幼馴染み4
微かな明かりが照らす暗闇の中、クオンは目を覚ます。小さい明かりがついている自室だと思ったとき、小さな歌声が聞こえる。
横を見るとリーナが歌っていた。これのお陰で寝られたのだろうか。そんなことを考える。
身体を起こそうとすれば、気がついたクロエが手伝ってくれた。
「なんだよ…お前までいたのか…」
「すべて話せと言っただろ」
当たり前だろと視線が言っている。表情が兄のものだと気付き、こいつには敵わないと思う。
「クオン、食事は?」
ずっと寝ていたこともあり、なにも食べていない。食べるかと問いかけられたが、食欲はまったくなかった。
あれだけ大好きな甘い物すら、今は食べたくないのだ。
「お前、まさか…」
寝られないだけじゃなく、食べてないのかとクロエが問いかけるから、視線を逸らしてしまう。
クロエからため息が漏れる。顔を見られず視線を逸らしたままでいれば、強制的に視線を合わせられた。
「こんなになるまで黙りやがって。俺やリーナは、そんなに頼りないか」
彼が本気で怒っている。今までに見たことがないほど本気で怒っているのだ。
「もっと頼ることを覚えろ。お前は一人じゃない」
怒ったかと思えば、優しく頭を撫でてくる。気付いたときには、頬を熱いものが流れ落ちていた。
「悪かった。もっと早くに気付いてやるべきだったな」
さすがに泣くとは思わず、クロエも反省する。どんなことがあっても彼が泣くことはなかった。それだけ辛かったのだろう。
彼が抱え込む性格なのは昔から知っていたことだ。もっと早くに気付くべきだったと思う。
なんとなく異変は感じていたのだ。そのときに確認しなかったのは、自分の落ち度だった。
落ち着くまで泣かせてやれば、気恥ずかしそうに視線を逸らすクオン。子供っぽい表情に、リーナとクロエが笑う。
「話せるか?」
「あぁ…」
どうせ聞き出すまで離れる気はないくせにとぼやけば、当然だと言われた。
「とりあえず、リーナを避けた理由から聞こうか」
「い、痛い…」
頬をつねられて抗議するように見たが、すぐに視線を戻す。こればかりはなにも言い返せないからだ。
自分が悪いとわかっている。一番傷つけたくない相手を傷つけた。
「悪かった…」
「あれが、原因なんでしょ」
先程クオンと同じものを見たと言えば、クロエはリーナの能力なのかと考える。
必ず特殊能力を持つわけではないが、彼女にはなにかしらの力があると思えた。その証が外見にもでているのではないかと。
「あれ、やっぱ気のせいじゃねぇのか…」
驚いたように見れば、リーナは頷く。間違いなくクオンと同じものを見ていたと。
「こないだ、倒れた。リーナに助けられたから、なにか礼をと思って訪ねたんだ」
倒れたと聞いた瞬間、クロエの眉間にシワが寄り、クオンの頬に冷や汗が流れ落ちる。
また怒られると思ったのだ。なぜその時点で言わなかったのかと。
「あの日から、セイレーンの女が死ぬ夢だけ続くようになった」
「……リーナが被るわけか」
セイレーンの多くは銀髪が特徴だ。彼女を見ているみたいなのだと思えたが、当のリーナは不思議そうにしている。
「同じなのって、銀髪だけじゃん。髪の長さだって違ったし」
それでなぜ自分と被るのかわからない。
「夢に女の名前は出てきたか?」
けれど、クロエはなにか気付いたのだろう。確認するように問いかけた。
「なるほどな…」
そして、彼が夢とリーナを被せた原因にたどり着く。答えはそれしかないというように。
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