Chapter6卒業編♯29 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海
向日葵が教えてくれる、波には背かないで
Chapter6卒業編 √文芸部(波音物語)×√軽音部-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海
登場人物
滅びかけた世界
ナツ 16歳女子
ビビリな面も多く言葉遣い荒い。勤勉家。母親が自殺してしまい、その後は一人で旅を続けていたがスズと出会い行動を共にするようになった。
スズ 15歳女子
マイペース、ナツと違い勉強に興味なし。常に腹ペコ。食べ物のことになると素早い動きを見せるが、それ以外の時はのんびりしている。
ナツと共に奇跡の海を目指してやって来た。
老人 男
ナツの放送を聞いて現れた謎の人物。元兵士の男。緋空浜の掃除を一人でしている。Narumi Kishiと彫られたドッグタグを身に付けているがその正体は・・・
中年期の明日香 女子
老人ともう一人の兵士を見送りに来た、中年期頃の明日香。
七海 女子
中年期の明日香と同じく、老人ともう一人の兵士を見送りに来た少女。年齢は15、16歳。
老人と同世代の男兵士1 男子
中年期の明日香、七海に見送られていた兵士。老人、レキ、男兵士2と同じ隊に所属していた。
レキ 女子
老人たちと同じグループの若い女兵士で、年齢は25歳前後。老人、男兵士1、男兵士2と同じ隊に所属していた。老人とは親しかった様子。
老人と同世代の男兵士2 男子
中年期の老人、男兵士1、レキと同じ隊に所属している兵士。
滅んでいない世界
貴志 鳴海 18歳男子
波音高校三年三組、運動は得意だが勉強は苦手。無鉄砲な性格。両親を交通事故で失っている。歳の離れた姉、風夏がいるが仕事で忙しいため実質一人暮らし状態である。文芸部副部長。 Chapter4の終盤に菜摘と付き合い始めた。
早乙女 菜摘 18歳女子
波音高校三年三組、病弱で体調を崩しやすい、明るく優しい性格。文芸部部長。鳴海と付き合っている。生徒会選挙の直後に原因不明の病に襲われ、現在は入院中。
白石 嶺二 18歳男子
波音高校三年三組、鳴海の悪友、不真面目なところもあるが良い奴。文芸部のいじられキャラである。高校卒業後は上京してゲームの専門学校に通うことを考えている。
天城 明日香 18歳女子
波音高校三年三組。成績も良くスポーツ万能、中学生の時は女子ソフトボール部に所属していた。ダラダラばかりしている鳴海と嶺二を何かと気にかけては叱る。文芸部部員。夢は保育士になること。最近は受験前のせいでストレスが溜まっている。なんだかんだで響紀とは良い関係。
南 汐莉15歳女子
波音高校に通っている一年生、文芸部と軽音楽部の掛け持ちをしている。バンド”魔女っ子少女団”のメインボーカルで歌とギターが得意。20Years Diaryという日記帳で日々の行動を記録している。Chapter5の終盤に死んでしまう。
一条 雪音18歳女子
波音高校三年三組、才色兼備な女生徒。元天文学部部長で、今は文芸部に所属。真面目な性格のように見えるが・・・
柊木 千春女子
Chapter2の終盤で消えてしまった少女で、嶺二の想い人。
三枝 響紀15歳女子
波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のリーダー兼リードギター担当。クールで男前キャラ、同性愛者、 Chapter3で明日香に一目惚れして以来、彼女に夢中になっている。
永山 詩穂15歳女子
波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のベース担当。基本はマイペースだが、キツい物言いをする時もある。
奥野 真彩15歳女子
波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のドラム担当。バンドの賑やかし要員。
早乙女 すみれ45歳女子
菜摘の母、45歳には見えない若さ美しさを保つ。優しい、とにかく優しい。
早乙女 潤46歳男子
菜摘の父、菜摘とすみれを溺愛しており二人に手を出そうとすれば潤の拳が飛んでくる。自動車修理を自営業でやっている。永遠の厨二病。
神谷 志郎43歳男子
波音高校三年の教師。鳴海、菜摘、嶺二、明日香、雪音の担任。担当教科は数学。文芸部顧問。Chapter5の終盤に死んでしまう。
荻原 早季15歳女子
Chapter5に登場した正体不明の少女。
貴志 風夏24歳女子
鳴海の6つ年上の姉、忙しいらしく家にはほとんど帰ってこない。智秋と同級生で親友関係。いつの間にか看護師の仕事を始めている。
一条 智秋24歳女子
雪音の姉。妹と同じく美人。謎の病に苦しんでいたがChapter3の終盤にドナーが見つかり一命を取り留めたものの、再び体調を崩し現在は入院中。
双葉 篤志18歳男子
波音高校三年二組、天文学部副部長。雪音とは幼馴染み。
有馬 勇64歳男子
波音町にあるゲームセンター“ギャラクシーフィールド”の店主。千春が登場したゲーム、”ギャラクシーフィールドの新世界冒険”の開発者でもある。なお現在の”ギャラクシーフィールド”は儲かっている。
細田 周平15歳男子
野球部に所属している一年生。Chapter5では詩穂に恋をしていた。
貴志 紘
鳴海の父親、事故で亡くなっている。菜摘の父、潤と高校時代クラスメートだった。
貴志 由香里
鳴海の母親、事故で亡くなっている。菜摘の母、すみれと高校時代クラスメートだった。
神谷 絵美29歳女子
神谷の妻。Chapter5では妊娠していた。
波音物語に関連する人物
白瀬 波音23歳女子
波音物語の主人公兼著者。妖術を使う家系『海人』の末裔、そして最後の生き残り。Chapter4の終盤、妖術を使い奈緒衛の魂を輪廻させ、自らの魂も輪廻出来るようにした。
佐田 奈緒衛17歳男子
波音の戦友であり恋仲。優れた剣術を持ち、波音とは数々の戦で戦果をあげた。Chapter4の終盤に死んでしまった人物。
凛21歳女子
波音、奈緒衛を慕う女中。緋空浜の力を持っており、遥か昔から輪廻を繰り返してきた。波音に輪廻を勧めた張本人。体が弱い。奈緒衛と同じくChapter4の終盤に死んでしまった人物。
明智 光秀55歳男子
織田信長と波音たちを追い込み凛を殺した。
織田 信長48歳男子
天下を取るだろうと言われていた武将。
一世 年齢不明 男子
ある時波音が出会った横暴で態度の悪い男。
Chapter6卒業編♯29 √文芸部(波音物語)×√軽音部-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海
◯1314社殿の門(500年前/日替わり/昼)
快晴
上杉軍との戦から社殿に戻って来た波音、奈緒衛を含む織田軍の武士たち
波音たちは馬に乗っている
門をくぐり社殿の中に入る波音たち
波音たちの帰還を迎える凛
馬から降りる波音と奈緒衛
凛「お帰りなさいませ!」
奈緒衛「凛、出迎えは禁じられているのだぞ」
凛「良いではありませんか、波音様と奈緒衛様のお姿をこの目に焼き付けておきたいのです」
波音「禁を犯すとはお主も悪だな」
凛「どうかお許しを。私めはお二人の無事を確認したかったのです」
波音「仕方のない子だ、大目に見てやろう」
◯1315社殿/波音の寝室縁側(500年前/昼過ぎ)
それほど広くない畳の部屋
部屋には寝るための布団が置いてあり、それ以外に物はない
縁側に座っている波音、奈緒衛
中庭には松の木が生えている
抹茶が注がれた茶碗を持ち運んで来る凛
熱々の抹茶が注がれた茶碗を縁側に置く凛
凛「戦はいかがでしたか?」
奈緒衛「いつもと変わらぬ。凛の予知した通りの敵が現れ、其奴らを葬るのみ」
凛「私めも一度で構いませんので、戦に行ってみたいものです」
抹茶が注がれた茶碗を手に取り、抹茶をゆっくり飲む波音
波音「(抹茶をゆっくり飲んで)そなたには向いておらぬだろう」
奈緒衛「同意見だ、惨たらしい屍を見て取り乱すんじゃないのか?」
抹茶が注がれた茶碗を縁側に置く波音
凛「屍如きで私は動じません!お二人以上の戦果を上げてみせましょう」
腰につけた短刀(鞘にしまったままの状態)を取り出す凛
波音はすかさず凛の近くに置いてあった抹茶が注がれた茶碗を手に取る
凛は短刀を振り回す
凛「(短刀を振り回しながら)てやっ!!とうっ!!せいっ!!!」
奈緒衛「あ、危ないだろ凛!!波音が抹茶をどかさねば火傷を負ったところだったぞ!!」
凛「(短剣を振り回すのをやめて)も、申し訳ございませぬ奈緒衛様!!」
奈緒衛「き、気をつけてくれよ」
凛「はい・・・」
凛は短刀を腰に差す
波音は抹茶が注がれた茶碗をそっと元あった位置に置く
奈緒衛「しかし波音、よく瞬時に動けたな」
波音「私にも驚きだ」
凛「目にも止まらぬ早業でございましたね!!」
奈緒衛「ああ。刀を抜くのと変わらぬ動きだった」
波音「凛が申すところの勘とやらが働いてのう・・・それで思わず手に取ったのだ・・・」
奈緒衛「お陰様で俺は火傷を負わずに済んだよ」
波音「うむ、お主を怪我から守れて良かった」
◯1316貴志家リビング(日替わり/朝)
外は晴れている
時刻は七時半過ぎ
制服姿で椅子に座ってニュースを見ている鳴海
キッチンで風夏が弁当を作っている
ニュースキャスター2「今年のバレンタイン商法は・・・」
風夏「(弁当を作りながら)バレンタインだってさ〜!!」
鳴海「ああ」
風夏「(弁当を作りながら)お姉ちゃん今年は張り切っちゃおうかな〜!!」
鳴海「姉貴は毎年張り切ってるじゃないか」
風夏「(弁当を作りながら)今年は一味違うんだよ〜!!」
鳴海「俺の分は作らなくて良いぞ」
風夏「(弁当を作りながら)もう材料を買ってあるから作る〜」
鳴海「(驚いて)も、もう買ったのか!?」
風夏「(弁当を作りながら)心の中でね〜」
少しの沈黙が流れる
鳴海「お、俺は菜摘から貰えるだろうから、姉貴は旦那の分だけ作っとけよ」
風夏「(弁当を作りながら)付き合ってる女の子から無条件でチョコレートが貰えると思うな〜!!」
鳴海「あ、ああ・・・も、貰えないという可能性も頭に入れておくべきだったか・・・」
◯1317波音高校校門(朝)
たくさんの生徒たちが門を潜って学校の中へ入って行く
校門の前で部員募集を行っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩
鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩は部員募集の紙の束を持っている
鳴海たちは通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出している
鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、響紀、詩穂、真彩はマフラーと手袋を身につけている
鳴海と嶺二は紺色の、菜摘、明日香、汐莉、響紀、詩穂、真彩は白色のマフラーと手袋を身につけている
マフラーと手袋には小さくペンと音符が刺繍されている
雪音だけ嶺二から貰ったマフラーと手袋をしていない
雪音の指先が赤くなっている
鳴海「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら大きな声で)文芸部員を募集してます!!!!本が好きな人はぜひ放課後部室に顔を出しに来てください!!!!部室は特別教室の四です!!!!」
菜摘・明日香・嶺二・汐莉・雪音・響紀・詩穂・真彩「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら大きな声で)よろしくお願いしまーす!!!!」
鳴海たちの前を通りかかる生徒たちは、文芸部のことを気に留めず周りの生徒たちと楽しそうに話をしながら校舎内へ入って行く
◯1318波音高校男子トイレ(午前中)
男子トイレで手を洗っている鳴海と嶺二
男子トイレには鳴海と嶺二以外に人はいない
話をしている鳴海と嶺二
嶺二「(手を洗いながら)菜摘ちゃんならくれるに決まってんだろ・・・」
鳴海「(手を洗いながら)よ、よく考えてくれ嶺二・・・(菜摘の真似をして)朗読劇が控えてるのにチョコレートなんかあげられないよ・・・って言うかもしれないだろ!!」
嶺二「(手を洗いながら)あ、あり得るな・・・」
鳴海「(手を洗いながら)ああ・・・」
鳴海と嶺二は手を洗い終える
男子トイレの扉を開けて廊下へ出る鳴海と嶺二
鳴海と嶺二は文芸部の部室を目指す
廊下を歩いている鳴海と嶺二
一年生、二年生は授業中、三年生は自由登校のため廊下には鳴海と嶺二しかいない
嶺二「鳴海、良い作戦を思いついちまったぜ」
鳴海「さ、作戦だと!?」
嶺二「おうよ」
鳴海「き、聞かせてくれ!!」
嶺二「バレンタインにはチョコをくれって菜摘ちゃんに頼むんだ」
少しの沈黙が流れる
鳴海「た、確かに前もって頼めばチョコを貰える確率は格段にアップするが・・・」
嶺二「だろ!!」
鳴海「だ、だけど納得は出来ないな・・・」
嶺二「な、何でだよ!?」
鳴海「俺にもプライドがある・・・」
嶺二「ちょ、チョコが貰えなくてもいーのか鳴海!!」
鳴海「い、いや・・・それは困るな・・・」
嶺二「試しに俺が女子たちに頼んでみてもいーぜ?」
鳴海「た、試しにって誰に頼むんだよ」
嶺二「まずは明日香だな」
鳴海「ぶっ飛ばされてもしらないぞ・・・」
嶺二「ぶっ殺されるよりはぶっ飛ばされる方が良いじゃねーか」
◯1319波音高校食堂(昼)
昼休み
食堂にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩
混んでいる食堂
注文に並ぶ生徒がたくさんいる
昼食を食べ終えている鳴海たち
食堂のテーブルはほとんど埋まっている
鳴海たちは話をしている
嶺二「明日香、バレンタインデーにはチョコをくれるよな」
明日香「あげないけど?」
少しの沈黙が流れる
嶺二「た、頼んだらくれるよな?明日香」
明日香「何であんたにあげなきゃいけないのよ・・・」
再び沈黙が流れる
嶺二「(寂しそうに)ど、どーだ鳴海・・・た、試す価値はあっただろ・・・」
鳴海「精神的にぶっ殺されてるじゃねえか・・・」
嶺二「ま、まあやん・・・オラにチョコレートを分けてくれ〜・・・」
真彩「良いっすよ。自分が作ったのでも良ければバレンタインに持ってきます」
嶺二「(嬉しそうに)み、見たか鳴海!!頼めばチョコは手に入るんだよ!!」
鳴海「そ、そうだな・・・」
雪音「鳴海も頼もうとしてるの?」
鳴海「(大きな声で)た、頼むわけないだろ!!!!」
雪音「そう」
明日香「怪し過ぎるでしょ鳴海・・・」
鳴海「ちょ、チョコをねだる奴は嶺二だけだ!!」
汐莉「じゃあ先輩、菜摘先輩にチョコを頼まなくても貰える自信があるんですか?」
鳴海「あ、当たり前じゃないか!!お、俺と菜摘は付き合ってるんだぞ」
詩穂「これで貰えなかったら・・・」
響紀「日頃の行いが悪かったんでしょう」
鳴海「お前が言うなお前が!!」
響紀「私は明日香ちゃんから山のようにチョコレートの貰うので」
明日香「や、山のようには無理だけどね・・・」
鳴海「な、菜摘!!」
菜摘「う、うん」
鳴海「ば、バレンタインにはチョコを・・・い、いや・・・やっぱり何でもない・・・」
詩穂「ここで言わないのはチキンだなぁ・・・」
鳴海「れ、嶺二みたいに頼むよりは良いだろ!!」
嶺二「鳴海もほぼ頼んだよーな・・・」
鳴海「(嶺二の話を遮って)み、みんな!!も、もうこの話はやめよう!!バレンタインなんてまだまだ先のことなんだ!!」
汐莉「やめようって、そもそも鳴海先輩たちからふっかけ来た話題ですよね。しかもバレンタインってもうすぐですけど?」
少しの沈黙が流れる
鳴海「ほ、ホワイトデーのお返しを頼む奴はいないのか?」
菜摘「バレンタインデーとかホワイトデーのお菓子って頼むものじゃないと思うよ、鳴海くん」
再び沈黙が流れる
鳴海「(小声でボソッと)お、俺は頼んでないとだけ言っておくぞ・・・」
◯1320波音高校特別教室の四/文芸部室(放課後/夕方)
夕日が沈みかけている
文芸部の部室にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩
円の形に椅子を並べて座っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩
教室の隅にパソコン六台、プリンター一台、部員募集の紙が置いてある
鳴海たちは話をしている
響紀「はい、生徒会にも頼みました。あ、因みに頼んだと言うのはチョコレートのことではなくて・・・」
鳴海「(響紀の話を遮って)いつ体育館が空くのか分からないのか」
響紀「二月の下旬には空きますよ。三年生を送る会のリハーサルもあるので」
菜摘「響紀ちゃん、それより前に使うことは絶対に無理なの?」
響紀「生徒会の力では無理ですね」
少しの沈黙が流れる
明日香「体育館が使える日までは、部室で練習をするしかなさそうね・・・」
嶺二「そりゃきびしーぜ明日香、体育館じゃなきゃ分かんねーこともあるんだしよ」
明日香「極力体育館でしか確認出来ない動作を減らすとかして、どうにか対処しましょ」
詩穂「それでも朗読とライブの入れ替わりは早めに確かめたいです。楽器はステージの上に置いとくのか、幕を下ろして毎回置きに行くのか、私たちはライブが終わったらステージの裏に戻れば良いのか。現場での動きが分からないと当日混乱します」
明日香「そうね・・・」
再び沈黙が流れる
雪音「体育館を借りたいならもう一度大人に頼めば良いじゃん」
真彩「大人って誰っすか?」
雪音「神谷」
少しの沈黙が流れる
鳴海「またあいつか・・・」
菜摘「またってことは前にも頼んでるんだよね?」
鳴海「ああ」
汐莉「鳴海先輩・・・」
鳴海「何だ?」
汐莉「もう一回神谷先生にお願いしてみませんか・・・?」
鳴海「あいつは役に立たないだろ」
汐莉「そんなことないです・・・(少し間を開けて)神谷先生なら何とかしてくれると思います・・・」
◯1321波音高校職員室(放課後/夕方)
職員室にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩
鳴海たちは神谷の席の近くで神谷と話をしている
職員室では神谷の他に作業をしている教師がたくさんいる
神谷「体育館は・・・難しくてね」
少しの沈黙が流れる
鳴海「先生、俺たちは本気なんです」
神谷「知ってるよミスターグイド、君たちが本気なのは俺も重々承知している」
嶺二「先生のパワーでどうにかならないんすか」
神谷「嶺二はまず買収以外の方法を考えてみなさい」
菜摘「買収・・・?」
鳴海「(小声で)気にするな菜摘」
菜摘「うん・・・(少し間を開けて)先生、三年生を送る会を成功させるために、体育館を押さえてもらえませんか?」
再び沈黙が流れる
汐莉「神谷先生・・・朗読劇を成功させたいんです・・・だからお願いします・・・私たちに神谷先生のことを頼らせてください・・・」
少しの沈黙が流れる
神谷「先生の負けだな・・・(少し間を開けて)校長や他の先生方に直接交渉して、出来る限りのことをやってみよう。ただし、それでダメだったら諦めるんだよ。分かったね?みんな」
菜摘「は、はい!!ありがとうございます!!」
◯1322早乙女家に向かう道中(放課後/夜)
日が沈み暗くなっている
菜摘を家に送っている鳴海
部活帰りの学生がたくさんいる
鳴海と菜摘はマフラーと手袋をしている
鳴海は紺色の、菜摘は白色のマフラーと手袋をしている
マフラーと手袋には小さくペンと音符が刺繍されている
鳴海と菜摘は話をしている
菜摘「神谷先生、借りてくれるかな?」
鳴海「期待はしない方が良いと思うぞ菜摘」
菜摘「そっか・・・神谷先生って部室にも滅多に来ないよね」
鳴海「あいつは俺たち生徒に興味がないんだろ」
少しの沈黙が流れる
菜摘「心配だな・・・このまま私たちが卒業したら、汐莉ちゃんは神谷先生と二人きりで文芸部の活動をすることになっちゃうから・・・」
◯1323社殿/波音の間縁側(500年前/夜)
◯1314、◯1315と同日
それほど広くない畳の部屋
部屋には寝るための布団が置いてあり、それ以外に物はない
中庭から月の光が差し込んでいる
中庭には松の木が生えている
縁側に座っている波音と奈緒衛
酒器に注がれている焼酎が波音の隣に置いてある
話をしている波音と奈緒衛
奈緒衛「先の戦も凛の予知通りだったな・・・俺はこの目で見える物以外は信じないつもりだったが・・・やはり凛の力は信じるよりほかないようだ」
少しの沈黙が流れる
波音「以前、まだ奈緒衛がこの社殿に来る前のことだが、凛に尋ねたことがある。そなたの不思議な力はどこで身につけたのかと。(少し間を開けて)凛は故郷の海から授かった贈り物なのですと答えた」
奈緒衛「確か同郷なのだろう?凛は波音の血縁者ではないか?」
波音「いいや。海人はもう私だけだ。一説によるとあの地方では凛のような子が時々生まれるらしい。特別な力を持った子供がな」
奈緒衛「海人とは別にそういうのもおるのか・・・」
波音「無能な海人の私と違って・・・凛の力は本物だ。戦が終わった後、悪用されねば良いのだが・・・」