Chapter7♯43 √鳴海(菜摘−由夏理)×√菜摘(鳴海)×由夏理(鳴海+風夏−紘)=海の中へ沈んだ如く
向日葵が教えてくれる、波には背かないで
Chapter7 √鳴海(菜摘−由夏理)×√菜摘(鳴海)×由夏理(鳴海+風夏−紘)=海の中へ沈んだ如く
登場人物
貴志 鳴海 19歳男子
Chapter7における主人公。昨年度までは波音高校に在籍し、文芸部の副部長として合同朗読劇や部誌の制作などを行っていた。波音高校卒業も無鉄砲な性格と菜摘を一番に想う気持ちは変わっておらず、時々叱られながらも菜摘のことを守ろうと必死に人生を歩んでいる。後に鳴海は滅びかけた世界で暮らす老人へと成り果てるが、今の鳴海はまだそのことを知る由もない。
早乙女 菜摘 19歳女子
Chapter7におけるもう一人の主人公でありメインヒロイン。鳴海と同じく昨年度までは波音高校に在籍し、文芸部の部長を務めていた。病弱だが性格は明るく優しい。鳴海と過ごす時間、そして鳴海自身の人生を大切にしている。鳴海や両親に心配をかけさせたくないと思っている割には、危なっかしい場面も少なくはない。輪廻転生によって奇跡の力を引き継いでいるものの、その力によってあらゆる代償を強いられている。
貴志 由夏理
鳴海、風夏の母親。現在は交通事故で亡くなっている。すみれ、潤、紘とは同級生で、高校時代は潤が部長を務める映画研究会に所属していた。どちらかと言うと不器用な性格な持ち主だが、手先は器用でマジックが得意。また、誰とでも打ち解ける性格をしている
貴志 紘
鳴海、風夏の父親。現在は交通事故で亡くなっている。由夏理、すみれ、潤と同級生。波音高校生時代は、潤が部長を務める映画研究会に所属していた。由夏理以上に不器用な性格で、鳴海と同様に暴力沙汰の喧嘩を起こすことも多い。
早乙女 すみれ 46歳女子
優しくて美しい菜摘の母親。波音高校生時代は、由夏理、紘と同じく潤が部長を務める映画研究会に所属しており、中でも由夏理とは親友だった。娘の恋人である鳴海のことを、実の子供のように気にかけている。
早乙女 潤 47歳男子
永遠の厨二病を患ってしまった菜摘の父親。歳はすみれより一つ上だが、学年は由夏理、すみれ、紘と同じ。波音高校生時代は、映画研究会の部長を務めており、”キツネ様の奇跡”という未完の大作を監督していた。
貴志/神北 風夏 25歳女子
看護師の仕事をしている6つ年上の鳴海の姉。一条智秋とは波音高校時代からの親友であり、彼女がヤクザの娘ということを知りながらも親しくしている。最近引越しを決意したものの、引越しの準備を鳴海と菜摘に押し付けている。引越しが終了次第、神北龍造と結婚する予定。
神北 龍造 25歳男子
風夏の恋人。緋空海鮮市場で魚介類を売る仕事をしている真面目な好青年で、鳴海や菜摘にも分け隔てなく接する。割と変人が集まりがちの鳴海の周囲の中では、とにかく普通に良い人とも言える。因みに風夏との出会いは合コンらしい。
南 汐莉 16歳女子
Chapter5の主人公でありメインヒロイン。鳴海と菜摘の後輩で、現在は波音高校の二年生。鳴海たちが波音高校を卒業しても、一人で文芸部と軽音部のガールズバンド”魔女っ子の少女団”を掛け持ちするが上手くいかず、叶わぬ響紀への恋や、同級生との距離感など、様々な問題で苦しむことになった。荻原早季が波音高校の屋上から飛び降りる瞬間を目撃して以降、”神谷の声”が頭から離れなくなり、Chapter5の終盤に命を落としてしまう。20Years Diaryという日記帳に日々の出来事を記録していたが、亡くなる直前に日記を明日香に譲っている。
一条 雪音 19歳女子
鳴海たちと同じく昨年度までは波音高校に在籍し、文芸部に所属していた。才色兼備で、在学中は優等生のふりをしていたが、その正体は波音町周辺を牛耳っている組織”一条会”の会長。本当の性格は自信過剰で、文芸部での活動中に鳴海や嶺二のことをよく振り回していた。完璧なものと奇跡の力に対する執着心が人一倍強い。また、鳴海たちに波音物語を勧めた張本人でもある。
伊桜 京也 32歳男子
緋空事務所で働いている生真面目な鳴海の先輩。中学生の娘がいるため、一児の父でもある。仕事に対して一切の文句を言わず、常にノルマをこなしながら働いている。緋空浜周囲にあるお店の経営者や同僚からの信頼も厚い。口下手なところもあるが、鳴海の面倒をしっかり見ており、彼の”メンター”となっている。
荻原 早季 15歳(?)女子
どこからやって来たのか、何を目的をしているのか、いつからこの世界にいたのか、何もかもが謎に包まれた存在。現在は波音高校の新一年生のふりをして、神谷が受け持つ一年六組の生徒の中に紛れ込んでいる。Chapter5で波音高校の屋上から自ら命を捨てるも、その後どうなったのかは不明。
瑠璃
鳴海よりも少し歳上で、極めて中性的な容姿をしている。鳴海のことを強く慕っている素振りをするが、鳴海には瑠璃が何者なのかよく分かっていない。伊桜同様に鳴海の”メンター”として重要な役割を果たす。
来栖 真 59歳男子
緋空事務所の社長。
神谷 志郎 44歳男子
Chapter5の主人公にして、汐莉と同様にChapter5の終盤で命を落としてしまう数学教師。普段は波音高校の一年六組の担任をしながら、授業を行っていた。昨年度までは鳴海たちの担任でもあり、文芸部の顧問も務めていたが、生徒たちからの評判は決して著しくなかった。幼い頃から鬱屈とした日々を過ごして来たからか、発言が支離滅裂だったり、感情の変化が激しかったりする部分がある。Chapter5で早季と出会い、地球や子供たちの未来について真剣に考えるようになった。
貴志 希海 女子
貴志の名字を持つ謎の人物。
三枝 琶子 女子
“The Three Branches”というバンドを三枝碧斗と組みながら、世界中を旅している。ギター、ベース、ピアノ、ボーカルなど、どこかの響紀のようにバンド内では様々なパートをそつなくこなしている。
三枝 碧斗 男子
“The Three Branches”というバンドを琶子と組みながら、世界中を旅している、が、バンドからベースとドラムメンバーが連続で14人も脱退しており、なかなか目立った活動が出来てない。どこかの響紀のようにやけに聞き分けが悪いところがある。
有馬 千早 女子
ゲームセンターギャラクシーフィールドで働いている、千春によく似た店員。
太田 美羽 30代後半女子
緋空事務所で働いている女性社員。
目黒 哲夫 30代後半男子
緋空事務所で働いている男性社員。
一条 佐助 男子
雪音と智秋の父親にして、”一条会”のかつての会長。物腰は柔らかいが、多くのヤクザを手玉にしていた。
一条 智秋 25歳女子
雪音の姉にして風夏の親友。一条佐助の死後、若き”一条会”の会長として活動をしていたが、体調を崩し、入院生活を強いられることとなる。智秋が病に伏してから、会長の座は妹の雪音に移行した。
神谷 絵美 30歳女子
神谷の妻、現在妊娠中。
神谷 七海 女子
神谷志郎と神谷絵美の娘。
天城 明日香 19歳女子
鳴海、菜摘、嶺二、雪音の元クラスメートで、昨年度までは文芸部に所属していた。お節介かつ真面目な性格の持ち主で、よく鳴海や嶺二のことを叱っていた存在でもある。波音高校在学時に響紀からの猛烈なアプローチを受け、付き合うこととなった。現在も、保育士になる資格を取るために専門学校に通いながら、響紀と交際している。Chapter5の終盤にて汐莉から20Years Diaryを譲り受けたが、最終的にその日記は滅びかけた世界のナツとスズの手に渡っている。
白石 嶺二 19歳男子
鳴海、菜摘、明日香、雪音の元クラスメートで、昨年度までは文芸部に所属していた。鳴海の悪友で、彼と共に数多の悪事を働かせてきたが、実は仲間想いな奴でもある。軽音部との合同朗読劇の成功を目指すために裏で奔走したり、雪音のわがままに付き合わされたりで、意外にも苦労は多い。その要因として千春への恋心があり、消えてしまった千春との再会を目的に、鳴海たちを様々なことに巻き込んでいた。現在は千春への想いを心の中にしまい、上京してゲーム関係の専門学校に通っている。
三枝 響紀 16歳女子
波音高校に通う二年生で、軽音部のガールズバンド”魔女っ子少女団”のリーダー。愛する明日香関係のことを含めても、何かとエキセントリックな言動が目立っているが、音楽的センスや学力など、高い才能を秘めており、昨年度に行われた文芸部との合同朗読劇でも、あらゆる分野で多大な(?)を貢献している。
永山 詩穂 16歳女子
波音高校に通う二年生、汐莉、響紀と同じく軽音部のガールズバンド”魔女っ子少女団”に所属している、担当はベース。メンタルが不安定なところがあり、Chapter5では色恋沙汰の問題もあって汐莉と喧嘩をしてしまう。
奥野 真彩 16歳女子
波音高校に通う二年生、汐莉、響紀、詩穂と同じく軽音部のガールズバンド”魔女っ子少女団”に所属している、担当はドラム。どちらかと言うと我が強い集まりの魔女っ子少女団の中では、比較的協調性のある方。だが食に関しては我が強くなる。
双葉 篤志 19歳男子
鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音と元同級生で、波音高校在学中は天文学部に所属していた。雪音とは幼馴染であり、その縁で”一条会”のメンバーにもなっている。
井沢 由香
波音高校の新一年生で神谷の教え子。Chapter5では神谷に反抗し、彼のことを追い詰めていた。
伊桜 真緒 37歳女子
伊桜京也の妻。旦那とは違い、口下手ではなく愛想良い。
伊桜 陽芽乃 13歳女子
礼儀正しい伊桜京也の娘。海亜中学校という東京の学校に通っている。
水木 由美 52歳女子
鳴海の伯母で、由夏理の姉。幼い頃の鳴海と風夏の面倒をよく見ていた。
水木 優我 男子
鳴海の伯父で、由夏理の兄。若くして亡くなっているため、鳴海は面識がない。
鳴海とぶつかった観光客の男 男子
・・・?
少年S 17歳男子
・・・?
サン 女子
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ミツナ 19歳女子
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X 25歳女子
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Y 25歳男子
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ドクターS 19歳女子
・・・?
シュタイン 23歳男子
・・・?
伊桜の「滅ばずの少年の物語」に出て来る人物
リーヴェ 17歳?女子
奇跡の力を宿した少女。よくいちご味のアイスキャンディーを食べている。
メーア 19歳?男子
リーヴェの世界で暮らす名も無き少年。全身が真っ黒く、顔も見えなかったが、リーヴェとの交流によって本当の姿が現れるようになり、メーアという名前を手にした。
バウム 15歳?男子
お願いの交換こをしながら旅をしていたが、リーヴェと出会う。
盲目の少女 15歳?女子
バウムが旅の途中で出会う少女。両目が失明している。
トラオリア 12歳?少女
伊桜の話に登場する二卵性の双子の妹。
エルガラ 12歳?男子
伊桜の話に登場する二卵性の双子の兄。
滅びかけた世界
老人 男子
貴志鳴海の成れの果て。元兵士で、滅びかけた世界の緋空浜の掃除をしながら生きている。
ナツ 女子
母親が自殺してしまい、滅びかけた世界を1人で彷徨っていたところ、スズと出会い共に旅をするようになった。波音高校に訪れて以降は、掃除だけを繰り返し続けている老人のことを非難している。
スズ 女子
ナツの相棒。マイペースで、ナツとは違い学問や過去の歴史にそれほど興味がない。常に腹ペコなため、食べ物のことになると素早い動きを見せるが、それ以外の時はのんびりしている。
柊木 千春 15、6歳女子
元々はゲームセンターギャラクシーフィールドにあったオリジナルのゲーム、”ギャラクシーフィールドの新世界冒険”に登場するヒロインだったが、奇跡によって現実にやって来る。Chapter2までは波音高校の一年生のふりをして、文芸部の活動に参加していた。鳴海たちには学園祭の終了時に姿を消したと思われている。Chapter6の終盤で滅びかけた世界に行き、ナツ、スズ、老人と出会っている。
Chapter7♯43 √鳴海(菜摘−由夏理)×√菜摘(鳴海)×由夏理(鳴海+風夏−紘)=海の中へ沈んだ如く
◯2971貴志家リビング(朝)
外は蝉が鳴いている
リビングにいる鳴海、菜摘、すみれ、潤
鳴海たちはテーブルに向かって椅子に座っている
菜摘は痩せている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている
鳴海と菜摘の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には至る所に痣がある
痣だらけの鳴海の顔面を見ている菜摘
菜摘「(痣だらけの鳴海の顔面を見たまま心配そうに)鳴海くん・・・その顔・・・どうしたの・・・?」
少しの沈黙が流れる
鳴海「菜摘は部屋に行っててくれないか」
菜摘「(痣だらけの鳴海の顔面を見たまま心配そうに)い、嫌だよ、私も鳴海くんと一緒に・・・」
鳴海「(菜摘の話を遮って)部屋にいろと言ったんだ」
再び沈黙が流れる
菜摘は痣だらけの鳴海の顔面を見るのをやめる
菜摘「(痣だらけの鳴海の顔面を見るのをやめて少し寂しそうに)分かった・・・」
鳴海「話が終わるまで出て来ないでくれ」
菜摘「うん・・・」
菜摘は立ち上がる
鳴海の部屋に行く菜摘
少しの沈黙が流れる
潤「俺たちには良いが、菜摘には後で説明しろ」
鳴海「何のことだ」
潤「お前のその顔だよ」
鳴海「大した傷じゃない」
潤「てめえにとってはどうでも良いんだろうな、だが菜摘はそうじゃねえんだよ」
再び沈黙が流れる
鳴海はポケットから古い集合写真を取り出す
鳴海がポケットから取り出した古い集合写真は一条会事務所で撮られており、30歳頃の紘、40歳頃の一条佐助、5歳頃の雪音、10歳頃の智秋、数十人のスーツ姿の男たちが写っている
鳴海が持っている古い集合写真に写っている一条会事務所には、大きな数脚のソファとテーブルがある
鳴海が持っている古い集合写真に写っている一条会事務所の壁には、歴代一条会の会長の写真と虎が描かれた掛け軸が飾ってある
鳴海は古い集合写真をすみれと潤の前に置く
古い集合写真を手に取るすみれ
すみれは古い集合写真に写っている紘の姿を見る
すみれ「(古い集合写真に写っている紘の姿を見て)どこでこの写真を・・・」
鳴海「家にあったんです」
すみれ「(古い集合写真に写っている紘の姿を見たまま)もう・・・もう処分してある物かと思っていましたけど・・・」
鳴海「知っていたんですね、父の仕事のことを」
すみれは古い集合写真に写っている紘の姿を見るのをやめる
すみれ「(古い集合写真に写っている紘の姿を見るのをやめて)鳴海くんのお父さんは一条会から抜けようと努力を・・・」
鳴海「(すみれの話を遮って)努力したかなんて関係ない!!あの人は死んだ!!俺たちの人生を振り回して死んだんだ!!」
少しの沈黙が流れる
潤「聞いてくれ鳴海、俺はお前の親父のことをよく知っている、どういう人間だったのかをまだ鮮明に覚えているんだ。(少し間を開けて)あいつは鳴海や由夏理を巻き込みたくないと言っていた、家族を守ろうとしていたんだよ」
鳴海「本当に家族を守りたければ一条会を抜けるべきだった・・・母さんもそれを望んでいたはずだ・・・」
潤「抜けたんだよ鳴海、それからすぐにあの事故が起きたんだ」
鳴海は拳を握り締める
鳴海「(拳を握り締めて)そんな・・・そんな不幸な話・・・俺は信じない・・・」
潤「(少し寂しそうに)お前の過去には本物の恐怖と悲劇がある、とても簡単に消化出来るような現実じゃねえだろう・・・」
再び沈黙が流れる
鳴海「(拳を握り締めたまま)すみれさんは・・・自分のことを被害者だと思いますか?」
すみれ「それはどういう意味・・・?」
鳴海「(拳を握り締めたまま)母が言っていたんです・・・自分は被害者だと・・・30年間、女としての価値を見出すだけに消費されて・・・育児や料理をして・・・旦那を立てて・・・良い母親として・・・良い妻として生きるために抑圧された存在だと・・・(少し間を開けて)鳥籠の中のカナリアになっていると・・・」
潤「すみれとお前の母親は全然違う人間だと分かっていてそんなことを聞いてるのか」
鳴海「(拳を握り締めたまま)ああ・・・」
すみれ「違いますよ潤くん・・・私も由夏理と同じです」
潤はチラッとすみれのことを見る
鳴海「(拳を握り締めたまま)ならすみれさんも自分が被害者だと思うんですか?」
すみれ「私・・・私には・・・由夏理の気持ちが分かります。(少し間を開けて)私たちは生まれた時から、抑圧されていて、周囲の人たちからの目を気にしながら生きていたと思う。それは・・・とても不公平なことよ。鳴海くんに伝われば良いんだけれど・・・例えば、私が子供の頃には女性がどこかに嫁入りして、娘か息子を生んで、子育てをしながら家事をこなすのが当たり前だと思っていた人がたくさんいたの、それこそが女性の幸せであると言わんばかりに。でもそんなのは間違っているでしょう?誰もが好きな人生を歩む権利があるのだから、こうなるべきやああなるべきを人に押し付けてはいけないのよ。あなたのお母さんは・・・紘くんの妻や鳴海くんたちの母親になる前から・・・ずっと妻であり母親だった、だけど本当は・・・自分自身を受け入れて欲しかったんでしょうし・・・きっと・・・昔の女らしい存在以外の・・・特別な誰かになりたかったんだと思うの」
鳴海「(拳を握り締めたまま)待ってください、特別って何ですか?家族が普通に暮らすだけで満足出来ないなら、そんな些細なことで幸せになれないんだとしたら、母は結婚するべきじゃなかったんですよ。すみれさんだってそうだ、あなたの言ったことは結婚や家族という価値観を完全に壊しているじゃないか」
すみれ「全部を手にすることは出来ないのよ、鳴海くん。だから私とあなたのお母さんは些細な幸せを選んだんです。それでもね・・・毎日家事をしながら・・・男性が仕事で夢を叶えたり・・・なりたい自分になっている姿を側から見ていると・・・ほんの一秒だけだとしても・・・私も特別になりたいと憧れるものなのよ。(少し間を開けて)お母さんを責めないで、鳴海くん。だってこの世界のどこを探しても、完璧なお母さんも、完璧な奥さんも存在していないのだから」
鳴海「(拳を握り締めたまま)なら・・・完璧な父親や・・・完璧な夫もいないと・・・?」
潤「その通りだ」
少しの沈黙が流れる
鳴海「(拳を握り締めたまま)すみれさんの言っていることが正しいのは分かってる・・・でも母が言うと・・・ただのわがままに聞こえるか・・・変人だと思われるだけだった・・・子供の俺から見たって・・・母は特別なおかしな人だ・・・すみれさんの言っていた特別な存在に・・・俺の母親は悪い意味でなったとしか思えない・・・結局・・・母さんは親としての責任を果たし切れずに死んだんだ・・・」
すみれ「これから由夏理は良い母親になれたかもしれないでしょう?」
鳴海「(拳を握り締めたまま)それこそ不公平な言いようですよ、もし生きていたとしても母さんはきっとあのままだ」
潤「生きているか死んでいるかは関係なく、お袋を責めるのは良くないとすみれは言っているんだ」
鳴海「(拳を握り締めたまま少し笑って)責めているのは母さんだけじゃないさ・・・そもそも悪いのは父さんだ・・・あの人がもっとちゃんとしていれば・・・」
潤「そうじゃないだろ鳴海、お前が今責めるべき相手は目の前にいるはずだ」
再び沈黙が流れる
鳴海は拳を握り締めたまますみれと潤のことを見る
鳴海「(拳を握り締めたまますみれと潤のことを見て)どうして・・・母さんを一人にした・・・?どうして父さんを一条会から救わなかった・・・?どうしてあの二人の結婚を止めなかった・・・?」
鳴海は拳を握り締めてすみれと潤のことを見たまま涙を流す
鳴海「(拳を握り締めてすみれと潤のことを見たまま涙を流して)あなたたちは貴志由夏理と・・・貴志紘の親友だったはずなのに・・・どうして・・・どうして・・・助けようとしなかったんだ・・・」
潤「それは・・・(少し間を開けて)俺たちが自分の夢を追うことしか頭になかったからだ。俺は映画監督になりたかった・・・どうしても・・・なりたかった・・・鳴海の母親は俺たちに気を遣って、抱えている悩みを打ち明けようとしなかった。俺たちはあいつが悩んでいることに気付いていたが、わざと知らないふりをして・・・夢のために・・・親友を見捨てたんだ・・・」
鳴海「(拳を握り締めてすみれと潤のことを見たまま涙を流して)母さんはずっと泣いていたんだぞ・・・ずっとずっと・・・一人で泣いていたんだぞ・・・」
すみれ「私と潤くんは・・・信じたかったんです・・・鳴海くんのお母さんとお父さんの間に愛情があると・・・問題があっても二人ならそれを解決出来ると・・・そう信じていてたんです・・・(少し間を開けて)菜摘が生まれて・・・私は女優になるのを・・・潤くんは映画監督になるのを諦めました・・・私たちは夢と一緒に・・・友達も捨てました・・・菜摘の体が人より弱くて・・・長く生きられるか分からないと知った時・・・私たちは何もかもを犠牲にして・・・命の限り・・・娘を守ると誓ったんです」
鳴海「(拳を握り締めてすみれと潤のことを見たまま涙を流して)な、菜摘のためだからって・・・菜摘のためだからと言って・・・す、すみれさんと潤さんのしたことは・・・酷いことだ・・・き、傷付いた人間を・・・それも親友を見捨てたなんて・・・」
すみれは涙を流す
すみれ「(涙を流して)ええ・・・鳴海くん・・・私たちの行いは恐ろしいことよ・・・一生許されなくて・・・一生あなたから・・・恨まられるようなことをしたの・・・」
鳴海「(拳を握り締めてすみれと潤のことを見たまま涙を流して)お、俺の親なんですよ、世界で二人しかいない親だったんですよ」
すみれ「(涙を流しながら)申し訳ないことをしたと思っています・・・鳴海くんにも・・・風夏ちゃんにも・・・(少し間を開けて)由夏理にも・・・紘くんにも・・・」
少しの沈黙が流れる
潤「俺たちのことは許さなくて良い・・・一生恨んでくれて構わない・・・だが理解してくれ・・・俺たちは上手くやれなかった・・・若くて馬鹿で・・・他に生きていく方法を知らなかったんだ・・・」
再び沈黙が流れる
潤「こんなことを今言うべきではないだろうし・・・お前の受け取り方に任せるが・・・(少し間を開けて)鳴海・・・お前のことを・・・俺とすみれは愛している・・・」
潤は涙を流す
潤「(涙を流して)お前の親父とお袋のことも、風夏ちゃんのことも・・・心の底から愛しているし・・・家族だと思っている・・・親友夫婦を見捨てたクソジジイの言うことだから・・・鳴海が聞く必要はない・・・だが・・・だが頼むから・・・菜摘のことは大事にしてやれ・・・」
◯2972回想/貴志家リビング(約15年前/夜)
外は弱い雨が降っている
リビングにいる4歳頃の鳴海、30歳頃の由夏理、同じく30歳頃の紘
由夏理と紘は言い争っている
紘「俺が気に食わないのは子供を騙すような君の言い方だ!!魔法だと!?そんなものを男の鳴海に言い聞かせるなんて馬鹿げている!!」
由夏理「別に良いじゃん!!まだ子供なんだからさ!!」
紘「良いか悪いか決めるのはこの俺だ!!忘れるな!!由夏理が遊び呆けている間にこの家に金を入れているのは父親の俺なんだぞ!!」
由夏理「(少し笑って)そんなに偉そうにしたいなら約束の一つや二つ守ってからしなよ」
紘「俺は常に努力している!!君や子供たちを守るためにだ!!」
鳴海「サッカーの試合を見るって約束は・・・?」
紘「(大きな声で)子供は部屋にいろ!!!!話が終わるまで出て来るな!!!!」
◯2973回想戻り/貴志家リビング(朝)
外は蝉が鳴いている
リビングにいる鳴海、すみれ、潤
鳴海たちはテーブルに向かって椅子に座っている
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には至る所に痣がある
鳴海は拳を握り締めてすみれと潤のことを見たまま泣いている
涙を流しているすみれと潤
鳴海たちは話をしている
鳴海「(拳を握り締めてすみれと潤のことを見たまま泣いて)俺は・・・母親と父親のどちらに似ているんだ・・・?」
すみれ「(涙を流しながら)どうしてそんなことを聞くの・・・?」
少しの沈黙が流れる
鳴海は泣きながらすみれと潤のことを見て拳を握り締めるのをやめる
鳴海「(泣きながらすみれと潤のことを見て拳を握り締めるのをやめて)泣き虫で変人で後先何も考えない母さんと・・・暴力的で支配欲の強くて出来損ないの父さんから生まれたのが俺だ・・・(少し間を開けて)俺は・・・二人の悪いところだけを引き継いだクソガキだ・・・」
すみれは手で涙を拭う
すみれ「(手で涙を拭って)鳴海くんのお母さんとお父さんは私たちに優しかった、私と潤くんの夢に付き合ってくれたのだから・・・鳴海くんだって・・・私たちの娘にいつも優しくしてくれているでしょう・・・?」
鳴海は泣きながらすみれと潤のことを見るのをやめる
鳴海「(泣きながらすみれと潤のことを見るのをやめて)優しさなんて取り柄にはならない・・・ただの弱さだ・・・俺は・・・俺は父さんみたいな弱い奴でいたくないんです・・・」
潤は手で涙を拭う
潤「(手で涙を拭って)大丈夫だ鳴海・・・お前はもう十分強いんだから・・・そのままで良いんだ・・・」
◯2974貴志家鳴海の自室(朝)
外は蝉が鳴いている
鳴海の部屋にいる菜摘
片付いている鳴海の部屋
鳴海の部屋は物が少なく、ベッドと勉強机くらいしか目立つ物はない
机の上にはパソコン、菜摘とのツーショット写真、菜摘から貰った一眼レフカメラ、くしゃくしゃになったてるてる坊主、フレームに入った一枚の写真、◯2091の結婚式会場/披露宴場で鳴海と菜摘が風夏に抱き寄せられて写っている写真、菜摘がクリスマスに汐莉から貰った小さな青いクリスタルがついているブレスレット、水族館のガチャガチャで手に入れたダイオウグソクムシのフィギュア、ミズクラゲのフィギュア、菜摘が鳴海にプレゼントしたイルカのぬいぐるみが置いてある
机の上のてるてる坊主には顔が描かれている
机の上のフレームに入った一枚の写真には、ホテルらしき披露宴場で水色のウェディングドレスを着た20歳頃の由夏理と、タキシードを着た同じく20歳頃の紘が写っている
机の上のフレームに入った一枚の写真は、◯2097で約30年前に潤が披露宴場で由夏理と紘を撮った時の物
机の上の◯2091の結婚式会場/披露宴場で鳴海と菜摘が風夏に抱き寄せられて写っている写真には、手書きの赤い文字で”我が愛する弟と妹に幸あれ❤︎”と書かれている
机の上の◯2091の結婚式会場/披露宴場で鳴海と菜摘が風夏に抱き寄せられて写っている写真は、滅びかけた世界の老人が持っている写真と完全に同じ
カーテンの隙間から太陽の光が差し込んでいる
菜摘は痩せている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている
菜摘の髪の毛は金髪になっている
菜摘は◯2377の鳴海の夢のダイナーで由夏理が紙ナプキンに可愛く描いた二頭身の鳴海の絵を手に持って見ている
少しの間、◯2377の鳴海の夢のダイナーで由夏理が紙ナプキンに可愛く描いた二頭身の鳴海の絵を見続ける
菜摘は◯2377の鳴海の夢のダイナーで由夏理が紙ナプキンに可愛く描いた二頭身の鳴海の絵を見るのをやめる
◯2377の鳴海の夢のダイナーで由夏理が紙ナプキンに可愛く描いた二頭身の鳴海の絵を机の上に置く菜摘
机の上のフレームに入ったホテルらしき披露宴場で水色のウェディングドレスを着た20歳頃の由夏理と、タキシードを着た同じく20歳頃の紘が写っている写真を手に取る菜摘
菜摘はフレームに入ったホテルらしき披露宴場で水色のウェディングドレスを着た20歳頃の由夏理と、タキシードを着た同じく20歳頃の紘が写っている写真を見る
菜摘「(フレームに入ったホテルらしき披露宴場で水色のウェディングドレスを着た20歳頃の由夏理と、タキシードを着た同じく20歳頃の紘が写っている写真を見て)リーヴェ・・・リーヴェ・・・リーヴェ・・・鳴海くんに・・・リーヴェを・・・」
少しの沈黙が流れる
菜摘はフレームに入ったホテルらしき披露宴場で水色のウェディングドレスを着た20歳頃の由夏理と、タキシードを着た同じく20歳頃の紘が写っている写真を見るのをやめる
フレームに入ったホテルらしき披露宴場で水色のウェディングドレスを着た20歳頃の由夏理と、タキシードを着た同じく20歳頃の紘が写っている写真を机の上に置く菜摘
菜摘はクリスマスに汐莉から貰った小さな青いクリスタルがついているブレスレットを手に取ろうとする
菜摘がクリスマスに汐莉から貰った小さな青いクリスタルがついているブレスレットを手に取ろうとした瞬間、誰かが鳴海の部屋の扉をノックする
鳴海「(声)俺だ、入って良いか」
菜摘はクリスマスに汐莉から貰った小さな青いクリスタルがついているブレスレットを手に取ろうとするのをやめる
菜摘「(クリスマスに汐莉から貰った小さな青いクリスタルがついているブレスレットを手に取ろうとするのをやめて)う、うん」
鳴海の部屋の扉が開き、鳴海が部屋に入って来る
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には至る所に痣がある
菜摘「は、話は終わったのかな・・・」
鳴海「ああ・・・さっきは・・・すまない・・・」
菜摘「う、ううん。だ、誰にだって聞かれたくないことはあると思うから・・・」
再び沈黙が流れる
鳴海「両親のことについて・・・すみれさんと潤さんから色々教えてもらいたかったんだ」
菜摘「お、お母さんとお父さん・・・鳴海くんに話してくれなかったの・・・?」
鳴海「いや・・・全部教えてくれたよ。(少し間を開けて)二人は・・・・良いお母さんとお父さんだな」
菜摘「うん・・・私には勿体無い人たちだよ」
鳴海「菜摘だから良かったんだ、お前じゃなきゃこうはならなかったさ」
少しの沈黙が流れる
菜摘「鳴海くん・・・今幸せ・・・?」
鳴海「(少し寂しそうに笑って)嫌な質問をするじゃないか」
菜摘「正直に答えて欲しいんだ、私、鳴海くんの本当の気持ちが知りたくて・・・」
鳴海「幸せも・・・不幸せなこともある・・・まさに人生らしい答えだろ」
菜摘「でも・・・満足はしていないんだよね・・・?」
鳴海「菜摘、俺は何度考えたって普通の生活以上のことは望んでいないんだよ。もちろん、その普通こそが、最大の幸福であるってことも分かっているつもりだけどな・・・」
再び沈黙が流れる
菜摘「鳴海くん」
鳴海「ああ」
菜摘「こ、こういう時は・・・は、ハンバーグを食べて元気を出そう!!」
鳴海「悪いが腹は減っていないし、肉っていう気分でもないんだ」
菜摘「た、食べないと死んじゃうよ、鳴海くん」
鳴海「たった一食抜いたくらいで死ぬわけないだろ」
菜摘「でも食べないのは体に悪いし・・・体に悪いことイコール鳴海くんが死んじゃうわけだし・・・」
鳴海「俺はそんなに脆弱な奴だと思われているのか」
菜摘「う、うん。だから私はハンバーグをお勧めするんだ。それに前鳴海くんに言ったと思うけど、ひき肉には不幸を追い払う力もあるんだよ」
鳴海「やめてくれ菜摘・・・今はそういう話も聞きたくないんだ・・・」
菜摘「た、食べてくれなきゃ私鳴海くんと別れる」
鳴海「は・・・?」
菜摘「ハンバーグを食べてくれなかったら・・・な、鳴海くんとは金輪際お喋りしないし、お付き合いもしません」
少しの沈黙が流れる
鳴海「ボケているつもりだとしても全く面白くないぞ菜摘、滑り過ぎだ」
菜摘「私は本気で言いました」
鳴海「何でたった一回の飯のためにそこまで本気になるんだよ・・・」
菜摘「何故なら、私はハンバーグを食べている鳴海くんの姿がどうしても見たいからです」
鳴海「菜摘・・・俺はそういう・・・魔法やらおまじないやらは信じないんだ。それを分かっていて誘っているんだとしたら今の菜摘はただの嫌な奴だぞ」
菜摘「鳴海くんが信じるとか信じないとかはどうでも良いし、私が素晴らしい両親から生まれた嫌な奴っていうのもどうでも良いし・・・」
鳴海「おい」
菜摘「ハンバーグ・・・食べてくれる・・・?」
鳴海「そうじゃない、キャラ崩壊していると言いたかっただけだ」
再び沈黙が流れる
鳴海「奇跡だってもう信じるのが嫌になって来ているのに、食材のジンクスをいちいち気にするなんて馬鹿げて・・・」
鳴海は話途中で口を閉じる
菜摘「ど、どうしたの・・・?」
鳴海「こういう時・・・父さんならなんて言うのか考えてみたんだ・・・(少し間を開けて)多分あの人は・・・今の俺と同じように馬鹿げていると言っただろうな・・・」
菜摘「そっか・・・」
鳴海「俺は父さんとは違う人間になりたい」
菜摘「いつも言っているけど、鳴海くんは鳴海くんだよ」
鳴海「それだけじゃ意味がないんだ、菜摘」
◯2975貴志家リビング(朝)
外は蝉が鳴いている
リビングにいるすみれと潤
すみれと潤はテーブルに向かって椅子に座っている
話をしているすみれと潤
すみれ「いつか・・・いつかこの日が来ると分かっていたのに・・・」
潤「言えて良かったんだよ、すみれ」
すみれ「これからどうやって鳴海くんと顔を合わせれば・・・あの子からしたら私たちは・・・ただの裏切り者でしょう・・・」
潤「あいつが決めることは俺にも分からねえ・・・けどなすみれ、紘と由夏理には・・・今日初めて・・・顔を合わせることが出来たんじゃないか」
すみれ「私は・・・潤くんほど前向きには・・・」
鳴海と菜摘がリビングにやって来る
菜摘は痩せている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている
鳴海と菜摘の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には至る所に痣がある
鳴海「すみれさん、潤さん」
すみれ「ええ・・・」
鳴海「ハンバーグ・・・食べに行きましょう・・・か・・・?」
すみれ「えっ?」
◯2976ハンバーグ専門店”ミート爆肉”(昼前)
外は蝉が鳴いている
ハンバーグ専門店の”ミート爆肉”の中にいる鳴海、菜摘、すみれ、潤
”ミート爆肉”にはたくさんの客がおり、ハンバーグステーキを食べている
鳴海たちはテーブルに向かって椅子に座っている
菜摘は痩せている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている
鳴海と菜摘の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には至る所に痣がある
鳴海たちは紙エプロンを付けている
ハンバーグステーキを食べている鳴海たち
菜摘はハンバーグステーキを一口食べる
菜摘「(ハンバーグステーキを一口食べて)美味しいね、鳴海くん」
鳴海「お、おう・・・そ、そうだな・・・」
潤はハンバーグステーキを一口食べる
潤「(ハンバーグステーキを一口食べて)美味いな、すみれ」
すみれ「は、はい。とっても美味しいです」
◯2977貴志家鳴海の自室(夜)
片付いている鳴海の部屋
ベッドの上で横になっている鳴海
鳴海の部屋は物が少なく、ベッドと勉強机くらいしか目立つ物はない
机の上にはパソコン、菜摘とのツーショット写真、菜摘から貰った一眼レフカメラ、くしゃくしゃになったてるてる坊主、フレームに入った一枚の写真、◯2091の結婚式会場/披露宴場で鳴海と菜摘が風夏に抱き寄せられて写っている写真、菜摘がクリスマスに汐莉から貰った小さな青いクリスタルがついているブレスレット、水族館のガチャガチャで手に入れたダイオウグソクムシのフィギュア、ミズクラゲのフィギュア、菜摘が鳴海にプレゼントしたイルカのぬいぐるみ、◯2377の鳴海の夢のダイナーで由夏理が紙ナプキンに可愛く描いた二頭身の鳴海の絵が置いてある
机の上のてるてる坊主には顔が描かれている
机の上のフレームに入った一枚の写真には、ホテルらしき披露宴場で水色のウェディングドレスを着た20歳頃の由夏理と、タキシードを着た同じく20歳頃の紘が写っている
机の上のフレームに入った一枚の写真は、◯2097で約30年前に潤が披露宴場で由夏理と紘を撮った時の物
机の上の◯2091の結婚式会場/披露宴場で鳴海と菜摘が風夏に抱き寄せられて写っている写真には、手書きの赤い文字で”我が愛する弟と妹に幸あれ❤︎”と書かれている
机の上の◯2091の結婚式会場/披露宴場で鳴海と菜摘が風夏に抱き寄せられて写っている写真は、滅びかけた世界の老人が持っている写真と完全に同じ
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には至る所に痣がある
カーテンの隙間から月の光が差し込んでいる
鳴海「貴志由夏理・・・貴志由夏理・・・貴志由夏理・・・(少し間を開けて)ずるいよな・・・夢の中で唱えられるわけないのに・・・」
◯2978貴志家リビング(日替わり/朝)
外は快晴
外は蝉が鳴いている
リビングにいる鳴海
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には至る所に痣がある
椅子に座ってテレビのニュースを見ている鳴海
ニュースキャスター3「10代の自殺者は年々増加傾向になっており・・・今年だけでも既に・・・」
少しすると鳴海の家のインターホンが鳴る
鳴海は立ち上がる
◯2979貴志家玄関(朝)
外は蝉が鳴いている
玄関にいる鳴海
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には至る所に痣がある
鳴海は靴を履く
靴を履き終える鳴海
鳴海は玄関の扉を開ける
鳴海「(玄関の扉を開けて)早かったななつ・・・」
鳴海の家の玄関の前には潤がいる
潤は2本の釣竿と釣り道具を持っている
潤の姿を見た瞬間口を閉じる鳴海
潤「(2本の釣り竿と釣り道具を持ったまま)何だお前、俺が菜摘に見えるのか」
鳴海「いや、全く見えないが」
潤「(2本の釣り竿と釣り道具を持ったまま)しかし今菜摘と言いかけただろ、娘とおっさんを間違えたのか?見間違えたのか?」
鳴海「何で菜摘じゃなくてあんたがいるんだ」
潤「(2本の釣り竿と釣り道具を持ったまま)菜摘にはちょっと野暮用があってな、マイワイフと家で留守番をしているんだ」
鳴海「普通野暮用があったら留守番なんかせずに出かけると思うんだが」
潤「(2本の釣り竿と釣り道具を持ったまま)今日は来れねえんだよ、だから代わりに俺ってわけだ。悪かったな、美人な彼女の美人なお母さんじゃなくて」
鳴海「美人なお母さんってすみれさんのことを言っているのか?」
潤「(2本の釣り竿と釣り道具を持ったまま)そうだ。因みに俺は美人な彼女の格好良くて頼りに・・・いや、もはや頼りになるなんて鳴海の前では言えねえか・・・(少し間を開けて)美人な彼女の素敵で格好良いお父さんで良いぞ」
鳴海「何が良いぞ、だ」
潤「(2本の釣り竿と釣り道具を持ったまま)まあ落ち着け、今日は貴様に緋空浜流の娯楽を教えてやろう」
鳴海「釣りのお誘いなら断るぞ、魚には一切興味がないからな」
潤「(2本の釣り竿と釣り道具を持ったまま)良いからたまには付き合えよ、年寄りの遊びに」
◯2980緋空浜(朝)
快晴
蝉が鳴いている
緋空浜の堤防にいる鳴海と潤
太陽の光が緋空浜の波に反射し、キラキラと光っている
浜辺にはペットボトルやお菓子の袋のゴミが落ちており、◯1690、◯2004のキツネ様の奇跡、◯1786、◯1787、◯1791、◯1849、◯1972のかつての緋空浜に比べると汚れている
緋空浜には釣りやウォーキングをしている人、海で泳いだり浜辺で遊んでいる人などたくさんの人がいる
浜辺からは陽炎が立っている
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には至る所に痣がある
鳴海と潤は堤防に座って釣りをしている
鳴海たちの近くにはタックルボックスが置いてある
鳴海と潤は釣りをしているが、魚は全く釣れていない
釣りをしながら話をしている鳴海と潤
潤「(釣りをしながら)昨日、すみれといつもと同じように接してくれてありがとよ、助かったぜ」
鳴海「(釣りをしながら)別に・・・いつもと同じようなことしかしていないんだったら、あんたが感謝する必要もないだろ」
潤「(釣りをしながら)いつも通りってのはな、案外難しいんだよ。分かるだろ、お前にも」
鳴海「(釣りをしながら)ああ・・・」
潤「(釣りをしながら)人生は後悔の連続だ、すみれもそう思っているだろう」
鳴海「(釣りをしながら)俺は・・・あんたたちを責めるつまりはない、もうあの話は昨日で終わったんだ」
少しの沈黙が流れる
潤「(釣りをしながら)すまなかったな・・・今まで・・・気にかけてやれなくて」
鳴海「(釣りをしながら)もう十分気にかけてくれているだろ」
潤「(釣りをしながら)事故の後のことだ、俺とすみれはお前たち兄妹を見守れなかった。二人ともまだ・・・小さい子供だったのにな・・・(少し間を開けて)風夏ちゃんには・・・実は結婚式の時にこっそり言ったんだが・・・よくここまで大きくなったよ、頑張ったな、鳴海」
再び沈黙が流れる
鳴海「(釣りをしながら)ぜ、全然魚が釣れないじゃないか」
潤「(釣りをしながら)釣りっていうのはそんなもんだ」
鳴海「(釣りをしながら)な、何も無さ過ぎて干からびそうなんだが」
潤「(釣りをしながら)お前は親父よりせっかちだな」
鳴海「(釣りをしながら)どうせ母親に似たんだろ・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「(釣りをしながら)釣りは親父とよくしていたのか」
潤「(釣りをしながら)昔な、高校の頃だ。うるさく蝉が鳴いて、浜辺で遊んでる連中がいて、空が真っ青で、緋空浜はキラキラ光ってやがった。(少し間を開けて)形だけ見れば・・・今とそう変わらねえ」
鳴海「(釣りをしながら)つまり魚は釣れなかったんだな」
再び沈黙が流れる
潤「(釣りをしながら)汚え海だ・・・悲しいもんだよ・・・生まれ育った町の海が汚れているなんて・・・見ろよ、ゴミが増えて魚が減っちまったんだ」
鳴海「(釣りをしながら)そうは言っても俺はここのところゴミ拾いばかりさせられているんだぞ」
潤「(釣りをしながら)拾う奴の数が足りてねえようだな」
鳴海「(釣りをしながら)緋空事務所に頼る奴が多過ぎるんだ・・・雑用なんてしている暇はないのに・・・」
潤「(釣りをしながら)お前は雑用にやり甲斐を見出したんじゃなかったのか」
鳴海「(釣りをしながら)やり甲斐ならあるさ・・・」
潤「(釣りをしながら)その割には不満げだな」
鳴海「(釣りをしながら)思い描いていた人生が送れていないせいだ・・・」
潤「(釣りをしながら)言っておくが、人生なんて思い通りにはならないぞ」
鳴海「(釣りをしながら)だろうな、おかげさまで最近それを痛感しているところだよ」
少しの沈黙が流れる
鳴海「(釣りをしながら)俺に何の用があるんだ」
潤は釣りをしながらチラッと鳴海のことを見る
潤「(釣りをしながら)やっぱあいつに似ているな、お前。口調も、でかい態度も、強がっているだけで実はボロボロなところも、愛する女のために走り回るところも、不器用で、自分じゃ何も出来ないところも」
鳴海「(釣りをしながら)俺が親父に似たクソ野郎だと言いたくて連れ出したのか」
潤「(釣りをしながら)そうだな、それも理由の一つだ」
再び沈黙が流れる
潤「(釣りをしながら少し笑って)あれは鳴海が生まれたばかりの頃だったか・・・珍しく・・・というか初めてだったかもしれないな・・・紘から・・・電話が来たんだ。お前はどうだか知らないが、あいつは電話を好むような奴じゃねえ。だからおかしくてな、しかもよくよく話を聞いてみるとだ、由夏理の誕生日を祝いたいが、何をプレゼントしたら良いか分からない、そんな内容だった、俺とすみれは驚いたもんだよ。紘は由夏理のために生きていたが、滅多に形のある物を残そうとはしなかったからな。しょうがねえから俺は幼い菜摘を・・・すみれに預けて、東京のデパートに繰り出したわけだ。服とか、アクセサリーとか、小物とか、色々見て回った。正直に言って、俺も紘も、物の価値なんて大して分かっていなかったし、由夏理が喜びそうなプレゼントってのも、そう簡単には思いつかなかったんだ。由夏理の趣味は人とは少し違うところがあっただろ。きっと紘は・・・あいつのそういうところに惹かれたと思うんだが・・・(少し間を開けて)紘が由夏理に何を買って行ったか分かるか?」
鳴海「(釣りをしながら)いや・・・」
潤「(釣りをしながら少し笑って)あいつは何も買わなかった・・・昔の紘なら何かしらを由夏理にプレゼントしただろうが、あの時は選び切れなかったんだ」
少しの沈黙が流れる
潤「(釣りをしながら)時が流れ・・・可愛い娘がある男とアイルランドのイベントに行った。その時、男が菜摘にキーホルダーを買っているところを遠巻きに見ていた俺とすみれは思ったよ・・・あの男には・・・鳴海には・・・紘が失っちまった・・・大切な何かをまだ持っているとな。(少し間を開けて)だが最近のお前は、そいつを失いかけてる。だから俺は菜摘を嫁に出したくないんだ」
再び沈黙が流れる
潤「(釣りをしながら)俺もすみれも、そして菜摘も、お前の良いところをたくさん知っている。その良いところって言うのは、紛れもなく紘や由夏理から譲り受けた、貴志家の遺伝子なんだ。(少し間を開けて)両親から受け継いだ良いところと、今鳴海自身が持っている素晴らしいところを失わず、紘や由夏理のような大人にならないと約束してくれ」
鳴海「(釣りをしながら)約束したら何か変わるのか?」
潤「(釣りをしながら)これは男と男の話だ。俺は結果的に鳴海が約束を果たせなかったとしても、その過程でお前が努力を惜しまない男だと信じている」
鳴海「(釣りをしながら)俺は・・・両親のことを何も理解出来ていないんだぞ・・・」
潤「そんなのは誰だってそうだ。親っていうのはガキの頃から変わらず、分からない存在のままなんだよ。(少し間を開けて)俺だって頑固で厳しかった親父が・・・死に際だけ気持ち悪いくらい優しくなった理由や・・・息子の面倒に手を焼いてばかりだったお袋の人生が・・・本当に幸せだったのかどうか、今でも時々考えるんだぞ。俺みたいな・・・とても立派とは言えないが・・・大の大人が・・・そんなことで悩んだり、落ち込んだり、考え過ぎたりするんだ。だからみんな一緒なんだよ、親に対して抱く感情ってはな」
鳴海は釣りをするのをやめる
鳴海「(釣りをするのをやめて)で、でも何でこのタイミングでそんな話をするんだよ・・・あんたはずっと・・・俺と菜摘の結婚には反対していたし・・・俺を受け入れようともしなかったじゃないか・・・」
潤「(釣りをしながら)鳴海は認めただろ。自分がクソガキで、悪いところがたくさんあるってよ」
鳴海「そ、そんなの当たり前のことだ・・・あ、当たり前のことをすみれさんと潤さんに言っただけじゃないか・・・」
潤「(釣りをしながら)当たり前のように自分を認めるのも、難しいことなんだぞ鳴海。ある意味では、普通の生活を送る難しさに似てるとも言えるな」
少しの沈黙が流れる
鳴海「お、俺は・・・あんたの心を動かした・・・そ、そういうことなのか・・・?」
潤「(釣りをしながら)心を動かした?何だその気持ち悪い言い方は」
鳴海「す、すみれさんが言っていたんだ・・・潤さんの心を動かすことが出来れば・・・きっと菜摘と結婚出来るって・・・」
潤「(釣りをしながら)すみれの感覚的に判断するとしたら・・・(少し間を開けて)まあ・・・そういうことになるのかもしれないな」
鳴海「ほ、本当に・・・本当に結婚を許してくれるのか・・・?」
潤「(釣りをしながら)弱さを認めるのはなかなか出来ることじゃねえよ。特に鳴海みたいなプライドの高い奴にとっては・・・そうだろ?」
再び沈黙が流れる
鳴海「な、泣き虫で・・・キレやすくて・・・馬鹿で・・・後先考えていなくて・・・ろくでもない・・・クソガキが・・・あんたたち夫婦が命をかけて育てて来た可愛い娘と・・・結婚しても良いのかよ・・・」
潤「(釣りをしながら)そのクソガキ夫婦を支えるのも・・・俺たち親仕事だ、鳴海」
少しの沈黙が流れる
鳴海「や、約束する・・・約束するよ・・・お、俺は母さんや父さんみたいにはならない・・・(少し間を開けて)絶対に菜摘を大切にするから・・・命に変えてもあいつのことは守るから・・・」
潤「(釣りをしながら)気持ち悪い宣言をしていないで早く家に行け、菜摘がてめえのことを待ってるんだぞ」
鳴海「い、良いのか?」
潤「(釣りをしながら)とっとと連れて行っちまえ」
再び沈黙が流れる
鳴海は立ち上がる
釣りをしている潤に向かって頭を下げる鳴海
鳴海「(釣りをしている潤に向かって頭を下げて)ありがとう・・・ございます・・・」
鳴海は少しの間釣りをしている潤に向かって頭を下げ続ける
顔を上げる鳴海
鳴海は走って菜摘の家に向かい始める
少しの沈黙が流れる
潤「(釣りながら)親父ってのは辛えもんだよな、紘」
潤の釣り竿に魚がかかる
潤の釣り竿は引っ張られている
潤は釣り竿のハンドルをゆっくり回し始める
潤「(釣り竿のハンドルをゆっくり回しながら)何だよ、ちゃんと釣れるじゃねえか」
潤は釣り竿のハンドルを回しながらゆっくり魚を堤防の方へ引き寄せる
潤「(釣り竿のハンドルを回しながらゆっくり魚を堤防の方へ引き寄せて)結婚祝いにしてやるか・・・(少し間を開けて)娘の独り立ちをすみれと二人で祝うってのも良いな・・・」
潤は釣り竿のハンドルを回すのをやめる
魚を釣り上げる潤
潤の釣り竿にかかっていたのは5cmほどの小さな小魚
潤は釣り竿にかかっていたのは5cmほどの小さな小魚を見る
潤「(釣り竿にかかっていたのは5cmほどの小さな小魚を見て)これじゃ祝うもんも祝えないじゃねえか・・・」
潤は釣り竿にかかっていたのは5cmほどの小さな小魚を見るのをやめる
5cmほどの小さな小魚を釣り竿から外す潤
潤「(5cmほどの小さな小魚を釣り竿から外して)もう捕まるんじゃねえぞ」
潤は5cmほどの小さな小魚を緋空浜の海へ戻す
潤「(5cmほどの小さな小魚を緋空浜の海へ戻して少し寂しそうに)ほらよ、まっすぐパパとママのところに帰りやがれ」
再び沈黙が流れる
潤は涙を流す
◯2981早乙女家に向かう道中(朝)
蝉が鳴いている
走って早乙女家に向かっている鳴海
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には至る所に痣がある
汗だくになっている鳴海
鳴海「(走りながら)菜摘・・・菜摘・・・菜摘・・・」
鳴海は赤信号になっている横断歩道を走って渡る
赤信号を無視して横断歩道を走って渡っている鳴海にたくさんの車がクラクションを鳴らす
鳴海は一台の車に轢かれそうになる
鳴海は一台の車に轢かれそうになるが、気にせず菜摘の家に向かい続ける
◯2982早乙女家前(朝)
蝉が鳴いている
菜摘の家の前にいる菜摘とすみれ
菜摘は痩せている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている
菜摘の髪の毛は金髪になっている
菜摘は家の前で座っている
すみれ「心配しなくても大丈夫ですよ、菜摘。あの二人はお互いにとって良き理解者だから」
菜摘「(心配そうに)うん・・・」
少しの沈黙が流れる
菜摘「お母さんは・・・大丈夫・・・?」
すみれ「もちろん。お父さんも鳴海くんも大人だし、ちゃんと話を・・・」
菜摘「(すみれの話を遮って)そうじゃなくて・・・お母さんのこと・・・」
すみれ「(少し笑って)大丈夫。お母さんにはお父さんがいますからね。これからもこれまで通りにやっていけるのよ」
再び沈黙が流れる
少しすると鳴海が走って菜摘の家に向かって来る
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には至る所に痣がある
汗だくになっている鳴海
鳴海「(走りながら)菜摘!!」
菜摘は立ち上がる
菜摘「(立ち上がって)鳴海くん!!」
鳴海は走って来たそのままの勢いで菜摘のことを抱き締める
菜摘のことを抱き締めながら息切れをしている鳴海
鳴海「(菜摘のことを抱き締めながら息切れをして)ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ごめん・・・遅くなった・・・」
菜摘「(鳴海に抱き締められながら)ううん・・・迎えに来てくれてありがとう、鳴海くん」
鳴海「(菜摘のことを抱き締めながら息切れをして)ハァ・・・ハァ・・・いつだって・・・どこにいたって・・・俺は必ず菜摘を迎えに行くさ・・・ハァ・・・」
菜摘「(鳴海に抱き締められながら少し笑って)それじゃあ鳴海くんがボロボロになっちゃうよ」
鳴海は息切れをしながら菜摘のことを抱き締めるのをやめる
呼吸を整える鳴海
鳴海「(呼吸を整えながら少し笑って)そうだな」
鳴海と菜摘は手を繋ぐ
鳴海「(菜摘と手を繋いで)すみれさん」
すみれ「(微笑んで)おめでとう、菜摘、鳴海くん」
菜摘は菜摘と手を繋ぎながらすみれに頭を下げる
鳴海「(菜摘と手を繋ぎながらすみれに頭を下げて)か、必ず菜摘を幸せにします!!すみれさんと潤さんが菜摘を大事に育ててくださったことを絶対忘れませんから!!何があっても必ず!!お二人のような夫婦になりますから!!」
すみれ「(微笑みながら)顔を上げて、鳴海くん」
鳴海は菜摘と手を繋ぎながら顔を上げる
すみれ「(微笑みながら)そんなに意気込まなくても平気よ、私が保証します。二人なら、私たちよりも素敵な、世界一の夫婦になれますよ」
◯2983◯2709の回想/鳴海の夢/公園(約18年前/朝)
蝉が鳴いている
約18年前の公園にいる鳴海とすみれ
公園には鳴海とすみれ以外誰もいない
鳴海の髪の毛は金髪になっている
すみれは妊娠しており、お腹が膨らんでいる
鳴海とすみれはベンチに座っている
すみれは俯いている
話をしている鳴海とすみれ
すみれ「(俯いたまま)親になる自信が・・・まだないんです・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「す、すみれさんと潤さんは・・・二人は・・・せ、世界一素晴らしい両親になれますから!!じ、自信持ってくださいよ!!」
◯2984回想戻り/早乙女家前(朝)
蝉が鳴いている
菜摘の家の前にいる鳴海、菜摘、すみれ
菜摘は痩せている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている
鳴海と菜摘の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には至る所に痣がある
汗だくになっている鳴海
鳴海と菜摘は手を繋いでいる
すみれ「(微笑みながら)だから自信を持ってください」
少しの沈黙が流れる
鳴海「(菜摘と手を繋ぎながら)お、俺のこと・・・覚えていて・・・」
すれみ「(微笑みながら鳴海の話を遮って)さあ、二人ともこれから忙しくなりますよ、結婚生活は始めたてが一番大変ですからね」
再び沈黙が流れる
鳴海「(菜摘と手を繋ぎながら)ありがとうございます・・・すみれさん・・・」
すみれ「(微笑みながら)こういう時は行って来ますの方が良いでしょう?」
鳴海「(菜摘と手を繋ぎながら)い、行って来ます」
菜摘「(鳴海と手を繋ぎながら)行って来ます、お母さん」
すみれ「(微笑みながら)行ってらっしゃい、二人とも」
鳴海と菜摘は手を繋ぎながら歩き始める
すみれから離れて行く鳴海と菜摘
手を繋ぎながら歩いている鳴海と菜摘の背中を見ているすみれ
少しすると鳴海と菜摘の姿が見えなくなる
すみれは涙を流す
蝉の鳴き声が止まる
どこからか一匹のカラスアゲハが涙を流しているすみれの元に飛んで来る
涙を流しているすみれの元に飛んで来たカラスアゲハは左右の羽のサイズが違い、色も左右で少し違う
カラスアゲハはよく見ると右の羽が青く、左の羽は緑に近い青色をしている
左右の羽のサイズが違い、色も左右で少し違うカラスアゲハは、涙を流しているすみれの周りを飛んでいる
突然、涙を流しているすみれと、すみれの周りを飛んでいる左右の羽のサイズが違い、色も左右で少し違うカラスアゲハの周囲が暗くなる
涙を流しているすみれと、すみれの周りを飛んでいる左右の羽のサイズが違い、色も左右で少し違うカラスアゲハにだけ、どこからか照明の明かりが当てられている
少しすると涙を流しているすみれと、すみれの周りを飛んでいる左右の羽のサイズが違い、色も左右で少し違うカラスアゲハの周囲が明るくなる
涙を流しているすみれと、すみれの周りを飛んでいる左右の羽のサイズが違い、色も左右で少し違うカラスアゲハは、いつの間にか早乙女家の前ではなく、どこかの大きなスタジオの中にいる
大きなスタジオの中には照明、照明スタッフ、ガンマイクを持った音声スタッフ、衣装スタッフ、メイクスタッフなどの大勢の人がおり、慌ただしく動き回っている
大きなスタジオの中には古くて大きなビデオカメラがセットされている
大きなスタジオの中ではルイ・プリマの”シング・シング・シング”をカバーして演奏しているジャズバンドがいる
涙を流しているすみれの元に小走りで3人のメイクスタッフがやって来る
メイクスタッフ1はティッシュを、メイクスタッフ2はチークを、メイクスタッフ3は口紅を持っている
すみれの涙を無理矢理ティッシュで拭うメイクスタッフ1
メイクスタッフ2はすみれの頬にチークを塗りたくる
すみれに口紅を擦り付けるメイクスタッフ3
メイクをされているすみれの元に小走りで2人の衣裳スタッフがやって来る
2人の衣装スタッフは真っ赤な大きなカーテンを持っている
真っ赤な大きなカーテンを広げる2人の衣装スタッフ
3人のメイクスタッフはすみれにメイクをするのをやめて走ってどこかに行く
真っ赤な大きなカーテンを閉じてすみれのことを隠す2人の衣装スタッフ
2人の衣装スタッフは少ししてから真っ赤な大きなカーテンを開く
真っ赤な大きなカーテンから出て来たすみれはぶどう柄の着物を着ており、和傘をさしている
再び真っ赤な大きなカーテンを閉じてすみれのことを隠す2人の衣装スタッフ
2人の衣装スタッフはすみれのことを隠してから2、3秒後に真っ赤な大きなカーテンを開く
真っ赤な大きなカーテンから出て来たすみれは中世の鎧を身に付け剣を持っている
真っ赤な大きなカーテンを閉じてすみれのことを隠す2人の衣装スタッフ
2人の衣装スタッフはすみれのことを隠してから2、3秒後に再び真っ赤な大きなカーテンを開く
真っ赤な大きなカーテンから出て来たすみれは18歳になっており、波音高校の制服を着ている
すみれに続いて、真っ赤な大きなカーテンを閉じてすみれの周りを飛んでいる左右の羽のサイズが違い、色も左右で少し違うカラスアゲハを隠す2人の衣装スタッフ
2人の衣装スタッフは左右の羽のサイズが違い、色も左右で少し違うカラスアゲハを隠してから2、3秒後に真っ赤な大きなカーテンを開く
真っ赤な大きなカーテンからは波音高校の制服を着た18歳の由夏理が出て来る
由夏理は笛を首にかけている
すみれの周りを飛んでいた左右の羽のサイズが違い、色も左右で少し違うカラスアゲハはいつの間にかいなくなっている
すみれは由夏理のことを見て由夏理に声をかけようとする
すみれは由夏理に声をかけようとするが、すみれの口からは音が出ない
首にかけていた笛を思いっきり吹く由夏理
由夏理が吹いた笛の音が大きなスタジオの中で響き渡る
ジャズバンドは”シング・シング・シング”を演奏するのをやめる
慌ただしく動き回っていた照明スタッフ、ガンマイクを持った音声スタッフ、衣装スタッフ、メイクスタッフなどの大勢の人たちが、その場で止まる
由夏理はすみれのことを何度も指差す
すみれのことを指差すのをやめて、大きなスタジオの中を一周指差す由夏理
由夏理は両手を合わせてスタジオの中にいた人たちに何かをお願いする
由夏理が両手を合わせて何かをお願いすると、ジャズバンドがテンポを早めて”シング・シング・シング”をカバーして演奏し始める
由夏理が両手を合わせて何かをお願いすると、大きななスタジオの中にいた照明スタッフ、ガンマイクを持った音声スタッフ、衣装スタッフ、メイクスタッフなどの大勢の人が、更に慌ただしく動き回り始める
すみれの手を引っ張る由夏理
すみれは由夏理に手を引っ張られながら由夏理に声をかけようとしているが、変わらずすみれの口からは音が出ていない
すみれの手を引っ張って大きなスタジオの中のセットに連れて行く由夏理
大きなスタジオの中では巨大な緋空浜のセットが組まれており、シャワーで再現された雨が上から降って来ている
緋空浜のセットの前には古くて大きなビデオカメラがある
由夏理はすみれの手を引っ張ってセットの緋空浜の浜辺に上がる
すみれの手を離す由夏理
由夏理はセットの緋空浜から降りてすみれから離れて行く
由夏理に手を伸ばし由夏理を呼び止めようとするすみれ
すみれの口からは音が出ず、由夏理はセットの緋空浜からどんどん離れて行く
どこからか大きなバイクに乗った18歳の潤が現れる
潤は波音高校の制服を着ている
大きなバイクに乗ったままセットの緋空浜の浜辺に上がる潤
すみれは大きなバイクに乗っている潤に声をかける
すみれは大きなバイクに乗っている潤に声をかけるが、すみれの口からは音が出ない
字幕「どうして声が出ないの?」
字幕「サイレント映画なんだよ、これは」
すみれと大きなバイクに乗っている潤は会話をしている
すみれと大きなバイクに乗っている潤が会話をしているのにも関わらず、2人の口からは音が出ていない
字幕「私・・・どうしてここにいるのか分かりません・・・」
字幕「女優はスタジオの中にいるもんだぜ」
字幕「さっきまで菜摘と鳴海くんを見送っていたのに・・・」
字幕「誰を見送ってたって?」
字幕「菜摘と鳴海くんだよ」
字幕「誰だか知らねえがそいつらもレッドカーペットを呼んでおくか?」
すみれは何かを言おうとする
何かを言おうとしてやめるすみれ
すみれと潤はシャワーで再現された雨のせいで全身ずぶ濡れになっている
大きなスタジオの中に紺色の甚平を着て狐のお面を被った男が現れる
紺色の甚平を着ている男が被っている狐のお面は、◯2156の約30年前の温泉街のお土産屋で瑠璃が購入した狐のお面と完全に同じ物
紺色の甚平を着ている男が被っている狐のお面は、◯1964で約30年前に由夏理が電車の上から手を振った男が身につけていた狐のお面と完全に同じ物
甚平を着て狐のお面を被った男は古くて大きなビデオカメラがセットされているところに行く
大きなバイクの後ろに乗るようにすみれに指示を出す潤
すみれは潤が乗っている大きなバイクの後ろに乗る
字幕「潤くん、音声さんがいるのっておかしくない?」
字幕「あいつらは飾りだよ、実はあのマイクも風船でな」
潤は大きなバイクに乗ったまま指パッチンをする
潤が大きなバイクに乗ったまま指パッチンをすると、音声スタッフが持っていたガンマイクが風船で作られたガンマイクに変わる
字幕「最初から風船だったの?」
字幕「風船のことなんてどうでも良いじゃねえか。念願の銀幕デビューだぜ、すみれ」
甚平を着て狐のお面を被った男は古くて大きなビデオカメラを、バイクで二人乗りをしているすみれと潤に向ける
どこからかカチンコを持って来る由夏理
由夏理が持って来たカチンコには”キツネ様の奇跡”と書かれてある
甚平を着て狐のお面を被った男は古くて大きなビデオカメラをバイクで二人乗りをしているすみれと潤に向けたまま、ビデオカメラの電源を入れる
カチンコを古くて大きなビデオカメラに映させる由夏理
甚平を着て狐のお面を被った男は古くて大きなビデオカメラをバイクで二人乗りをしているすみれと潤に向けたまま、カチンコをビデオカメラに映させている由夏理のことを見る
照明スタッフが照明の明かりを大きなバイクで二人乗りをしているすみれと潤に向ける
”シング・シング・シング”を演奏するのをやめるジャズバンド
慌ただしく動き回っていた照明スタッフ、ガンマイクを持った音声スタッフ、衣装スタッフ、メイクスタッフなどの大勢の人たちが、その場で止まる
カチンコを古くて大きなビデオカメラに映させたままカチンコを鳴らす由夏理
由夏理はカチンコを古くて大きなビデオカメラから外す
甚平を着て狐のお面を被った男は古くて大きなビデオカメラをバイクで二人乗りをしているすみれと潤に向けたまま、由夏理のことを見るのをやめる
甚平を着て狐のお面を被った男は古くて大きなビデオカメラをバイクで二人乗りをしているすみれと潤に向けたまま、ファインダーを覗く
甚平を着て狐のお面を被った男は古くて大きなビデオカメラをバイクで二人乗りをしているすみれと潤に向け、ファインダーを覗きながら撮影ボタンを押す
大きなバイクで二人乗りをしているすみれと潤は緋空浜の浜辺のセットを走って行く
甚平を着て狐のお面を被った男は古くて大きなビデオカメラをバイクで二人乗りして緋空浜の浜辺のセットを走って行っているすみれと潤に向け、カメラのファインダーを覗きながらすみれと潤のことを撮影している
大きなバイクで二人乗りをしているすみれと潤は緋空浜の浜辺のセットのギリギリまでを走る
カチンコを鳴らしカットをかける由夏理
すみれと潤が乗っている大きなバイクが止まる
甚平を着て狐のお面を被った男は古くて大きなビデオカメラのファインダーを覗くのをやめる
古くて大きなビデオカメラの撮影ボタンを押して撮影を止める甚平を着て狐のお面を被った男
拍手をする由夏理
由夏理に合わせて照明スタッフ、ガンマイクを持った音声スタッフ、衣装スタッフ、メイクスタッフなどの大勢の人たちが拍手をする
すみれと潤は大きなバイクから降りる
チラッと拍手をしている由夏理のことを見る甚平を着て狐のお面を被った男
甚平を着て狐のお面を被った男には拍手をしているのが由夏理ではなく、瑠璃に見えている
瑠璃は鳴海よりも少し年齢が上で、極めて中性的な容姿をしている
拍手をしながら甚平を着て狐のお面を被った男にウインクをする瑠璃
甚平を着て狐のお面を被った男は緋空浜の浜辺のセットに上がる
緋空浜の浜辺のセットで大きなバイクに跨る甚平を着て狐のお面を被った男
メイクスタッフ1とメイクスタッフ2が傘を持って緋空浜の浜辺のセットに上がる
すみれと潤がこれ以上人工の雨で濡れないように傘をさすメイクスタッフ1とメイクスタッフ2
◯2985映画館前/“キツネ様の奇跡”プレミア会場(日替わり/夜)
弱い雨が降っている
映画館の前にいる18歳のすみれと同じく18歳の潤
すみれは黄色のドレスを、潤は白のタキシードを着ている
映画館周辺全てが”キツネ様の奇跡”のプレミア会場になっており、地面にはレッドカーペットが敷かれてある
映画館にはたくさんの”キツネ様の奇跡”のポスターが貼られている
映画館の周囲にはたくさんのスーツ姿のスタッフがいる
“キツネ様の奇跡”のプレミア会場の周囲にはたくさんのファンとパパラッチが集まっている
“キツネ様の奇跡”のプレミア会場の周囲に集まっているファンとパパラッチたちはカメラ、ペン、”キツネ様の奇跡”のポスターなどを持っている
レッドカーペットにはロープ付きのポールで柵が作られており、一般人は入れないようになっている
レッドカーペットの前には真っ黒なリムジンが止まっている
すみれと潤は手を繋ぎながらレッドカーペットを歩いている
“キツネ様の奇跡”のプレミア会場の周囲に集まっているたくさんのファンとパパラッチたちは、カメラですみれと潤の写真を撮ったり、ペンと”キツネ様の奇跡”のポスターを差し出したりしている
2人のスタッフがすみれと潤が雨で濡れないように傘をさしている
”キツネ様の奇跡”のプレミア会場の周囲は騒がしくなっている
手を繋ぎながら話をしているすみれと潤
すみれ「(潤と手を繋ぎながら)まるで・・・昔の夢が叶ったみたいね、潤くん」
潤「(すみれと手を繋ぎながら)今の夢じゃねえのか?」
すみれ「(潤と手を繋ぎながら少し笑って)いいえ、遠い昔の夢ですよ」
潤「(すみれと手を繋ぎながら)でもこういう幸せもあって良かった。そうだろ?」
すみれ「(潤と手を繋ぎながら)それは・・・」
◯2986映画館(夜)
外は弱い雨が降っている
映画館の中にいる20歳のすみれと同じく20歳の潤
すみれは黄色のドレスを、潤は白のタキシードを着ている
映画館のスクリーンでは”キツネ様の奇跡”が上映されている
スクリーンに映し出されている”キツネ様の奇跡”は、◯2984ですみれと潤が緋空浜の浜辺のセットで撮ったシーンと完全に同じ
スクリーンに映し出されているすみれと潤は波音高校の制服を着ている
スクリーンに映し出されているすみれと潤は緋空浜の浜辺におり、大きなバイクで二人乗りをしている
スクリーンに映し出されている緋空浜の浜辺には水溜まりが出来ている
すみれと潤は映画館の真ん中の席に座っている
映画館にはたくさんのお客さんがおり、スクリーンに映し出されている”キツネ様の奇跡”を見ている
映画館の音響設備からは緋空浜の波の音と大きなバイクのエンジン音が鳴り響いている
手を繋ぎながらスクリーンに映し出されている”キツネ様の奇跡”を見ているすみれと潤
潤「(すみれと手を繋ぎスクリーンに映し出されている”キツネ様の奇跡”を見ながら)第1回緋空デミー賞の主演女優賞はすみれで決まりだな、第100回緋空デミー賞の主演女優賞もすみれで・・・」
すみれ「(潤と手を繋ぎスクリーンに映し出されている”キツネ様の奇跡”を見ながら潤の話を遮って)静かに潤くん、ここは映画館ですよ」
潤「(すみれと手を繋ぎスクリーンに映し出されている”キツネ様の奇跡”を見ながら)はい・・・」
映画館の音響設備からは変わらず緋空浜の波の音とバイクのエンジン音が鳴り響き続けている
すみれ「(潤と手を繋ぎスクリーンに映し出されている”キツネ様の奇跡”を見ながら)確かに・・・こんな幸せもあったかもしれませんね」
潤「(すみれと手を繋ぎスクリーンに映し出されている”キツネ様の奇跡”を見ながら)イフじゃねえ、これも現実なんだ」
潤はすみれと手を繋ぎながらスクリーンに映し出されている”キツネ様の奇跡”を見るのをやめる
すみれと手を繋ぎながらすみれの頬にキスをする潤
◯2987波音総合病院/超音波検査室(日替わり/朝)
外は快晴
外は蝉が鳴いている
波音総合病院の超音波検査室にいる27歳のすみれ、同じく27歳、医者
超音波検査室にはベッド、モニター付きの超音波検査機器、椅子がある
すみれは妊娠しており、お腹が膨らんでいる
すみれはベッドに横になり、超音波検査を受けている
すみれのお腹にプローブを当てて超音波検査を行っている医者
超音波検査機器のモニターにはすみれのお腹の中にいる胎児の菜摘の姿が映し出されている
潤は超音波検査を受けているすみれと手を繋いでいる
手を繋ぎながら、超音波検査機器のモニターに映し出されている胎児の菜摘の姿を見ているすみれと潤
医者「(すみれのお腹にプローブを当てて超音波検査を行いながら)元気な女の子ですよ」
潤「(超音波検査を受けているすみれと手を繋ぎ、超音波検査機器のモニターに映し出されている胎児の菜摘の姿を見たまま)せ、先生、赤ちゃんの体に問題は・・・」
医者「(すみれのお腹にプローブを当てて超音波検査を行いながら)大丈夫、健康そのものです」
潤「(超音波検査を受けているすみれと手を繋ぎ、超音波検査機器のモニターに映し出されている胎児の菜摘の姿を見たまま)良かった・・・」
◯2988公園(朝)
蝉が鳴いている
公園にいるすみれと潤
すみれは妊娠しており、お腹が膨らんでいる
すみれと潤はベンチに座っている
話をしているすみれと潤
潤「(嬉しそうに)俺たちの元に子供が生まれるんだぞすみれ、それも女の子だぞ」
すみれは俯く
すみれ「(俯いて)潤くん・・・私・・・仕事をしながら母親になれるかどうか・・・」
少しの沈黙が流れる
すみれ「(俯いたまま)ごめんなさい・・・まだ自信がないんです・・・(少し間を開けて)私たちは共働きだし・・・お互い夢を見ている状態だから・・・」
潤「俺の夢は叶っているじゃねえか、すみれ」
すみれ「(俯いたまま)潤くんは映画監督になるんでしょう・・・?キツネ様の奇跡だけじゃそれが叶ったとは・・・」
潤「(すみれの話を遮って)俺の夢は自分の映画ですみれを撮ることだ、キツネ様の奇跡は緋空浜で始まって緋空浜で終わった。あの映画で一発当てて、俺はもう満足ってわけだよ」
すみれは顔を上げる
すみれ「(顔を上げて)なら私も辞めます」
潤「すみれは美人で芝居が上手くて頭が良くて美人なんだから役者を続けるべきだ」
再び沈黙が流れる
潤「大女優になるって夢を叶えてもらわねえと、俺は緋空浜の海水よりも多い涙を溢しちまうぜ・・・?」
すみれ「でも子供と潤くんは?私が夢を追っている間に2人はどうするの?」
潤「(少し笑って)俺はいつまでもすみれを応援しているだろうな、知っての通りそれが俺って男だ」
◯2989早乙女家リビング(日替わり/夜)
リビングにいる赤ちゃんの菜摘と28歳の潤
赤ちゃんの菜摘は泣いている
赤ちゃんの菜摘を抱っこしてあやしながらブラウン管のテレビを見ている潤
ブラウン管のテレビには28歳のすみれが映っている
潤「(赤ちゃんの菜摘を抱っこしてあやしながら、ブラウン管のテレビに映っているすみれのことを見て)よーしよしよし、もう少ししたらおかあしゃんが帰って来るから、それまではおとおしゃんとテレビを見てようねー。ほらー、菜摘のおかあしゃんはテレビに出てるんだよー、凄いねー」
◯2990早乙女家玄関(日替わり/朝)
早乙女家玄関にいる3歳の菜摘、31歳のすみれ、同じく31歳の潤
3歳の菜摘と潤は手を繋いでいる
靴を履いているすみれ
すみれ「(靴を履きながら)帰りはまた遅くなると思います・・・」
潤「(3歳の菜摘と手を繋ぎながら)撮影を押すんじゃねえって監督の野郎に言ってやれ」
すみれは靴を履き終える
すみれ「(靴を履き終えて)何度もそう言っているんだけれど、なかなか個性の強い監督で・・・」
菜摘「(潤と手を繋ぎながら言葉を詰まらせて)お・・・お・・・お・・・おかしゃん」
すみれ「いつも一緒にいられなくてごめんなさいね、菜摘」
菜摘「(潤と手を繋ぎながら言葉を詰まらせて)だ・・・だ・・・だ・・・だ・・・だるめしゃん・・・み・・・み・・・見たい」
すみれ「(不思議そうに)ダルメシアン?」
潤「(3歳の菜摘と手を繋ぎながら)菜摘は犬に興味があるんだとよ、そのうち飼いたいとか言い出しそうだぞ」
すみれ「犬はダメだよ、潤くんがアレルギーだもの」
潤「(3歳の菜摘と手を繋ぎながら)菜摘、だるめしゃんは人間を丸ごと食べちゃう怖い生き物だから飼うのはやめ・・・」
すみれ「(潤の話を遮って)潤くん」
潤「(3歳の菜摘と手を繋ぎながら)おう」
すみれ「菜摘に変なことを教えないでくださいね」
潤「(3歳の菜摘と手を繋ぎながら)マイワイフのすみれよ、おとおしゃんは可愛い可愛い菜摘に・・・」
すみれ「(潤の話を遮って)それじゃあ、行って来ます」
すみれは3歳の菜摘と手を繋いでいる潤にキスをする
潤にキスをして続けて、3歳の菜摘の頬にキスをするすみれ
菜摘「(潤と手を繋ぎながらすみれに頬をキスされて言葉を詰まらせて)ば・・・ば・・・バイバイ、お・・・お・・・おかしゃん」
すみれ「バイバイ、菜摘」
すみれは玄関の扉を開けて家から出て行く
少しの沈黙が流れる
潤「(3歳の菜摘と手を繋ぎながら)さてと・・・今日は何して遊ぶか・・・」
菜摘「(潤と手を繋ぎながら言葉を詰まらせて)さ・・・さ・・・さ・・・さて・・・と・・・きょっ・・・きょーは・・・な・・・何して・・・あ・・・あ・・・あ・・・あそ・・・あそぼーか」
潤「(3歳の菜摘と手を繋ぎながら)おとおしゃんはそうだなー・・・もちろん菜摘と一緒にいられるだけで何でも良いが・・・(少し間を開けて)そうだ、釣りに行くか。お魚さんがいっぱいいるぞ、菜摘」
菜摘「(潤と手を繋ぎながら言葉を詰まらせて)お・・・お・・・おしゃかなさん・・・?」
潤「(3歳の菜摘と手を繋ぎながら)おう。お昼ご飯もおしゃかなさんだ」
菜摘「(潤と手を繋ぎながら言葉を詰まらせて)う・・・う・・・う・・・海・・・い・・・行きたい」
潤「(3歳の菜摘と手を繋ぎながら)親子2人で海に行こうな〜」
◯2991早乙女家リビング(日替わり/夕方)
夕日が沈みかけている
早乙女家リビングにいる18歳の鳴海、同じく18歳の菜摘
テーブルを挟んで向かい合って椅子に座っている鳴海と菜摘
鳴海はスーツを、菜摘はピンクのパーティードレスを着ている
菜摘は吃音症を患っている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスと、同じくクリスマスに汐莉から貰った小さな青いクリスタルがついているブレスレットをそれぞれ首と手首につけている
鳴海と菜摘の髪の毛は綺麗な金髪になっている
ボーッと菜摘の姿に見惚れている鳴海
菜摘は鳴海に見られていることに気付く
菜摘「(鳴海に見られていることに気付いて言葉を詰まらせながら)なっ、な、な、何で見てるの・・・?」
鳴海「あ、悪い・・・(少し間を開けて)ど、ドレスが似合ってると思ったんだ」
菜摘「(言葉を詰まらせながら)そっ、そ、そうかな・・・?へ、変じゃない・・・?」
鳴海「いや、完璧さ」
菜摘「(言葉を詰まらせながら)あっ、あっ・・・・あ、あっ・・・ありが・・・」
鳴海「(菜摘の話を遮って)大丈夫だ、菜摘。最後まで言わなくて分かるよ」
少しの沈黙が流れる
菜摘は俯く
リビングに47歳のすみれと同じく47歳の潤がやって来る
すみれは黄色のドレスを、潤は白のタキシードを着ている
潤「またお前か、紘の息子」
鳴海「親父がよろしくって言っていたぞ」
潤「しくよろじゃねえ、散々一条会問題で手間を取らせやがって」
鳴海「親父たちはあれでもあんたとすみれさんに感謝してるんだけどな・・・」
潤「だったら何で今日来ねえんだよ、すみれの晴れ舞台なんだぞ」
菜摘「(言葉を詰まらせながら)お、お、お父さん」
鳴海「(少し笑って)俺の両親は自分たちがトラブルを起こす存在だって分かっているからな、晴れ舞台の邪魔をしたくないんだろ」
再び沈黙が流れる
潤「お前の親は都合の良い野郎だよ。呆れて言葉も出ねえな」
鳴海「(少し笑いながら)安心しろ、世界中の人たちと一緒にテレビで中継を見るさ」
◯2992”緋空シアター”(夜)
緋空浜にある巨大な劇場”緋空シアター”にいるスーツ姿の鳴海、ピンクのパーティードレスを着ている菜摘、黄色のドレスを着ているすみれ、白のタキシードを着ている潤
“緋空シアター”は4階建てで、全ての階に椅子がある
“緋空シアター”の中は金色の派手な装飾がされている
“緋空シアター”には舞台があり、その上には司会台とスタンドマイクがある
司会台の上には金色の狐の像が置いてある
“緋空シアター”の舞台の上には司会者1と司会者2がいる
“緋空シアター”の舞台の横には階段がある
“緋空シアター”の舞台の周囲にはたくさんのカメラとカメラマンがいる
鳴海、菜摘、すみれ、潤は一階の中央の椅子に座っている
“緋空シアター”の中は満席で、ドレスやスーツを着たたくさんの人がいる
菜摘は吃音症を患っている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスと、同じくクリスマスに汐莉から貰った小さな青いクリスタルがついているブレスレットをそれぞれ首と手首につけている
鳴海と菜摘の髪の毛は綺麗な金髪になっている
“緋空シアター”では”波音映画祭”の授賞式が行われている
司会者1「続いて主演女優賞の発表です」
司会者2「輝かしい狐像は誰の手に渡るのでしょうか。本年度ノミネートされたのは以下の皆さんです」
司会者1「那谷里矢、衛星の海」
鳴海、菜摘、すみれ、潤を含む緋空シアターにいる人たち全員が拍手をする
司会者2「篠塚玲奈、空港にて」
司会者1「麻美麻里、ミラー7」
司会者2「柿坂優子、プレッシャーの下で」
司会者1「早乙女すみれ、ハッピー・トゥゲザー」
潤は拍手をするのをやめて指笛を鳴らす
少しすると鳴海、菜摘、すみれを含む緋空シアターにいる人たち全員が拍手をするのをやめる
少しの沈黙が流れる
司会者1はポケットから小さな白い封筒を取り出す
小さな白い封筒を開ける司会者1
司会者1「(小さな白い封筒を開けながら)狐像を受賞するのは・・・」
小さな白い封筒の中には一枚のカードが入っている
司会者1は一枚のカードを小さな白い封筒の中から取り出す
一枚のカードを司会者2に差し出す司会者1
一枚のカードを司会者1から受け取る司会者2
司会者2「(一枚のカードを読み上げて)早乙女すみれ、ハッピー・トゥゲザー」
鳴海、菜摘、潤を含む緋空シアターにいる人たち全員が拍手をする
菜摘「(拍手をしながら言葉を詰まらせて)おっ、お、お、おめでとうお母さん!!」
すみれ「(驚きながら)本当に・・・?私なの・・・?」
潤は立ち上がる
すみれに手を差し伸ばす潤
潤「(すみれに手を差し伸ばして)行くぞすみれ、これが俺たちの望んだ夢の世界だ」
すみれは伸ばして来ている潤の手を取る
伸ばして来ている潤の手を取って、立ち上がるすみれ
すみれと潤は手を繋いだまま抱き合う
潤「(すみれと手を繋ぎ抱き合って)やったな」
すみれ「(潤と手を繋いで抱き合ったまま嬉しそうに)ありがとう、潤くん」
潤「(すみれと手を繋いで抱き合ったまま)俺たちは夫婦だろ」
すみれ「(潤と手を繋いで抱き合ったまま嬉しそうに)ええ」
すみれと潤は手を繋いだまま抱き合うのをやめる
手を繋いだまま”緋空シアター”の舞台の横の階段に行くすみれと潤
すみれは潤の手を離す
“緋空シアター”の階段を登って舞台の上に上がるすみれ
司会者1は司会代の上に置いてあった狐像を手に取る
狐像をすみれに差し出す司会者1
司会者1「(狐像をすみれに差し出して)おめでとう」
すみれは狐像を司会者1から受け取る
すみれ「(狐像を司会者1から受け取って)ありがとう・・・」
司会者1と司会者2はすみれから少し離れる
鳴海、菜摘、潤は立って拍手をしている
すみれ「(狐像を手に持ったまま)皆さん・・・ありがとうございます・・・身に余る光栄です。(少し間を開けて)かなり重たい像なんですね、私のドレスと同じくらいの重さかもしれません、今日のために色々アップデートを重ねて来たユニフォームですから」
緋空シアターの中で笑いが起こる
すみれ「(狐像を手に持ったまま少し笑って)ウケて良かったです。夫とボケの練習をして来た甲斐がありました」
鳴海、菜摘、潤は変わらず立って拍手をしている
すみれ「(狐像を手に持ったまま)きっとここにいるほとんどの人が、子供の頃から演技をするのが好きだったと思います。私もそうでした、小さなテレビのモノクロの映像で見た女優さんのことが忘れられなくて、私はこの道に進みました」
狐像を持っているすみれには照明の明かりが当たっている
鳴海、菜摘、すみれを含む緋空シアターにいる人たち全員が少しずつ拍手をするのをやめる
すみれ「(狐像を手に持ったまま)私の作品や、ここにいらっしゃる皆さんの作品を見た小さな子供たちが、いつか私たちと同じ道に足を踏み入れてくれれば、それはとても幸運なことでしょう」
◯2993貴志家リビング(夜)
リビングにいる47歳の由夏理、同じく47歳の紘、波音高校の制服を着た少女
椅子に座ってテレビを見ている由夏理、紘、波音高校の制服を着た少女
テレビでは”緋空シアター”で行われている”波音映画祭”の授賞式の中継が映し出されている
テレビでは狐像を持って”緋空シアター”の舞台の上に立っているすみれの姿が映し出されている
テレビに映し出されているすみれは照明の明かりが当たっている
テレビに映し出されているすみれは黄色のドレスを着ている
テレビに映し出されている”緋空シアター”の舞台の上には司会台とスタンドマイクがある
由夏理、紘、波音高校の制服を着た少女はテレビに映っているすみれのことを見ている
テレビに映っているすみれのことを見ている由夏理、紘、波音高校の制服を着た少女は後ろの姿のため、顔が見えない
テレビに映し出されているすみれは受賞スピーチをしている
すみれ「(狐像を持ったまま)何故なら・・・子供は常に憧れ、大人は常に憧れを抱かれる存在だからです。私たちは鏡です、私たちが鏡の前に立つ時、そこに反射して映るのは、私たちの両親や私たちの子供でしょう」
◯2994”緋空シアター”(夜)
緋空浜にある巨大な劇場”緋空シアター”にいるスーツ姿の鳴海、ピンクのパーティードレスを着ている菜摘、黄色のドレスを着ているすみれ、白のタキシードを着ている潤
“緋空シアター”は4階建てで、全ての階に椅子がある
“緋空シアター”の中は金色の派手な装飾がされている
“緋空シアター”には舞台があり、その上には司会台とスタンドマイクがある
“緋空シアター”の舞台の上には司会者1と司会者2がいる
“緋空シアター”の舞台の横には階段がある
“緋空シアター”の舞台の周囲にはたくさんのカメラとカメラマンがいる
鳴海、菜摘、潤は一階の中央の椅子に座っている
すみれは“緋空シアター”の舞台の上におり、狐像を持っている
狐像を持っているすみれには照明の光が当たっている
“緋空シアター”の中は満席で、ドレスやスーツを着たたくさんの人がいる
菜摘は吃音症を患っている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスと、同じくクリスマスに汐莉から貰った小さな青いクリスタルがついているブレスレットをそれぞれ首と手首につけている
鳴海と菜摘の髪の毛は綺麗な金髪になっている
“緋空シアター”では”波音映画祭”の授賞式が行われている
狐像を持ったまま受賞スピーチをしているすみれ
すみれ「(狐像を持ったまま)そしてその姿に、完璧というものはないと思います。私たちが両親に完璧を求めるならば、私たちは子供である自分に完璧を求め、娘や息子にも同じものを求めてしまいます。(少し間を開けて)一方で、私たちは子供に憧れて欲しいと思うし、私たちは親に憧れたくなりますよね?完璧なんて存在しないと分かっていながら、そんなふうに世界は、人生は、親子は回っています」
少しの沈黙が流れる
すみれは狐像を持ったまま狐像を見る
すみれ「(狐像を持ったまま狐像を見て少し笑って)これは夢を叶えた証拠です。喉から手が出るほど欲しかった物ですが、いざ手にすると、私は相応しくなかったとと分かります」
すみれは狐像を司会台の上に置く
すみれ「(司会台の上に置いて)家族に応援されながら女優になるのは、それはそれは華やかな人生でしょうね。だけど家族と夢の両方を取れるほど、私は器用ではありませんし、今までの人生を無かったことにして、夢を追いたいとも思いません。(少し間を開けて)私は・・・テレビの前の子供たちが憧れる存在にはなれませんでしたが、娘と息子が憧れる夫婦、母親になることが出来ました。それだけで十分、幸せですよ、キツネ様」
突然、すみれに当たっている照明の明かり以外の電気が全て消える
再び沈黙が流れる
少しするとすみれの周りが明るくなる
すみれは早乙女家の前にいる
蝉が鳴いている
いつの間にかすみれに当たっていた照明の明かりは消えている
少しの沈黙が流れる
すみれ「(少し寂しそうに笑って)今晩は特別に・・・私と潤くんの好きなメニューしましょう」
すみれは家の扉を開けて家の中に入る
◯2995貴志家リビング(夜)
リビングにいる鳴海と菜摘
テーブルを挟んで椅子に座っている鳴海と菜摘
菜摘は痩せている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている
鳴海と菜摘の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には至る所に痣がある
話をしている鳴海と菜摘
鳴海「時間・・・かかり過ぎたな・・・」
菜摘「そんなことないよ。まだお付き合いして一年だもん」
鳴海「い、一年か・・・」
菜摘「早かったね、鳴海くん」
鳴海「そうだな、さすがに密度の濃い一年だったよ」
菜摘「これからは・・・もう少しのんびり出来るかな・・・?」
鳴海「少なくともこの一年間よりは出来るさ」
少しの沈黙が流れる
鳴海「ふ、風呂・・・入るか・・・」
菜摘「うん」
再び沈黙が流れる
鳴海「今菜摘・・・鳴海くん、お先にどうぞ、みたいな顔をしているよな」
菜摘「し、してないよそんな顔」
鳴海「じゃ、じゃあどんな顔をしていたんだ」
菜摘「い、いつもの顔・・・だと思う・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「わ、分かった。お、俺の言い方が悪かったよ」
菜摘「そ、そうかな・・・?」
鳴海「き、聞いて驚かないで欲しいんだが・・・」
菜摘「う、うん」
鳴海「お、俺は一緒に風呂に入るか・・・と言いたかったんだ」
菜摘「わ、私、断ってないよ鳴海くん」
鳴海「そうだったか・・・?」
菜摘「た、多分・・・」
鳴海「何で自信がなさそうなんだ・・・?」
菜摘「あ、改めて誘われると・・・その・・・き、緊張するし・・・」
再び沈黙が流れる
鳴海「きょ、今日はやめておくか」
菜摘「う、ううん。きょ、今日一緒に入る」
鳴海「別に明日でも・・・」
菜摘「(鳴海の話を遮って)あ、明日は嫌だよ鳴海くん」
鳴海「恥ずかしい以外の嫌な理由があるなら聞くぞ」
菜摘「へ、平日だから鳴海くんが疲れていると思うし・・・私も病院で検査があって・・・体に跡・・・いっぱい残ってるから・・・」
鳴海「そ、そうだったな。じゃ、じゃあ明日はやめておこう」
菜摘「うん・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「た、確か姉貴が愛の粉薬とか意味不明なことを言って泡風呂の元を置いて行ったと思うんだが、使ってみないか?」
菜摘「だ、大丈夫かな・・・それ・・・」
鳴海「あ、愛の粉薬っていうのは多分姉貴の冗談だ」
菜摘「ふ、普通の泡風呂だったら使っても良いけど・・・」
鳴海「試しに入れてみてやばそうだったら風呂を張り替えるか?」
菜摘「そ、そうだね」
◯2996貴志家風呂(夜)
風呂にいる鳴海と菜摘
菜摘は痩せている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスを首にしている
鳴海と菜摘の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には至る所に痣がある
浴槽には泡風呂が出来ている
泡風呂を見ている鳴海と菜摘
菜摘「(泡風呂を見ながら)鳴海くん」
鳴海「(泡風呂を見ながら)ん?」
菜摘「(泡風呂を見ながら)これってやばそうなのかな?」
鳴海「(泡風呂を見ながら)いや・・・普通に見えるが・・・」
菜摘「(泡風呂を見ながら)こういうのって実際に入ってみなきゃ何がやばいのか分からないんじゃない?」
少しの沈黙が流れる
鳴海「(泡風呂を見ながら)もしかして菜摘は俺に毒風呂をしろって言っているのか」
菜摘「(泡風呂を見ながら)そ、そんなことないよ。ただ見ただけじゃ分からなそうだと思って・・・」
時間経過
泡風呂に浸かっている鳴海
鳴海は全裸になっているが、泡風呂のおかげで肌はほとんど見えていない
泡風呂に浸かっている鳴海のことを見ている菜摘
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)ふ、普通の泡風呂だと思うぞ」
菜摘「(泡風呂に浸かっている鳴海のことを見ながら)そうなんだ」
再び沈黙が流れる
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)菜摘・・・?」
菜摘「(泡風呂に浸かっている鳴海のことを見ながら)何?鳴海くん」
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)さっきから俺一人が風呂に入りっぱなしなんだが・・・」
菜摘「(泡風呂に浸かっている鳴海のことを見ながら)そうだね」
少しの沈黙が流れる
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)な、菜摘も入るんじゃなかったのか?」
菜摘「(泡風呂に浸かっている鳴海のことを見ながら)入るって何が?」
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)ふ、風呂だよ風呂!!」
菜摘は泡風呂に浸かっている鳴海のことを見るのをやめる
菜摘「(泡風呂に浸かっている鳴海のことを見るのをやめて)ご、ごめん。わ、私準備して来る」
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)お、おう」
菜摘は風呂から出て行く
時間経過
泡風呂に浸かっている鳴海と菜摘
菜摘の体にはたくさんの病院の検査の跡が残っている
菜摘は全裸になっているが、泡風呂のおかげで肌はほとんど見えていない
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)ふ、普通だろ」
菜摘「(泡風呂に浸かりながら)う、うん。ふ、普通の泡風呂だね」
再び沈黙が流れる
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)そ、そういえば菜摘に聞きたいことがあるんだ」
菜摘「(泡風呂に浸かりながら)な、何?」
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)ま、前怒っていただろ?そ、その理由を教えて欲しいんだ」
菜摘「(泡風呂に浸かりながら)前っていつのこと・・・?」
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)だ、大激怒していた時があったじゃないか」
菜摘「(泡風呂に浸かりながら)大激怒なんかしたかな・・・」
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)銭湯で俺のことを間抜けで嘘つきでアホで救いようのない馬鹿呼ばわりしただろ」
菜摘「(泡風呂に浸かりながら)わ、私そんなこと言ってないよ!!」
◯2997◯2824の回想/緋空銭湯男子脱衣所(昼前)
外は蝉が鳴いている
緋空銭湯の男子脱衣所にいる鳴海
男子脱衣所には中心に番台があり、番台の向こうには女子脱衣所がある
男子脱衣所と女子脱衣所の間には仕切りがある
番台には女将のおばちゃんが座っている
男子脱衣所にはたくさんのロッカーがあり、着替えをしまえるようになっている
男子脱衣所には古いマッサージチェア、体重計、扇風機、数脚のソファ、透明で中身が見えるようになっている冷蔵庫が置いてある
透明で中身が見えるようになっている冷蔵庫には缶ジュース、瓶ジュース、缶ビール、瓶ビール、瓶の牛乳などが冷やされている
男子脱衣所は男湯と直結しており、すりガラスの引き戸を開けるとそのまま男湯に入れるようになっている
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の額には絆創膏が貼ってある
鳴海はTシャツの袖とズボンの裾をまくり、裸足になっている
男子脱衣所のロッカーには雑巾がある
男湯からいるはずのない菜摘の怒った声が聞こえている
鳴海は菜摘を探している
鳴海「(菜摘を探しながら)お、怒っているならその理由を教えてくれよ菜摘」
菜摘「(怒った声)貴志鳴海が間抜けで嘘つきでアホで馬鹿で救いようのないクソガキだから怒ってるの!!そ、それから私をあんたの馬鹿な彼女と一緒にするなアホ!!」
鳴海「(菜摘を探しながら)お、おい、怒るのは構わないが言っていることがめちゃくちゃになって・・・」
菜摘「(怒った声で鳴海の話を遮って)もうあんたのことなんか知らない!!過去でも未来でも好きなところに行って野垂れ死んじゃえば良いのよ!!」
◯2998回想戻り/貴志家風呂(夜)
風呂にいる鳴海と菜摘
菜摘は痩せている
鳴海と菜摘の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には至る所に痣がある
浴槽には泡風呂が出来ている
泡風呂に浸かっている鳴海と菜摘
菜摘の体にはたくさんの病院の検査の跡が残っている
鳴海と菜摘は全裸になっているが、泡風呂のおかげで肌はほとんど見えていない
泡風呂に浸かりながら話をしている鳴海と菜摘
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)いや・・・俺は叱責されまくった挙句に野垂れ死ねって言われたんだが・・・」
菜摘「(泡風呂に浸かりながら悲しそうに)鳴海くんは私がそんな酷いことを言うと思っているの・・・?」
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)お、思う思わないは別件だろ。じ、実際に俺は言われたし、菜摘は怒っていたんだからさ」
菜摘「(泡風呂に浸かりながら悲しそうに)私・・・怒りを通り越して今は悲しいよ・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)じゃ、じゃあ逆に聞くが・・・菜摘は俺のことを大馬鹿だとは思っていないのか・・・?」
菜摘「(泡風呂に浸かりながら)そ、それは・・・時々思うことがあるけど・・・普段は小馬鹿くらいだよ・・・」
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)そんな大ライス小ライスみたいな分け隔てがあるんだな・・・」
再び沈黙が流れる
菜摘「(泡風呂に浸かりながら)そもそも私銭湯に行ってないもん・・・」
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)そ、そうなのか?」
菜摘「(泡風呂に浸かりながら)うん・・・」
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)なら・・・あれは・・・」
菜摘「(泡風呂に浸かりながら)知らないよ・・・鳴海くんに怒ってもないし・・・人違いじゃないの・・・?」
◯2999◯2837の回想/緋空銭湯男湯(昼)
外は蝉が鳴いている
緋空銭湯の男湯の中にいる鳴海
男湯の中には浴槽が5据えあり、座風呂、薬湯の風呂、電気風呂、水風呂、超音波風呂などがある
男湯の中には鏡、シャワー、蛇口がたくさん設置されている
男湯の隅の方には桶と椅子がたくさん置いてある
男湯の壁には富士山が描かれている
男湯の向こうには女湯がある
男湯と女湯の間には仕切りがある
男湯は男子脱衣所と直結しており、すりガラスの引き戸を開けるとそのまま男子脱衣所に出れるようになっている
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の額には絆創膏が貼ってある
男湯の中にはお風呂掃除用の洗剤が1個、大きなデッキブラシが1本、ゴム手袋が1組、たわしが1個置いてある
男湯の浴槽は全てお湯が溜まって、溢れかえっている
鳴海は全裸で浴槽に浸かっている
どこからか聞こえて来る菜摘の声と話をしている鳴海
菜摘「(呆れた声)私は早乙女菜摘じゃないって何度言ったら分かるのかしら」
鳴海「(呆れて)菜摘じゃないならお前は誰なんだよ・・・」
菜摘「(声)誰でも良いでしょそんなの、通りすがりよ通りすがり」
鳴海「(呆れて 声 モノローグ)今日だけはそういうことにしといてやるか・・・」
菜摘「(声)そもそも私は水が苦手だし、お湯なんて大っ嫌いなんだから」
◯3000回想戻り/貴志家風呂(夜)
風呂にいる鳴海と菜摘
菜摘は痩せている
鳴海と菜摘の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には至る所に痣がある
浴槽には泡風呂が出来ている
泡風呂に浸かっている鳴海と菜摘
菜摘の体にはたくさんの病院の検査の跡が残っている
鳴海と菜摘は全裸になっているが、泡風呂のおかげで肌はほとんど見えていない
泡風呂に浸かりながら話をしている鳴海と菜摘
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)なら別の質問をして良いか?」
菜摘「(泡風呂に浸かりながら)うん」
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)菜摘は風呂が嫌いなんだよな」
菜摘「(泡風呂に浸かりながら)銭湯に行かないだけでお風呂は好きだよ鳴海くん」
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)水が苦手なんじゃなかったのか?」
菜摘「(泡風呂に浸かりながら)私カナヅチじゃないもん、ちゃんと25メートル泳げるもん」
少しの沈黙が流れる
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)菜摘」
菜摘「(泡風呂に浸かりながら)何?鳴海くん」
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)さすがは大女優の娘だ、俺の負けを認めるからさ、菜摘も嘘をつくのはやめてくれ」
菜摘「(泡風呂に浸かりながら)嘘って・・・?」
鳴海「(泡風呂に浸かりながら少し笑って)マザコンで甲斐性無しの俺のためにわざわざキャラを変えて発破をかけてくれたんだろ?」
菜摘「(泡風呂に浸かりながら)鳴海くんは・・・マザコンで・・・甲斐性無しなの・・・?」
再び沈黙が流れる
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)も、もちろんそんなことはないぞ。お、俺はマザコンでもなければ甲斐性無しでもないから安心してくれ菜摘」
菜摘「(泡風呂に浸かりながら)鳴海くん・・・なんか変じゃない・・・大丈夫・・・?」
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)だ、大丈夫だ。そ、それにちょっとくらい変なのが俺だって菜摘も知っているだろ?」
菜摘「(泡風呂に浸かりながら)今日の鳴海くんは特別変だと思う・・・」
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)じ、実は少し寝ぼけててさ」
鳴海は泡風呂に浸かりながら両目を擦る
菜摘「(泡風呂に浸かりながら)あ、目を擦っちゃダメだよ鳴海くん。バイ菌が入っちゃう」
鳴海は泡風呂に浸かりながら両目を擦るのをやめる
◯3001◯2837の回想/緋空銭湯男湯(昼)
外は蝉が鳴いている
緋空銭湯の男湯の中にいる鳴海
男湯の中には浴槽が5据えあり、座風呂、薬湯の風呂、電気風呂、水風呂、超音波風呂などがある
男湯の中には鏡、シャワー、蛇口がたくさん設置されている
男湯の隅の方には桶と椅子がたくさん置いてある
男湯の壁には富士山が描かれている
男湯の向こうには女湯がある
男湯と女湯の間には仕切りがある
男湯は男子脱衣所と直結しており、すりガラスの引き戸を開けるとそのまま男子脱衣所に出れるようになっている
鳴海の髪の毛は金髪になっている
鳴海の額には絆創膏が貼ってある
男湯の中にはお風呂掃除用の洗剤が1個、大きなデッキブラシが1本、ゴム手袋が1組、たわしが1個置いてある
男湯の浴槽は全てお湯が溜まって、溢れかえっている
鳴海は全裸で浴槽に浸かっている
どこからか聞こえて来る菜摘の声と話をしている鳴海
鳴海は両目を擦る
菜摘「(声)あっ!!目を擦っちゃダメ!!バイ菌が入っちゃう!!」
◯3002回想戻り/貴志家風呂(夜)
風呂にいる鳴海と菜摘
菜摘は痩せている
鳴海と菜摘の髪の毛は金髪になっている
鳴海の顔面には至る所に痣がある
浴槽には泡風呂が出来ている
泡風呂に浸かっている鳴海と菜摘
菜摘の体にはたくさんの病院の検査の跡が残っている
鳴海と菜摘は全裸になっているが、泡風呂のおかげで肌はほとんど見えていない
泡風呂に浸かりながら話をしている鳴海と菜摘
鳴海「(泡風呂に浸かりながら少し笑って)一瞬幻聴を疑った時代もあったが、やっぱり菜摘は菜摘だな」
菜摘「(泡風呂に浸かりながら)どういうこ・・・」
鳴海「(泡風呂に浸かりながら菜摘の話を遮り少し笑って)何でもない、気にしないでくれ」
少しの沈黙が流れる
菜摘「(泡風呂に浸かりながら)鳴海くんの顔の傷のこと・・・聞かない方が良いかな・・・」
鳴海「(泡風呂に浸かりながら少し笑って)昔さ・・・母さんの顔に痣があったんだ。今まではなかった痣だから、心配で何があったのか聞いてみたんだよ。そしたらあの人は転んだって言ったんだ。(少し間を開けて)馬鹿だよな、嘘をつくにしてももう少しマシなものを考えてからにしろよって話だ」
再び沈黙が流れる
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)俺の場合は・・・ただ喧嘩に負けただけだよ」
菜摘「(泡風呂に浸かりながら)何で喧嘩なんかしたの・・・?」
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)腹が立ったんだ」
菜摘「(泡風呂に浸かりながら)そんな理由でいちいち喧嘩をしていたら世界中が争いごとだらけになっちゃうよ、鳴海くん」
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)俺の中では一発顔面に食らわせて終わりのつもりだったのに向こうがさ・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)分かっているよ・・・菜摘・・・失敗だった・・・」
菜摘「(泡風呂に浸かりながら)鳴海くん、危ないことはもうしないって約束して」
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)約束したら破るたびに罪悪感に駆られるじゃないか」
菜摘「(泡風呂に浸かりながら)そもそも約束は破っちゃいけないんだよ鳴海くん」
再び沈黙が流れる
鳴海「(泡風呂に浸かりながら)分かった、約束するよ」
◯3003早乙女家すみれと潤の寝室(深夜)
寝室にいるすみれと潤
すみれと潤の寝室にはダブルサイズのベッドと小さなベッドサイドテーブルがある
小さなベッドサイドテーブルにはデスクライトが置いてある
ダブルサイズのベッドに横になっているすみれと潤
潤「もう寝たか?すみれ」
すみれ「ううん」
少しの沈黙が流れる
潤「今日は眠れないな・・・」
すみれ「ええ・・・そうね・・・」
再び沈黙が流れる
潤「鳴海は優しい子だよ、あいつは俺たちのことを恨んじゃいねえんだから」
すみれ「潤くんは・・・鳴海くんが私たちに対してどう思っているかを知るまで・・・菜摘との結婚を許す気がなかったんじゃないですか・・・?」
潤「確かに・・・あいつの気持ちを知りたかったっていうのはあるけどな・・・(少し間を開けて)でもそれだけじゃねえ、結局はタイミング、後は鳴海から覚悟を聞き出せるかどうかだったんだ」
少しの沈黙が流れる
潤「8年か・・・あいつらが世界から消えてもうそんなに経つが・・・時間がかかり過ぎちまった」
すみれ「二人とも・・・きっと怒っているでしょうね」
潤「ああ。怒って・・・怒りながらも・・・・笑ってくれるだろう」
再び沈黙が流れる
すみれ「何だか・・・何だか全部が一気になくなってしまったみたい・・・菜摘も・・・由夏理も・・・紘くん・・・(少し間を開けて)鳴海くんも・・・」
潤「そうだな、この家にいるのはもう俺たちだけだ」
少しの沈黙が流れる
潤「お前が女優を辞めると言った時・・・俺は結構ショックでな。俺の夢は菜摘のために諦めて良かったんだが、すみれにはそういう選択をして欲しくなかった。というのも俺は本気で信じていたんだ、すみれに芝居の才能があるってよ。今でもそれは変わらねえ。きっとすみれは良い女優になった、夢を叶えたさ。だけどよ、もしお前が大女優になっちまったら、菜摘を送り出す今日みたいな日でも、俺たちは一緒にいなかったかもしれしれねえ。当然だ、映画やらドラマの撮影予定ってのは、一人のわがままで変えられるもんじゃねえからな。(少し間を開けて)だから・・・あの時・・・すみれが俺と一緒に夢を諦めてくれて・・・菜摘に命を捧げると誓ってくれて・・・良かったよ・・・こんな寂しい日の夜を・・・愛する人と二人だけで過ごせるなんて・・・・最高だからな」
すみれ「そうですね・・・潤くんといれて・・・私も最高よ」
再び沈黙が流れる
すみれ「潤くん」
潤「おうよ」
すみれ「今度・・・私も釣りに連れて行ってくれますか?」
潤「もちろんだ、すみれ」




