高位貴族は勿論、王家まで名を連ねる『婦人会』なので、余程の理由がなければ逃げられない。
で、“やらかし”が発生する。
やらかしたのは中級貴族に嫁いだ元上級貴族のご夫人。察している方も居られるかもしれないが、このご夫人、趣味の悪い悪戯を好む女性だったりする。
では何をしたのか?
一服盛ったのだ。………媚薬を。
どうしてそんな物をと動機を訊けば、端的に言えば不貞相手を強制的に大量に作る下心だという。それを特別悪い事だと思っていない。当然ながら他のご婦人令嬢を敵に回し、離婚の手続きもあっさり受理され、実家からは出戻りを拒否されるというコースを辿る訳だが、巻き込まれた新まい騎士達は物理で大変な事態になっているわけだ。やらかしご夫人には恨み以外は興味も無い。幸い? 弱めの薬だったので解毒魔法を持つ、大分ご年配のご夫人と使用人のお世話になって事なきを得たのだが、まあそれなりに女性に対する警戒心が捻曲がったり。
ジオラス同期は色々拗れて大変な目に遭う道筋ができてしまったのだが、当のジオラスは、実は通常運転のままであったりする。
理由。薬が効かなかったから。
よく一服盛られていたので、特にアリサと婚約を結んだ前後が嫉妬に狂った令嬢達にアリサが関与しない場で色々盛られたので、身体が反応しなくなってしまったのだ。
さて、前振りが長くなったが、上記の騒動はアリシア家にも伝わった。
だが婚約者であるアリサは領地に滞在中であった為、伝えなければおそらく伝わらない。相談の結果──
「お前達に子供を作ってもらわないと、たぶん跡継ぎ問題が発生する」
「何言い出してんだ兄上!?」
「…ジーン。お前、相手見付ける気はあるのか?」
「跡継ぎ問題は兄上の領分で、姉ーねや僕は関係無い」
「私はこのままだと相手が見付かりそうにない」
「いや、まだ若いんだからそこは……」
「子育てする時間も見積もると、そろそろ諦めたい」
「いや! いくらなんでも諦めるの早すぎない!?」
「アリサが産むのが一番手っ取り早いし、血筋の心配もいらないだろ」
「托卵される心配は無いけど、姉ーねに何かあったらどうするつもりだよ!?」
「誰が産んでも命の危険はあるし、お前そろそろ姉離れしろ」
「姉離れとか、今そんな話ししてないだろ!」
ジオラスそっちのけで兄弟喧嘩が勃発している間に、彼等の母親ディアナがアリサに魔法で連絡を入れてしまい、ジオラスの長期療養が決まった。
もれなくアリシア家長子ファルゴルによって騎獣ドラゴン昴にて運搬される。〈帰らずの森〉にて一人暮らしをしているアリサの元へと。
ジオラスは荷物のように運ばれている間、非常に悩んだ。
自分は不能ではない。たぶん。
だが身体が反応しなかった事実は確かだ。おそらくだが薬物に対する慣れだけではないだろう。
過去、アリサに対する過ち。義母(予定)ディアナの提案で、意識の無いアリサと繋がった一件。ディアナ共々、墓場まで秘する案件だ。
未だ罪悪感が薄れない。
もしかしたら、本当に不能に陥っているのかも?
行為に対する忌避感や嫌悪等、抵抗感は覚えない。相手がアリサなら。だが、戸惑いはある。本当に自分が手を出して良いのかと。罪悪感がムクムクと頭をもたげてくるのだ。
だが! だが、である。アリサが手ずから手当てしてくれるかも? いや、手当てしてくれるのだ! 何を? って自分の息子を! え! 良いのか!? いやいや駄目だろう! でも婚約者なんだし! 婚約者であってまだ夫婦ではない!
……等々、ウダウダぐるぐる脳内迷子で迷走している間にサクっと到着。ファルゴルはアリサに軽く挨拶をして帰って行った。ジオラスを置き去りにして。
──いざ、男女としての第一歩を!
迷いは何処へ行ったよ状態で期待値が鰻上りジオラスだったが、彼は忘れていたのだ。アリサは斜めっていると。
「事情はお聞きしました。手を繋ぐ事からなさいますか?」
ジオラスは「え?」と固まる。
「あ、いきなり触れるのは抵抗ありますよね? では近くに居られるよう慣らす事から始めましょうか」
ジオラスが後に、手も繋げなかったと報告するのは近未来。
ジオラスも、アリサの家族も、彼女は斜め上か下にズレていると失念していた自分を思い出すのであった。
一応の最終回になります。
ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございましたm(_ _)m
あとは気が向いた時にボチボチ追加して行こうと思います。




