怪しい?怪しくない?いや、怪しい
~二月目まだ序盤~
「今日の家庭訪問は……」
「あーしだね!」
三番目はギョクロか、一番やばそうな気がするなぁ……
「ささっ! 行こ行こ!」
「何でそんなにテンション高いんだよ。少なからず嫌がるところだろ?」
「まぁそんなにマイナス評価ないっしょ?」
いやいや、大有りだからね!? 生徒たちの中で一、二を争うぐらい言いたいことはある! が、ヤバい家庭だったら言わないかもしれない!
「早くしないと日が暮れんよ~!」
「あぁ、悪い」
先日チユキがギョクロを送っていったことから分かるようにやはり家同士が近いらしく、今日も電車移動となった。
「はーい、こっちこっち!」
ん? この辺には一回しか来たことないのにほぼ同じ道筋を通ったことあるぞ?
「ストーップ! ディスイズマイハウス!」
何故に英語? それはともかく勘違いじゃなかった、数日前にこの隣の家に来たし間違いない。それで最初から仲が良かったわけだな。
「まさかチユキん家の隣とはなぁ」
「そーそー! 近所付き合いで昔からよく遊んでたし!」
チユキの家も立派だが、それを凌駕するこの家の規模。数日前に来たときはどんな大富豪が住んでいるのかと気になってはいたが、まさか自分の生徒だったとは……
「上がって上がって!」
「俺はここで……」
「ちょっと足怪我しちゃってるから移動が厳しいんだって!」
主語はないが普通なら母親のことだろう、そういうことならやむを得んか。
「お邪魔します」
外観同様中もおしゃれ、とはいえそこら一帯装飾品で飾っているわけでもなくシンプルゆえの豪華さが漂っている。
「先生連れて来たよー」
「失礼しま……あ……」
開け放たれた扉の先にいた人物の姿に俺は言葉通り口が塞がらない。目にはサングラスで頭はキレイな丸坊主、ベッドに仰向けで横になり足を吊っているその人はもろその道の人だ。
「おい! ギョクロ!」
「何?」
「もう帰っていいか?」
「何でよ! いいわけないし!」
小声の中に多分に込めた恐怖感をギョクロは察してくれない。その間ベッドの上の男はこっちを見ている。
「……どうも、海老沢と申します」
黙っているのが悪いのかと一応挨拶をしてみる。
「……ふむ、実に誠実そうな先生だ」
「はぁ、どうも」
「ジロジロ見てしまったこととこの状況、大変申し訳ない。私がギョクロの父です」
サングラスを取ったあとに残るその目は悪い気配は一切なく、第一印象とは裏腹に物腰の柔らかいしゃべり方だ。
「ギョクロ、お茶を」
「え~……分かったよ、先生もいるよね?」
「俺は……」
「むしろ父さんは無くていいぞ」
「あ、そういうこと? あはは……それだったらちゃんと主語言ってよねー」
危うく俺には来ない感じの流れになるところだった。別にいいんだけどね? お茶が来ないからどうこうってわけじゃないけど、今の流れは分かるだろうに。
「それで、学校で娘の様子はどうですかな?」
「そうですねぇ、危なっかしいところはありますがそれも克服してきてチームのいいムードメーカーになってます」
「そうですか、それではこれからも娘にしっかり教えてやってください。娘は将来私の右腕になる予定なのでね」
「はぁ……」
一体何をするための右腕にしようとしているのか。第一印象からするとよからぬことのような気がするが、果たして聞いていいものだろうか?
「というと……? いや、すいません、立ち入ったことを……」
「……世界を作り変えようと思っとります」
「はい?」
ヤバい、やっぱり聞いてはいけなかった。それなら断ったんだから言わなきゃいいのにとは言えない。
「この世は不自由で、凄惨で、誰がいつ自ら命を絶ったっておかしくない。それならいっそ今までのことは無かったことにして創り直せばいいという考えに至ったんですねぇ」
聞いちゃいけないと、耳を塞げと脳の二割は叫んでいる。が、聞かなきゃいけないと、目をそらすなと残りの八割が二割を押し潰す。それゆえに俺の口は固く結ばれて開かない。
「今度その第一段階を実行しようと思っとります。その成功の暁には先生も協力していただけませんかなぁ?」
「わ、私にはそんなことをするメリットはありませんので……」
「ふむ、先生は感じたことありませんか? 訳のわからない理不尽をぉ」
確かに、今までの人生で入った組織では上の人間の指示通り動いてもそれは違うと棄却されたことも少なくない。それが人間の人間による自分のための事ならなおさら誰かには理不尽が付きまとう。
「それなら一度リセットするのも悪くないと思いませんかなぁ?」
見透かされてる!? この状況では沈黙も多弁も金にはならないということか。
「この事を娘さんは知ってるんですか?」
「いえいえ、使い物になるまでは隠し通すつもりです。もちろん先生も、お願いしますよぉ?」
「……はい、もう一ついいですか?」
「どうぞ」
喉が張り付く。ギョクロは何やってんだ? 早く水分を持ってきてこの空気を打破してもらわないと声が出なくなりそうだ。
「もし娘さんがその考えに反対することになれば……」
「娘と言えど容赦はできませんなぁ」
その言葉には一瞬の迷いもなかった。この人はギョクロを、娘を何だと思ってるんだ?
「おまたせー! いやー、なかなかお茶の粉が見つからなくってねーってどうでもいいね! どうぞ!」
「悪いな」
もらって即行で飲んだお茶は熱く、口の中に粉が残るほどに濃かったが弱味を見せるまいとギリギリで堪えた。
「そんなに一気に飲んだら火傷するよ!」
「喉乾いてたんだよ」
「そう、あーしの誉め合いは終わったの?」
「そんなもんはなかったが話は終わったんで帰るぞ」
「あーそう、また明日ー」
気の抜けたギョクロの声に何も知らない彼女を少しばかりかわいそうに思いながら心の奥底から闘争心的なものが沸き上がってきていた。第一印象とその考えから全くイメージが覆ることの無かったあの男、拳を交える日もそう遠くないかもしれない。
どうも!ロカクです!
土曜二本投稿二週目二本目です!
いやー、書いてて面白い一話でしたねー。明らかにこれから関わってくるであろうギョクロ父!警戒しといてください!ww
では、また来週!




