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Chapter6生徒会選挙編♯5 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海

向日葵が教えてくれる、波には背かないで


Chapter6生徒会選挙編♯5 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海


登場人物


滅びかけた世界


ナツ 16歳女子

ビビリな面も多く言葉遣い荒い。勤勉家。母親が自殺してしまい、その後は一人で旅を続けていたがスズと出会い行動を共にするようになった。


スズ 15歳女子

マイペース、ナツと違い勉強に興味なし。常に腹ペコ。食べ物のことになると素早い動きを見せるが、それ以外の時はのんびりしている。

ナツと共に奇跡の海を目指してやって来た。


老人 男

ナツの放送を聞いて現れた謎の人物。元兵士の男。緋空浜の掃除を一人でしている。Narumi Kishiと彫られたドッグタグを身に付けているがその正体は・・・






老人の回想に登場する人物


中年期の老人 男子

兵士時代の老人。


中年期の明日香 女子

老人ともう一人の兵士を見送りに来た、中年期頃の明日香。


七海 女子

中年期の明日香と同じく、老人ともう一人の兵士を見送りに来た少女。年齢は15、16歳。


老人と同世代の男兵士1 男子

中年期の明日香、七海に見送られていた兵士。中年機の老人、レキ、男兵士2と同じ隊に所属している。


レキ 女子

老人たちと同じグループの若い女兵士で、年齢は25歳前後。中年期の老人、男兵士1、男兵士2と同じ隊に所属している。


老人と同世代の男兵士2 男子

中年期の老人、男兵士1、レキと同じ隊に所属している兵士。


アイヴァン・ヴォリフスキー 男子

ロシア人。たくさんのロシア兵を率いている若き将校。容姿端麗で、流暢な日本語を喋ることが出来る。年齢は20代後半ほど。


両手足が潰れたロシア兵 男子

重傷を負っているロシア人の兵士。中年期の老人と出会う。






滅んでいない世界


貴志 鳴海(なるみ) 18歳男子

波音高校三年三組、運動は得意だが勉強は苦手。無鉄砲な性格。両親を交通事故で失っている。歳の離れた姉、風夏がいるが仕事で忙しいため実質一人暮らし状態である。文芸部副部長。 Chapter4の終盤に菜摘と付き合い始めた。


早乙女 菜摘(なつみ) 18歳女子

波音高校三年三組、病弱で体調を崩しやすい、明るく優しい性格。文芸部部長。鳴海と付き合っている。


白石 嶺二(れいじ) 18歳男子

波音高校三年三組、鳴海の悪友、不真面目なところもあるが良い奴。文芸部のいじられキャラである。高校卒業後は上京してゲームの専門学校に通うことを考えている。


天城 明日香(あすか) 18歳女子

波音高校三年三組。成績も良くスポーツ万能、中学生の時は女子ソフトボール部に所属していた。ダラダラばかりしている鳴海と嶺二を何かと気にかけては叱る。文芸部部員。夢は保育士になること。最近は響紀に好かれて困っており、かつ受験前のせいでストレスが溜まっている。


南 汐莉(しおり)15歳女子

波音高校に通っている一年生、文芸部と軽音楽部の掛け持ちをしている。明るく元気。バンド”魔女っ子少女団”のメインボーカルで歌とギターが得意。20Years Diaryという日記帳で日々の行動を記録している。Chapter5の終盤に死んでしまう。


一条 雪音(ゆきね)18歳女子

波音高校三年三組、才色兼備な女生徒。元天文学部部長で、今は文芸部に所属。真面目な性格のように見えるが・・・


柊木 千春(ちはる)女子

Chapter2の終盤で消えてしまった少女で、嶺二の思い人。


三枝 響紀(ひびき)15歳女子

波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のリーダー兼リードギター担当。クールで男前キャラ、同性愛者、 Chapter3で明日香に一目惚れして以来、彼女に夢中になっている。


永山 詩穂(しほ)15歳女子

波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のベース担当。おっとりとしている。


奥野 真彩(まあや)15歳女子

波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のドラム担当。バンドの賑やかし要員。


早乙女 すみれ45歳女子

菜摘の母、45歳には見えない若さ美しさを保つ。優しい、とにかく優しい。愛車はトヨタのアクア。


早乙女 (じゅん)46歳男子

菜摘の父、菜摘とすみれを溺愛しており二人に手を出そうとすれば潤の拳が飛んでくること間違いなし。自動車修理を自営業でやっている。愛車のレクサスに“ふぁるこん”と名付けている。永遠の厨二病。


神谷 志郎(しろう)43歳男子

波音高校三年の教師。鳴海、菜摘、嶺二、明日香、雪音の担任。担当教科は数学。文芸部顧問。Chapter5の終盤に死んでしまう。


荻原 早季(さき)15歳女子

Chapter5に登場した正体不明の少女。


貴志 風夏(ふうか)24歳女子

鳴海の6つ年上の姉、忙しいらしく家にはほとんど帰ってこない。智秋と同級生で親友関係。仕事をしつつ医療の勉強をしている。


一条 智秋(ちあき)24歳女子

雪音の姉。妹と同じく美人。謎の病に苦しんでいたがChapter3の終盤にドナーが見つかり、一命を取り留めた。リハビリをしながら少しずつ元の生活に戻っている。


双葉 篤志(あつし)18歳男子

波音高校三年二組、天文学部副部長。


有馬 (いさむ)64歳男子

波音町にあるゲームセンター“ギャラクシーフィールド”の店主。千春が登場したゲーム、”ギャラクシーフィールドの新世界冒険”の開発者でもある。


細田 周平(しゅうへい)15歳男子

野球部に所属している一年生。Chapter5では詩穂に恋をしていた。


貴志 (ひろ)

鳴海の父親、事故で亡くなっている。菜摘の父、潤と高校時代クラスメートだった。


貴志 由夏理(ゆかり)

鳴海の母親、事故で亡くなっている。菜摘の母、すみれと高校時代クラスメートだった。


神谷 絵美(えみ)29歳女子

神谷の妻。Chapter5では妊娠していた。


波音物語に関連する人物






白瀬 波音(なみね)23歳女子

波音物語の主人公兼著者。妖術を使う家系『海人』の末裔、そして最後の生き残り。Chapter4の終盤、妖術を使い奈緒衛の魂を輪廻させ、自らの魂も輪廻出来るようにした。


佐田 奈緒衛(なおえ)17歳男子

波音の戦友であり恋仲。優れた剣術を持ち、波音とは数々の戦で戦果をあげた。Chapter4の終盤に死んでしまった人物。


(りん)21歳女子

波音、奈緒衛を慕う女中。緋空浜の力を持っており、遥か昔から輪廻を繰り返してきた。波音に輪廻を勧めた張本人。体が弱い。奈緒衛と同じくChapter4の終盤に死んでしまった人物。


明智 光秀(みつひで)55歳男子

織田信長と波音たちを追い込み凛を殺した。

Chapter6生徒会選挙編♯5 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海


◯506波音高校三年生廊下(日替わり/朝)

 朝のHRの前の時間

 外では雨が降っている

 廊下で話をしている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 イライラしている明日香

 廊下では喋っている三年生や、教室に入ろうとしている三年生がたくさんいる

 明日香に頭を下げている鳴海、菜摘、嶺二


鳴海「(頭を下げたまま)頼む!!新しく部員が入るまで残ってくれ!!」

菜摘「(頭を下げたまま)明日香ちゃん!!お願い」

嶺二「(頭を下げたまま)部室にいてくれるだけで良いからよ!!」

明日香「(イライラしながら)私の退部届け・・・どこに隠したの」

嶺二「(頭を下げたまま)隠してねえ!!ちょっくら借りただけだ!!」

明日香「(頭を下げたまま)ちょっくら借りた・・・ですって?」


 少しの沈黙が流れる

 恐る恐る顔を上げる鳴海、菜摘、嶺二


真彩「あ、あの、明日香先輩、一年の私たちも手伝いますので・・・」


 真彩を睨む明日香


明日香「(真彩を睨みながら)協力するように頼まれたんでしょ」

真彩「はっ、はい。あっ・・・いえ、じ、自主的に・・・お手伝いを・・・」

響紀「はっきり言いますけど明日香ちゃん、迷惑なんですよ」

明日香「は?」

真彩「ひ、響紀・・・三年生の廊下でそーゆー喧嘩を売るようなことは・・・」

響紀「汐莉も迷惑だって言ってたでしょ?」

汐莉「(驚いて)えっ・・・?」

響紀「みんなで一つの物を作ろうとしているのに、突然抜けられたらうざいよね?汐莉」

汐莉「う、うん・・・」

嶺二「そーだぞ!!突然抜けられるのはうざいんだ!!」


 雪音が嶺二の後頭部を思いっきり叩く


嶺二「(雪音を見て)邪魔すんなよ!!」

雪音「嶺二のうざいは、なんか違うと思って」

嶺二「だからと言って叩くな!!上京前にバカになっちまうだろ!!」

雪音「とっくにバカになってるから大丈夫だよ」


 再び沈黙が流れる


詩穂「あのー・・・軽音部的にも人数は多い方が楽しくて良いんですけどー・・・」

鳴海「に、賑やかなの・・・明日香も好きだろ?」


 腕を組む明日香


嶺二「(小声で)やばいあいつ腕を組んだぞ・・・」

鳴海「(小声で)ああ・・・危険信号だな・・・」

明日香「(腕を組んだまま)今アホが喋った?」

鳴海「いや・・・」

嶺二「何も言ってーけど・・・」

明日香「(腕を組んだまま)そう。私、あんたたちのアホ話を聞くほど暇じゃないから」

 

 明日香は腕を組んだまま教室に戻る


菜摘「あっ、明日香ちゃん!!待ってよ!!」


 明日香を追いかけて教室に入る菜摘


嶺二「鳴海、今見たか?」

鳴海「ん?何をだ?」

嶺二「あの女、腕を組んだまま歩いたぞ」

鳴海「それがどうかしたのか?」

嶺二「腕を組んだまま歩いてる奴って珍しくね?」

鳴海「あー・・・言われてみればそうだな・・・」


 少しの沈黙が流れる


汐莉「鳴海先輩、嶺二先輩」

嶺二「んー?」

汐莉「まさかこんなところで突っ立ってるつもりじゃないですよね?」

鳴海「三年の廊下で三年生が突っ立ってちゃいけないか?」

汐莉「(怒鳴り声で)早く明日香先輩を追いかけてくださいよ!!!」


 廊下にいた三年生が汐莉の怒鳴り声に驚き、鳴海たちのことを見る

 慌てて教室に入る鳴海と嶺二


詩穂「真彩、あれでも嶺二先輩のことが格好良いと思う?」

真彩「んー・・・ダサいかも・・・」


 深くため息を吐く汐莉


雪音「(汐莉たちに手を振って)じゃあみんなお疲れ〜、また今日の放課後に」


 雪音は汐莉たちに手を振ったまま、教室に戻って行く


響紀「あ、私も・・・」


 響紀は三年三組の教室に入ろうとするが、詩穂と真彩が慌てて止める


詩穂「(響紀の右腕を掴んだまま)響紀くんが勝手に入ったら怒られるよ!!」

響紀「(抵抗しながら)知らない!!怒られても良い!!」

真彩「(響紀の左腕を掴んだまま)いやダメだから!!つか私らを巻き込むな!!」

汐莉「響紀、戻ろう?選挙前に上級生の廊下でウロウロするのはまずいよ」


 少ししてから、響紀は諦めたように抵抗するのをやめる


◯507波音高校一年六組の教室(朝)

 外では雨が降っている

 朝のHRの前の時間

 教師はまだ来ていない

 どんどん教室に入ってくる生徒たち

 教室にいる生徒たちは周りにいる人と喋ったり、立ち歩いたり、スマホを見たりしている

 汐莉の席の周りに集まって、話をしている汐莉、響紀、詩穂、真彩 


真彩「汐莉と響紀さー、迷惑とかうざいとか言っちゃったらやばいんじゃないの?」

汐莉「ね・・・」

詩穂「特に汐莉は直属の後輩だし、ここで関係が悪くなったら・・・」


 汐莉のことを見る詩穂


汐莉「あーあ・・・憂鬱だなぁ・・・」

響紀「明日香ちゃんに冷たく当たって、逆に気を引こう作戦。ダメだった?」


 少しの沈黙が流れる


詩穂「響紀くん、明日香先輩に嫌われないよね?」


 頷く響紀


詩穂「絶対に好かれるって自信はあるの?」

響紀「言ったでしょ、明日香ちゃんのことで不可能はないって」


 再び沈黙が流れる


真彩「今現在、明日香先輩は0.1%も響紀のことを気にしてないように見えるんだけど・・・」

響紀「それは真彩の勘違い。明日香ちゃんはね、もう私に恋してるから」

真彩「(驚いて)ま、じ、で!?!?!?」

響紀「マジで。明日香ちゃんは絶対に逃げられない」


 響紀のことを見る汐莉


◯508波音高校三年三組の教室(朝)

 外では雨が降っている

 朝のHRの前の時間

 神谷はまだ来ていない

 どんどん教室に入ってくる生徒たち

 教室にいる生徒たちは周りにいる人と喋ったり、立ち歩いたり、スマホを見たりしている

 明日香は自分の席に座っている

 鳴海、菜摘、嶺二、雪音が明日香の席の周りにいる

 鳴海、菜摘、嶺二は明日香に話しかけているが、明日香は三人を無視している

 雪音はその様子を黙って見ている


鳴海「(明日香に頼み込みながら 声 モノローグ)こうして俺たちは明日香に無謀な交渉を始め、というかこの一連の朗読劇に関わる全ての計画が無謀だったのだが、しかし今更引き返すのは荒波に飛び込むようなもので、俺たちは自分で書いた迷路の中へ自ら閉じこもり、そして所在がつかめなくなったゴールへと、古今東西走り回り、迷走し続ける以外の方法が無くなっていた」


◯509波音高校食堂(昼)

 外では雨が降っている

 昼休み

 食堂にいる鳴海、菜摘、嶺二

 込んでいる食堂

 注文に並ぶ生徒がたくさんいる

 鳴海はカツ丼、嶺二は醤油ラーメンとチャーハン、菜摘はすみれの手作り弁当を食べている

 食堂のテーブルはほとんど埋まっている

 話をしている鳴海、菜摘、嶺二


鳴海「(話をしながら 声 モノローグ)時間はゴムのように伸び縮みをする。明日香がいなくなったのは俺のせいだ、これ以上みんなに迷惑をかける前に、何とかしなければ・・・(少し間を開けて)俺の焦りはこの世界にダイレクトに伝わり、時間の概念が壊れてしまったのではないかと疑うほど、一分一秒が狂気の如く過ぎ去った」


◯510波音高校特別教室の四/文芸部室(放課後/夕方)

 外では雨が降っている

 教室の隅にパソコン六台とプリンターが一台ある

 教室の中心で机を八台繋げ、座っている鳴海、菜摘、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 机の上には大量のA4サイズの白紙と、マジックのカラーペンと、色鉛筆が置いてある

 手書きで部員募集の紙を制作している鳴海、菜摘、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 文句を言いながら部員募集の紙に色鉛筆で色を塗っている嶺二 

 嶺二を叱る汐莉


鳴海「(部員募集の紙に色を塗りながら 声 モノローグ)ミスは許されない。文芸部は今崖っぷちにいる。響紀はこの状況を混沌としていて面白いと言っていた」


 完成した部員募集の紙を鳴海たちに見せる響紀

 響紀の部員募集の紙には下手くそでバランスのおかしい棒人間のイラストが描かれている

 下手くそな棒人間の上には”集う!!文芸部員”とカラフルな汚い字で書かれている

 響紀が書いた部員募集の紙を見てドン引きしている鳴海、菜摘、嶺二、雪音


響紀「(部員募集の紙を全員に見せながら自慢げに)どうですか、センスあるでしょ」

鳴海「(響紀が書いた部員募集の紙を見ながらドン引きして)お、おう・・・」

鳴海「(響紀が書いた部員募集の紙を見ながら 声 モノローグ)接していくうちに、響紀の頭が少しおかしいことに気づいた。彼女は間違いなく変人で問題児だ」

菜摘「(響紀が書いた部員募集の紙を見ながらドン引きして)ひ、響紀ちゃんのは絵は・・・うん・・・そうだね・・・アート・・・?」

真彩「(響紀が書いた部員募集の紙を見ながら)美術の先生は、響紀の描いた絵を見て味がある言ってました・・・」

嶺二「(響紀が書いた部員募集の紙を見ながらドン引きして)明日香が聞いたらブチギレそうなフォローだな・・・」

響紀「(部員募集の紙を全員に見せながら自慢げに)やだなぁ嶺二先輩、先生は私の絵を褒めてくださったんですよ。ピカソみたいだって」

詩穂「(響紀が書いた部員募集の紙を見ながら)響紀くんの絵はゲルニカっぽいかもんね・・・」

汐莉「(響紀が書いた部員募集の紙を見ながら)例えるなら、響紀の絵は癖の強い料理と同じですよ・・・」

雪音「(響紀が書いた部員募集の紙を見ながらドン引きして)ブルーチーズとか?」

汐莉「(響紀が書いた部員募集の紙を見たまま)はい・・・」

菜摘「響紀ちゃん、ブルーチーズ好き?」

響紀「はい!!」

鳴海「(響紀のことを見ながら 声 モノローグ)やはりこいつは変だ・・・響紀が才能豊かで、素晴らしい音楽センスと、不思議なアートセンスを持っていることは否応無しに受け入れるしかないが、それでも俺の頭の中では、絶え間なく不安が暴れ回り、神経を抉り取ろうとしていた」


 時間経過


 各々部員募集の紙を制作をしている

 皆集中し、部員募集の紙を作っている

 机の上には部員募集の紙を制作するのに必要なA4サイズの白紙と、マジックのカラーペンと、色鉛筆の他に完成した部員募集の紙が置いてある


鳴海「(部員募集の紙に色を塗りながら 声 モノローグ)嶺二の思惑通りに響紀が動いてくれるか分からない。彼女のことを信用しているつもりだが、嶺二の作戦はトリッキーで宝くじよりも運頼みだ・・・運動不足のおじさんが10mの高さから飛び降りて無傷でいられるか、と聞かれたら誰もが無理だと答える。今の俺たちは、ラスベガスのカジノで運動不足のおじさんに高額ベットを掛けているのと同じだ。しかしまあ冷静に考えなくとも、明日香を怒らせた一件は全て俺のせいで、そんな俺の謝罪がスイートメロンパンであれば、他の作戦に舵を切るしか道はない。おそらく、菜摘と嶺二もそう考えているはずだ。迷路を狭めたは、俺じゃないか・・・」


◯511帰路(放課後/夕方)

 曇り空

 雨は止んでいる

 話をしながら帰っている鳴海、菜摘、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 真彩が傘を振り回しながら歩いている

 詩穂が真彩を注意する


鳴海「(話をしながら 声 モノローグ)卒業という名の分断が影を潜めることはなかった。三年間で築き上げた友情はジェンガ並みに不安定で、紙一枚よりも弱い。少なくとも俺と明日香の関係は、ここで終わってしまったように思える。再び何かやらかせば、次は関係の崩壊どころか戦争の始まりだ」


◯512波音高校三年生廊下(日替わり/朝)

 外は晴れている

 朝のHRの前の時間

 廊下で話をしている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 イライラしている明日香

 廊下では喋っている三年生や、教室に入ろうとしている三年生がたくさんいる

 明日香に頭を下げている鳴海、菜摘、嶺二

 明日香は鳴海たちを無視し教室に戻る

 顔を上げる鳴海、菜摘、嶺二


汐莉「先輩、また明日頼みましょう」

真彩「そ、そうっすよ!!明日があります!!」

菜摘「そうだね・・・このまま頼み続けるしか・・・」

鳴海「ああ・・・」

嶺二「みんな、頑張ろーぜ!!」

汐莉「はい!」

鳴海「(声 モノローグ)また明日・・・明日がダメなら明後日・・・それでもダメなら明明後日しかない。永遠に続くと思われた学校生活の、強制終了が近づいてきた。時間の流れは俺たちを振り落とそうとしている」


◯513波音高校特別教室の四/文芸部室(昼)

 外は晴れている

 昼休み

 教室の隅にパソコン六台と、プリンター一台、完成した部員募集の紙が置いてある

 部室で昼食を取っている鳴海、菜摘、嶺二

 鳴海と嶺二はコンビニのパン、菜摘はすみれの手作り弁当を食べている


鳴海「嶺二、お前に聞きたいことがあるんだけどさ・・・」

嶺二「何でも聞いてくれたまえワトソン」

鳴海「上京するんだよな?」

嶺二「そんなガチトーンで聞いても今更気持ちは変わんねーぞ」

鳴海「分かってるよ・・・」


 少しの沈黙が流れる


菜摘「嶺二くんとは上京したら会えなくなっちゃうね」

嶺二「菜摘ちゃんが会いたいって言ってくれれりゃあ、俺はいつでも会いに行くぜ!!」

鳴海「キモいぞ」

嶺二「男女の壁を越えた美しい友情にケチつけるんじゃねえ」

鳴海「何が美しいだ、散々迷惑かけておいて美しいもクソもあるわけねえだろ」

菜摘「鳴海くん、パン忘れてるよ」

鳴海「(不思議そうに)パン・・・?」

嶺二「今お前、スイートメロンを食い忘れたぞ」


 再び沈黙が流れる


鳴海「そ、それはさておきだな・・・俺は嶺二に聞きたいことが・・・」

嶺二「美味いメロンパンが売られてる店はどこかって?わりーけど知らねーよ」

鳴海「んなこと聞くか!!!」

嶺二「じゃあ何が聞きてえんだ」

鳴海「いや・・・まあ・・・」

菜摘「どしたの鳴海くん、もしかして嶺二くんに感謝の言葉を伝えようとしてるけど恥ずかしくて言えない感じ?」

鳴海「違いますけど・・・」

菜摘「なんだ・・・残念・・・」

嶺二「鳴海、三年間の礼ならいつでもまっ・・・」

鳴海「(嶺二の話を遮って大きな声で)ちげえって言ってんだろ!!!!」

嶺二「鳴海の話って本題に入るまでが長くてつまんねーんだよな・・・」

鳴海「お前にだけは言われたくないんだが・・・」

嶺二「それなら早く聞きたいこととやらを聞けよ」


 嶺二はホットドッグを口に詰め込める


鳴海「俺が聞きたいのは・・・(少し間を開けて)千春のことだ・・・」

嶺二「つまり?」

鳴海「お前さ・・・千春が好きな場所って分かるか」

嶺二「(呆れて)そんなしょうもねー質問かよ・・・」

鳴海「どこか知ってるなら教えて欲しい」

嶺二「それを聞いて鳴海はどうすんだ?」

鳴海「とりあえず・・・その店だか場所に行く」

嶺二「千春ちゃんを探す気か?」

鳴海「まあ・・・そういうことになるな・・・」

菜摘「嶺二くんだって、千春ちゃんと会い・・・」

嶺二「(菜摘の話を遮って)会いてーよ、当たり前だろ」

菜摘「だよね・・・」


 少しの沈黙が流れる


鳴海「それで・・・どこか心当たりのある場所はないか?」

嶺二「ない」

鳴海「即答だな・・・」

嶺二「俺は千春ちゃんについてなーんも知らねーんだ。そもそも千春ちゃんのことは、俺より鳴海と菜摘ちゃんの方が詳しいだろ?」

菜摘「ううん・・・私たちなんて・・・」

鳴海「あいつの話を聞いてすらなかったんだぞ・・・」


 再び沈黙が流れる


嶺二「今更悔やんでもしょうがねーよ・・・俺だって二人を責められるほど、千春ちゃんに何かしてやったわけじゃねーし・・・」

鳴海「そうか・・・?実際のところ、千春は俺らより嶺二に懐いていた印象があるんだが・・・」

嶺二「だとしても、特別懐かれるようなことはしてねえんだよ」

菜摘「でも嶺二くん、千春ちゃんとデートしたんでしょ?」

嶺二「確かにデートはしたが・・・その場所が千春ちゃんの好きな所とは言えないだろ?」

鳴海「まあな・・・」

嶺二「真面目な話、千春ちゃんの好きな場所なんてギャラクシーフィールドくらいしか思いつかねーよ・・・」

鳴海「あのゲーセンか・・・」

菜摘「千春ちゃんとお別れして以来行ってないね」

鳴海「そうだな・・・(少し間を開けて)久しぶりに行ってみるか・・・」

嶺二「いや、千春ちゃんと別れた後も行っただろ」

菜摘「あれ、そうだっけ?」

鳴海「覚えがねえけど・・・嶺二・・・お前、一人で行ったんじゃねえのか」


 再び沈黙が流れる


嶺二「どうなってんのか気になって・・・それで少しな・・・」

鳴海「要は覗いただけなんだろ?」

嶺二「ああ」

菜摘「私たちも誘ってくれたら良かったのに」

嶺二「ごめんな菜摘ちゃん。文芸部で行きゃあ良かったよ」

鳴海「嶺二、よりによってどうして一人で行ったんだ?」

嶺二「グループ行動って気分じゃなかったんだろうな」

菜摘「そっか・・・」

嶺二「てか二人とも、なんで今になって千春ちゃんを探そうってなったのか教えてくれよ」

鳴海「そ、それは・・・」

菜摘「もしも可能であればね、千春ちゃんにも朗読劇を見てほしいんだ」

嶺二「あー・・・(少し間を開けて)そういうことか・・・千春ちゃんを見つけ出して、また新入部員にでもするのかと思ったけど、今回は違うんだな」

菜摘「確かに千春ちゃんが文芸部に戻って来てくれたら最高だよ。でも・・・私たちの時間は限られてるからさ・・・今出来ることを優先にしないと・・・」

嶺二「つまり明日香を引き留めろってことか」

鳴海「あ、ああ・・・」

嶺二「みんなでしつこくやりゃあ、明日香もそのうち折れるぜ、な?鳴海」

鳴海「そ、そうだな・・・」

鳴海「(声 モノローグ)嶺二は大人だった。俺と菜摘の前で遠慮をしたんだ。あいつの喉仏には、千春を探しに行きたいという一文が通りかかっていただろう。しかし嶺二は、千春と朗読劇を天秤にかけ、敢えて重い方は手に取らなかった。昔の嶺二なら千春を選んだに違いない。あいつは愛する者を自ら谷底へ落とすことで、みんなを迷路から救い出そうとしている。嶺二は千春に対し、世界よりも広い愛を持っていたが、その愛は文芸部の前で割れ落ちてしまった。俺が千春を探しに行くと言っても、あいつは肯定も否定もしない。嶺二は会いたいと口にしたが、それは会えないを意味していた。文芸部で始まった恋は、文芸部のせいで終わってしまったんだ・・・」


◯514波音高校一年六組の教室/軽音部一年の部室(放課後/夕方)

 校庭では運動部が活動している

 教室の隅にはリードギター、ベース、ドラム、その他機材が置いてある

 椅子に座っている鳴海、菜摘、嶺二、雪音

 鳴海、菜摘、嶺二、雪音に向かい合って汐莉、響紀、詩穂、真彩が座っている

 それぞれ椅子の隣に学校用のカバンを置いている

 全員がコピーした部員募集の紙を束で持っている


菜摘「じゃあ、今日はみんなで部員募集の紙を貼りに行こう!」

汐莉「菜摘先輩、本当に今日から貼っていいんですか?」

菜摘「どうして?」

汐莉「だって明日香先輩が戻ってくる前に、文芸部に入りたいって人が来ちゃうかもしれませんよ」

菜摘「大丈夫!!文芸部って人気ないから!!」

鳴海「(小声でボソッと)それはそれで大いに問題があるんだけどな・・・」

嶺二「多分平気だろーけど、念のため万が一の時の対処法も考えてあるから、安心してくれ汐莉ちゃん」

汐莉「その対処法とは何です?」

嶺二「もし明日香が戻ってくる前に、文芸部に入りたいって言う奴が出てきたら、後一ヶ月か、二ヶ月ほど待てって頼む」

真彩「そんなに待ってくれるんすかねぇ・・・」

嶺二「忍耐を試す入部テストだって言っときゃ何とかなるだろ」

詩穂「そんな嘘を信じる一年生はいないような・・・」

響紀「対処法がまるで対処法になっていませんね」

鳴海「全くだ」

雪音「何かあった時の言い訳は、嘘の達人鳴海先輩にフル任せで良いんじゃない?」

鳴海「おい」

雪音「得意でしょ?嘘つくの」

鳴海「いや得意じゃないわ!!むしろ下手なくらいだわ!!」

菜摘「い、言い訳は後で考えよう!!後で!!」

鳴海「そ、そうだな!!言い訳はその場で考えちまおう!!」


 少しの沈黙が流れる


響紀「やはり、新入部員を見つける前に明日香ちゃんを文芸部に閉じ込めるのが理想です」

嶺二「(頷き)ああ」


 部員募集の紙の束を持って立ち上がる嶺二


◯515波音高校一年生廊下(放課後/夕方)

 廊下に出てきた鳴海、菜摘、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 全員部員募集の紙の束と画鋲を持っている


菜摘「んー、じゃあ鳴海くんは汐莉ちゃんとペアね」

鳴海「お、おう」


 鳴海はチラッと汐莉のことを見る

 汐莉と目が会い、慌てて目を逸らす鳴海


菜摘「嶺二くんは響紀ちゃんとペアで・・・」

響紀「またれから始まってじで終わるあなたとですか」

嶺二「響紀ちゃん、俺たち結構良いコンビだと思うぜ?」

響紀「そういうことにしといてあげましょう・・・」

菜摘「雪音ちゃんは真彩ちゃんとやろっか」

雪音「了解」

真彩「(頭を下げ)お、お願いします!!」

雪音「こちらこそ」

菜摘「で、詩穂ちゃんは私と」

詩穂「あ、はい!」

鳴海「先輩後輩同士でペアになるようにしたってことか・・・」

菜摘「うん!!他学年交流だよ!!」


◯516波音高校二年生廊下(放課後/夕方)

 二年生廊下にある掲示板に部員募集の貼り紙をしている鳴海と汐莉

 廊下にはほとんど生徒がいない

 二年生の教室では、雑談して居残っている生徒が数人いる

 鳴海は掲示板に画鋲を刺し、部員募集の紙を止める

 汐莉は部員募集の紙の束と、たくさんの画鋲が入った小さな箱を持っている

 鳴海の作業を見ている汐莉 

 夕日が廊下を赤く染めている

 鳴海に部員募集の紙一枚と画鋲を四個差し出す汐莉

 部員募集の紙と画鋲を受け取る鳴海


鳴海「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)他学年交流か・・・」

汐莉「鳴海先輩、顔に書いてありますよ。菜摘と一緒が良かったって」

鳴海「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)顔で判断すな」

汐莉「ごめんなさいね、私で」

鳴海「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)そんなことで謝られても嬉しくないんだが・・・」

汐莉「謝罪は態度が大事ですから」

鳴海「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)うっ・・・覚えときます・・・」


 部員募集の紙を貼り終える鳴海

 鳴海に部員募集の紙一枚と画鋲四個を差し出す汐莉

 部員募集の紙と画鋲を受け取る鳴海


鳴海「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)いやでも南、顔で判断するのはよろしくないと思うぞ」

汐莉「そうですか?」

鳴海「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)人は見た目より中身って言うだろ」

汐莉「先輩、一番大事なのはお金と食材の有無ですよ」

鳴海「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)それは認めよう、三番目に大事なのがせいか・・・」

汐莉「(鳴海の話を遮って)容姿です」


 部員募集の紙を貼り終える鳴海

 鳴海に部員募集の紙一枚と画鋲四個を差し出す汐莉

 部員募集の紙と画鋲を受け取る鳴海


鳴海「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)よっぽどルックスを重視するんだな・・・」

汐莉「(頷き)はい」

鳴海「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)そう言う割には南って、恋愛とか異性には興味がなさそうじゃないか?」


 少しの沈黙が流れる

 鳴海の手が止まる


鳴海「今俺、失礼なことを言った?」

汐莉「はい」

鳴海「ごめん・・・」

汐莉「しょうがないですね、たこ焼き二人前で手を打ちましょう」


 止めていた手を動かし部員募集の紙を貼り始める鳴海

 

鳴海「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)サンキュー南」


 部員募集の紙を貼り終える鳴海

 鳴海に部員募集の紙一枚と画鋲四個を差し出す汐莉

 部員募集の紙と画鋲を受け取る鳴海


鳴海「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)じゃあ・・・好きな奴がいるって認識で良いのか?」

汐莉「どうだと思います?」

鳴海「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)この会話の流れからして、いるんだろ?」

汐莉「ヒントを出しましょうか」

鳴海「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)頼むよ」

汐莉「私の身近にいます」


 再び鳴海の手が止まる

 恐る恐る汐莉の方を見る鳴海


鳴海「ま、まさか・・・」

汐莉「なんですか?」

 

 再び沈黙が流れる


鳴海「まさかだと思うんだけどさ・・・ひょ、ひょっとして・・・お、お・・・」

汐莉「(即答で)違います」

鳴海「まだ最後まで言ってねえだろ!!!」

汐莉「みなまで言わなくても分かりますよ。鳴海先輩の顔にデカデカと、まさか俺!?って書かれてましたから」


 笑い出す鳴海


汐莉「(少し怒ったように)何で笑うんですか」

鳴海「(笑いながら)い、いやだって・・・南、この前しょぼくれてたからさ・・・」

汐莉「(少し怒ったように)先輩、笑うのは失礼ですよ」


 止めていた手を動かし部員募集の紙を貼り始める鳴海


鳴海「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)悪い悪い、たこ焼きを奢るから怒らないでくれ」

汐莉「それならまあ・・・(少し間を開けて)許してあげますけど・・・?」


 部員募集の紙を貼り終える鳴海

 鳴海に部員募集の紙一枚と画鋲四個を差し出す汐莉

 部員募集の紙と画鋲を受け取る鳴海


鳴海「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)南、例の悪夢はあれきりなのか?」

汐莉「は、はい・・・あれ以来・・・ないです」

鳴海「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)そうか、良かったな」


◯517波音高校一年生廊下(放課後/夕方)

 一年生廊下にある掲示板に部員募集の貼り紙をしている嶺二と響紀

 廊下にはほとんど生徒がいない

 一年生の教室では、雑談して居残っている生徒が数人いる

 嶺二は掲示板に画鋲を刺し、部員募集の紙を止める

 響紀は部員募集の紙の束と、たくさんの画鋲が入った小さな箱を持っている

 嶺二の作業を見ている響紀

 夕日が廊下を赤く染めている

 響紀は嶺二に部員募集の紙一枚と画鋲を四個差し出す

 部員募集の紙と画鋲を受け取る嶺二


嶺二「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)何から何までありがとな、響紀ちゃん」

響紀「いえ」

嶺二「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)俺たちが卒業する頃には、響紀ちゃんはきっと明日香と付き合ってるぜ」

響紀「それより前に付き合いです。明日香ちゃんと一緒にお昼ご飯を食べるのが夢なので」

嶺二「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)それくらいのことだったら、頼めばいつでもやってくれるんじゃねえかな」

響紀「ほんとですか」

嶺二「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)明日香は押しに弱いし、強引に拉致しちまえばいいだろ」


 部員募集の紙を貼り終える嶺二

 嶺二に部員募集の紙一枚と画鋲四個を差し出す響紀

 部員募集の紙と画鋲を受け取る嶺二

 

響紀「強引って、どこまでが許される範囲なんですかね」

嶺二「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)そうだなー・・・」

響紀「前、真彩とこの話をしたんです。そしたら、穴だけは絶対にダメだって」

嶺二「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)穴はやべーよ、間違いなく穴はアウトだ」

響紀「やっぱり嶺二先輩も穴はダメだと思うんですね」

嶺二「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)そりゃそーだろ・・・響紀ちゃん、こればっかりは世界のルールに従ってくれねーと」

響紀「たかだかピアスの穴だって言うのに、世の中厳し過ぎますよ」


 部員募集の紙を貼るのをやめ、響紀のことを見る嶺二


嶺二「穴って・・・ピアスの穴のことかよ・・・?」

響紀「はい。穴と言えばピアスの穴か、ワームホールか、ブラックホールしかありませんし」


 少しの沈黙が流れる


響紀「もしかしてそれ以外の穴を想像してました?」


 再び沈黙が流れる


響紀「(棒読みで)あー、嶺二先輩のエッチスケッチワンタッチー。そして私は明日香ちゃんに100万回エッチなタッチがしたいー」

嶺二「(大きな声で)てめえ最初からピアスの穴って言えよボケが!!!」

響紀「乙女にてめえとボケはないですね」

嶺二「(大きな声で)ピアスの穴で何をする気だったのか説明してみろ!!!」

響紀「大したことじゃありませんよ。勝手に明日香先輩の耳たぶに穴を開けたらどうかって話です」

嶺二「(大きな声で)事故って明日香の耳たぶが大仏みたいになったらどうすんだよ!!!」

響紀「ご安心を嶺二先輩。私は明日香ちゃんの穴という穴の全てを愛し、明日香ちゃんが望めば穴枝響紀に改名するくらいの覚悟は出来てます」

嶺二「(大きな声で)穴穴うるせーな!!!ド変態穴女は喋るんじゃねえ!!!」


◯518波音高校図書室前廊下(放課後/夕方)

 図書室前の廊下にいる雪音と真彩

 二人は掲示板の前に立っている

 掲示板には貼り紙がされておらず、画鋲の抜いた跡がたくさん残っている

 夕日が廊下を赤く染めている

 雪音は部員募集の紙の束と、たくさんの画鋲が入った小さな箱を持っている


真彩「(掲示板を見ながら)うわあ、穴だらけの掲示板っすね・・・」

雪音「(掲示板を見ながら)通る生徒が多いから、ここの掲示板はいろんな部が宣伝に使うの」

真彩「そうなんすか・・・では、我々も手早く貼っていきますかねー」

雪音「うん」


◯519波音高校三年生廊下(放課後/夕方)

 三年生廊下にある掲示板に部員募集の貼り紙をしている菜摘と詩穂

 廊下にはほとんど生徒がいない

 三年生の教室では、雑談して居残っている生徒が数人いる

 菜摘は掲示板に画鋲を刺し、部員募集の紙を止める

 詩穂は部員募集の紙の束と、たくさんの画鋲が入った小さな箱を持っている

 菜摘の作業を見ている詩穂

 夕日が廊下を赤く染めている

 詩穂は菜摘に部員募集の紙一枚と画鋲を四個差し出す


菜摘「(部員募集の紙と画鋲を受け取り)ありがとう」


 菜摘は部員募集の紙を貼り始める


詩穂「軽音部と文芸部でここまで一緒に活動をするなんて思ってませんでした、私」

菜摘「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)そうだね。文芸部は軽音部に凄く助けられてるし、感謝しないと・・・・何かのお礼の形を考えておくね」

詩穂「先輩、一つ提案して良いですか」

菜摘「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)何?」

詩穂「文芸部の部員が足りないなら・・・魔女っ子少女団全員で名義を貸しますよ」


 少しの沈黙が流れる


詩穂「汐莉みたいに、私と、響紀くんと、真彩の三人が文芸部に入れば、集めなきゃいけない部員の数も一人になって楽じゃないですか」

菜摘「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)面白い考えだけど、そんなズルみたいなことは出来ないよ。文芸部と軽音部が合併しちゃったら、それは私からすれば文芸部が廃部したのと一緒だし・・・だから、詩穂ちゃんたちの力を借りても、出来ることは自分たちで、文芸部で頑張りたいんだ。ってまあ・・・手伝ってもらってるのに、あんまり偉そうなことは言えないけど・・・」


 部員募集の紙を貼り終える菜摘


詩穂「(菜摘に部員募集の紙一枚と画鋲を四個差し出して)先輩・・・響紀くんを恨まないであげてください」

菜摘「(部員募集の紙と画鋲を受け取り)えっ?どうして響紀ちゃんのことを恨むの?」

詩穂「ちょっと・・・訳ありでして・・・」

菜摘「訳あり?」


 困っている詩穂


詩穂「先輩たちは魔女っ子少女団の罠に・・・いや、というか、響紀くんの罠にハマってて・・・」

菜摘「えっとー・・・詩穂ちゃん、話が見えてこないんだけど・・・詳しく教えてくれない?」


◯520波音高校図書室前廊下(放課後/夕方)

 図書室前の廊下にいる雪音と真彩

 二人は掲示板の前に立っている

 掲示板には貼り紙がされておらず、画鋲の抜いた跡がたくさん残っている

 夕日が廊下を赤く染めている

 雪音は部員募集の紙の束と、たくさんの画鋲が入った小さな箱を持っている

 真彩は掲示板に画鋲を刺し、部員募集の紙を止める

 真彩の作業を見ている雪音


真彩「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)ゆ、雪音先輩って、天文学部を辞めて文芸部に入ったって聞いたんすけど・・・」

雪音「そうだよ」

真彩「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)め、珍しいっすね!!三年生が部活を変えるのって・・・」

雪音「文芸部より、天文学部の方が魅力的に見えるんでしょ?」

真彩「(部員募集の紙を貼るのをやめ慌てて)そ、そ、そんなことないっす!!!ぶ、文芸部は素晴らしい部活だと思います!!!」

雪音「ふーん・・・例えばどこが?」

真彩「ど、どこっていうのは・・・」

雪音「文芸部の素晴らしいって思うところ、あるんだよね?どこなの?」

真彩「み、みなさん仲良しなところ・・・とか・・・真面目に活動してるところ・・・とか・・・」


 少しの沈黙が流れる


雪音「ねえ、知ってる?」

真彩「なんすか・・・?」

雪音「この町は奇跡が起きるってことを・・・」

真彩「波音町に伝わるおとぎ話のことっすかね?」

雪音「そう。おとぎ話」

真彩「それがどうかしたんすか?」

雪音「真彩さ・・・文芸部のとっておきの秘密、知りたくない?」

真彩「(大きな声で)し、知りたいっす!!!教えてください!!!」


◯521波音高校二年生廊下(放課後/夕方)

 二年生廊下にある掲示板に部員募集の貼り紙をしている鳴海と汐莉

 廊下にはほとんど生徒がいない

 二年生の教室では、雑談して居残っている生徒が数人いる

 鳴海は掲示板に部員募集の紙を貼り終える

 汐莉は部員募集の紙の束と、たくさんの画鋲が入った小さな箱を持っている

 掲示板を見ている鳴海と汐莉

 掲示板には部員募集の紙が全面に貼られている

 夕日が廊下を赤く染めている


鳴海「(掲示板を見ながら)こんなもんでいいな・・・次は校庭の掲示板に行くか」

汐莉「(掲示板を見ながら)はい」


 鳴海は汐莉は校庭を目指して歩き出す


鳴海「なんか・・・懐かしいよな・・・」

汐莉「懐かしい?」

鳴海「ああ。春頃にさ、みんなで部員集めをしただろ」

汐莉「先輩たちが千春をナンパした時のことですか?」

鳴海「勝手に記憶を変えるな、ナンパなんざ俺はしてないぞ」

汐莉「そうでしたっけ?私の脳内だと、鳴海先輩と嶺二先輩が千春を口説き落としたイメージなんですが・・・」

鳴海「俺が千春を口説くわけねえだろ」

汐莉「鳴海先輩は、菜摘先輩以外の女性とは関わろうとしませんもんね」

鳴海「(小声でボソッと)こ、肯定も否定もしないでおこう・・・」

汐莉「というか先輩、覚えてますか?」

鳴海「何をだ?」

汐莉「私、入学直後に先輩と会ってるんですよ!!」

鳴海「また記憶の改変か・・・」

汐莉「違います!!私たちぶつかったじゃないですか!!」

鳴海「ぶつかった・・・?あ、そういえば・・・」


◯522Chapter1◯2の回想/通学路(朝)

 満開の桜

 緋空祭りに合わせて提灯が吊るされている

 ゆっくり歩いている鳴海

 遅刻を恐れてたくさんの生徒たちが波音高校に向かって走って行く

 鳴海の後ろから汐莉が全力で走って来る

 汐莉の持っているカバンが、鳴海の脇腹に直撃する


鳴海「(舌打ちをする)チッ・・・いってえな・・・」


 少し先の位置で立ち止まって鳴海の方を振り返る汐莉

 両手を合わせて頭をペコペコする汐莉

 鳴海がボーッと見ていると、すぐに正面を向いて全力ダッシュを再開する汐莉


◯523回想戻り/波音高校二年生廊下(放課後/夕方)

 校庭を目指して歩いている鳴海と汐莉

 夕日が廊下を赤く染めている


汐莉「先輩、あの時舌打ちしましたよね?」

鳴海「いやあれは舌打ちするだろ!!」

汐莉「新入生相手にあの態度は、スイートメロンパンだと思いませんか」

鳴海「否定はしない」

汐莉「あれから半年弱ですよ、先輩。高校生活って、ほんと一瞬で終わっちゃうんですね」

鳴海「そうだな。俺たちが卒業したら、いよいよ南も二年生になるわけか・・・汐莉先輩って呼ばれてもいいように準備しとけよ」

汐莉「後輩と接するのに、準備とか要らないと思うんですけど・・・」

鳴海「そうか?先輩を通り越して南部長になるかもしれないんだぞ?」

汐莉「私は部長って器じゃないので、他の人にその立場は譲ります」

鳴海「マジかよ。勿体ねえ」

汐莉「副部長ならやりますけどね」

鳴海「まるで俺だな」

汐莉「サブリーダーくらいのポジションがちょうど良いんですよ。魔女っ子少女団のリーダーだって、私断ったんですから」

鳴海「え?バンドは南がリーダーだろ?」

汐莉「違いますよ。リーダーは響紀です」

鳴海「そうだったのか・・・(少し間を開けて)それにしてもあいつは何でもやるんだな・・・」

汐莉「響紀は良い意味で自信に溢れていて、人を惹きつけるカリスマ性がありますから」

鳴海「その言葉だけ聞くと、響紀に凄い魅力があるように感じるから不思議だ・・・」


 階段を降りて行く鳴海と汐莉


汐莉「どうも男の人って、響紀の本当の良さに気づかないんですよね。あんなに可愛くて・・・歌が上手くて・・・勉強も、スポーツも出来るのに・・・」

鳴海「俺だって響紀の凄さは理解してるつもりだぞ」

汐莉「鳴海先輩、響紀を可愛いって思ったことあるんですか?」

鳴海「そりゃあねえよ。あいつのことを可愛いって思う奴は、明日香くらい押しに弱い女子か、スイートメロンパン級に馬鹿な男子のどちらかだろ」

汐莉「なら私は前者ですね」

鳴海「(呆れて)おいおい・・・明日香ならともかく・・・なんで南までそっち側に・・・」


 鳴海は当然黙り、我に返ったように立ち止まる

 鳴海に合わせて立ち止まる汐莉

 汐莉のことを見る鳴海


◯524Chapter6◯219の回想/波音高校食堂(昼)

 昼休み

 食堂にいる鳴海、菜摘、嶺二

 込んでいる食堂

 注文に並ぶ生徒がたくさんいる

 昼食を食べ終えた鳴海たちが話をしている

 食堂のテーブルはほとんど埋まっている


嶺二「面倒見の良い明日香が、慕ってくれる下級生を放っておくわけねーだろ。三年間俺たちのことを見捨てなかったような奴だぞ」

鳴海「凄い説得力だ・・・」

菜摘「嶺二くんの考えも一理あるよね。響紀ちゃん可愛いし、格好良いし、歌と楽器の才能もあるし・・・魅力的だと思う」

鳴海「マジかよ・・・」

菜摘「あんな後輩から迫られたら意識しちゃうんじゃないかなぁ・・・」


◯525◯480の回想/波音高校特別教室の四/文芸部室(放課後/夕方)

 校庭では運動部が活動している

 部室で怒鳴り合っている鳴海と明日香

 怒鳴り合っている鳴海と明日香を見ている嶺二、汐莉、雪音

 

明日香「汐莉に八つ当たりしてどうすんのよ!!」

鳴海「明日香が南に八つ当たりするように仕向けたんだろ!!!」

汐莉「先輩・・・わた・・・」

鳴海「(汐莉を指差して大きな声で)気を使いたくなきゃ南は口を出さないでくれ!!!」


 鳴海の大きな声に驚き黙る汐莉


◯526◯358の回想/波音高校特別教室の四/文芸部室(放課後/夕方)

 校庭では運動部が活動している

 教室の隅にパソコン六台とプリンターが一台ある

 部室にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 円の形に並べられた椅子に座っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、詩穂、真彩

 響紀だけは椅子に座らず、円の中心でプリントを読んでいる

 プリントには難波を口説き落とすための、台本が書かれている

 響紀の演技練習に、ディレクションをしている嶺二、真彩、詩穂

 その様子を見ている鳴海、菜摘、明日香、汐莉、雪音

 ポニーテールを解き、ヘアゴムを右手につける響紀

 椅子に戻る汐莉


汐莉「鳴海先輩、響紀は文芸部のために、先輩たちのためにやっているということをお忘れなく」

鳴海「わ、分かってるってそんなこと・・・」


 汐莉の視線は響紀のポニーテールに向いている


◯527◯359の回想/波音高校一年生廊下(昼)

 昼休み、たくさんの生徒が廊下で喋ったりしている

 響紀が難波(男子生徒)と話をしている

 響紀のことを後ろから隠れながら見ている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、詩穂、真彩

 ポニーテール姿の響紀が難波の手を取り、強く握る


難波「わ、分かったよ・・・三枝さんを支持する」

響紀「(難波の手を握りながら)ありがとう!!!」

難波「ど、どういたしまして・・・」


 顔を赤くしながら照れている難波

 鳴海たちは変わらず、隠れながら響紀と難波のことを見ている

 

汐莉「ねえ」

真彩「ん?」

汐莉「響紀って素でああいうことしない?」

詩穂・真彩「する」

汐莉「ほとんど素の響紀だよねあれ」

鳴海「今のが素なのか・・・通りで違和感がないわけだ・・・」


 響紀の手を見ている汐莉

 響紀の手は変わらず、難波の手を強く握りしめている


◯528◯516の回想/波音高校二年生廊下(放課後/夕方)

 二年生廊下にある掲示板に部員募集の貼り紙をしている鳴海と汐莉

 廊下にはほとんど生徒がいない

 二年生の教室では、雑談して居残っている生徒が数人いる

 鳴海は掲示板に画鋲を刺し、部員募集の紙を止める

 汐莉は部員募集の紙の束と、たくさんの画鋲が入った小さな箱を持っている

 鳴海の作業を見ている汐莉 

 夕日が廊下を赤く染めている

 部員募集の紙を貼り終える鳴海

 鳴海に部員募集の紙一枚と画鋲四個を差し出す汐莉

 部員募集の紙と画鋲を受け取る鳴海


鳴海「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)じゃあ・・・好きな奴がいるって認識でいいのか」

汐莉「どうだと思います?」

鳴海「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)この会話の流れからして、いるんだろ?」

汐莉「ヒントを出しましょうか」

鳴海「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)頼むよ」

汐莉「私の身近にいます」


◯529回想戻り/波音高校階段(放課後/夕方)

 階段で立ち止まっている鳴海と汐莉

 二人の男子生徒が大きな声で話をしながら階段を駆け降りていく


男子生徒1「(階段を駆け降りながら)それで告白されたんだってよ!」

男子生徒2「(階段を駆け降りながら)え、マジで!?!?」

男子生徒1「(階段を駆け降りながら)ああ!本人がそう言ってたぜ!!」

男子生徒2「(階段を駆け降りながら)付き合うかどうか聞いたか!?」

男子生徒1「(階段を駆け降りながら)付き合うってさ!!遊びらしいけどな!!多分一ヶ月しないで別れ・・・」

 

 男子生徒たちは話をしながら階段を降りて行く

 少しの沈黙が流れる

 鳴海は汐莉のことを見ている


鳴海「南・・・お前は・・・」

汐莉「何ですか?」

鳴海「響紀のことを・・・どう思ってるんだ」

汐莉「どうしたんです?いきなりそんなことを聞いて」

鳴海「答えてくれ」


 再び沈黙が流れる


汐莉「好きですよ。(少し間を開けて)友達ですから」


 鳴海には汐莉の姿が凛に見える


鳴海「まただ・・・また南の姿が・・・お前に・・・」


 微笑み、頷く凛(汐莉)


鳴海「俺はどうすればいいんだ・・・」


 凛(汐莉)の瞳には鳴海ではなく奈緒衛の姿が映っており、その奥にはあるはずのない海が映っている

 鳴海の瞳には汐莉ではなく凛が映っており、その奥にはあるはずのない海が映っている

 鳴海、凛の瞳にある海の波は荒れている

 凛(汐莉)は口を動かすが、鳴海には何と言ったのか分からない

 凛(汐莉)は鳴海の肩に手を置く

 凛(汐莉)の手が置かれてある自分の肩を見る鳴海


汐莉「鳴海の肩を揺らしながら)鳴海先輩!!鳴海先輩ってば!!」


 鳴海は凛がいた方を見るが、そこに凛の姿はない

 周囲を見る鳴海


汐莉「(鳴海の肩を揺らしたまま大きな声で)先輩!!!」

鳴海「(周囲を見るのをやめて)み、南・・・どうかしたのか・・・?」


 汐莉は鳴海の肩から手を離す


汐莉「どうかしたのかじゃないです!!鳴海先輩急におかしくなったんですよ!!」

鳴海「お、おかしくなったって?」

汐莉「私のことを見ながらなんかボソボソ喋ってたじゃないですか!!」

鳴海「えっ・・・ああ・・・わ、悪い悪い」


 少しの沈黙が流れる


汐莉「(心配そうに)先輩、最近変ですよ・・・明日香先輩に怒鳴ったり、無理矢理誤魔化そうとしたり・・・」

鳴海「ちょ、ちょっと疲れてるだけだろ」


 汐莉は心配そうに鳴海のことを見ている


鳴海「そ、そんなに心配すんなって。早く作業を終わらせに行くぞ」


 校庭を目指して歩き出す鳴海

 汐莉は先を歩く鳴海のことをその場で見ている


◯530波音高校図書室前廊下(放課後/夕方)

 図書室前の廊下にいる雪音と真彩

 二人は掲示板の前に立って、話をしている

 掲示板には部員募集の紙が三枚だけ貼られている

 掲示板にはまだ貼り紙をする余裕がある

 響紀は部員募集の紙の束と、たくさんの画鋲が入った小さな箱を持っている

 夕日が廊下を赤く染めている

 

雪音「天文学部に無くて、文芸部にあるもの。それはね・・・欲を叶えてくれる人の存在」

真彩「よ、欲を叶えてくれる人?」

雪音「文芸部の部員って、みんな自分の欲望に忠実だと思わない?」

真彩「えっ?そうっすかね?」

雪音「(頷き)我が強いのが文芸部の個性なの。だって頑固な人が多いでしょ?」

真彩「あ〜・・・でもそれはうちらにも言えることですよ。集団で何かを作る時は、我が強くないと意見が出ませんし」

雪音「そうね。ただ、文芸部は欲を叶えてくれる人がいて、そのせいでみんな無意識に我が強くなるの」

真彩「何なんすか?その欲を叶えてくれる人って」


◯531波音高校一年生廊下(放課後/夕方)

 一年生廊下にある掲示板に部員募集の貼り紙をしている嶺二と響紀

 廊下にはほとんど生徒がいない

 一年生の教室では、雑談して居残っている生徒が数人いる

 嶺二は掲示板に部員募集の紙を貼り終える

 響紀は部員募集の紙の束と、たくさんの画鋲が入った小さな箱を持っている

 掲示板を見ている嶺二と響紀

 掲示板には部員募集の紙が全面に貼られている

 夕日が廊下を赤く染めている

 話をしている嶺二と響紀


雪音「(声)文芸部には、自分の欲を突き通そうとする人や・・・」


◯532波音高校校庭(放課後/夕方)

 校庭では運動部が活動している

 校庭に出てきた鳴海と汐莉

 二人は話をしながら、掲示板を目指している

 汐莉は部員募集の紙の束と、たくさんの画鋲が入った小さな箱を持っている

 夕日が沈みかけている


雪音「(声)その逆で・・・他人の欲を叶えさせないようにする人がいるの」

真彩「(声)か、叶えさないようにって、どーゆーことっすか?」

雪音「(声)他人の欲を叶えさせない欲ってところね」

真彩「(声)む、難しいっす・・・どうして人の欲を邪魔したりするんすかね?」

雪音「(声)欲を叶えてくれる人を・・・守るため・・・」


◯533波音高校図書室前廊下(放課後/夕方)

 図書室前の廊下にいる雪音と真彩

 二人は掲示板の前に立って、話をしている雪音と真彩

 掲示板には部員募集の紙が三枚だけ貼られている

 掲示板にはまだ貼り紙をする余裕がある

 夕日が廊下を赤く染めている


雪音「欲を叶えてくれる人にはね、翼が生えてるの」

真彩「はあ・・・」

雪音「信じてない?」

真彩「あ、あんまり・・・」

雪音「欲を叶えてくれる人に生えた翼は、一時期だけど不可能を可能にしてくれるって話。夢があるでしょ?」

真彩「そ、そうっすね・・・」

雪音「夢は悲しいものだから・・・この夢物語には、グリム童話と同じように残酷な結末が待ってるんだけど」

真彩「どうなるんすか?」

雪音「翼の音読みを言ってみて」

真彩「えっとー・・・よくっす」

雪音「そう。欲しい、欲するの漢字も、音読みはよく」


 少しの沈黙が流れる


雪音「欲を叶えると言うのはね、翼を奪うのと同じ意味なの」


 再び沈黙が流れる


雪音「鳥から羽をむしり取ったら、どうなるか知ってる?」

真彩「と、飛べなくなるんじゃないっすか・・・?」


◯534波音高校三年生廊下(放課後/夕方)

 三年生廊下にある掲示板の前で話をしていた菜摘と詩穂

 廊下にはほとんど生徒がいない

 三年生の教室では、雑談して居残っている生徒が数人いる

 詩穂は部員募集の紙の束と、たくさんの画鋲が入った小さな箱を持っている

 夕日が廊下を赤く染めている

 菜摘が激しく咳き込んでいる

 菜摘を心配して声をかけている詩穂


雪音「(声)飛べない鳥に待ってるのは、死ぬことだけ・・・」

菜摘「(激しく咳き込みながら)ゲホッ・・・ゲホッ・・・ゲホッ・・・」

詩穂「せ、先輩、保健室に・・・」


 菜摘は激しく咳き込みながら首を横に振る


菜摘「(激しく咳き込みながら)ゲホッ・・・ゲホッ・・・だ、大丈夫・・・」


 詩穂は菜摘の背中をさする

 少しすると菜摘の咳が収まる

 菜摘の背中をさするのをやめる詩穂


菜摘「ご、ごめんね詩穂ちゃん」

詩穂「(心配そうに)菜摘先輩、保健室に行くか、汐莉たちを呼んだ方が・・・」

菜摘「(詩穂の話を遮って)へ、平気だから!!それよりさっきの・・・響紀ちゃんの罠?だっけ・・・?詳しく教えてよ、詩穂ちゃん」


 少しの沈黙が流れる


詩穂「凄く言い辛いことなんですけど・・・」

菜摘「うん」

詩穂「ぶ、文芸部の朗読劇がここまで複雑になった理由の一端が、私たち魔女っ子少女団にあって・・・響紀くんの思惑に・・・先輩たちを巻き込んでしまったんです・・・」

菜摘「え?どういうこと?」

詩穂「明日香先輩と鳴海先輩が喧嘩したのは、さすがに響紀くんも予想外の出来事だったと思うんですけど・・・そもそも、私たちが先輩たちにある隠し事をしていなければ、朗読劇はこんなにややこしくはならなかったんですよね・・・」

菜摘「ある隠し事・・・?」

詩穂「はい・・・」


 再び沈黙が流れる


詩穂「スケジュールのことで重大な秘密がありまして・・・しかし・・・もう隠していてもしょうがないので・・・今告白しちゃいます・・・」

菜摘「う、うん」

詩穂「じ、実は・・・響紀くんが・・・」


 唾を飲み込む菜摘


◯535波音高校職員室前廊下(放課後/夕方)

 職員室前の廊下にある掲示板に部員募集の貼り紙をしている嶺二と響紀

 廊下には生徒がいない

 職員室では、仕事をしている教師たちがたくさんいる

 嶺二は掲示板に画鋲を刺し、部員募集の紙を止める

 響紀は部員募集の紙の束と、たくさんの画鋲が入った小さな箱を持っている

 嶺二の作業を見ている響紀

 部員募集の紙を貼り終える嶺二

 嶺二に部員募集の紙一枚と画鋲四個を差し出す響紀

 部員募集の紙と画鋲を受け取る嶺二


嶺二「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)職員室前で変なことを言うんじゃねーぞ」

響紀「変なことって何ですか?」

嶺二「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)変なことは変なことだ」

響紀「よく分かりません」

嶺二「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)TPOをわきまえろってことだよ」

響紀「何故でしょう、嶺二先輩に言われると腹が立つのですが・・・」

嶺二「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)腹は立たせても構わんが、やらかすんじゃねえ」

響紀「何故でしょう、これまた嶺二先輩に言われるととても腹が立つのですが・・・」

嶺二「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)あのなぁ、あんまやらかしてばっかいると、明日香に嫌われるぞ」


 部員募集の紙を貼り終える嶺二


響紀「(嶺二に部員募集の紙一枚と画鋲四個を差し出して)嶺二先輩と鳴海先輩みたいに?」

嶺二「(部員募集の紙と画鋲を受け取って)そーだ」

響紀「明日香ちゃんから嫌われて、先輩たちはよくそんなヘラヘラしてられますよね」

嶺二「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)俺と鳴海は文芸部に笑顔を供給するスマイル担当コンビだからな、かっけーだろ?みんなに笑顔をお届けするんだぜ?」

響紀「二人が明日香ちゃんから嫌われた理由がよく分かりました」

嶺二「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)いつも明るく楽しい文芸部でいられるのは、俺たちのお陰ってわけだ」

響紀「むしろ嶺二先輩たちのせいで、暗くてどんよりした文芸部になったのでは」


◯536波音高校校庭(放課後/夕方)

 校庭では運動部が活動している

 校庭にある掲示板に部員募集の紙を貼っている鳴海と汐莉

 汐莉は部員募集の紙の束と、たくさんの画鋲が入った小さな箱を持っている

 鳴海は掲示板に画鋲を刺し、部員募集の紙を止める

 鳴海の作業を見ている汐莉

 部員募集の紙を貼り終える鳴海

 鳴海に部員募集の紙一枚と画鋲四個を差し出す汐莉

 部員募集の紙と画鋲を受け取る鳴海

 夕日が沈みかけている


鳴海「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)お互い、疲れてるのかもな」

汐莉「そうですね」

鳴海「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)というかさっきの話の続きだが・・・」

汐莉「何です?」

鳴海「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)南と響紀は・・・」


 少しの沈黙が流れる


汐莉「鳴海先輩、今日しつこくないですか」

鳴海「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)わ、悪い・・・」


 再び沈黙が流れる


汐莉「先輩・・・」

鳴海「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)ん?」

汐莉「たくさん迷惑をかけてごめんなさい」


 鳴海の手が止まる


鳴海「別に南が謝ることじゃないだろ・・お前は悪くねえんだし」


 俯く汐莉


汐莉「(俯いたまま)そう・・・ですかね・・・」

鳴海「いいか南、今日までのトラブルはな、全部三年の俺たちがいけないんだ。だから、後輩のお前が責任を感じなくたっていいんだよ」


 部員募集の紙を貼り始める鳴海


鳴海「(部員募集の紙を貼りながら)南はアホな俺たちを見て笑ってろ。俺は俺でアホなりに名誉挽回する予定だからさ」

汐莉「(俯いたまま)はい・・・」


 少しの沈黙が流れる

 鳴海は黙々と部員募集の紙を貼っている

 汐莉は変わらず俯いている


汐莉「(俯いたまま小声で)いなくなればいいのに・・・明日香先輩なんか・・・」


 一瞬、鳴海の手が止まるが、鳴海は聞こえてないふりをして部員募集の紙を貼り続ける

 鳴海は作業を続け、その間も汐莉は俯いている


◯537波音高校図書室前廊下(放課後/夕方)

 図書館前の廊下にある掲示板に部員募集の貼り紙をしている雪音と真彩

 廊下には生徒がいない

 真彩は掲示板に画鋲を刺し、部員募集の紙を止める

 雪音は部員募集の紙の束と、たくさんの画鋲が入った小さな箱を持っている

 真彩の作業を見ている雪音

 部員募集の紙を貼り終える真彩

 真彩に部員募集の紙一枚と画鋲四個を差し出す雪音

 部員募集の紙と画鋲を受け取る真彩


真彩「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)ゆ、雪音先輩って茶目っ気のある人だったんですね!!意外っす!!」

雪音「そう?私の話に冗談やユーモアは混じってなかったと思うんだけど?」


 少しの沈黙が流れる

 

真彩「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)そ、それも冗談っすよね〜?」


 再び沈黙が流れる


雪音「私の思惑に巻き込まれた命が、少し多かったか・・・」

真彩「(部員募集の紙を掲示板に貼りながら)ま、巻き込まれた?誰がっすか?」

雪音「(小声でボソッと)早乙女菜摘と彼女の側にいる人たち」


◯538波音高校波音高校一年六組の教室/軽音部一年の部室(放課後/夜)

 夜になっている

 椅子に座っている鳴海、菜摘、嶺二、雪音

 楽器を片付けている汐莉、響紀、詩穂、真彩

 鳴海は呆然としている

 鳴海は首をゆっくり動かし、汐莉のことを見る

 汐莉は楽しそうに響紀と話をしながら楽器を片付けている 


菜摘「鳴海くん、この後響紀ちゃんと話があるから、今日は一緒に帰れない。ごめんね」


 鳴海は変わらずボーッと汐莉と響紀のことを見ている

 鳴海は菜摘の話を聞いていない


菜摘「鳴海くん?」

鳴海「え・・・?(汐莉と響紀を見るのをやめて)ああ・・・菜摘、そろそろ帰えるか」

菜摘「ごめん、今日はこの後も響紀ちゃんと話があって・・・」


 少しの沈黙が流れる


菜摘「鳴海くんも一緒に残る?」


 鳴海は再び汐莉のことを見る

 汐莉は変わらず、響紀と楽しそうに話をしている

 汐莉と響紀のことを見たまま、首を横に振る鳴海


菜摘「そっか、じゃあまた明日ね」


◯539帰路(夜)

 帰り道、一人でゆっくり歩いている鳴海

 部活帰りの学生がたくさんいる


◯540◯536の回想/波音高校校庭(放課後/夕方)

 校庭では運動部が活動している

 校庭にある掲示板に部員募集の紙を貼っている鳴海と汐莉

 汐莉は部員募集の紙の束と、たくさんの画鋲が入った小さな箱を持っている

 俯いている汐莉

 鳴海は黙々と部員募集の紙を貼り続けている


汐莉「(俯いたまま小声で)いなくなればいいのに・・・明日香先輩なんか・・・」


 一瞬、鳴海の手が止まる


◯541回想戻り/帰路(夜)

 帰り道、一人でゆっくり歩いている鳴海

 部活帰りの学生がたくさんいる


鳴海「何でだよ・・・何でこんなことになったんだよ・・・」


◯542貴志家鳴海の自室(夜中)

 ベッドの上で横になっている鳴海

 机の上には菜摘とのツーショット写真が飾られてある

 カーテンの隙間から、月の光が差し込んでいる


鳴海「響紀と・・・軽音部と手を組まなきゃ良かった・・・」


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