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フィルム36枚じゃ、君を撮り足りない。 〜きみに感光(こが)れる、写真部の初恋〜  作者: ゆあ


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プロローグ

 大好きなじいちゃんから古いカメラをもらった。

 受験が終わって、第一希望の高校に受かった数日後だった。

「銀二も高校生になるんじゃな……せっかくじゃし、このカメラをやる。銀二の見た景色をこのカメラに残してみんか?」

 ニコニコと笑って言うじいちゃんの顔は、本当に嬉しそうだった。

 オレの大好きなじいちゃん。

 小さい頃は、じいちゃんの家に行くのがいつも楽しみだった。

 オレに色んな遊びを教えてくれた。

 竹を使って作った水でっぽうや竹とんぼ、田んぼにいたカエルを捕まえたり、一緒に雪だるまを作ったり……

 楽しいことをいっぱい教えてくれた。

 そんな楽しかったときの写真が、今でもじいちゃんの家にはたくさん飾られている。


 だから、高校の入学祝だと言って、じいちゃんが長年大切にしてきたカメラのひとつをオレにくれたんだと思う。

 じいちゃんは昔から写真を撮るのが趣味だから、そのカメラがじいちゃんにとって大切なものだってことくらいわかる。


 でも——

「今どき、フィルムカメラ?」

 家に帰ってきて開けた箱の中を見て、オレは思わずそう呟いてしまった。

 シルバーと黒を基調にした少しごつい一眼レフカメラだった。

 丸みを帯びたボディは思っていたほど古臭くはなく、どっしりとしたレンズが前へ突き出している。

 スマホしか知らないオレには、いかにも【カメラ】って感じがするものだった。

【MINOLTA】と刻まれたロゴが、どこか昔の機械らしい落ち着いた雰囲気をまとっていた。


「これ、撮った画像はどうやって見んの?」

 オレはカメラを手に取り、色んな角度から眺めてみる。

 

 スマホや母さんが持っているデジカメだったら、プレビュー画面ですぐ確認することができるのに……

 でも、このカメラにはそんな画面すら見当たらない。

 というか、そもそもフィルムがなきゃ写真も撮れないのか……

 ってか、フィルムなんてどこで買うんだ?


 オレが写真を撮るといえばスマホだけだ。

 だから、こんなのをもらっても正直ちょっと困る。

 友だちと遊びに行くのも、美味しそうな料理も、自撮り写真だってスマホがあればできてしまう。

 失敗したって、消して撮り直せば何度だってやり直せる。

 そんな時代に、わざわざフィルムを入れて、一枚ずつ大事に撮るカメラなんて、正直よくわからなかった。

 同じカメラなら、最新のデジタルカメラとかGoProを買ってくれる方が嬉しいんだけどなぁ……


 そんな罰当たりなことまで考えてしまって、ちょっとだけ胸がチクリと痛んだ。

 でも、だからといって捨てる気にはなれなかった。


 このカメラは、大好きなじいちゃんが大切にしていたものだ。

 しかも、オレの高校の入学祝として選んでくれたものでもある。

 オレには価値なんて全然わかんないけど、じいちゃんにとっては特別な一台なんだと思う。


「……ま、そのうち使うこともあるかもだし。それに、置いといたらプレミアとか付いて値上がりするかもしれないし」

 自分でも適当な言い訳だと思いながらも、オレはカメラを箱に戻し、そのまま勉強机の引き出しの奥へしまい込んだ。


 このときのオレは、まだ知らない。

 あの古びたフィルムカメラが、オレの高校生活をこんなに変えてしまうなんて……

 たくさんの思い出と、あの日、あの人と出会うきっかけになるなんて……

 そんなこと、思ってもみなかったんだ。

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