アルペジオからの刺客
~六月目序盤~
「グッドモーニング諸君! 夏休みはどうだったよ?」
返答は求めていない。聞かなくとも夏休み明けと言えば一皮剥ける者がいるのが定番、例にならって日焼けしている者もいれば心なしか背が伸びている者もいる。そんな中俺の一番の楽しみは……
「それではこれより課題を提出してもらう!」
今からどうしようっていうのは無しにして如何に思考したかを評価しようと思っている。が、ここで一捻り。
「と思ってたんだが、二学期最大のイベントといえば何だライチ!」
「運動会っすかね?」
「そう! というわけで運動会で披露してもらおうってことだがこれがまた人数的に盛り上がりに欠けるんだよなぁ」
「早く言いたいこと言いなよエビセン!」
必殺技を見せなければならない緊張の反動で俺が単刀直入に言わないばっかりにギョクロをイライラさせてしまったらしい。
「そうだな、なんとこのナイスタイミングに冒険者ライセンス試験がある! つまりそこで見せてもらおうってわけだ!」
「運動会と試験と課題が同時にできるわけですね!」
「そういうこった」
「前回初級はクリアしたので次は準中級ですわね!」
「いや、今度は中級を取ってもらう!」
「「「「えっ!?」」」」
ん? 俺何か間違ったかな?
「何で一つ飛ばすんですか!?」
「受かるかは別として飛び級で受けるのは普通だろ」
「私たちを過信しすぎではありませんのっ?」
「言わずもがな俺はお前らを信じてるぜっ!」
「それは面白そうっすねぇ」
「だろ?」
「エビセンお腹すいたー」
「今それ言うかよ」
といった感じで一通りリアクションを聞いたところで補足していく。
「俺も今回の件を突拍子もなく決めた訳じゃない。先月とあるところに行って思ったんだが後々のことを考えると時間がないことが分かった」
「学校と名のつくものって最低二年はあるじゃないっすか、あと一年以上あるんだから急がなくても……」
「いや、FOAB学園は一年で閉校だ」
「「「「!?」」」」
生徒たちの驚きはごもっとも。俺は何もなかったあっちよりこっちの世界の方が圧倒的に気に入っている。だが俺がここに残ればそんなこの世界がいつ崩壊するかわかったもんじゃない。ということで全部終わって学校を閉めてからあっちに帰ることにした。
「閉校っつーより廃校っつーか……」
「何故ですか!? 新設校が一年で廃校なんておかしいです!」
「なんつーか……まぁ俺の転勤だな。テトラに任せるのもありだがあいつは本職があるし、教師がいなきゃ学校は成り立たんだろ?」
「それはそうですが……」
「そういうわけでもっと技の精度磨いとけよ!」
あんまり食い下がられると決意が鈍りそうなのでその場をあとにした。そんだけ惜しんでくれてるってことは喜ぶべきところなんだろうけどな。
◆◆◆
土曜日、試験当日だ。今更ながらやっぱり段階を踏ませるべきだったのではないかと後悔の念が生まれかかっているが本当に今更どうしようもない。不安は募るが生徒を信じてこその教師だ! 開き直ってモニターに向かい様子を見守る。
『はいみなさんこんにちはー! こちらは中級試験会場です! お間違えありませんかー?』
本来場違いだが間違ってはない……はずだ。
『それではルールを説明します! 会場に入る際に全員手のひらサイズの球体を受け取ったかと思います。それは基本的に体のどこにでもくっつくので今くっつけてください! 早く!』
急かしおる。
『くっつけましたね? それが今回のあなたたちのライフになります。制限時間は会長が飽きちゃうという理由から一時間半です!』
『ちょっ、それ言わないって……』
『静かにしててくださいねー、それでその球体を制限時間終了時に割らずに持っていれば合格となります!』
ちゃんと話つけてから進行してくれねぇかなー
『それからもうひとつ、球体は奪っても構いません! つまり一度割られてもまだ終わりではないのです! 以上ルール説明でした、五分後スタートとなりますので準備はぬかりなきようお願いしますねー!』
このルール、最初は自分の球体が割られてもまぁ問題ないってことで無鉄砲に向かって来るかもしれんな。逆に向かっていくのもありだが……さぁどうする?
『この試験、最初から一人一つは球体持ってるわけだよね? ってことは戦わなくてもいいんじゃない?』
『そうですけどそれだと課題が達成できませんわよ?』
『あーそうだった』
確かに道徳で無益な戦闘は避けるよう教えた。しかし今回ばかりはそれだと試合に勝って勝負に負けるようなもんだ。
『とりま待機ってことね!』
『そういうことだね』
後半まで待つのはいい判断だろう。とはいえその考えに至るのはどいつも同じなようであまり動きは無さそうだと思っていた矢先……
『おーっと! アルペジオ学園から参加の三人組、準中級試験でも名を轟かせた通称『三大尉』が十人抜きだー!』
もう動いてるやつがいるのか……だがここで動いてもらった方が好都合だ! いや待てよ、アルペジオってことは……
「ん? エビスよ、何で君が居るんだい? 君の生徒たちは準中級取ってないだろ?」
やっぱり来やがったか、現れたのは言わずもがなフクロウだ。ってか何でウロウロしてんだよ、自分の生徒ちゃんと見とけよな。
「俺んとこの生徒は優秀だから飛び級したんだよ!」
半分ハッタリだ。お世辞にも優秀とは言えない。
「ほぅ、だがいくら優秀でも今回ばかりは諦めてもらうことになるだろうね。なんせ彼らは我々が手塩にかけて育て上げている一押し生徒たちだからね」
はっ、俺だって全員一押しだし手塩にもかけている。
「わりぃがその高々と伸びた鼻へし折らせてもらうわ」
アルペジオの授業は生徒の多さから講義が多いと聞いた。俺に言わせてみれば学力的な優秀さは冒険者にはほぼ必要ない。机の上での頭のよさとフィールドにおける頭の使い方、冒険者にとってどっちが有用か見せてやろう。
どうもロカクです!
先週は飛ばしてしまって申し訳ないですm(__)m
その代わりに今日二話投稿しますので何卒よろしくお願いします!
では、次回もよろしくお願いしまーす!




