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覚醒の鼓動

 割り当てを決め行動に移そうと執務室から出てすぐ、クオンは異変を感じた。それは、なにかがざわつくような感覚だ。


「クオン、どうしたの?」


 急に立ち止まった姿に、一緒にいた四人が不思議そうに見る。


 けれど、鋭い目付きで周囲を見る姿に、なにかがあったと思う。すぐさま周囲へ神経を研ぎ澄ませたが、彼らではなにも感じ取れない。


 いや、唯一リーナだけが異変を感じ取った。


「来る…魔物だ!」


 正体を正確に察したクオンが走り抜ければ、四人があとに続く。


「リュース! 街に出てるかと、流星騎士団、聖虹騎士団へ伝令頼む!」


「わかりました」


 一瞬心配になったが、今のクオンは問題ないと判断しリュースは別の方向へと駆け抜けた。魔物に負ける上官ではないと。


 一方、まだ残されていた小隊が待機している月光騎士団の訓練所へ向かうクオン。


 近づくにつれ魔物との交戦になっているのがわかり、気持ちが急くのを抑えられない。


 ただの魔物なら負けることはないと言い切れた。怪我人はでるかもしれないが、それだけの話。特に問題などないのだ。


 けれど、突然現れるような魔物が普通なわけない。


「クオン、落ち着いて」


「…わかってる」


 急く気持ちを察してか、リーナが小声で声をかけてくる。


 助けられっぱなしの幼馴染みに頭が上がらないと思いながら向かってみれば、小物の魔物と不気味な魔物がいた。


「なに、あれ…」


 不気味に感じる魔物は、他のよりも大きくて力も強い。さすがにリーナも見たことがなく、表情が険しくなる。


「シルビとシアは雑魚を頼む!」


 狙ったわけではないが、幸いにも残っていた小隊長はエルフとハーフエルフの二人。


 しかも、シアシュリトは元傭兵だ。魔物との実戦経験は豊富なこともあり、臨機応変に動いてくれるだろう。


「リーナ、付き合ってくれっか」


「もちろん」


 明らかにやばいと感じていた。それでも誰かが相手しなくてはいけない。あの魔物を放置する方が危険だと感じたのだ。


 自分でも危険だと思うのだから、本当ならリーナを巻き込みたくはない。けれど一人では抑えられないともわかっていた。


「大丈夫。クロエとセルティ様が来てくれる」


 リーナも同じことを感じているのか、レイピアを構えながら隣に立つ。


「そうだな。いくぞ」


 誰かの手を借りなきゃいけない。そのことに腹が立つが、今は文句を言える状態ではないだけに時間稼ぎだと剣を握る。


 簡単に踏み込めない。そう思わせる魔物は、下半身が獣で上半身は人。腕が四本もあり、両手に槍を持っていた。


 一振りでどれだけの被害がでるだろうか。考えただけでもゾッとする。


「させるか!」


 振り下ろされた槍を見て、クオンがすぐさま受け止めた。


「くっ…」


 想像以上に重い一撃。これはリーナが受け止めるには厳しい。


(クロエが本気だせば、こんな感じかもな…)


 そう思えば、これぐらい受け止めきってやると気持ちが燃えた。


「リーナ! 真っ正面から受け止めるなよ!」


 押さえた横から斬りかかる姿に、警告を発する。身軽さだけなら自分より上だと知っているだけに、ある程度は避けられるだろうとも思う。


 あとは自分がどれだけ抑えられるか。それが一番の問題だった。


 一撃一撃が重く、受け止める腕が痺れていく。


 チラリと背後を確認し、他の魔物はどうなったのか見る。


(シアもシルビもさすがだ。これならすぐに片付く)


 小隊長の指示を受け、統率を得た騎士達が確実に倒していく。


 魔物をここから出すわけにはいかない。騎士団敷地から出てしまえば城内にまで行ってしまう。


(後ろが片付けば、シアとシルビの援護が期待できっか)


 どちらも魔法の腕もいいため、援護が受けられればまともに戦えるかもしれない。


「くっそ…重すぎるぜ…」


 このままでは剣が弾かれるか折れる。長くはもたないと舌打ちした。


「皮膚も厚いよ。攻撃が通じない」


 クオンが受け止めながら作る隙にリーナが斬り込む。これを繰り返しているが、刃が厚い皮膚に弾かれてしまう。


 このままではダメだと二人は感じていた。






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