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メルレールの英雄-クオン編-前編  作者: 朱漓 翼
2部 二刀流の魔剣士編
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グレンとシュレ2

 見上げた先にあるのは息子の絵。妻として娶ったリリア・ソレニムスと描かれたものだ。


「ここへ住み着いたのは、不死となったことで居場所に困ったというのが大きいな。下手に動き回れる状態じゃなかったし」


 当時の状態で考えればそうだろうと思う。英雄王は肖像画のようなものを残していないが、それでも知っている者はいる。


 特に、ハーフエルフ達の間では知らない者の方が少ないほどだ。


「いてもいいが、記録が残るとあまりよくないと思ってな」


 シオンの容姿も目立てば、この四人組では完全にバルスデの関係者だとバレてしまう。


 それが長きに渡ってあちらこちらで記録として残った場合、さすがにおかしいと思う者がでてくる。


 そういった意味でも、定住先をセレンにしたのはよかったと思っていた。


「しかし、それってつまり」


「そうだ。ここにいる奴らは俺らのことを正確に知っている」


 シオンが太陽神と呼ばれることも、グレンが英雄王であることも知っている。むしろ隠してはいないと言う。


 それだけではないとグレンは言った。


 この地は外との繋がりがあり、この世界で一番神の力が強い場所でもある。その関係で、セレンで暮らす者達は力の影響を受けているのだ。


「影響……やはり受けるものなんだな」


 なにもないとは思っていなかった。この地が特殊だとわかってしまえば、ずっと暮らす上でなんらかの影響はあるだろうと。


 それぐらいは想像がつく。


「あぁ。今ここにいるのは、ほとんどがハーフエルフやセイレーンだ。だった、と言うのが正確かもしれない」


 今の現状、セレンで暮らす者達を種族でどう言えばいいのかわからない。それがグレンの認識だと言う。


 この地で暮らす者達は、この地で相手を見つけて子を産む。それを繰り返した結果、エルフの特徴もあればセイレーンの特徴もある状態だった。


 これはすでに、新しい種となってしまうのではないだろうか。


 そう思ってはいるが、セレンで暮らしている分には問題ないかとも思っていた。四人以外はみんな同じなのだから。


 他にも寿命などの違いが出ていると聞けば、シュレはなんとなくそうではないかと、思っていただけに納得する。


「エルフよりも長いかもしれないな。いつになっても同じ面子でかわらないぐらいだ」


 笑いながら言うから、シュレも笑うしかない。


「案外楽しいものだぞ、ここでの生活もな」


「いや、俺はしないぞ」


 誘ってるのかと視線だけで問いかければ、グレンは声を上げて笑った。


「わかってる。お前には大切なものがあるからな。ここで暮らせなんて言わないさ」


 いくら気に入っていても、それだけはしないとグレンも決めていることだ。ここでの生活が必ずしもいいとは言い切れないのだから。


 本人が望んでいても、ここでの生活だけは認めることはないだろう。


「ヴェスと会ったのは、これを返しに来たときだけだ」


 息子なりに考え、会わないようにしていたのだろうと思っていた。国を出て以降、一度だけ立ち寄ったことがあったのだが、そのときですら会っていない。


 これに関しては、グレンが意図して会わなかったわけではない。息子なのだから、会いたくないという気持ちもなかった。


「会ったら、色々としんどかったんじゃないのか」


 いつ行ったのかわからないが、それなりの月日は経っていたのではないのか。


 そう思ったとき、会わない方が父親のためになると思われたのではないかと思ったのだ。


「そうなんだろうな」


 会っていても別に構わないと思っていたが、その後の別れがきつくなっただろうと思っている。思われたのだと。


「父親をよく理解している息子だな。ここに置いている物といい」


 これも息子ではないのかと言われれば、おそらくそうだろうと思っている。


「クレドが送ってきたものだが、間違いなく頼んだのは息子だ」


 ここの対応をしていたのはクレド。彼とは頻繁に会っていたのだ。どうするかという話に関しては、シオンを交えて話す必要があったからだ。


 その際に、時折持ってきていたものがこの部屋に置いてある物。


 魔力装置がついている時計を渡されたのもそのときだった。よく作ったものだと時計を見る。


 その意味はシュレでもわかっていた。彼は一度だけ見せてもらったのだ。


 その時計は、王家の証である紋章が隠されている模様だったから、さすがだと思わされる。どこにいても彼は王家の一員だという意味だろう。


「そのとき会ったのは、結局クレドの他にシリンとユリアだけだったな」


 その二人も個人的な絵として残されている。


 ふと気になったのは、絵の描き手だ。英雄の絵と同じような気がしたのだ。


「気付いたか。これは当時のメリシル国女王が描いた。七英雄の絵を描いたリア・ティーンの転生者だ」


 同じ絵で当たり前だと言われれば、そのようなことがあるのかと驚く。


「転生自体は珍しくないのかもしれないな。他に見たことはないが、本人が思いださなきゃわからないものだから仕方ない」


 普通は前世の記憶など思いだすようなこともないだろうと苦笑いを浮かべる。


 思いだしてしまったほうが異常なのだと。


 ふと気になったことをシュレはぶつけてみた。転生が当たり前のようにあるなら、英雄王の奥さんはどうなのだろうかということ。


 同じような能力を持っていると聞いたが、転生者ではないのか。


「アクアは違う。同じ能力を持つだけで、転生者ではないらしい。俺もその辺りはよくわからないが」


 メリシル国の女王がそう言っていたのだ。彼女は違うと。


 根拠はなんなのかわからないが、とりあえず女王を信じてみようと思っていた。


「あの女王は、リーラ・サラディーンに詳しいだろうしな。リアの記憶を元に言うなら、そうなのだろうと思ってる」


 これに関しては確認する必要はないと思っているので、シオンに聞いたこともないと言う。


「転生していようがしていまいが、なにもかわらないだろ」


「その通りだな」


 転生者だとわかってから気持ちが変わるものでもない。なら、どちらでもいいと思える。それがなにか重大な意味を持つなら別なのだろうが、そうではないのだから。






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