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十四話目

「おにぃ、今日は私の為に色々と有難うございます」


 帰り道でのこと。歩きながら、体は正面を向きつつ、スノウは顔をこちらに向けてお礼を述べてきた。


「スノウは気にしないでよ。学園長の言う通り、俺にとってもE組はそんな居心地悪くなさそうな場所だったよ」


「まぁ……それは良かったです」


 ホッとした様子のスノウに俺はつこう続けた。


「ちゃんと正面から俺のことを試そうとしてくる奴らだったよ。扉を開けたらナイフのような魔法を放ってくるし、暗器を隠しながら握手を求めてきたり……」


「おにぃにそんなことを……やはり……」


 すぅっとスノウの周囲の温度が下がっていく……俺も悪ふざけが過ぎたか。本当のこととはいえ、聞くだけなら物騒な内容だもんな。


「あ、スマン。そんなつもりで言ったんじゃ無くてな。俺らのことを正面から罵っておいて、直接手を出さない、もしくは影で色々動く奴らばっかでな。それに比べたらスッキリしてて居心地がいい。本気で俺のことを殺そうとしていた訳じゃないから。ナイフのような魔法だって紙一枚分、俺から外れてたしな」


 暗器の方は毒が仕込まれていたとして、どんな毒かわからないからなんとも言えないけどな。ってスノウに言う必要はないな。


「おにぃがそう仰るなら……」


 スノウはそこまで語ると、俺の目の前に飛び出て、前かがみになって下から俺を覗き込むように見てきた。


「でもでも! 困ったことがあったら何でも仰って下さいね!」


「そうだな、じゃあ一つスノウに聞きたいことがある」


「一つだけじゃなくて、いくつでもお尋ね下さい!」


「あはは、じゃあ遠慮なく……今度一緒に戦うHOTランキング一位と二位はどんな奴なんだ?」


 するとスノウは俺の横を歩きながら、空を見上げて考えながら話し出す。


「ええと、一位はブルー・ラビットという方で、二位はフェンブレン・ダラーボンという方です。これは私が学園に入ってから変わってません」


「つまり先日卒業した年上の先輩たちを差し置いて、学園一位と二位の座にずっと居るということか……相当な実力者だな」


「ええ、年齢という差を埋めて余りある才能があるということです」


 基本的に年長者の方が強い。卒業した後は当然実戦経験等で変わってはくるが、学園に通っている年齢だとそうなるのは当然のこと。その年齢の差を逆転出来るというのは、とんでもない人物だと言うのがわかる。

 だが……それはスノウも一緒だ。


「そんな中、十位以内に入ってくるスノウも相当な実力者だな。俺は妹が優秀で誇りに思うよ」


「そ、そんな……」


「本心からだよ。スノウは本当に凄いな」


 しかも今日、俺にかけていた魔法を解いたことでスノウの魔法力は爆発的に跳ね上がった。今のスノウなら、その二人ですら凌げるかもしれない。


「あ、有難うございます……あ、そうそう! 二人の話を!」


 と、スノウは照れ隠しに話を続けだした。


「まず二位のフェンブレンさんですが……彼は全ての分野において万年二位の男と評されています」


「万年二位だって? 剣術も槍術も体術も……魔法も?」


「ええ、魔法も細かく、四属性の魔法も補助魔法も……全てにおいて、です」


 俺の問いに、スノウはコクリと一つ頷いてきた。


「それは凄いな。普通はどれかが得意だと、どれかが不得手になる。それを二位という高水準で纏めるなんて、総合で一位か二位になるのも当然か。一位以外は評価しない奴もいるにはいるが、どんな分野も二位なんて総合力じゃ圧倒的に高いのは目に見えている」


「そうです。そんな彼は二つ名で完璧な二番手パーフェクト・ナンバーツーと呼ばれてます」


「二つ名か。その二つ名で呼ばれて本人が否定していないであろうことを考えると……」


「ええ、本人はわざと(・・・)その場に留まっていると考えております。全ての分野にとは言わないが、実際はどれかは一位になれる力はあるのでは?」


 一位を取ることよりも、狙って二位を取ることの方がよっぽど大変だ。三位を上回り、一位にはならない所を狙ってとる。それは一位ですら取れることと同じことだと思う。そして、スノウも、またそれ以外の評価も同じだということ。そして、それを本人は否定していない。


「やはりスノウもそう思うか。実際の実力は未知数なのかもな」


「ええ、次に一位のブルーさんですが、彼は自称努力(・・)の才能を持っているそうです」


「自称……とは……」


「ええ、本人は努力によってその力を得ていると公言しておりますが、他に何か秘密があるのではないか? と思っております」


「なるほど……」


 俺は歩きつつ、腕を組んで頷いた。努力自体ではない所に強さの秘密がある。ということか。


「努力をしていないとは思いませんが……そもそも知識に関しては教師も凌ぐ物をお持ちです。どうすれば力が付くとか、そちらの知識もお持ちのようです。努力云々ではなく、よっぽどそちらの力の方がブルーさんの力の源なのでは? こちらは本人には伝わってませんが、影で全てを知るもの(アルヴィース)と呼ぶ者もおります」


 ふむ。なるほど。努力そのものよりもそっちの知識の方が本質のようだ。しかし、本人は努力のおかげだと公言しているということは、隠しているのか、本当に努力のおかげだと思っているバカかどっちかなのだろうな。

 しかし……


「まぁ何を努力しても、身につかない俺にとっては羨ましいばかりだ」


 俺には重力を操る魔法しか才能が無い。努力したところで何も身につくことなどない。単純に羨ましいと思った。


「何を仰いますか! 私はおにぃの努力を間近でずっと拝見しております! おにぃは今日、私が魔法を解くまでずっと御自身に魔法をかけ続けていたじゃありませんか! 魔法力を常に消費し続け、自身に負荷をかけ続けるなんて、おにぃの努力の前ではどんな努力も無いと同義です!」


 魔法を解くまで……ってスノウはもしかしたら誤解をしているのかもしれないけど……

 そこは言及してもしょうがないか。


「まぁ、スノウにそう言われて悪い気はないよ。有難うね」


 と、俺はスノウの頭に軽く手を添えた。スノウは嬉しそうな笑みを浮かべながら上目遣いで俺に尋ねてくる。


「どうですか? お二人と上手く戦えそうですか?」


「話を聞く限りどっちも総合的なタイプのようだね。ま、なんとかやるしかないだろ」


「おにぃがそう言うなら……」


 そんな話をしているとベルウノ家の門に着いた。俺は門を開けて、スノウを中に入るように促す。


「ほら、家に着いたよ。スノウは自分の家におかえり?」


「はい……かしこまりました」


 スノウは何か言いたげにしながらも屋敷に向かって歩いていった。俺はその姿を見届けて、小屋に向かっていった。

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