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エビス先生の異世界学校経営論  作者: ロカク
中級ライセンス試験編
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失敗は成功の姉

「全力で止めてくれっ!!」


 そう言いつつ俺もライチもとい「何か」を止める方法を考える。幸い「何か」はエンジにゆっくり歩み寄っているため少しは時間がある。何か両者を傷つけず止める方法は無いのか!?


緊急停止エマージェンシーストップ!」


 突如黒フード男が技を使った。と同時にライチがその場に倒れこむ。一体何をしたというのか……とにかく今はライチの保護が最優先だ。


          ◆◆◆


 閉会式が開かれる中、俺、ギョクロ、チユキ、テトラ、それからエンジの保護者で倒れたライチとエンジの様子を試験会場脇で見ていた。保健室はここまでの第一ラウンドと第二ラウンド十九戦の負傷者でいっぱいらしい。


「回復できる人いる?」


「わ、私一応看護師です」


 エンジの保護者の呼び掛けにテトラが名乗りをあげる。確かにロアンがいない今うちで回復できるやつはいない。


「おっけ、じゃあまずは外傷が酷いからエンジの応急処置してやって」


 正直ライチはただ寝ているようなもんなので順番としては妥当だろう。しかし、そっちを自分でやらないってことはこの人自体は医療系じゃないのか?


「で、末広はガーゼと包帯もらってきて」


 ん? 男っぽい名前だがそんなやつこの場にいたかな?


「末広! 早く!」


「えっ……あっ! は、はい!」


 ここ三年半「エビス」で通っていたため久々に本名で呼ばれて反応が遅れた。にしてもこの世界に来てからずっと「エビス」だったわけで、本名でしかも呼び捨てで呼ぶってことは……首ぐらいまで出かかっているのにあと一歩思い出せない。後で直接聞こう。


 保健室で包帯をもらって戻るとエンジの治療はあらかた終わり、ライチの方に入ろうとしていた。


「私こういうケースはやったことがないのですが……」


「大丈夫大丈夫、まずここをこうやって……あっ、末広! エンジの傷口にそのガーゼ張り付けて包帯巻いといてー」


「はぇい」


 なんかもう馴れ馴れしすぎて「へい」って言いかけた。この人の手際の良さは認めるが……


 しばらくするとエンジの本治療も終わり、一息つける状態になった。タイミングとしては今だろう。


「いやーみんなお疲れ! とりあえず少年二人は一命をとりとめたよ!」


「ちょっといいっすか?」


「どした?」


 全体への労いを口にしたエンジの保護者は俺の声に気付き、顔をこちらに向ける。


「あなたは一体何者なんっすか?」


「……あはははは! あんた私が誰か分からず指示聞いてたんだ!」


 エンジの保護者だということは分かっているが、そんなに笑わなくてもいいと思う。


「まぁそうだよねー、八年くらい会ってなかったし忘れてもしょうがないな、うんうん。私は……」


 勝手に納得するのはやめていただきたい。


「私は海老沢末広の姉、海老沢真夜でっす!」


「……あーーーーーーーーーっ!?」


「エビセンのお姉ちゃん!?」


「こんなことあるんですわねぇ」


 豪雨不回避であろう曇り空が一撃で雲一つない快晴に変わったような、そんな気分だ。そう、俺には前世界でそこそこ年の離れた姉がいた。家を出てから約八年間音沙汰もなかったためイメージも湧かなかったが、なるほどそういうことか。


「え、エビスさんのお姉さんだったんですか!?」


「そだよー」


「いやいや、なんでこんなとこにいるんだよ!」


 テトラの質問を軽く返した姉貴、もう一つ質問を重ねてみる。


「なーんでって……まぁねー、遡ること約八年になるんだけど私就職して早々教師やめようと思ってたんだー」


 あれだけ完璧でキッチリ親の敷いたレールを寸分(たが)わず通ってきた姉貴がなぁ……


「子供たちには舐められるし上司には激怒られるしもう散々だったわけ。で、ある日校長室に呼ばれて渋々行くよね、そんでドアを開けるとあらビックリ! そこには校長のつるっぱげじゃなくて、歪んだ空間があったんだねぇ」


 あの空間の歪みはドアであればどこでも繋げれるのか。それはさておき大体察しは着いた。


「そしたら抗う間もなくその歪んだ空間に吸い込まれたってわけ! で、なんやかんやで今に至る! 以上!」


「大変でしたねぇ」


 最後うやむやにされたが大体俺と同じ経緯を辿(たど)ってたってわけか。それより誰も突っ込んでこないってことは俺たちが別の世界から来たことには感づかなかったらしい。


「そういえば末広、あんた幻想はか……」


「ちょーっと向こうで話しようかぁ?」


 せっかく一難回避できたところで姉貴が次こそ核心的なことを口走ろうとしたため姉貴の口を押さえてその場を離れる。テトラたちは不思議そうにこっちを見ていたが気にしないことにしよう。


「元の世界についてあいつらには言ってないんだからさぁ……」


「ごめんごめん、でもその反応は知ってるのね?」


「あぁ、三人目の人に聞いたよ」


 五人目で世界滅亡説を姉貴が知っているならこの言い方で話はすんなり通るはず。通らなければ教えた方がいいかもしれない、つまり鎌をかけたわけだ。


「あー、ナバロでしょ? 元気だった?」


「死にかけてたよ」


「あはは、マジか」


 知ってるパターンか、なら話が早い。ってかナバロの扱い軽くね? しかしナバロに会って話を聞いているとすれば……


「その感じだともしかして……」


「もちろん」


 以心伝心できていれば姉貴は幻想破壊を実行したらしい。


「見ての通り失敗だったわけだけど収穫はあったのよ」


「収穫って!?」


「まぁ落ち着きなよ、順を追って話すからさ」


 ナバロに会ったことがあるということは恐らく姉貴はナバロの失敗談を聞いても成功しなかったんだろう。だが見切り発車するような人じゃないことを長らく会っていなかった俺でも知っている。できる限りの環境を整えていたとしてなぜ成功しなかったのか? このほぼほぼ完璧超人な姉貴をもってしても成し得なかったことが果たして俺にできるのだろうか?

どうもロカクです!

今回はちょーっとタイトルで滑ってるかもしれないですねぇ……怖いなぁw

間違えているわけではないのでスルーしてください!

さて偶然にもここで10万字に到達しましたので……何ってわけではありませんw

次回もよろしくお願いします!

⊂( ・ω・)⊃ブーン

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