↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
⭐︎第二部開始⭐︎【かみはで】神様、うちの巫女達が今日も派手すぎます。  作者: 仁波昼海
第1部第3章:弱いところも見せてこそ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
29/50

今好きになった

 ※


「う…うぅ」


 地面へ降り立った瞬間、情けない声が出た。足元が若干ふわふわする。いや、若干じゃないな。結構する。


「おにーさん大丈夫ぅ?」


 隣では三女が、そんな俺をあざとく下から覗く。


「お前はなんでそんな元気なんだよ」

「ん〜まぁexperience(経験)ってやつかな? それより顔やばいよぉ」

「か、顔?」

「二日酔いみたいだね」


 三女はそういうと、俺の顔をパシャリと一枚。にひっとスマホの横から笑顔を見せて。


「まったくぅ、あれくらいでこうなっちゃうんだねぇ」

「あれくらいじゃねえよ」

「え〜楽しかったじゃ〜ん」

「二度と乗らん」


 ポチポチしながら歩いていたから何事かと思ったが、バッと俺の目の前にスマホが現れる。


「これでおにーさんも愛されキャラだね!」

「パンダじゃねえか」


 画面の向こうには雑コラになったパンダもとい俺。俺が睨むと、彼女は肩を震わせながら手を振る。


「ごめんごめん」

「絶対思ってないだろ」


 俺はその後、彼女が顔の部分だけ切り抜くのが見えてしまった。

 まさかアイコンとかにしないよな、いくらなんでも。フラグじゃないぞ。


 ▽


 ジェットコースターを降りた後も、三女の勢いは全く衰えない。そんな彼女を運営がサポートしているんじゃないか、と疑いたくなったほどに。


「あっ」

「あ?」


「写真だ」 


 指差された先を見る。

 乗車中に撮られた記念写真が大きくモニターへ映し出されていた。俺はまじまじと表示されている人を見つめる。


「………」


 そしてすぐに目を逸らした。


「見て見て見て!」


 紗理奈が爆笑している。


「見ない」

「なんでぇ?」

「見なくていい」


 画面の中の俺は、ビビり散らかして本当に情けない顔をしていて。

 そして、俺にしか分からないぐらいの小さい距離。隣の三女の方に手を伸ばしている。

 人生でここまで情けない姿見を晒した記憶がない。手のことは分からずとも、普通に顔は恥ずかしい。


「買う?」

「買わん」

「記念に?」

「買わん」


 すると紗理奈は更に笑う。


「いやぁ〜」

「なんだ」

「人間って面白い顔できるんだねぇ」

「喧嘩売ってんのか?」


 ※


 その後も俺たちはパークを遊び尽くす。アトラクションに乗り、変な展示を見て。意味の分からないキャラクターと写真を撮らされたり。

 気付けば昼前になっていた。


「お腹空いた〜」


 紗理奈が言う。


「さっき食っただろ」

「クレープは別腹だし」

「本当に存在するのかその腹」


 すると彼女はふふーん、と胸を張った。


「それがね、女子にはあるんだよぉ」

「これが神の男女差別か」

「じゃあさりなだけかも?」


 彼女はわざとらしく自分を指差す。

 男女差別をなくしたいという意志だけは認めておこうか。そんなことを話しながら歩いていると、今度は屋台の前で足が止まった。


「あ」


 三女は俺の方を一度向いて。


「見て」

「なんだ」


「チュロス」


 そんなことは見れば分かるが。


「食べたい」

「勝手にしろよ」


 何故か俺は許可を求められていた。

 俺はこいつの親でもなければ姉妹でもないんだぞ?というか、少なくともデート相手にすることではないな。心の中でそうブツブツ呟きながらも、彼女に同伴する。

 店員さんに「カップルさんですか〜?」と一応聞かれたとは言っておこう。


 チョコの付いたチュロスを持った三女が満足そうな顔をして横を歩く。


「幸せそうだな」

「うん」


 チュロスを頬張りつつも、答えはすぐに返ってくる。


「そんな美味しいのか?それ」

「美味しくないもの食べないよぉ」


 確かに。なんか遠回しに俺がねだってるような言い草が完成してしまっているような気がするな。

 やはりこの姉妹は似ている。だから不思議とそう口から出ていた。


「いる?」

「いらん」


「一口くらい食べなよぉ」


 そう言いながら押し付けてくる。

 俺は断固として口を開けない。


「ほら」


 ぐい。


「……」


 ぐいぐい。


 面倒になった。

 俺は一口だけ頬張った。


「どう?」

「普通」


 すると三女は露骨に不満そうな顔をした。


「絶対美味しいじゃん」

「普通は美味い部類だ」

「分かりにくっ」


 三女に笑顔で怒られた。


 ▽


 そして向かったゲームコーナー。

 ここが一番の鬼門だった。


「あっ!」


 嫌な確定演出だ。


「見て見て見て!」


 指差された先には大量のぬいぐるみ。中には彼女のスマホケースにたくさん貼られていたパンダもある。


「取れそう」

「取れない」


 俺は断言する。

 すると三女は振り返って。


「まだ何もしてないじゃん」

「そういう問題じゃない」


 絶対取れない、勘が冴えに冴えまくった。

 アーム弱いとかぬいぐるみ重いとか、こういう場所のこれはそういうのが伴ってしまう。

 そして五分後。


「むぅ」


 三女は唸っていた。


「ほらな」

「まだいけるし」


 クレーンゲームの前に立つ二人の男女。

 取れていないのはもちろん当然である。


「あと一回」

「さっきも聞いた」

「次で取れるから!」

「絶対言うと思った」


 それから更に数回。

 俺たちの手には何もない。


「……」


「……」


 三女はガラスの向こうのぬいぐるみを見つめている。それはそれは悔しそうに。今日初めて見る顔だった。


「そんな欲しかったのか?」

「別に」

「嘘だな」

「別にぃ」



 俺はため息を吐いて、財布を取り出した。


「え?」

「あと、一回だけだ」


 隣にいる三女に悪戯っぽく微笑んで、俺はもう一度このゲームと闘い始めた。


 ▽


 そして数分後。

 店内に響く甲高いメロディーとおめでとう〜!、操作中煽り散らかしてきた(あくまで個人の見解)声による賞賛。


「ほら」


 隣にいる三女に手渡す。


「………」


 ぬいぐるみと俺を交互に見つめる。


「なんだよ、まさかパンダ取れとか言うんじゃないだろうな」

「いや」


 そう、俺が取ったのは熊。彼女にあげたかったのはパンダだったが、これに関してはやむを得なかった。


「取れるんだ」


 心底驚いたように呟く。


「一回で?」

「運だろ」

「むかつくぅ」


 理不尽だった。

 だが、そう言いながらも、三女はぬいぐるみを抱える。そして嬉しそうにこちらを見て。


「でもねおにーさん。私、熊も好きなんだよ?」

「本当か?」

「うん、今好きになった」


 見せられる優しい笑顔に、俺は再びため息をつく。

 危なかった。思わず笑みがこぼれるくらいには、相当破壊的な笑顔だった。


 ※


 それからまたしばらく歩き回る。人混みは朝よりずっと増えていた。

 大学生集団、動画配信者も見える。気付けばどこも賑やかだ。


「あ」


 隣からまた嫌な声。


「どうした」

「ちょっと待ってて」


 三女が何かを見つけたらしい。遠くを指差している。


「すぐ戻るから」


 そう言って人混みの中へ彼女は入っていく。俺は近くのベンチへ腰を下ろす。

 まあ数分だろう。そう思ってスマホを見ていた。五分、十分、十五分……。


「……」


 流石に遅い。俺は顔を上げて周囲を見渡す。目立つ赤紫の髪は見当たらない。


「おいおい……」


 悪い予感がする。あいつはきっと、迷子になるようなタイプじゃない。

 俺は立ち上がり、さっきよりも更に増えた人混みの方へ視線を向けた。

皆様、いつも有難うございます。

感想、誤字報告など励みになっております。

まだしてないよって方は、評価、ブクマの方是非。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
読了しました。 ほっこりするようなデート風景、最高ですね! と思っていたら、突然の暗雲!? 次回が気になります!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。