中学生のそれは厨二病ですか?
「ダメよ、メイちゃん」
お姉が頭一つ分低いところにある電波ちゃんのその赤い頭をぽんぽんと撫でた。
電波ちゃんは一瞬で睨むのをやめてあげた右手を恥ずかしそうに隠す。
その姿はどこからどう見ても恥じらう可愛いロリで、美少女で、控えめに言って素晴らしい。
恥ずかしそうに真っ赤になる頬を僅かに膨らませて口を尖らす。
これは本当に電波ちゃんなのか?まるで別人なんですが、双子の妹とか、そういうやつですか?
むしろ、そうだとありがたいんですが。姉の方は早いとこ帰国してもらえますか?
「いい子ね、メイちゃん。こんなゴミは放っておいたらいいのよ」
「……うむ、あいわかった」
頭を撫でられた電波ちゃんは視線を所なさそうにうろうろさせて、しかし確実に嬉しそうだった。
なんということだ、これは、ゴリラが電波ちゃんを完全に手なずけているのではないだろうか。
いつ喉がゴロゴロ言い出してもおかしくはない程度に電波ちゃんはお姉に籠絡されていそうだった。
いや……むしろ、手下にしたと言っても過言ではない。
俺をなぜだかニタニタと気色の悪い笑みで見下してくるあの、筋肉に僅かな知能がついたようなゴリラの傘下に、更に得体の知れない電波ちゃんが加わった。
………こわい、怖すぎる。
まず、お姉が得体の知れない幼女を家に住まわせた犯罪臭ぷんぷんの恐怖に加え、その得体の知れない幼女をお姉が手下にしただなんて。
あのよく分からない2人がすぐ隣の部屋で過ごしているということ自体が恐ろしかったというのに……。
「殴るわよ」
「え!なんで」
「顔がムカついた」
「悠、わらわに任せるが良い。あとかたもなく消し去ってやろう」
またもや始まるお姉の理不尽発言にひくひくと口のはしが引き攣る。
電波ちゃんの痛い厨二病発言は普通にスルーした。
だってなんて返せばいいのか良く分からないし、関わると大怪我しそうなんだもの。
案の定、電波ちゃんは、またわらわを無視したな!とぷんすか騒いでいた。
……見るだけなら可愛いんだけどな……。
「ちょっと、お姉話があるんだけど」
「なに?」
「いや、ここじゃ、ちょっと……」
ちらりと電波ちゃんを見てから言うとお姉は察したらしい。
ややあって面倒くさそうに頷いた。
相変わらず、ほとんど体をお姉の後ろに隠して、がるるるると威嚇する電波ちゃんは、控えめに言ってかわいかった。
もちろん、見るだけならって言う話だけど。
………ん?ていうか
「………メイちゃん?」
すごくすごく聞き流していたけど、お姉は電波ちゃんをメイちゃんと呼んでいる。
メイちゃんというのか。これは、また、日本人か海外の方か、厨二病のアホかわかりにくい名前である。
「貴様ごときがわらわの名を愛称で呼ぶなど、到底許容できぬ!
ルメイリア様、か、殿下と呼ぶがいい」
ほうほう、なるほど。
俺はすぐさまググッた。
ルメイリア様…と、そのルメイリア様のコスね。なるほど。
ルメイリア様は「貴様!わらわの前でなんと無礼な!」とかなんとか言って喚いていた。
また多分すごい顔してんだろうな、と思ったから最初から無視した。
だって怖いんだもん。
というか、日本語上達しすぎだろ、何口調っていうのそれ。
ちなみに、どれだけ探してもルメイリア様と思われる、それらしいキャラクターは出てこなかった。
……まさか、オリジナルなのだろうか?
だとしたらこの歳で(多分中学生くらいだろう)なかなかの独創性と語彙力だ。
まだ中学生なら許されるよ、厨二病は、まだ中学生ならね。
でも、早いとこ、治した方がいいと思うよ。先輩として。