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幻想破壊

「戻りましたー!」


「早かったねぇ」


 ナバロ奪還に成功した俺はひょんなことから出くわしたホテイを連れて婆さんのもとへ戻ってきた。


「そっちのお嬢さんはどっかで見たような……」


「こいつは俺の同級生で官僚のホテイです」


「どうも初めましてご老体、良かったら一緒に話を聞かせてもらいたいのですが」


「あぁ、どうぞ」


 婆さんの承諾を得て俺と婆さんは再びテーブルを挟んで対面に座り、ホテイも婆さんがどこからか持ってきた椅子に腰を掛ける。横にさせるところがないとのことなのでナバロは床に転がしてある。


「それでエビスよ、何故ナバロを助けたのだ?」


「それがなぁ……ちょっとお願いします」


「いいのかい?」


「大丈夫です」


 いきなり俺が言えない部分にホテイが突っ込んで来やがったので婆さんに助け船を出してもらうことにした。


「ふん、実はかくかくしかじかでこの男たちはこの世界の人間じゃないらしいんさね」


「なにっ!?」


 ビックリするのも無理はない、サプライズだからな。全く嬉しくないとは思うが……


「エビス、お前……」


「悪いな、隠すつもりはなかったんだ。でも俺の口から言うと世界が危ねぇらしいからな」


 なんかしんみりしてしまった。別にこの世界の人間じゃないこと自体は問題じゃないはずだがなぁ。


「私も文献では見たことがある。それも他世界から五人目の使者が来たとき世界は滅亡するとか……」


「国はあと六国残ってるんだよな?」


「あぁ、しかし三国はほぼ壊滅状態でな。残るは我がベシャメル王国とここベアルネーズ国、それからアメリケーヌ国だ」


 なるほど、わりと狭い範囲でしか生活してなかったことは分かった。


「ときにエビスよ、お前はこれからどうしたい?」


「俺は……」


「ウ、ウゥン……」


「気がついたようだねぇ」


 ナバロが意識を取り戻したことにより俺の未来予想図は始まらずして終わった。これから長々と語ってやるつもりだったがしょうがないな。


「ワタシはイッタイ……」


 日本人っぽくない奴に会ったのが久々で忘れかけていたが、この国には言語障壁なるものが張られていてどんな言語も片言ながら聞く側が理解できるように変換されるというのはこっちの世界での学生時代に知った話だ。


「このエビスがお主を救ったのだ」


「アリガタイ……です……」


「その見返りと言ったら恩着せがましいかもしれんが、ちょっと話聞かせてもらえるか?」


「ワカリマシタ」


 そう言うとナバロは上体を起こして地べたに座る。俺の知りたいことをこいつは知っているのだろうか。


「えーっと、俺からでいいのか?」


「私は聞くことなどないからな」


「そうだよな、んじゃあ単刀直入に聞くんだが……もとの世界に帰る方法知ってるか?」


 探りを入れることもなく俺は一番知りたいことを聞く。とはいえ知っていればもう帰ってるか……


「……ナイことはナイ」


 あるって言ってほしかったところだが希望はありそうだ。しかし実行しないってことはできない理由があるんだろう。


「それって……」


「……キンジュ『幻想破壊』」


「何っ!?」


「知ってるのか?」


 金寿って何歳のお祝いのことかと思ったが、取り乱したホテイを見るとただ事ではないらしい。


「文献で見たのだが、禁術『幻想破壊』とは一国を消す大技だとか。しかし、その技は危険ゆえ完成しないまま封印されたと聞いたのだが……」


「今の話とその技にどういう関係があるんだよ?」


「クニがキエるのはフクサヨウであって、ホントウのモクテキはモトのセカイにカエるコト。それで幻想破壊はセイコウしなければクニがキエる」


 なるほど、これで一つ合点がいったことがある。要するに「他世界からの使者が国を消す」というのは理由はわからないがこの世界に来ちまった奴が俺から言うところの元の世界に帰ろうとして幻想破壊を発動させようとしたところ失敗して結果的に国を消しちまったって訳か。


「まさかとは思うんだがベアルネーズ国(ここ)と戦争してた国が消えたっていうのはお前がその技をやったからなのか?」


「ソウ、イママデのシシャタチだれもセイコウしなかった」


 なんとなく片言にも慣れてきた。その失敗は何かが足りなかったのか、それとも術者の問題か……


「もうちょい聞きたいことがあるんだが……」


 それから失敗したときの状況を細かく聞き取りを行って今回の俺の旅は目的を達成した。


「ホンジツはアリガトゴザイマシタ」


「こっちこそありがとな、しっかしこれからどうすんだ?」


 元の世界に帰ろうとして幻想破壊を発動させようとしたがそれは失敗に終わったわけで、本来もうここにはいないつもりだっただろう。今回は偶然俺が助けたものの次反対派に捕まったら命の保証はない。誰か保護してくれればいいが……


「アタシが預かろうじゃないか」


「本当ですか!?」


「あぁ、男手はあるに越したことはないからねぇ」


 ここも絶対安全とは言えないし、ナバロの存在を隠すにしても婆さんは詰め寄られれば口を割るかもしれない。だが、グレイビー村(ここ)の人たちはナバロの功績を称えて崇拝していることを考えれば全力で守ってやってくれるだろう。


「じゃあ俺はこの辺で」


「私も失礼する。貴重な話を聞かせていただき感謝します」


 こうして俺は何をすべきか決まり、ベアルネーズ国グレイビー村及びヴィエルジュ村での旅は終わった。とっとと帰りたいところだがホテイはワープできたんだったか?


「エビスよ」


「何だ?」


「任期満了までSGFの席に穴を開けることは感心せんぞ」


「分かってんよ、確実に決めるためにもいろいろやることがあるからな」


 SGFのとりあえずの任期は1年、オブラートに包んであったとはいえ釘を刺されたのでまだしばらくもとの世界に帰るのは先になりそうだ。夏休みの残りはゆっくり休んで休み明けの一大イベントに備えるとしよう。

どうも!ロカクです!

これにて夏休み編終了です!

一気に展開が進みましたねーwメタいですかねw

次回から二学期です!よろしくお願いしまーす!

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