1話
初めての作品ですので生暖かい目でよろしくお願い致します。
私が前世の記憶を取り戻したのは8歳の頃に原因不明の熱にうなされた時だーーー。
前世のわたしは何処へ出しても立派な干物オタクと言っても過言ではなかった。
ゲームに漫画にアニメに情熱を捧げ、服や髪の毛、化粧に見向きもしない女子力のかけらもない残念な生体だ。
兄に罵られ、姉に金をやるから髪を切れと言われて始めて切りに行くぐらいやばいやつで、それが改善されることなく、そして男の気配など一切ないまま高校を卒業した。青春は同士と語り合うことだけであった。リア充?なにそれ?美味しいの?
大学の入学までの間バイトをして、そのお金で買い漁った乙女ゲームの1つ
「恋のデンジャラス〜あなたの王子様はだあれ〜」
露骨な題名に引きつつも、イラストがとても綺麗で、見た目に一目惚れしたキャラクターのためだけにやり始めた。
それの内容は度々衝撃を走るような設定、ストーリーでかなりドン引きし、この衝撃を幼馴染のお腐れ遊ばせてしまいやがった梨花に共有しようとしたその瞬間、
衝撃と興奮が冷めないまま夕暮れの道を我が家から自転車10分の距離にある梨花の家まで全力で自転車を漕いで行った瞬間に、
信号無視した車にぶつかってそのまま体が吹っ飛んだ。
文字通り体が吹っ飛んで、アニメみたい〜ふふふ〜という現実逃避をしながらも
うっわ死んだ…って思ったその時、
「いや、この衝撃的な気持ちを誰かに共有させろやぁぁぁあ!!!!!!!」
という叫びを大声で、いや、声には出てなかったかもしれないが、わたしの中でそう思ったその瞬間、わたしの視界は暗転した。
まあなぜわたしがこの記憶を思い出しているかというと、現実逃避をしているからである。現実逃避逃避なう〜はは〜♪
あの原因不明の熱にうなされ、回復してから早2ヶ月、お金持ちな生活に不自由を感じながらも色々と不幸にならない対策をしていた。
なぜならば!!!!!!!!
この「恋はデンジャラス〜あなたの王子様はだあれ〜」、略して「恋デン」の登場人物は!全員不幸になるからである!!!
ハッピーエンドでも攻略対象キャラが死ぬのは序の口!ハッピーエンドなのに無理心中やヒロインが死んで病み狂うやつさえいる!世界を呪ったりクーデターを起こすやつさえいる。
わたしは声を大にして言いたい!!!!
なんでこんなストーリーを作った!!!!
そして何よりわたしが転生したこのユーフィリ・ヴァラエティは死ぬ!
もう、死にまくる!どのルートでも死にます!
メインヒーロー俺様ドS様の第2王子であるアレン王子の婚約者だったけど、アレン王子ルート以外でも毎回出てきすぎてもはやメインキャラ。
ユーフィリちゃんが死なないと物語が終わらないレベル!
特徴的な赤くてロングの髪の毛と蝶の形をした金色の髪飾りと神絵師による美しい顔面のお陰で、これが現実だと言うことに気づいてしまったよ…
ちなみに髪飾りは俺様ドSのアレン王子に貰ったやつらしい。
このユーフィリちゃん、かなーりやばい子です。
ヒロインへの嫌がらせはもちろんのこと、屋敷で奴隷を大量に買い取って虐待してるだとか、家が脱税だとか、全ての元凶だとか、色々示唆されている…。
ちなみにわたしは尊敬の念をもってユーフィリちゃんと呼んでいた。
そして死に方も豊富である…。
俺様ドS様に家のお取り潰しをされた後に、追放された地方のスラム街で飢え死をし、
またあるキャラクターのストーリーでは、全ての元凶だということで、晒し首にされたりとか、
虐待していた奴隷の子に相討ち覚悟で殺されたりだとか
もう、よくわからない!
とりあえずわたしは現実逃避をやめてみることにした。
第2王子の婚約者といえば、家の爵位とか明かされてはいなかったけれど、いいところのお嬢様なんだろう。この、ラスボス様、いやユーフィリちゃんは。
なんか父様がこ…しゃく様らしいけどよくわからない。
それは彼女の自室にも現れている。
窓の装飾一つ一つですら、前世のわたしがあれ売れば漫画500冊くらい買えるんじゃねって囁くくらいだ。
もちろんベットもよくわからないくらい大きいし、布団はきっと高級品だろう。
ちょーふかふかでここで眠ってからもう、畳に薄っぺらい敷布団じゃ寝れねぇなとか思っちゃうぐらい。
まあそのふかふかなベットの上にわたし以外の人間がいることがとてもおかしい。
もう一度言おう。とてもおかしい。
ちょっとやそっとで起きなさそうにスヤスヤと眠る彼は、1ヶ月前に我が家にやってきた暗殺者の慣れ果てである。
自分でも何を言っているかわからない。
眠る彼は薄いピンクの髪を顔を貼り付けてスヤスヤと眠っている。
まだ真新しい執事服が随分シワになって、これにアイロンがけするメイド達がとても哀れで仕方がない。
そんなことよりも私はここ数日の日課である行動をとることにする。
煌びやかなメルヘンチックなお姫様部屋に唯一相応しくない、木の棒を握って何の戸惑いもなく振り下ろした。
「わたしのベットで寝るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!」
毎回この攻撃は避けられ、わたしの布団に叩きつけられる。
所詮8歳児の腕力、ポスッと柔らかい布団に木の棒が沈む。その沈む音と共に、ダルそうに、めんどくさそうに、目をこすりながら彼は口を開いた。
「おはよーございます。おじょー様。睡眠の邪魔しないでくださいよ…。」
なんでやねーーーーん!