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第51話 未来の彼氏

 翌日。


 昼休み。


 学食。


「見てください!」


 結衣が元気だった。


 本当に元気だった。


 そして。


 嫌な予感しかしなかった。


「何だ」


「写真です!」


 スマホが差し出される。


 画面。


 そこには。


 打ち上げで撮った写真。


 結衣が腕に抱きついている。


 直人は困った顔をしていた。


「近い」


 葵が即答した。


「近いね」


 陽菜も頷く。


 結衣は嬉しそうだった。


「でしょ!」


「褒めてない」


 葵が言う。


「えっ?」


 本気で驚いていた。


 意味が分からない。


 その時。


 栞がスマホを操作する。


 数秒後。


 直人のスマホが震えた。


━━━━━━━━━━━━


近いです


━━━━━━━━━━━━


「だから何で送るんだ」


 栞が視線を逸らす。


 答えなかった。


 陽菜が吹き出す。


「可愛い」


 栞が俯いた。


 その時だった。


「おー」


 知らない声。


 振り向く。


 男子学生だった。


 見覚えはない。


「未来の彼氏」


 学食。


 静止。


 直人。


 停止。


「誰だ」


「学祭見てた」


 男子学生が笑う。


「頑張れよ」


 肩を叩かれる。


 そして去っていく。


 直人は頭を抱えた。


「お前のせいだぞ」


「ありがとうございます!」


「お前じゃない」


 結衣は全然気にしていなかった。


 むしろ。


 少し嬉しそうだった。


 その時。


 今度は女子学生。


「あっ」


 嫌な予感。


「未来の彼氏さんだ」


 直人。


 停止。


 結衣。


 笑顔。


「こんにちは!」


「こんにちはじゃない」


 女子学生は笑いながら去っていった。


 最悪だった。


「有名人だね」


 葵が笑う。


「学祭効果すごい」


 陽菜も楽しそうだった。


 栞。


━━━━━━━━━━━━


有名です


━━━━━━━━━━━━


「お前もか」


 栞は俯いたままだった。


 そして。


 少し離れた席。


 レナは友人と昼食を食べていた。


「また騒いでる」


 友人が言う。


 レナも視線を向ける。


 ちょうどその時。


「未来の彼氏さんだ」


 女子学生の声が聞こえた。


「何あれ」


 友人が吹き出す。


「知らない」


 レナが答える。


「知ってるでしょ」


「知らない」


 友人は笑う。


「東條くん有名になったね」


 レナは何も言わない。


 ただ。


 結衣が楽しそうに笑っているのは見えた。


 直人が困っているのも。


 いつも通りだった。


 その時。


 結衣がスマホを掲げる。


 何かを見せているらしい。


「何だろ」


 友人が言う。


「さあ」


 距離がある。


 何の写真かは見えない。


 だが。


 向こうの反応だけは見えた。


 葵が笑う。


 陽菜も笑う。


 栞が真っ赤になる。


「気になる?」


 友人が聞く。


「別に」


「気になるんだ」


「違う」


「気になるんだ」


 全然信じてもらえなかった。


 その頃。


 結衣は満面の笑みだった。


「先輩」


「何だ」


「未来の彼氏って定着してきましたね!」


「してない」


「してます!」


 していた。


 残念ながら。


 少しだけ。


 本当に少しだけ。


 定着し始めていた。

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