表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/276

魔物討伐3

 一ヶ月の滞在期間を終えようという頃、月光騎士団の元へ女王フィーリオナ・バルスデ・フォーランがやってきた。


 女王の主催する食事会で、供としてセルティ・シーゼルが同行している。


「そなた達のお陰で、魔物の出没は減った。ご苦労であった」


 被害が一般人に出なかったと言えば、何人かは当然という表情を浮かべるから楽しいのだ。


「気にせず、食べてくれ」


 立食という形を選んだのは、おそらくセルティだろう。冷静に見ながらクオンはため息を吐く。


(行かないわけには、いかないよなぁ)


 団長という肩書きがある以上、ここで逃げ出すわけにはいかない。


「リーナ、付き合ってくれっか」


 ついてこいと言えなかった。フィーリオナといると、彼女は機嫌が悪くなるからだ。


「行くよ。私だって、副官だからね」


「…わりぃな」


 貸しを作ったばかりなだけに、これは他にもなにかしなければと思う。


 深呼吸を一回するとクオンは歩き出す。さすがに、公式である以上は問題はないだろう。


 後ろには監視役もいる。下手なことはしないはずだと信じたい。


「陛下、今夜は…」


「堅苦しい挨拶はやめろ。お前らしくない」


 一瞬で不安が占めた。ちらりとセルティへ視線を向ければ、表情からはまったく読めない。


「クオン…」


 髪に触れた手に気付き、油断したと背後が気になった。リーナがどんな表情をしているのか怖くて見られない。


「お前、髪の色が変わってないか」


「えっ…」


 なにを言ってるのかと思ったが、背後でリーナが息を呑むのを感じた。つまり、彼女も同じことを感じていた証だ。


 振り向いた先でリーナの表情が揺らいでいる。動揺を必死に隠そうとしているのだろう。彼女のことだから、よくわかった。


「まぁ、こうやって見たから、そう見えただけかもしれないが」


 フィーリオナもリーナの動揺はわかっている。彼女が感じているなら、自分が感じているのも間違いではないだろう。


「苦労が絶えず、色素が落ちたのかもしれないな。誰かが迷惑をかけているし」


「誰のことだ」


「さて、誰だろうな」


 しれっと言うセルティ。場の空気を変えてくれているのだ。


「……ん? それってよ、俺がじじいになってるって意味か」


 ここは乗るべきだと思う。リーナを笑わせるためなら、相手が誰であろうが関係ない。


「このままだと、そうだろうな」


 真顔でセルティが言えば、思わず想像してしまった。


「まぁ、いいか。リーナみたいにきれいな…」


「バカか。リーナは銀髪だが、お前は白髪になるんだぞ」


 なにを言ってるんだとフィーリオナは苦笑いする。

 

 次の瞬間、後ろから吹き出すのが聞こえる。リーナが想像して笑ったのだろう。


「笑うなよ」


「だって、白髪のクオンってさ…」


 肩を震わせて笑う姿に、セルティも笑みを浮かべた。


(俺としては、クオンとリーナがうまくいってほしいのだが…)


 二人のことは騎士見習いから見てきたのだ。家同士も婚約ぐらい考えたかもしれない、と思っている。


 ここにクロエが混ざっていただけに、家は慎重だっただけだろう。


「フィオナ、他の騎士にも労いの言葉をかけてやれ」


 割り込まないよう、セルティは遠ざけることにした。二人の邪魔をさせるべきではないと。


「お前…」


 わかっているからこそ、フィーリオナは恨めしげに見上げる。


「公式、だろ」


「ぐっ…」


 クオンばかり構っているわけにはいかない。


 悔しげに睨み付けると、女王は歩き出した。






.

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ