34話
そして俺達は塔を登り切り、第二層に辿り着いた。
「暗い場所だなあ」
と涼が呟く。
第一層に入った時と同様に原っぱに居るわけだが、全体的に色が暗い。葉っぱから遠くに見える木々、そして空までも。
夕方だからでは無いか?と思ったが、その考えを否定するのが空に見える太陽の存在だ。
ただ、肉眼で見ても支障が無いくらいにしか光っていない。というよりは雲ではない何かに光を遮られているようだ。
「どこだここは?俺たちはただ空中を登っただけだよな?」
次の層という概念を知らないおっさんは、再び困惑していた。
「ここはあんたが住んでいた世界とは全く別の世界だ」
「別の世界!?でもまあ言われてみれば確かにそうだよな。こんな場所聞いたことがねえ」
どうやら先程から驚きの連続だったので若干慣れてしまったようだ。冷静になるまでがはやすぎる。見ていて面白かったんだけどな。
「どうする?俺たちはあっちに向かって進んでいく予定なんだが。戻りたいならさっき来た通りに戻れば帰れるぞ」
流石にこれ以上付き合わせるのは迷惑かもしれないしな。残り何層残っているのかも分からないし、自分の世界での生活もあるからな。
「お前らあの塔に行くのか。正直冒険者として興味はあるんだが、大切な家族を置いてきているからな。戻ることにするわ」
どうやら、このダンジョンの住人でも世界を跨ぐことで塔を認識することが出来るらしい。
「そうか、ありがとな」
「ああ、こっちこそ大量の経験値を貰って助かった。久々にこんなにレベルアップしたわ。またどこかで会えると良いな!」
「ありがとうございました」
「じゃあね~」
そしておっさんはさっき登ってきた階段を降りていった。
「今回は塔までかなり近いみたいだし、さくっと登っちゃおうか」
「一応その前にポイント振っておこ」
「そうだな」
「めっちゃ上がってるじゃん!」
そしてステータスを開いた涼が驚いて叫んだ。
「言うほど経験値貰える敵だったか?……ってマジか」
せいぜい上がっても10レベルとかその位だと思っていたのだが、一気にレベルが跳ね上がっており、753レベルと記載されていた。
元のレベルが200とかだったはずなのでステータスは約3.5倍。最早別人レベルの成長である。
「あれレベル2000相当の敵だったのかもね。ギブソンさんが言うにはあの世界の住人によるどんな攻撃も通らないくらいに硬いみたいだし」
「確かに死体になってスキルとか魔法によるバフを全て失った状態で私が全力で力を込めてやっと刃が通る位の硬さだったもんね。AIM君の討伐シーンを見ずに素材だけ渡されたらレベル2000相当って言われても納得しそう」
「なるほどな。なら何度か周回してレベルを上げたいが」
「このダンジョンで倒した固有のモンスターはリポップしないんだよね。残念ながら。あの個体は世界に一体だろうし、戦うことは出来ないよ」
「それは残念だ」
「その分この世界の敵を倒してレベルアップしよう。皆一気に強くなったし、そこらの敵は目じゃないよ!」
「そうだな」
それから俺たちは塔を目指しつつ経験値、もといモンスターを探して歩き始めた。
「----!」
「----?」
「----!」
すると角と翼が生えた人型の生命体。一般的に魔人と呼ばれる生命体だ。
この層の言語ガチャは失敗したらしく、何を言っているのかさっぱり分からない。
「来るよ!私の後ろに下がって!」
ただ一人が槍、もう一人が杖を構えていることから警戒されていることは分かる。
対話による交渉は不可能だと判断し、後衛担当である俺とリンネは涼の後ろについた。
「僕と涼さんが正面に向かって攻撃するから、AIMは横か背中に当たるように攻撃して!」
「了解した」
「オッケー。でもエイム悪すぎて私に当たらないようにね!」
「もう大丈夫だよ!」
「おっと。攻撃力かなり高いね」
涼が魔人の投げた槍をブーメランで弾き飛ばし、戦闘が始まった。
AIMと涼は俺たちに攻撃が来ないように武器を重点的に狙いつつ、弱点に向けて本命の攻撃を放っていた。
しかしそこは流石魔人といった所で、とてつもない反射速度でブーメランや銃弾を弾き落としていた。
それを確認した俺は左右に10個ずつブーメランを放った。
「ん?どういうことだ?」
いつも通り完璧なコントロールで投げたつもりだったのだが、ブーメランが妙にガタガタと傾いている。
一応狙い通りには進んでいるので大丈夫だとは思うが、命中まで威力がちゃんと残るだろうか。
と思ったがそれは杞憂だったらしく、魔人二人は音を立てることすら無く死んだ。
どうやら先程のボスを倒したことでレベルが異常に上がったせいで、想像以上に早い段階で命中判定が生まれていたせいのようだ。
「そこまで進化しちゃったんだ。当たるまで10m位距離あった筈なのに倒しちゃったよ」
ブーメランの軌道をしっかり見ていたリンネは半ば呆れた様子だった。
「もしかして私達AIM君に攻撃が当たらないように守っているだけで勝てたりしない?」
「真面目にそれはあるかもしれない。僕たちも中々に強いはずなんだけどね」
「やっぱり全てにおいてエイムが最重要ってことだな」
「次の階層が核含めた全身がめちゃくちゃ硬い金属だけで構成されたゴーレムとかがうじゃうじゃ居たりしないかな」
「多分それ私達も倒せないよ」
「何を言っているんだ。俺ならそんな敵でも弱点を打ち抜いて一撃で倒すぞ」
「「流石に無理だよ」」
「そうか?」
どれだけ硬くてもエイム力さえあれば倒せるだろ。
「まあそれは良いや。涼さん、この倒れた魔人って素材になる?」
「微妙かなあ。人と同じだから毛が無いから毛皮にならないし、骨も武器に出来るほどは大きくないし、肉は食べたくないから。どこも使えないよ」
「そりゃあそうか。じゃあ解体せずに丸ごとマジックバッグに突っ込むだけで良さそうだね。体の状態は内臓以外完璧だしギルドに持っていこう。人道的にどうかって話は置いといて」
そう言ってリンネは躊躇いなく死体をバッグに突っ込んだ。
「お前ら忌避感ってのは無いのかよ……」
いくらダンジョンに出てきた敵とはいえ、何かしらの言語を使用する人型の生命体だぞ。もう少し躊躇いを持ってくれ。
「だって私たちを攻撃してこようとした相手だし、気にした方が負けだよ」
「そうなのか……?」
涼は当然のようにそう語るが、正直納得いかない。
「とりあえず塔に向かおうよ!」
「まあ良いか……」
気を取り直して俺たちは塔に向かって再び進み始めた。




