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第19話 静かなひと時

 セリカちゃんもアヤメちゃんも去った後、静かな館の中で一人静かに本を読んでいた。

 久しぶりかもしれない、こんなにのんびりとした夜を迎えるのは。


 最近は賑やかで、毎日が慌ただしくて、休まる日はなかったわけだがそれはそれで有意義だった。


「あ、そろそろご飯を作らないと」


 生憎作り置きもないから作らないといけない。

 自分で料理を作るというのは非常に楽だ、自分好み作ればいいし、調味料をかければいい。

 セリカちゃんの凶悪料理を食べるのもいいけど、たまにはね。


「……あ、二人分作ってしまった」


 最近二人分を作ることが多かったから、ついつい二倍量で作ってしまった。因みに僕はセリカちゃんの料理を食べるから、少女二人分だが。

 余った分は明日のご飯にでもすればいいか。





「随分寂しそうじゃないか」


「…………レイナさん、帰ってたんですね」


 台所の入り口にはレイナさんが腕組みしながら壁に寄りかかっていた。いきなり帰ってくるなんてびっくりするな、まったく。


「僕がそんなに寂しそうに見えますか?」


「ああ、毎日楽しそうだったしな」


「……」


 どうなんだろう、そうなのかもしれない。僕の中ではレイナさんとの生活が一番好きなのだが、ここ数ヶ月で周りは全然変わっていった……いや、周りが変わって僕も変わったのかもしれない。


「だからセリカの分の料理も間違って作ったんじゃねえのか?」


「…………これはレイナさん分ですよ」



 二人分の量を盛り付けていたため、僕は背を向けたまま表情を変えずに淀みなく答えるが、彼女にはそれが嘘だとわかっているはずだ。

 テーブルに持っていくと、彼女はにやにやしながら席に着いていた。


「いただきます」


「やっぱりゼロちゃんの料理は、おいしいけど無機質だよな」


「それは褒めてないですよね」


「褒めてるじゃねえか、ちゃんと」


 多分特徴がなく、教科書通りという文面なのだろう。褒めてはいないことはわかるが、それは仕方ないと思う。僕は味見しても違いがよくわからない。それでも他の人たちが食べてくれるという事は無難においしいと信じている。



「で、今回も見てたんですか?」


「あ? くノ一にお漏らしさせたり、闇討ちに来た忍者を言いくるめたり、老人どもを丸め込んだりしたことか?」


「……要約のされ方がひどく悪意がありませんか? しかも最後は僕じゃないですし」



「ま、二大忍者衆の一派を取り込んだってのはよくやったんじゃないのか?」


 別に取り込みたくて取り込んだわけじゃないんだけど。

 そもそも本当は断る予定だったのに、なんか適当に流れに乗っていたらこうなってしまった。


 レイナさんは上品な動作で食事を食べつつ、僕の顔を覗き込んで笑っている。



「二人の食事ってのもたまにはいいもんだな」


「そうですね、前まではこれが普通だと思っていましたが」



「今と前、どっちがいい?」


「どっちなんでしょうね。静かな平和な日々も好きですが、たまには和気藹々した日々も悪くはないって思います」


 レイナさんは僕の顔を見ながら、まるで保護者のように生暖かい目を向けてきた。正確に言うと保護者なんだろうけど、なんかこの人にそういう目で見られると少し釈然としない部分はある。

 僕が圧倒的にお世話しているはずなのだから。


「たまには二人でデートでも行くか」


「へ?」


 少し間抜けな言葉が出てしまった。


「そろそろ世界樹の葉が切れる頃だろ? あたしはこの紅茶が好きなんだ」


 一緒にとりに行くという事か。

 一瞬でもデートでイチャイチャすることを考えてしまった自分が恥ずかしい。


「あれが高価な葉だって教えてくれてもよかったじゃないですか」


 気軽に飲んでいたから気が付かなった。

 正直レイナさんの下で暮らしている僕はお金という概念にあまり囚われることがなかった。唯一使うのはサイオンさんとの取引だけだし、生活必需品はレイナさんのお金だ。


「別にどうでもいいだろ?」


「この森に群生しているんだからもっと広めればいいじゃないですか、大して稀少価値の高いものでもなさそうだし」


「……そういうところは随分感性がずれているよな、お前は」


 どういう意味で言っているのかはわからない。稀少価値があるから、間口を狭めてぼろ儲けするべきってことなのかな?

 レイナさんもそういう発想があるのか、お金とか執着しなさそうなのに。


「でも、レイナさんが一緒に来てくれるなんてどうしたんですか?」


「ん? 少し機嫌がいいだけ」


 確かにレイナさんは機嫌良さそうだ。しかし、大抵こういう時は帳尻合わせのように僕にとんでもない目に遭ってきている。だからこそ警戒する。


「おいおい、まったくこの弟子ときたら。少しはあたしを信頼したらどうだ?」


「今までの行動と言動を反省して来世に期待してください」


 彼女が空のカップを僕に差し出してきそうな雰囲気だったので、先回りしてカップにティーポットを傾けてお代わりを注ぐ。

 

 因みに彼女がご機嫌だったせいでこの後僕はとばっちりを受けることになるのだが、それはまた次のお話だ。


 今はこの静かなひと時を師匠と過ごすのだ。


2章まで閲覧して頂きありがとうございました。

よろしければブックマークや感想などいただけると嬉しいです。

特に誤字脱字があれば教えてくれると作者は狂喜乱舞します。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 師匠は勘違いしてるのかな?(馬鹿)
2020/10/02 17:35 ハリケーン
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