表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白金の乙女  作者: 夢野 蔵
第四章
PR
79/113

第七十七話

 私は改めて、自分を取り囲む少女達を観察します。

 少女達の制服の胸元のタイは、緑色をしています。

 私のタイは赤色をしていて、同級生も赤でした。

 もしかしたら、学年毎にタイの色が別れているのかと思われます。

 そして少女達の髪は、それぞれ緑、黄、赤の薄い色をしています。

 三人並ぶと、信号機みたいだと思ってしまうのは不謹慎でしょうか?


「どういうつもりなの?」

「黙っていないで、何か言いなさいよ!」


 先程から、真っ先に口を開くのは黄色の髪の少女。

 そしてそれに追従するのは、赤い髪の少女です。


(……うーん)


 本人達は凄んでいるつもりなのかもしれませんが、ナナやセンリに比べると全然怖くありません。

 しかしいつまでもこのままでは、私がお昼を食べる時間が無くなってしまいます。

 私は口を開きます。


「あの……私、何かしましたか?」


 ここは素直に聞いてみます。

 すると――


「――なっ!?」


 絶句する黄と赤の少女。

 先程から主語を付けて話さないので、私には何の事を言っているのかさっぱり分かっていません。


「いいわ、単刀直入に確認するわ」


 これまで黙っていた緑の少女が口を開きます。

 ちなみに私を校舎裏まで連れてきたのも、この少女です。


「あなた、『白』様とはどういう関係なの?」

「『白』様?」


 私は首を傾げます。

 『白』様……一体誰の事でしょうか?


「惚けないで!ミノリ様のことよ!」

「ミノリ姉様?」


 緑髪の少女が怒鳴ります。

 もしかしてミノリの髪が白いから、『白』様なのでしょうか。


「あんなに親しそうにして、一体どういう関係なの!?」


 その言葉にピンと来ます。

 ははーん。さてはこの娘達はミノリのことが好きで、突然ミノリの横に現れた娘――つまり私に嫉妬していると思われます。

 となれば話は簡単です。

 要は誤解を解いてあげればいいのです。


「ミノリ姉様とは、寮の部屋が一緒なだけですよ。確かにこの間から一緒にいましたけど、それは私に話の出来る友達が……居ないからです……」


 あー……なんか自分で言っていて、落ち込んできました。

 やっぱり同級生の友達が欲しいです。

 まぁとにかく、これで誤解も解ける筈でしょう。

 そう思っていると、


「嘘よっ!!」


 緑の少女が勢い良く、ドンと壁に片手を突きます。


「ただのルームメイトなら、『お姉様』なんて呼び方はしないわっ!」

「それに、あんな如何わしい事までしておいて、すっ呆ける気かしらっ!?」

「そうよそうよ!」


 他の二人も口を開きます。

 どうやら私の答えでは、納得できないみたいです。

 それにしても、二つキーワードが飛び出しましたね。

 お姉様という呼び方?如何わしい行為?とりあえず気になった方から確認してみましょう。


「如何わしい行為って何ですか?」


 私は、その言葉を口にした黄髪の少女に訊ねます。


「え?」

「どんなことをしたんですか?」

「そ、それは……」


 黄髪の少女は、ごにょごにょと聞こえない声で何かを言います。


「聞こえません。しっかりと話してくれないと分からないのですが」

「だ、だから……」


 再び、ごにょごにょと呟きます。

 そしてその顔色はどんどん赤く染まっていき、やがて――


「私には言えないわっ!」


 わっと手で顔を覆って、しゃがみ込んでしまいます。

 こちらからは真っ赤になった耳が見えます。

 彼女が何を話そうとしたかは知りませんが、どうやら思ったよりも初心だったみたいです。


「いい加減にしなさいっ!」


 緑髪の少女が、再び壁に手を突きます。

 思ったより黄髪の少女の反応が良かったので、ついからかってしまいました。

 しかし、どうしたのものでしょうか?

 ミノリがこの学院においてどういうポジションなのか分かってたいないめ、彼女達を納得させるのは難しいです。

 そもそもこの少女達は冷静さを見失っているため、私が何て説明しようと聞く耳は持たないと思われます。

 だとすればここは一度場を改めて、また今度話をした方が良いかもしれませんね。

 そんな事を考えていると、


 くぅー。


 私のお腹の音が鳴ります。


(……あ)


 私は恥ずかしさのために慌ててお腹を押さえますが、少女達には違う風に見えたみたいです。


「――っ、馬鹿にしてっ!」


 壁を突いた手とは反対側の、もう片方の手を振り上げる緑の少女。

 その手が、私の頬を叩こうと振り落とされる前に――


「――何をしているのかしら?」


 少女達の後ろから、凛とした声が聞こえます。

 振り向く緑髪の少女。

 その先に立っていたのは、燃える様な真っ赤な髪と瞳の少女。

 私が一昨日に、街でぶつかった少女――ハルカでした。


「ハルカ様!?」


 ハルカの出現に、動揺する少女達。


「あなた達四年生ね。それにそっちの娘は……一年生と。上級生が三人掛かりで、下級生を囲んで何をしているのかしら?」

「それは……」


 口を噤む、緑髪の少女。

 この状況では、言い訳のしようが無いのでしょう。


「まさか同じ学院内に、弱い者虐めをする生徒が居たなんて。貴女達、恥を知りなさいっ!」

「すみませんでした」


 慌てて頭を下げる三人の少女達。


「この事はしっかりと学院に報告致しますわ。場合によっては反省房送りも覚悟なさい」


 ハルカのその言葉に、びくっと身体を震わせる少女達。


「貴女、大丈夫かしら。……あら、貴女は」


 こちらに近寄ってくるハルカ。

 どうやら私の事を覚えていたみたいです。


「ノノと申します。お陰様で助かりました。ありがとうございます」


 私はお礼の言葉を伝えます。


「どうやら無事みたいね」

「はい。……あの、反省房というのは?」

「この学院の規律を乱したり、問題を起こした生徒が入る所よ。少なくとも三日は、一人きりの部屋で反省して貰う事になると思うわ」


 ハルカは三人の少女達に視線を移します。

 少女達は一様に顔を青くしています。そして中には、シクシクと泣き出す娘も居ます。

 少女達の反応から察するに、あまり居心地の良い場所ではないみたいです。

 確かに自業自得とはいえばそれまでなのですが、少し後味が悪く感じます。


「あの、私は気にしていないので、反省房行きは無かったことにできませんか?」

「私に見なかった振りをしろと言うのかしら?」

「いえ、そんな事は。しかし彼女達も十分反省しているみたいですし、私も何かされた訳ではありませんので、どうかお願いします」


 難しい顔をするハルカに、私は頭を下げます。

 ハルカは少しばかり、何かを考えるように沈黙していましたが、やがて口を開きます。


「……分かりましたわ。顔を上げなさい」

「ありがとうございます」


 そしてハルカは少女達に向き合うと言います。


「貴女達、この娘に感謝することね。ただし、二度目は無いわよ。それを肝に銘じておきなさい!」

「……はい」


 頷く三人の少女達。

 赤と黄の少女はすまなさそうに、私に向かってペコリと頭を下げます。

 緑髪の少女だけは、私と目が合うと何か言いたげそうな顔をしていましたが、そのまま他の二人と共に駆け足で去っていきました。


「もう一つだけ聞いてもいいですか?」

「何かしら?」

「この学院では、自分より上級生の生徒のことを何て呼ぶのですか?」

「……?」

「えと、例えば『お姉様』と呼んだりは……?」

「姉妹とか、とても親しい仲だったら分かるけど、普通は先輩とかかしらね」


 不思議そうな顔をするハルカ。


 ……くそぅ!コノカに騙されましたっ!!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ