エピローグ ラブステータス
四月。
大学のキャンパスには新入生の姿が増えていた。
桜が風に舞う。
「なおくん」
レナが笑顔で手を振る。
「お待たせ」
「いや」
「今来たところ」
自然に並んで歩く二人。
以前と違うのは。
もう隠す必要がないことだった。
「先輩ー!」
元気な声が響く。
結衣だった。
その後ろには葵と栞の姿もある。
「あっ!」
結衣は二人を見てニヤリと笑う。
「やっぱり付き合ったんですね!」
直人は少し照れながら頷いた。
「ああ」
レナも照れ笑いを浮かべる。
「うん」
結衣は両手を腰に当てる。
「もっと早く付き合ってくださいよ!」
「先輩!」
「どれだけ待たせるんですか!」
直人は苦笑した。
「悪かった」
その一言に。
みんなが笑う。
葵も優しく微笑む。
「でも」
「東條くんらしいね」
栞も頷いた。
「本当にお似合いです」
「ありがとうございます」
レナは嬉しそうに頭を下げた。
◇
数日後。
直人とレナは久しぶりにバーを訪れていた。
「いらっしゃい」
店長が笑顔で迎える。
「お久しぶりです」
「おう」
二人がカウンターへ座る。
店長は直人の顔を見るなり笑った。
「何かいいことでもあったか?」
直人はレナを見る。
二人で顔を見合わせて笑う。
「実は」
「付き合うことになりました」
店長は少し驚いたあと。
嬉しそうに笑った。
「そうか」
「おめでとう」
「ありがとうございます」
その時だった。
「こんばんは」
聞き慣れた女性の声。
振り向くと。
美月が店へ入ってきた。
「あら?」
「直人くん」
二人を見て。
すぐに察したように微笑む。
「もしかして」
「はい」
レナが照れながら頷く。
「付き合うことになりました」
美月は嬉しそうに笑った。
「やっとね」
「おめでとう」
「ありがとうございます」
「ずっと応援してたから」
「本当に嬉しい」
店長は二人の前にカクテルを置く。
「今日は俺のおごりだ」
「ありがとうございます」
二人はグラスを合わせた。
「乾杯」
「乾杯」
◇
店を出る。
春の夜風が心地良い。
二人は自然と手を繋ぐ。
「なおくん」
「ん?」
「幸せ?」
直人はレナの手を少しだけ強く握る。
「ああ」
「すごく幸せだ」
レナも嬉しそうに微笑む。
「私も」
直人はポケットからスマートフォンを取り出した。
画面には。
ラブステータス。
レナがクスッと笑う。
「まだ入ってたんだ」
「ああ」
直人も少し笑った。
「もう必要ないけどな」
「うん」
「もう必要ないね」
直人はアプリを見つめる。
恋人が欲しくて始めた日。
ランクに悩み。
自分を変えようと努力した日々。
遠回りしたからこそ。
本当に大切な人の存在に気付くことができた。
画面を長押しする。
アプリが小さく震えた。
『ラブステータスを削除しますか?』
直人は迷わず。
『アンインストール』
を押した。
アプリは静かに画面から消える。
レナは優しく微笑んだ。
「卒業だね」
「ああ」
「俺にはもう必要ない」
直人はスマートフォンをポケットへしまう。
そして。
レナの手をぎゅっと握った。
「帰ろう」
「うん」
二人は手を繋いだまま。
春の夜道をゆっくり歩いていく。
幼い頃に交わした約束は。
恋人になって終わりじゃない。
これから先も。
二人で少しずつ叶えていく。
――完――




