表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/119

Chapter6生徒会選挙編♯6 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海

向日葵が教えてくれる、波には背かないで


Chapter6生徒会選挙編 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海


登場人物


滅びかけた世界


ナツ 16歳女子

ビビリな面も多く言葉遣い荒い。勤勉家。母親が自殺してしまい、その後は一人で旅を続けていたがスズと出会い行動を共にするようになった。


スズ 15歳女子

マイペース、ナツと違い勉強に興味なし。常に腹ペコ。食べ物のことになると素早い動きを見せるが、それ以外の時はのんびりしている。

ナツと共に奇跡の海を目指してやって来た。


老人 男

ナツの放送を聞いて現れた謎の人物。元兵士の男。緋空浜の掃除を一人でしている。Narumi Kishiと彫られたドッグタグを身に付けているがその正体は・・・






老人の回想に登場する人物


中年期の老人 男子

兵士時代の老人。


中年期の明日香 女子

老人ともう一人の兵士を見送りに来た、中年期頃の明日香。


七海 女子

中年期の明日香と同じく、老人ともう一人の兵士を見送りに来た少女。年齢は15、16歳。


老人と同世代の男兵士1 男子

中年期の明日香、七海に見送られていた兵士。中年機の老人、レキ、男兵士2と同じ隊に所属している。


レキ 女子

老人たちと同じグループの若い女兵士で、年齢は25歳前後。中年期の老人、男兵士1、男兵士2と同じ隊に所属している。


老人と同世代の男兵士2 男子

中年期の老人、男兵士1、レキと同じ隊に所属している兵士。


アイヴァン・ヴォリフスキー 男子

ロシア人。たくさんのロシア兵を率いている若き将校。容姿端麗で、流暢な日本語を喋ることが出来る。年齢は20代後半ほど。


両手足が潰れたロシア兵 男子

重傷を負っているロシア人の兵士。中年期の老人と出会う。






滅んでいない世界


貴志 鳴海(なるみ) 18歳男子

波音高校三年三組、運動は得意だが勉強は苦手。無鉄砲な性格。両親を交通事故で失っている。歳の離れた姉、風夏がいるが仕事で忙しいため実質一人暮らし状態である。文芸部副部長。 Chapter4の終盤に菜摘と付き合い始めた。


早乙女 菜摘(なつみ) 18歳女子

波音高校三年三組、病弱で体調を崩しやすい、明るく優しい性格。文芸部部長。鳴海と付き合っている。


白石 嶺二(れいじ) 18歳男子

波音高校三年三組、鳴海の悪友、不真面目なところもあるが良い奴。文芸部のいじられキャラである。高校卒業後は上京してゲームの専門学校に通うことを考えている。


天城 明日香(あすか) 18歳女子

波音高校三年三組。成績も良くスポーツ万能、中学生の時は女子ソフトボール部に所属していた。ダラダラばかりしている鳴海と嶺二を何かと気にかけては叱る。文芸部部員。夢は保育士になること。最近は響紀に好かれて困っており、かつ受験前のせいでストレスが溜まっている。


南 汐莉(しおり)15歳女子

波音高校に通っている一年生、文芸部と軽音楽部の掛け持ちをしている。明るく元気。バンド”魔女っ子少女団”のメインボーカルで歌とギターが得意。20Years Diaryという日記帳で日々の行動を記録している。Chapter5の終盤に死んでしまう。


一条 雪音(ゆきね)18歳女子

波音高校三年三組、才色兼備な女生徒。元天文学部部長で、今は文芸部に所属。真面目な性格のように見えるが・・・


柊木 千春(ちはる)女子

Chapter2の終盤で消えてしまった少女で、嶺二の思い人。


三枝 響紀(ひびき)15歳女子

波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のリーダー兼リードギター担当。クールで男前キャラ、同性愛者、 Chapter3で明日香に一目惚れして以来、彼女に夢中になっている。


永山 詩穂(しほ)15歳女子

波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のベース担当。おっとりとしている。


奥野 真彩(まあや)15歳女子

波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のドラム担当。バンドの賑やかし要員。


早乙女 すみれ45歳女子

菜摘の母、45歳には見えない若さ美しさを保つ。優しい、とにかく優しい。愛車はトヨタのアクア。


早乙女 (じゅん)46歳男子

菜摘の父、菜摘とすみれを溺愛しており二人に手を出そうとすれば潤の拳が飛んでくること間違いなし。自動車修理を自営業でやっている。愛車のレクサスに“ふぁるこん”と名付けている。永遠の厨二病。


神谷 志郎(しろう)43歳男子

波音高校三年の教師。鳴海、菜摘、嶺二、明日香、雪音の担任。担当教科は数学。文芸部顧問。Chapter5の終盤に死んでしまう。


荻原 早季(さき)15歳女子

Chapter5に登場した正体不明の少女。


貴志 風夏(ふうか)24歳女子

鳴海の6つ年上の姉、忙しいらしく家にはほとんど帰ってこない。智秋と同級生で親友関係。仕事をしつつ医療の勉強をしている。


一条 智秋(ちあき)24歳女子

雪音の姉。妹と同じく美人。謎の病に苦しんでいたがChapter3の終盤にドナーが見つかり、一命を取り留めた。リハビリをしながら少しずつ元の生活に戻っている。


双葉 篤志(あつし)18歳男子

波音高校三年二組、天文学部副部長。


有馬 (いさむ)64歳男子

波音町にあるゲームセンター“ギャラクシーフィールド”の店主。千春が登場したゲーム、”ギャラクシーフィールドの新世界冒険”の開発者でもある。


細田 周平(しゅうへい)15歳男子

野球部に所属している一年生。Chapter5では詩穂に恋をしていた。


貴志 (ひろ)

鳴海の父親、事故で亡くなっている。菜摘の父、潤と高校時代クラスメートだった。


貴志 由夏理(ゆかり)

鳴海の母親、事故で亡くなっている。菜摘の母、すみれと高校時代クラスメートだった。


神谷 絵美(えみ)29歳女子

神谷の妻。Chapter5では妊娠していた。


波音物語に関連する人物






白瀬 波音(なみね)23歳女子

波音物語の主人公兼著者。妖術を使う家系『海人』の末裔、そして最後の生き残り。Chapter4の終盤、妖術を使い奈緒衛の魂を輪廻させ、自らの魂も輪廻出来るようにした。


佐田 奈緒衛(なおえ)17歳男子

波音の戦友であり恋仲。優れた剣術を持ち、波音とは数々の戦で戦果をあげた。Chapter4の終盤に死んでしまった人物。


(りん)21歳女子

波音、奈緒衛を慕う女中。緋空浜の力を持っており、遥か昔から輪廻を繰り返してきた。波音に輪廻を勧めた張本人。体が弱い。奈緒衛と同じくChapter4の終盤に死んでしまった人物。


明智 光秀(みつひで)55歳男子

織田信長と波音たちを追い込み凛を殺した。

Chapter6生徒会選挙編 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海


◯543貴志家リビング(日替わり/朝)

 時刻は七時半過ぎ

 制服姿で椅子に座ってニュースを見ている鳴海


ニュースキャスター3「昨晩、メナス議員を支持する19歳の青年が、地下鉄で放火を・・・」


 テレビを消す鳴海

 立ち上がる鳴海


◯544波音高校三年三組の教室(朝)

 教室に入る鳴海

 朝のHRの前の時間

 神谷はまだ来ていない

 どんどん教室に入ってくる生徒たち

 教室にいる生徒たちは周りにいる人と喋ったり、立ち歩いたり、スマホを見たりしている

 菜摘、嶺二、雪音が教室の窓際で話をしている 

 明日香は隣の席の女子と喋っている

 チラッと明日香のことを見て、自分の席にカバンを置き窓際に行く鳴海


菜摘「おはよう鳴海くん」

鳴海「ああ・・・」

嶺二「んだよ機嫌悪いのかお前」

鳴海「まあな」

菜摘「大丈夫?救急車呼ぼっか?」

鳴海「機嫌悪いだけで救急車を呼ぶんじゃねえ」

菜摘「(驚いて)め、珍しく鳴海くんのツッコミにキレがない!!」

鳴海「すまん・・・今日はちょっと疲れてるんだ」

雪音「それなら早退したら?」

鳴海「風邪引いてるわけでもねえのに早退なんかしてたまるか」

嶺二「とか言って熱でもあんじゃねーの?」

鳴海「ねえよ。馬鹿なことを言ってないでさっさと軽音部の連中を呼び出してくれ。また明日香と・・・(深くため息を吐いて)話をしなきゃならねえんだ・・・」

嶺二「鳴海、今日は明日香との話は無しだぜ。代わりに軽音部から大事な話があるんだってよ」

鳴海「軽音部から?」

嶺二「そーそー。軽音部との大事な話があるから、明日香と話をするのはやめようってさっき話をして決まり、で、今俺が話してるのは、明日香との話が無くなって、軽音部から大事な話があるってことなんだが・・・この話を理解したよな?鳴海」


 少しの沈黙が流れる


鳴海「菜摘・・・一条・・・俺が疲れるのも分かるだろ・・・嶺二みてえな破綻した文法を使う奴がいるから、俺のストレスが溜まって、ストレスが爆発して、ストレス人間が誕生するんだよ・・・」

菜摘「えっとー・・・早退したいってことかな?」

鳴海「(大きな声で)ちげえわ!!!」

雪音「そんなに怒るんだったらストレスを解消したら良いのに」

鳴海「(大きな声で)ストレスが消える前に新しくストレスが出来るんだよ!!!」

嶺二「(呆れて)疲れてる割にはでけー声だな・・・」


 再び沈黙が流れる


鳴海「本当に軽音部から大事な話なんかあるのか・・・?」

菜摘「大事な・・・っていうか・・・ちょっとしたネタバラシが・・・」

鳴海「ネタバラシ?」

菜摘「うん・・・」


◯545波音高校特別教室の四/文芸部室(放課後/夕方)

 教室の隅にパソコン六台とプリンターが一台ある

 円の形に椅子を並べて座っている鳴海、菜摘、嶺二、雪音

 部室に入ってくる汐莉、響紀、真彩、詩穂

 椅子を引っ張ってくる軽音部員たち

 鳴海たちは少し椅子をずらし、円に軽音部員たちを入れる

 椅子に座る軽音部員たち

 文芸部員と軽音部員で大きな円の形を作っている


真彩「(腕まくりをして大きな声で)さあさあ!!本日も頑張って部員募集をしまくりますよー!!」

鳴海「待て待て、今日は大事な話があるんだろ?」

真彩「あ〜、先輩たちから話があるんでしたっけ?」

鳴海「いや、俺たちからはない」

汐莉「えっ?先輩たちから大事な話があるんじゃないんですか?」

鳴海「いや」

嶺二「今日は軽音部から大事な話があるんじゃねーの?」

響紀「大事な話なんかありませんけど・・・」

嶺二「(菜摘のことを見て)大事な話があるって菜摘ちゃんから聞いたんだが」

菜摘「えっとー・・・」

真彩「(菜摘のことを見て)私たちも菜摘先輩から大事な話があるって聞いたっす」

雪音「(菜摘のことを見て)軽音部から大事な話があるから、明日香と話はしないって今朝話し合いで決めなかった?」

菜摘「(困りながら)そ、それはそうなんだけど・・・」

響紀「(菜摘のことを見て)愛おしき明日香ちゃんと話をする時間がなかったのは、菜摘先輩から大事な話があるせいだと思っていたんですが、実は、私たちと大事な話をするために、今朝先輩たちは話し合いをして、私から明日香ちゃんと話し合いをする時間を奪った。ということですか?」


 少しの沈黙が流れる


響紀「(菜摘のことを見たまま)しかも先輩たちは軽音部から大事な話があるって聞いたんですよね?その大事な話があるって話をした軽音部員が誰なのか、話してくれませんか?」


 再び沈黙が流れる


鳴海「今からしばらくの間・・・話って言葉を使うのは禁止にしようぜ・・・」

菜摘「そ、そうだね・・・」

詩穂「これを機会に別の単語を使いません?」

嶺二「デンジャラストーキングタイムとか?」

菜摘「デンジャラスじゃないのにデンジャラスって入れるのはおかしいよ」

響紀「ならここでミラクル明日香ちゃんタイムを提案します」

真彩「提案却下」

雪音「わざわざ英語にしなくていいんじゃない?」

真彩「そうっすねえ・・・」

詩穂「直ちに議論されるべき例の件、通称ただ件でよくないですか」

鳴海「わ、分かりやすいな・・・」

菜摘「うん。略せるし良いかも・・・」

汐莉「それで結局、どちらサイドから直ちに議論するべき例の件を説明してくれるんでしょうか・・・?」


 顔を見合わせる鳴海たち


菜摘「じゃあ、私から・・・(少し間を開けて)これは昨日、匿名で聞いたことなんだけど・・・軽音部がね・・・」

汐莉「はい」

菜摘「スケジュールのことを私たちに隠してるって・・・」


 少しの沈黙が流れる

 腕まくりをしていた真彩のワイシャツの袖が下がる


 時間経過

 

 円の形に椅子を並べて座っている鳴海、菜摘、嶺二、雪音

 円の中心で正座をしている汐莉、響紀、詩穂、真彩


鳴海「スケジュールの折り合いはついていた・・・ってことか・・・?」

菜摘「う、うん・・・」

鳴海「で・・・それを俺たちには言ってなかったと・・・」


 俯いている汐莉と詩穂

 少しの沈黙が流れる

 

鳴海「(大きな声で)どうして黙ってたんだよ!!!」

真彩「(頭を下げ大きな声で)す、すいませんでした!!!!」


 再び沈黙が流れる

 恐る恐る頭を上げる真彩


響紀「菜摘先輩」

菜摘「な、何?」

響紀「このことは昨日私が説明した通りです。咎めるなら私一人でお願いします」


 頭を下げる響紀


汐莉「な、菜摘先輩!響紀だけを責めないでください!!軽音部の全員がいけないんです・・・」


 汐莉のことを見て頭を掻きむしる鳴海


響紀「(頭を上げて)全部私が始めたことだから、良いの汐莉」

汐莉「そんな・・・私たちも響紀に協力してるのに・・・」


 少しの沈黙が流れる


嶺二「響紀ちゃん、説明した通りってどういうことだよ?」

響紀「昨日の放課後、菜摘先輩にスケジュールについてあれこれ聞かれたので、その時に隠していたことを全部告白したんです」

雪音「菜摘に聞かれたから、嘘つくのをやめたの?」

響紀「はい。先輩は、私たちがスケジュールのことを隠してるって既に知ってましたから」

鳴海「え!?そうなのか!?」

菜摘「う、うん・・・昨日の部活中、匿名でスケジュールのことを教えてもらったんだ」

鳴海「昨日の部活中に・・・匿名で・・・?」


 鳴海、嶺二、雪音、汐莉、響紀、真彩が詩穂のことを見る

 詩穂は俯いている


菜摘「(慌てて)ま、間違えた!!部活中じゃなくて授業中!!」


 少しの沈黙が流れる

 詩穂の体を激しく揺さぶり始める真彩


真彩「(詩穂の体を激しく揺さぶりながら)おいぃ私たちを売ったのかよぉ!!」

詩穂「(揺さぶられながら)ご、ごめん〜!!!許して〜!!!」

真彩「(詩穂の体を激しく揺さぶりながら)友達だと思ってたのにぃ!!!」

菜摘「ま、真彩ちゃん、詩穂ちゃんのことは許してあげてよ!」


 渋々詩穂の体から手を離す真彩


詩穂「た、助かった・・・」

菜摘「ご、ごめんね詩穂ちゃん・・・」

詩穂「はい・・・」


 再び沈黙が流れる


響紀「(立ち上がり)ただ件の説明も終わったことですし、本日の活動を始め・・・」

鳴海「(響紀の話を遮り大きな声で)まだ終わってねんだよ!!!もっと詳しく説明しろ!!!」


 再び正座をする響紀


響紀「軽音部の三年生とはスケジュールの折り合いがついてました」

鳴海「それを俺たちに隠していた理由は?」

響紀「明日香ちゃんのためです」

鳴海「は?」

響紀「だから、明日香ちゃんのためだったんです」


 頭を抱える鳴海


鳴海「(頭を抱えながら小声でボソッと)意味分かんねえ・・・」

菜摘「(心配そうに)鳴海くん・・・大丈夫?」

鳴海「(イライラしながら)大丈夫なわけあるかよ・・・三年の奴らと折り合いがついてるって分かってればな、生徒会選挙なんかしないで朗読劇が出来たんだぞ・・・」

響紀「すみません先輩。でも明日香ちゃんの気を引くためには、遠回りが近道だったんです」

鳴海「(イライラしながら)お前の恋愛感情だけで世界が回ると思うなよ・・・」

汐莉「鳴海先輩・・・」


 少しの沈黙が流れる


嶺二「響紀ちゃん、俺らがスケジュールのことで苦労してたの、知ってんだろ?」

響紀「はい」

嶺二「んなことは関係ねえって感じか?」

響紀「はい」


 再び沈黙が流れる


響紀「先輩たちを騙したのは、申し訳ないと思ってます」

鳴海「そりゃあどうも。お陰様で長い間遠回りが出来たよ」

響紀「鳴海先輩に理解してくれとは言いませんが、私にとって明日香ちゃんは、バンド仲間に嘘をついてもらって、先輩たちを騙してでも、手に入れたい人なんです」


 鳴海はチラッと汐莉を見る


響紀「先輩たちが私を利用するのは構いません、言われた通りに動いて、朗読劇を成功させてみせますから。その代わり、私も先輩たちを利用させてください」

鳴海「お前は自分勝手で、他人のことを見て無さすぎる」

響紀「一途なんですよ、先輩と一緒です」


 少しの沈黙が流れる


鳴海「言ったからには、響紀にも朗読劇を成功させなきゃいけない責任があるからな」

響紀「はい」

鳴海「だったらもう好きにしろ・・・」

響紀「(頭を下げて大きな声で)ありがとうございます!!!」


 再び沈黙が流れる

 頭を上げる響紀


菜摘「今後はどうしよっか・・・」

嶺二「もうこのままでいーんじゃね?響紀ちゃんがやれるって言ってるんだしよ」

響紀「はい」

真彩「軽音部のやることは変わらないってことっすか?」

嶺二「そーだ。菜摘ちゃんもそれで良いだろ?」

菜摘「うん。今更後戻りは出来ないし」

詩穂「進むしかないですね」


 頷く菜摘

 鳴海は汐莉のことを見る

 鳴海と汐莉の目が合う


鳴海「南は・・・」

汐莉「嶺二先輩たちに賛成します」

雪音「じゃあ計画続行決定ってことで、まずはみんなで仲良く明日香をどうにかしないとね」

菜摘「うん。明日香ちゃんだけど、このペースで頼み続けたら折れてくれるかな」

嶺二「多分な。あいつは押されるのに弱いし」

菜摘「明日の朝も、全員で明日香ちゃんに頼みに・・・」


 鳴海と汐莉は目があったのままの状態

 汐莉は少しだけ首を横に振る


◯546帰路(放課後/夜)

 帰り道、一緒に帰っている鳴海と菜摘

 部活帰りの学生がたくさんいる

 菜摘が話をしているが、鳴海はちゃんと聞いていない


菜摘「それでね、詩穂ちゃんも読書が好きなんだって。だから、今度部誌の書評をしてもらおうよ」


 少しの沈黙が流れる


菜摘「鳴海くん・・・?」

鳴海「あ、ああ・・・部誌、終わらせなきゃな・・・」


 再び沈黙が流れる


菜摘「鳴海くん、最近よくボーッとしてない?」

鳴海「そ、そうか?」

菜摘「うん」

鳴海「単純に、脳を休ませてるだけなんだけどな」

菜摘「それをボーッとしてるって言うんだよ」


 少しの沈黙が流れる


鳴海「菜摘」

菜摘「何?」

鳴海「お前は、文芸部や朗読劇のことが心配にならないのか?」

菜摘「え、なんで?」

鳴海「な、なんでって・・・今俺たち色々トラブってるだろ・・・」

菜摘「みんなで頑張って解決を目指してるんだから、大丈夫だよ」


◯547◯536の回想/波音高校校庭(放課後/夕方)

 校庭では運動部が活動している

 校庭にある掲示板に部員募集の紙を貼っている鳴海と汐莉

 汐莉は部員募集の紙の束と、たくさんの画鋲が入った小さな箱を持っている

 俯いている汐莉

 鳴海は黙々と部員募集の紙を貼り続けている


汐莉「(俯いたまま小声で)いなくなればいいのに・・・明日香先輩なんか・・・」


 一瞬、鳴海の手が止まる


◯548回想戻り/帰路(放課後/夜)

 帰り道、一緒に帰っている鳴海と菜摘

 部活帰りの学生がたくさんいる


菜摘「平気平気!!きっと全部良くなる!!鳴海くん、自分たちのことを信じよう?」


 少しの沈黙が流れる


鳴海「菜摘は何もしな・・・じゃなくて、朗読劇のことだけを・・・」

菜摘「(鳴海の話を遮って)考えてろ、でしょ?」

鳴海「正解だ。よく分かったな」

菜摘「鳴海くんの考えてることなんて、1秒もかからずに当てちゃうよ私」

鳴海「以心伝心か?」

菜摘「うん!」

鳴海「(小声でボソッと)俺の考えてることって、割と筒抜けなんだな」

菜摘「え、何?」

鳴海「い、いや、何でもないよ」

菜摘「そっか」


 再び沈黙が流れる


鳴海「菜摘」

菜摘「ん?」

鳴海「千春は・・・俺が必ず見つける」

菜摘「私も手伝うよ」

鳴海「だ、ダメだ。菜摘は・・・(少し間を開けて小声で)あいつと関わるべきじゃない・・・」


 俯く菜摘


菜摘「(俯いたまま)私・・・千春ちゃんと会いたいな・・・」


 少しの沈黙が流れる


鳴海「ち、千春は俺が必ず見つけるって言ってんだろ!!」

菜摘「(俯いたまま)うん・・・ありがとう・・・」


 菜摘は俯いたまま歩き続ける


鳴海「(声 モノローグ)寂しいありがとうだった。菜摘は、千春とはもう再会出来ないと感じているのかもしれない。(少し間を開けて)俺自身も、千春を探し出せるとは思っていなかった」


◯549滅びかけた世界:緋空浜(夕方)

 夕日の光が海に反射しキラキラと光っている

 ゴミ掃除をしているナツ、スズ、老人

 浜辺にゴミの山がある

 ゴミの山は、空っぽの缶詰、ペットボトル、重火器、武器類、骨になった遺体などが積まれて出来ている

 ゴミの山の隣には大きなシャベルが砂浜に突き刺さってる

 ゴミの山から数百メートル先の浜辺は綺麗になっている

 浜辺には水たまりが出来ており、水たまりの中にもゴミがある 

 三人は軍手をしている

 三人それぞれに一台ずつスーパーのカートがある

 三台のカートのカゴにはビニール袋が敷いてあり、その中にゴミを入れていくナツ、スズ、老人

 スズは拾った真っ黒なサングラスをかけている

 

老人「(トングで革製のベルトのような物を拾い)これは・・・珍しいな・・・」

スズ「(トングでゴミを拾うのをやめて)ジジイお宝を見つけたの?」


 老人はトングをカートの中に入れ、拾った革製の弾帯ベルトのような物をスズに見せる

 ベルトには様々なサイズのポーチがたくさんついている


スズ「(革製の弾帯ベルトのような物を見ながら)これがお宝〜?」

老人「(革製の弾帯ベルトのような物をスズに見せながら)まあ・・・海賊の財宝とは言い難いが・・・それなりに価値のある物だ。(革製の弾帯ベルトのような物を高く上げて)ナツ!お前はこれが何なのか分かるか?」

ナツ「(トングでゴミを拾いながらチラッと革製の弾帯ベルトのような物を見て)軍人の腰に巻いてるやつじゃないの?」

老人「(革製の弾帯ベルトのような物を下ろし)正解だ」


 老人は革製の弾帯ベルトについていたポーチを一つずつ開けていく


老人「(革製の弾帯ベルトについているポーチを一つずつ開けながら)これは蓮根野郎共が使っていた弾入れさ」

スズ「(老人が持っている革製の弾帯ベルトのような物を見たまま)蓮根!?食いもんなの!?」

老人「(革製の弾帯ベルトについているポーチを一つずつ開けながら)残念ながら食べられる蓮根ではない」


 弾帯ベルトのポーチの一つに双眼鏡が入っている

 双眼鏡を取り出す老人


老人「(双眼鏡をスズに見せて)ほら見ろ、双眼鏡だ」

スズ「黒メガネがあるからいらなーい」

老人「そうか・・・(双眼鏡を覗いて)こいつはまだ使えそうだが・・・(双眼鏡を覗いたまま適当に手招きをし)ナツ、こっちへおいで」


 トングでゴミを拾うのをやめ、老人の元へ行くナツ


老人「(双眼鏡をナツに差し出して)君にやろう、おそらく上物の双眼鏡だ」

 

 双眼鏡を受け取るナツ

 双眼鏡を覗き周囲を見るナツ


老人「太陽を見ないようにな」

ナツ「(双眼鏡を覗き周囲を見ながら)分かってるよ」


 双眼鏡を覗くのをやめるナツ

 

ナツ「(顔を背け小さな声でボソッと)あ、ありがと・・・」

老人「ああ」

スズ「ねーねージジイ、(革製の弾帯ベルトのような物を指差しながら)これ他にはなんか入ってないの?」

老人「(革製の弾帯ベルトについているポーチを一つずつ開けながら)そうだな・・・」


 老人は革製の弾帯ベルトのポーチを開け、何か入っていないか確認をする

 革製の弾帯ベルトのポーチからハンドガン用の弾丸が十数発出てくる

 

老人「(革製の弾帯ベルトのポーチから弾丸を取り出して見ながら)花火でもするか・・・」

ナツ「花火?」

老人「(弾丸を見ながら頷き)ああ」


 時間経過


 緋空浜近くの一般道にやってきたナツ、スズ、老人

 夕日が沈みかけている

 スズは頭にサングラスをかけている

 老人は弾帯ベルトから手に入れた十数発の弾丸と、新聞紙や雑誌などのゴミを持っている

 新聞紙のゴミをクシャクシャに丸め、雑誌とともに適当に地面に置く老人

 

スズ「花火って食える?」

ナツ「食べられないよ」

スズ「ふーん、食えないんだ〜・・・花火って何なのかな〜」

老人「見てれば分かるさ」


 老人はポケットから汚れたZIPPOライターを取り出し、新聞紙と雑誌のゴミに火を付ける

 火はすぐに燃え上がる

 老人は手に持っていた弾丸一発を火の中に投げ入れる

 少しすると、火の中の弾丸が大きな音を立てて破裂する


スズ「(驚いて)うわっ!!!!」

老人「これが花火だよ」


 老人は再び持っていた弾丸一発を火の中に投げ入れる


ナツ「(小声でボソッと)くだらな・・・」


 少しすると、火の中の弾丸が大きな音を立てて破裂する


スズ「私もやる!!弾貸してジジイ!!」


 手に持っていた十数発の弾丸をスズに差し出す老人

 スズは弾丸を受け取り、火の中に二発投げ入れる

 ナツは退屈そうに火を見ている


老人「ナツもやったらどうだ?」

ナツ「興味ない」


 少しすると、スズが投げ入れた二発の弾丸が大きな音を立てて破裂する


スズ「これが花火か〜!面白いな〜!」


 スズは再び持っていた弾丸一発を火の中に投げ入れる


老人「ナツは花火が嫌いなのか?」

ナツ「別に・・・期待してた花火と違ったから、がっかりしただけ」


 少しすると、スズが投げ入れた弾丸が大きな音を立てて破裂する

 スズは楽しそうに弾丸数発分を火の中に入れる


ナツ「こんなのは花火じゃない・・・偽物だ」


 スズが投げ入れた弾丸数発が大きな音を立てて破裂する

 スズが弾丸を火に投げ込む中、老人とナツは話を続ける


老人「俺はこの偽物の花火が、人の命を奪う瞬間を何度も見てきた。10cmにも満たない金色の物体が親友を殺したんだ」


 老人はスズのことを見る

 スズは楽しそうに火の中の弾丸を見ている

 少しすると、スズが投げ入れた弾丸が大きな音を立てて破裂する


老人「(スズのことを見ながら)銃なんて物はな、500年前から存在するべきじゃなかったんだよ」

ナツ「500年前・・・?」

老人「(スズのことを見たまま)ああ」

スズ「(ナツと老人に弾丸を差し出して)なっちゃんとジジイもやろうよー!!花火!!」


 首を横に振る老人

 

スズ「えー!!なんでー!!」


 少しの沈黙が流れる


老人「年寄りは弾丸の破裂音なんかを耳にしても、虚しくなるだけなんだ」

スズ「(ナツに弾丸を差し出したまま)じゃあなっちゃん!!一回でもいいからやろ!!」

ナツ「(渋々弾丸を一発受け取り)分かったよ」


 ナツとスズは弾丸一発を火の中に投げ入れる

 

老人「本物の花火と比べたら魅力は欠けるが、弾丸本来の使い道よりよっぽど良いと思わないか?」


 少しすると、ナツとスズが投げ入れた二発の弾丸が大きな音を立てて破裂する


ナツ「(燃え上がる火を見ながら)うん・・・そうだね」

スズ「なっちゃん!」

ナツ「(スズのことを見て)ん?」

スズ「(弾丸を数発ナツに差し出して)はい!!これ!!」


 ナツは弾丸を受け取り、火の中へ投げ入れる 

 夕日を見る老人


老人「(夕日を見たまま)ゴミの山を燃やすところで、今日の仕事は終わりか・・・」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ