魔物の異変2
この仮定で進めていくなら、魔物はグレンを狙うなにかの影響を受けて強くなっているということ。
とりあえず他に問題がないならいいかと思うことにした。
「外からなにかが入り込んでいる、ということでよろしいですか」
カルヴィブが問いかければ、グレンとヴェガは視線だけで会話をしたあとに頷く。
狙ってくるなにかはわからないが、外からの干渉者であることは間違えようもない。
「街を離れた方がいいな。ここに俺がいると、なにが起きるかわからない」
東にいるとわかっている以上は、それを倒すことが最優先だと思えた。放置して去るわけにはいかない。
「外でキャンプでもするのか」
どうせ付き合わされるんだろと言うようにシュレが見れば、それも悪くないなと笑い返す。
「そのような仕事はありませんからね」
エシェルだけが呆れたように言えば、それもそうだと苦笑いに変わる。
どのような名目で外へ出ようかと考え直す。
ただの傭兵としている以上、さすがにこの状態で無意味に外へは出られない。それも、シュレだけを連れてなど無理だ。
「アイカを連れていくことになるか…」
実力だけなら問題はない。問題はないが不安要素もあるだけに、どうするかは悩みどころだ。
「なら、私と行くというのでどうでしょうか」
カルヴィブが言えば、それしかないかとエシェルも言う。
「ちょうど、ハーフエルフの里へ行く予定があったのです。シュレもいるので、グレン殿達を連れていくのは疑われないでしょう」
シュレは定期的に里帰りをしている。それは傭兵の間でも有名な話だ。
カルヴィブは今回初めて行くので、シュレを連れていくことは問題にならない。
「その間に目的のやつを倒せた場合、俺は一回戻るぞ」
行き先はグレンにとってもちょうどいいと言えた。そこには中央の大陸へ行くための入り口があるからだ。
「そうなったら、私がどうにかしますよ」
それぐらいなら問題ないとカルヴィブは言う。
急ぐ必要があるだろうと、出発を翌日に決めた。それでいいのかと思うところもあったりするのだが、本人がいいならいいのだろうと思う。
「気にしないでください。カルヴィブは適当なんです」
「そうだね。気まぐれで動くなとはよく言われるかな」
「よく、ではなく、いつもの間違えではない?」
ジロリと見れば、カルヴィブは笑って受け流す。慣れた様子に、二人の関係が見えてきたような気がした。
シュレだけが驚いたように見ていたが、グレンはエシェルのことなら理解しているだけに驚きはない。
「だいぶらしくなってきたな」
「あんたと組んでたときはあぁだったのか」
「もっとすごかった」
それはどういうことだと固まるシュレに笑えば、エシェルも咳払いをして誤魔化す。若気の至りですと言うように。
「実力はあったからな。大変だった」
「忘れてください」
突然新米と組まされとても不機嫌だったと言われてしまえば、エシェルは視線を逸らした。
実力がある傭兵ほど、新米と組まされるのを嫌がる傾向にある。別段珍しいことではない。
だからこそ中堅が新米の相手をすることがほとんどなのだが、グレンは組む相手を自分で選ぶようにしていた。
その関係でエシェルとも組んだのだが、見事に嫌がられてしまったという経緯を持つ。
「最初だけです。何回か仕事をすれば、実力がわかってしまいますからね」
隠していてもわかる実力。それが自分よりも強いとわかってしまえば、なにも言えないとエシェルは言う。
むしろ、なぜ傭兵にと思ってしまうほどだ。傭兵にならなくても、護衛として雇ってもらえる実力者だと。
「そこだけは同意します」
同じことを最初に思ったシュレは、自分で何人目かわからないが、組んだ傭兵みんなが思ったのだろうと思う。
グレンの実力はそれだけレベルが違うのだ。それは長く生きてきた経験の違いだけではなく、今の時代にはない修羅場を乗り越えてきた経験が大きい。
「いいな。私も組んでみたかった……」
その中、今回が初対面になるカルヴィブは羨ましいと言う。
『里へ行くまで組んでればいいんじゃね』
ぼそりと言われた言葉に、グレンはそれもいいかもしれないなどと言うから、エシェルはため息を漏らす。
勝手にしてくれと言いたいのかもしれない。
「カルヴィブと手合わせの約束もあったしな。このあとやるか」
「お手柔らかに」
笑みを浮かべながら話す二人に、そんな約束までしていたのかとシュレは呆れている。
彼は弓を使うからか、強い者と手合わせをしてみたいという気持ちだけは理解できなかった。
「なにかあったら、カルヴィブは私が止めますので」
グレンの方は頼んだと言うエシェルに、了承の意味で頷くシュレ。自分で止められるのかどうかは、さすがにわからなかったが。
「疲れる旅路になりそうです」
その表情を見たとき、さすがに言葉はなにもでてこなかった。ただ、この人も大変なんだなと思っただけである。
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