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暴走火竜と特訓の成果。と意外な正体

いよいよ最終決戦です。逃げた魔族とも戦います。無事に帰ってこれるかな?


数週間に及ぶ地獄(?)の特訓を終えた頃、裏庭の地面は完全にクレーターだらけになっている。

やり切った一行の目つきは変わっている。

「……よし。これなら、あのドラゴンの鼻っ柱をへし折れるぞ」

アルスが鋭い眼光で双剣を鞘に収めると、ゼノも不敵に拳を鳴らします。

レイの杖からは一瞬で強固な結界が展開できるようになり、

その結界の影からポテチがいつでも巨大化して飛び出せる完璧な布陣が完成している。


「フフ、みんな良い仕上がりね。

そろそろあの火竜に『次』を突きつけに行きましょうか?」

カルラが妖艶に微笑み、全員がニヤリと笑います。


満身創痍の敗北を乗り越え、地獄の特訓で最強の連携を手に入れた『暁の旅団』。

彼らは再び、火竜とケリをつけるため、古代遺跡に向かっていくのだった。


しかし、遺跡の入り口が見える断崖絶壁に差し掛かった。

その時、山を震わせる凄まじい咆哮が響き渡りました。


「――この咆哮は!」

ゼノの肩の上で、ポテチが鋭く耳をそばだてて毛を逆立てます。

一行が岩陰からそっと谷底を覗き込む。とそこには驚愕の光景が広がっていた。

なんと、北の砦から命からがら逃げ延びたあの魔族が、

禍々しい漆黒の魔導書を掲げ、不気味な呪詛を唱えていたのだ。


魔族の周囲には、禍々しい闇の魔法陣がいくつも展開され、

そこから伸びた何十本もの黒い鎖が、あの誇り高き火竜の巨体を縛り付けている。

「ククク……! 聖なる竜ともあろう者が、あのとき筋肉の羽虫どもを仕留め損ねるからだ!

貴様のその強大な力、我が禁忌の呪詛で完全に支配し、操り人形にしてくれるわ!」


魔族は前回の敗北で完全に理性を失っており、

火竜を無理やり洗脳して、街ごと壊滅させるための

「生体兵器」に変えようとしていたのだ。


黒い鎖から流れ込む呪詛のせいで、火竜の琥珀色の瞳は禍々しい赤色に染まり、

苦しげに狂暴な炎を撒き散らして暴走し始めている。


その卑劣な光景を見た瞬間、一行の怒りは頂点に達しました。

「おいおい……満身創痍の俺たちを見逃してくれたあの格好いい竜を、

あんなゴミみたいな方法で縛り付けるんじゃねぇよ!」


アルスが双剣を抜き、鋭い眼光を幹部に向ける。

「師匠を罠にハメて、僕に大怪我をさせただけじゃ飽き足らず、

竜の誇りまで踏みにじるなんて……絶対に許さない!」


レイもまた、新調した「守護の魔導杖」に怒りの魔力を込める。

「フン、あのドラゴンを殴るのは俺たちの役目だ。

雑魚魔族に横取りされてたまるか。……行くぞ、下僕ども!」


ゼノの肩から飛び降りたポテチが、空中で一瞬にして巨大な紅蓮のトラへと完全覚醒。


「へぇ、あの時の生き残りね。今度こそ、細胞一つ残さず塵にしてあげるわ」


カルラも妖艶な笑みを消し去り、両手に特大の暗黒炎を宿します。

特訓で手に入れた完璧なフォーメーションを引っ提げ、

一行は崖の上から暴走する火竜。

そして今度こそ逃がさないと誓った幹部に向けて、一斉に飛び降りた。


アルスの叫び声を合図に、崖の上から最強の4人と1匹が猛然と躍り出ました。

突然の奇襲に、呪詛を唱えていた幹部が驚愕に顔を歪める。


「な、何奴!? お前たちはあの時の……ッ! 忌々しい羽虫どもめ、返り討ちにしてくれるわ!」


しかし、地獄の特訓を経て生まれ変わった彼らの連携は、

すでに魔族の想定を遥かに超越していた。


第一陣:レイの完璧な結界 & ポテチとカルラの超火力


暴走する火竜が苦し紛れに放った極大の火炎放射が、一行を焼き尽くさんと迫る。


「もう、絶対に転ばない……! 『大魔導の守護結界』、展開!!」


レイは地獄の特訓の成果を見せ、完璧な足捌きで「守護の魔導杖」を地面に突き立てた。

瞬時に発動した頑強な半球体の結界は、火竜の猛烈な炎を完全にシャットアウト。

レイの完璧な防御が、パーティーの絶対的な安全地帯を作り出す。


「よくやったわ、レイ! さあ子猫ちゃん、派手に行くわよ!」

「ニャアアアッ!」


結界の影から飛び出したのは、カルラと巨大化したポテチの超火力コンビだ。

カルラが両手から放つ漆黒の暗黒炎と、ポテチがその巨躯から放つ紅蓮の爆炎。

二つの伝説級の炎が空中で螺旋を描いて融合し、

凄まじい熱量の熱線となって火竜を縛る黒い鎖へと直撃する。


ズガアァァァン!! と大気を震わせる爆音と共に、

火竜を苦しめていた呪詛の鎖の半分が一瞬で消し炭へと変わる。


第二陣:ゼノ & アルスの超高速マッスル連携

残る鎖とすべての元凶である魔族へ引導を渡すため、前衛の二人が影と化して戦場を疾走。


「アルス、俺の拳の風(ソニックブーム)に遅れるなよ!」

「旦那の背中、一歩も離れねぇよ!」


ゼノが「鉄砕の魔力手甲」を構えて超高速のストレートを空間に叩き込む。

その拳圧が文字通り空気の道(真空の防風林)を作り出す。

アルスはゼノが作り出した死角と風圧の影に完全に潜り込み、

神速のステップで幹部の懐へと肉薄する。


「オラァッ!!」


ゼノの渾身の手甲パンチが、火竜を縛っていた最後の鎖を粉々に粉砕!

それと同時に、鎖が弾け飛んだ瞬間を見逃さず、

アルスがゼノの影から弾丸のように飛び出しました。


「これで、本当に終わりだ――ッ!!」


幹部が防御魔法を張る暇すら与えず、アルスの「双魔鋼の短剣」が交差。

鋭い閃光が走り、魔族の胸元に刻まれた魔力の核を十文字に一刀両断。


「ぎゃあああああああ!!」


「ば、馬鹿な……我が禁忌の呪詛が、人間の、いや、筋肉の羽虫どもに……!?」


核を破壊された魔族は、断末魔の悲鳴を上げながら光の粒子となって消滅した。


呪いの鎖から解放され洗脳が解けた火竜は、ゆっくりと正気を取り戻していく。

赤く染まっていた琥珀色の瞳は元に戻り、目の前に立つ『暁の旅団』の面々を静かに見つめる。

満身創痍だった前回の出会いとは違い、今回は圧倒的な連携で自分を救い出した4人と1匹。

火竜はフッと満足げに鼻から息を漏らすと、大きく翼を広げました。


『見事だ。……我を呪縛から救ったこと、感謝する。お前たちは真の強者だ』


竜はかつての威厳を取り戻し、青空へと向かって力強く羽ばたいていきました。

その姿を見送りながら、ポテチは「ふんっ」と鼻を鳴らして元の家猫サイズに戻り、

ゼノの肩へと着地する。


「やったね、アルス! 師匠! カルラさん、ポテチ!」

「でもよかったの?結局、火竜とは戦えなかったわよ。」

「いいんじゃないか?魔族に無理やり操られてたみたいだし・・・。次あった時は・・・な」

アルスがレイに声をかけ、双剣を鞘に収め

ゼノとガシッと力強くハイタッチを交わす。


「ああ、最高の特訓の成果だったな。

さあ、帰って、ドワーフの親父さんに美味い酒でも奢ってもらうか!」


最高の連携で脅威を退けたパーティー。

彼らの賑やかでカオスな冒険譚は、この世界に新たな伝説(と筋肉の厄災)を刻み続けていくのだった。


魔族との完全決着を果たし、火竜を救い出した一行は街外れの一軒家へと凱旋した。

その夜、広いリビングでは、ドワーフの親父さんとその妻も招いての盛大な大宴会が催されていた。

テーブルの上には、レイとカルラが腕によりをかけて作った豪華な料理、

親父さんが持ち込んだ極上のドワーフ酒が並んでいる。


「ガハハハ! まさか本当にあの火竜を救い出して、魔族の野郎を消し飛ばしちまうとはな!

お前らは街の英雄だ!」


親父さんが上機嫌でゼノの背中を叩くと、


「フン、俺たちの筋肉にかかれば当然の結果だ」

と自慢の手甲を掲げて酒を煽る。

「ちょっとゼノちゃん、私にもお酒を注いで頂戴?」

カルラが妖艶に寄り添うと、無敵の師匠はまたしても顔を真っ赤にしてタジタジに。

そのゼノの右肩ではポテチが、レイから貰った極上の干し肉を目羅っている。


「なぁレイ、今度入る報酬で、裏庭に本格的な訓練場を作ろうぜ」

「いいねアルス! あ、でもカルラさんの爆破トラップだけは勘弁して……?」


レイとアルスが笑い合いグラスを合わせる。

かつて過酷な孤児院から別々に逃げ出した二人が、巡り巡って手に入れた最高の仲間、

そして温かい我が家。一軒家は、弾けるような笑い声と幸福な熱気に満たされていた。


◇

――しかし、その賑やかな宴の光景を、冷たい目で見つめる者がいる。

夜の闇に紛れ一軒家の明かりが漏れる窓を、

街外れの木々の隙間からじっと見下ろす一人の怪しい人物。

その身からは、この世のものとは思えないほど禍々しく、冷徹な魔力が微かに漏れ出ている。

人間を、ひいては世界を統べる深淵の主――『魔王』の手のものだ。


怪しい人物は、懐から不気味に明滅する漆黒の水晶を取り出し低く掠れた声で通信を始める。

「……報告いたします。北の砦の幹部を屠ったのは『暁の旅団』なる冒険者たち。

ですが……その中に、我が君が長年お探しになっていた『あの御方』がおりました。」


その者の冷酷な視線は、楽しそうに笑うレイへと向けられている。


「間違いありません。かつて人間の孤児院に紛れ込ませ、

行方知れずとなっていた魔王様の正統なる血嗣――レイ様です。

変身魔法が解け真の姿となったことで、その高貴なる魔力の波長を確認いたしました。」


怪しい人物は、不敵な笑みを浮かべながら水晶へとさらに囁きます。


「愚かな人間や裏切り者の魔族と家族ごっこに興じておられる様子。

……すべては我が君の御心のままに。レイ様を玉座へとお迎えする準備を始めます」


パチリ、と通信用の水晶が閉じられその人物は夜の霧へと溶けるように姿を消した。

最高の仲間と共に掴み取った平穏な日常。

しかし、レイの知られざる出生の秘密、そして『魔王軍』というあまりにも巨大な闇の歯車が、

彼らの知らないところで静かに回り始めていたのを――。

師匠であるゼノ。弟子のレイ。彼らはまだ気づいていなかった。


-fin-


最終章までお読みいただき、ありがとうございました。気に入っていただけたら嬉しいです。

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