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第49話 紹介

第49話 紹介


 ライブは続いていた。


 客席の熱気も。


 最初より上がっている。


 結衣は完全にノっていた。


「みんなー!」


 歓声。


「盛り上がってますかー!」


 さらに歓声。


 直人は思う。


 こいつは本当にこういう場所が似合う。


 そして。


 一曲が終わった。


 拍手。


 歓声。


 結衣がマイクを握る。


「ありがとうございます!」


 客席から声が飛ぶ。


 結衣は嬉しそうに笑った。


「じゃあ次の曲の前に!」


 嫌な予感。


 直人は嫌な予感しかしなかった。


「メンバー紹介しまーす!」


 歓声。


 まずはドラム。


 次にベース。


 ギター。


 吹奏楽部。


 順番に紹介されていく。


 そして。


「ツインボーカル!」


 嫌な予感。


「東條直人ー!」


 拍手。


 歓声。


 直人は軽く頭を下げた。


「そして!」


 結衣が満面の笑みを浮かべる。


 嫌な予感しかしなかった。


「私の彼氏です!」


 会場。


 静止。


 直人。


 静止。


 数秒後。


 大爆笑。


「違うからな!?」


 直人が即座にマイクを奪う。


 さらに笑いが起きた。


「えー!」


 結衣が不満そうな顔をする。


「違うんですかー!」


 客席からも笑い声。


「違う!」


「即答でした!」


「当たり前だ!」


 会場。


 爆笑。


 観客席。


 葵が前屈みになって笑っていた。


「やると思った」


「私も」


 陽菜も肩を震わせている。


 少し離れた場所。


 栞は固まっている。


 さらに後ろ。


 レナの友人はお腹を抱えていた。


「面白すぎる」


「そう?」


 レナは苦笑する。


 だが。


 少しだけ。


 羨ましいとも思った。


 あそこまで真っ直ぐなのは。


 少しだけ。


 そして。


 次の曲が始まる。


 会場はさらに盛り上がった。


 直人も。


 気付けば普通に歌っていた。


 そして。


 数曲後。


 再びトークタイム。


「さっき誤解があったので訂正します!」


 結衣が言った。


 直人は嫌な予感しかしなかった。


「東條先輩は私の彼氏ではありません!」


 拍手。


 歓声。


 直人は少し安心する。


 だが。


 安心したのが間違いだった。


「未来の彼氏です!」


 会場。


 大爆笑。


 直人。


 停止。


「違う!」


 即答だった。


「まだです!」


 結衣も即答だった。


「まだって何だ!」


 会場。


 さらに爆笑。


 観客席。


 葵が笑いすぎて涙目だった。


 陽菜も肩を震わせている。


 栞は顔を真っ赤にしていた。


 レナは。


 思わず吹き出していた。


「笑った」


 友人が言う。


「笑ってない」


「笑った」


「笑ってない」


 全然説得力がなかった。


 ステージ。


 結衣は満足そうだった。


 直人は頭を抱えていた。


 だが。


 客席の反応は最高だった。


 歓声。


 拍手。


 笑い声。


 全部。


 結衣の思い通りだった。


「次が最後の曲です!」


 結衣が叫ぶ。


 客席からブーイング。


「大丈夫です!」


 結衣が笑う。


「終わったら打ち上げです!」


「関係ないだろ!」


 直人がツッコむ。


 会場。


 また爆笑。


 たぶん。


 ライブとしては。


 大成功だった。

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