第25話 : そこにいたのはティラノサウルスではなかった!?探検隊の行手に現れた超巨大不明生物の正体とは!?!
これは一方、島の沖
「見えてきたな兄貴!」
「なんだよ、はしゃいでんなお前」
そこには、異世界には不釣り合いな巨大な船があった。
「はしゃぐのも無理無いだろ!?
生きてる恐竜が見れるんだぞ!?!」
「俺はできれば会いたくねぇな。
クマでもこの銃じゃストッピングパワー不足なんだぜ?」
それは、原子力空母。
ご丁寧に『CVN-88』と大きく船体に書かれている。
「へ!そんな場所に可愛い歳下の女の子が挑んでんだぜ?
負けてらんねぇよ、男だし!!」
「ったく、俺ら海軍まで巻き込みやがってよ。
巻き込まれた上も信じられ……うぉ!!」
空母の横を、プテラノドンが並走して飛んでいる。
そのプテラノドンが突然羽ばたいて高度を上げた瞬間、ザパンと波をかき分けて巨大なティロサウルスが口を開けて飛び出して来た。
「OK!!
ようこそジュラシック・ワールドへ!!
まぁ、ここは白亜紀の海だけどな!!
待ってろ名香代ー!!先に新種見つけたらタダじゃおかねーぞー!!!」
そして、巨大な原子力空母が島へと近づいていく。
***
さて、この島の探検にでて2日目の早朝
日の出の時刻となりました
異世界へ恐竜の研究に来た天才美少女古生物学者の小平名香代ちゃんの目の前には、晴れた空に綺麗な朝日がありました。
「おー……この丘は良い景色ですねー!」
実はすでに出発していまして、もう雪が積もるゾーンとそうではない場所が見える丘の上にいました。
「本当にハッキリと境目が見えやがるな。
まさしくここは人工の自然か」
「地図で言えば、異常震域の上、島の中心ですね。
……ええと……」
…………
「どうした?」
「…………」
言葉にならない光景なので、指を刺すしかないんです。
……震える指で、見えたソレを見てもらうしか。
「────は?」
まず、見えたのは角竜類の、つまりトリケラトプスたちの大移動。
いえ、他にもハドロサウルスの仲間か、ぱっと見分かるのはパラサウロロフスという有名な恐竜の群れや、鈍重なはずのアンキロサウルス達の逃げる姿。
次に、無惨な巨大な肉食恐竜の死骸達。
それは、白亜紀の極まった肉食恐竜達の頂点、ティラノサウルス。少なくともその科に属する恐竜達の……無惨に打ち砕かれた遺体達。
その中心地に、ソレがいたんです。
いえ、一瞬気づきませんでした。
背景と同化……いえ、背景というべきか……
「アレは……」
「なんだ!?なんか知ってるのか、名香代!?」
「アレは───アレは一体なんですか……!?」
ソレは、恐竜と呼ぶにはあまりにも巨大でした。
長く、分厚く、そして硬い。
そして何より、重い。
それはまさに『竜脚系類』でした。
そしておそらくは、最大最重の『ティタノサウルス系類』でした。
────ただひたすらに規格外すぎる大きさというだけで。
「いや本当、アレ一体なんなんです……!?」
「専門家が知らないもん誰も知らないだろ……!」
私は、その全く見たことがない恐竜という存在に、恐怖とも逆に喜びともつかない謎の感情を抱きました。
「……なんなんですマジでアレは……?」
「オイオイ、先生が知らんってなんだよ?」
「アンタが知らないって、ただ事じゃないわよ?」
「私だって知らない恐竜ぐらいいますけど、まさか本当にあんな特徴的で知らない恐竜がいると思いませんもん……!!」
何がすごいって、大きさがすごい。
「アレって、ブラキオサウルスとかそういう奴じゃないのか先生?」
「アルトリーシャさん、ブラキオサウルスはもっと腕は長く、あの身体のサイズの1/4ですって」
どう見ても、周りの恐竜と比べてあまりにも大きい。
80……陸上で80m?いやもしや100?100ぅ!?!
だとしたら、陸上で存在できる最大サイズを超えているか、アレがこの世に存在するサイズの限界値ってことになりますよ!!
「竜脚類は、巨大な体に長い首と尻尾の恐竜達であり、発生年代はなんと三畳紀後期という恐竜の種類の中でも最も早く、絶滅も近年では白亜紀末期までという、身体も歴史も長い恐竜の一つです。
近年では、恐竜の種類が四つ系統に分かれていると言われる研究もあり、そのうちの一つの系統であり、
特徴はご覧の通り、とにもかくにも巨大な身体です。
ジュラ紀の恐竜で言えば、他がどんなに巨大でも10m程度の中、彼らはすでに25mどころか40mという途轍もない巨大な体を持っていました」
「……どう見ても、アレは100mはあるぞ?」
「そう、そんな巨体の竜脚類は、
この世の誰も見たことがないんですよ」
見てくださいよ、巨大な木がまるで低木みたいに一本丸ごと噛みついて、一瞬で葉っぱを
アレじゃあ、森が一瞬で禿げるでしょうね。
「……いつまでも分からないで済ますのもアレなので、ちょっと観察してみますが、
……うーん、観察した上でなんでしょ。
嫌なことしか分からない」
ライフルのスコープ越しに見る規格外な超巨大竜脚類君。
その姿はあまりにも……ああ、嫌な感じ。
「何よ嫌なことって?」
「…………竜脚類最長、はジュラ紀後期ディプロドクス亜科の『スーパーサウルス』。全長は40mですが、ディプロドクスは基本的には首も尻尾も細めで長い方なんです。なので重量はさほど……と言っても30tぐらいですかね?
……でも彼は多分、『ティタノサウルス類』なんですよ」
「ティタノサウルス類?」
「ティタノサウルス類は、白亜紀以降に現れた超巨大竜脚類の一群です。
ただ長いだけではなく、重く、そして硬い。
最大全長にして最重量級の『アルゼンチノサウルス』をはじめとして、『パタゴティタン』『アラモサウルス』と言った超弩級の恐竜達が勢揃いするグループなのですけれど……」
……もう何度目の同じことを言うんでしょう?
「にしたって、常識はずれの大きさすぎる」
とにかく、その一言に尽きます。
その巨大な竜脚類は、かの恐竜の王とも言えるティラノサウルスの死骸を気にせず踏み抜いて歩き、禿げ上がった木をかき分け新しい森林にその長い首を伸ばします。
「あれじゃあ、1日で森が消える。
……故郷の森だと考えると、恐怖だ」
「……ウッ!見てらんない……!!」
そう言うのは、エルフのお二人。
「恐怖だよそりゃあな。
……俺が撃ち取りかった、恐竜の王が踏みつけられているなんてな」
隣の、あまりに悔しそうなバートさんの言葉。
気のせいか、あの恐竜を睨む目がだいぶ怖いです。
「…………しかし、こうも伝承通りになるとは」
そして、ふとオリガさんがそう呟きます。
「じゃあ、あれがババヤガさんが言っていた?」
「どう見ても『大きすぎるもの』でしょう?」
「そりゃ確かに」
100m級は予想外でしたけれど。
「……まずは、味方と合流をして色々考えましょうか?」
「それが1番か……いや待った!」
ふと、静かにと言う動作をするバートさん。
一瞬みんなが黙った時、ふと近くの雪解けした水たまりからぽちゃんと音が。
水たまりに、何か波紋が広がって震えている様子が映ります。
ズン、と言う音が、どこかから聞こえ始めてきました。
「……足音。大きい」
「まだそんな近くではないな」
「…………いえ、彼らはそういう偽装が上手いのです」
ふと、オリガさんがそう言った時、パキパキとこの場のすぐ近くの木々の間から枝を踏みつける音、そして森が掻き分けられる様子が見えてきました。
「……バートさん、銃を構えて」
「オイオイ、まさか……来たのか!?」
「予想通りだった。
思ったより足音が小さい」
等々、出会う事になりそうです。
世界一、有名な恐竜と。
パキパキ……
丘の近くの森の中、木々をかき分けて何か巨大なものが近づいてきています。
「……なんだ、このプレッシャーは……?
震えているのか、私が?」
「オイオイ、勇者様よ?冗談じゃねぇぞ。
俺なんか、漏らさないだけで褒めて欲しいぐらいだからな……!!」
「……なんだ、怖がっている、のか?
私が……?」
「分かるぞ。
俺も、恐怖を感じている……!」
「何よ、これ?
あの暗黒竜相手でも、こんな感覚覚えた事ないわよ?」
後ろでそんな声が聞こえていますが、そのですね。
「……………………」
今、1番恐怖しているのが、多分私なんです。
ヒュー、ヒューと呼吸すら苦しい。何故か冷や汗が止まらない。気温のせいじゃない。
私だけじゃない。隣のバートさんも、ずっと、ずっと震えている……!!
(遺伝子レベルで、恐怖しているみたい……!!)
哺乳類の歴史は古く、恐竜とは長い付き合いなのはあまり知られていません。
少なくとも、その哺乳類の内霊長類は、明確な最古の化石が見つかったのは6550万年前。
しかし、予想では8000万年前からいたとされる小さな猿は、
その生息地に、かの『恐竜の王』がいたとされます。
もしも、私達の先祖たるプルガトリウスが、かの姿をずっと木の上から見ていたとすれば?
小さすぎて、喰われることもない。
しかし、ずっと木下で、自分より遥かに巨大な相手を狩る巨大な王を見ていたら?
ありえません。その時代の恐怖が、遺伝子に刻まれて受け継がれていると?
ありえません。科学的じゃない。恐怖が遺伝子に刻まれて受け継がれて、最も進化的な旧世界サルグループの我々人類にも受け継がれていると??
滅んでなお、『暴君竜』に恐怖している?
科学的じゃないけれど、心がそうだと言っている。
だからこそ、気づいた。
ズン、という足音が、背後から聞こえた事に
───それは、世界一有名な恐竜。
それは、今なお見つかって以来ずっと、恐竜の中でも『最強』にして『最後の王』と謳われる存在。
でも、私は彼らの真の恐怖を知っている。
彼らは、獣脚類恐竜の中でも最も分厚く、もっとも頑強な身体、そして古今東西あらゆる生物達の中で最強の咬合力を持っている。
一見すれば全てを正面からねじ伏せる威風堂々とした頂点捕食者。
しかし、相対するエサもまた強敵。
正面から貫く三本角、トリケラトプス
強固な装甲を持ちながら能動的にスネを砕く攻撃力もあるアンキロサウルス
食う側と同じ巨体でありながら、最速の逃げ足を持つエドモントサウルス
30mもの巨体を持つ、アラモサウルス
彼らを相手に、かの恐竜はどう戦ったのか?
「…………ふぅー……!!」
答えは簡単。奇襲を仕掛けた。
この恐竜は、正面から戦っても強いにもかかわらず、速さを生む長く特殊な後ろ脚の構造は足音を消す効果があったんです。
その巨体のせいで走れない、とは言われていましたが、おそらく最強の咬合力を活かせる機動力や瞬発力があったはず。
そして、巨体といえど古代の木々や草むらに隠れて待ち伏せをする環境はあった。
そして近年、まだ根拠が薄い説とはいえ、
ある程度の社会性と、群れでの狩りを行える可能性があった。
「…………冗談じゃねぇや。
これが……!!」
頭の中で解説して、やっと私は冷静になれました。
やっと、今背後にかの恐竜がいて、
今、その鼻先は私の顔のすぐ横にあるという事実に向き合えました。
「動かないで……!!
この距離はもう逃げられない……!!」
グルルルル……
低い唸り声と共に、正面で恐らくわざと存在をアピールしていた仲間が、ようやく木々をかき分けて出てきます。
大小、混合の群れが。
そして、私達をかの恐竜の小型の若い個体が取り囲みます。
グガガガガ!
グググ……!!
取り囲んで、そんな鳴き声を出して初めて、後ろにいた個体がゆっくりこちらの正面に回ってきます。
グァァ、ガガガガ、グァンァン
まるで、指示だ。
第一印象がそうでした。
「…………小さな個体が、大型個体相手への威嚇にはならない。だからこそ群れでの狩りは根拠がない、ですか。
はは……ずっと偵察してた、見てた。
今も指示を飛ばしていた。
……脳の構造的に、社会性はない?
……そうか、あなた方には『言葉があった』……!!」
巨大な頭、巨大な身体。意外とすらっと長い後ろ脚と、反面小さな二本指の前脚。
それは、末期白亜紀の王。
小型で鳥に近いコエルロサウルス類恐竜最大の異端。
学名『ティラノサウルス・レックス』
世界一有名な、暴君竜。
その群れが、統率された動きで私達を包囲していた。
若年時代から最強の肉食恐竜故に、小型肉食恐竜以外は駆逐したと言われる若い個体が私達を囲み、
誰もが一目見て最強と分かる巨体の大人が、我々を見下ろす。
「───言葉が、あった。
ふぅむ……通じないだけで、あなた達尻尾がない小さい者は、何故か……」
でも1番衝撃的だったのは、人語でこちらにティラノサウルスが話しかけてきた事でした。
「私達をどういうわけか、愚かだと勘違いをするんですよねぇ?」
「……」
「ああ、その顔。
しゃべった。話せた?驚いてますよねぇ、いやぁみんなそんな顔を見せるんですよ。
おかしな話というか……ねぇ、小さい人?
あなた方、方言?別の言語?とにかく、言葉がいくつかあるから、混乱するから……
こういう、便利なモノ……作ったんでしょう?」
ふと、隣にどさりと投げられてきたもの。
「ひっ!?」
人の腕の骨。腕輪型の……翻訳魔法の施されてるものがハマったもの。
「ああ、勘違いしないで?
先に、手を出したのは彼らだった。
だから、まぁ小腹を満たしたというだけで……むしろこっちは感謝してるんですよ?
意外と、こっちも似た顔してる割に、言葉が通じない相手が多すぎて多すぎて」
「……翻訳魔法の腕輪か、あるいは何かを人ごと腹に……?」
恐ろしい、けどそう相手はそういう生態の生物だと納得できる推理に、まるでそうだとでも言いたげに目の前のティラノサウルスは目を細めてこちらに顔を向けます。
「胃の中に石を入れるのと変わらない労力で、誰でも話せるようになった。
感謝してますよ?便利に使わせてもらって」
「…………そうか、あなたが最近レズィナ族の中でも頭角を表している群れの長か」
オリガさんの言葉に、どこか笑ってるかのような雰囲気を醸し出して視線を向けるティラノサウルス個体。
「あなた方、雪山の賢者はは……
滅多に出てこない、あそこの巨大な黒いモノよりも珍しい存在。
付き従う毛むくじゃらか翼の化け物でも脅すかと考えても見たんですがぁ……
それをしたら、流石に怒るでしょう?
話し合いがしたいのに」
「話し合い?」
一度、そのティラノサウルスは我々を舐め回すように見て、匂いを嗅いで、耳を近づける。
ティラノサウルスの感覚は、全てが鋭く高精度。
そして、思ったより知能が高いのなら、表情や体臭の変化、場合によっては心拍数から有利な交渉を考えているという事。
「あの巨大なバケモノ、
狩りたいので、協力してくれません?」
そして、とんでもない提案がされたのです
***
一方その頃、島の外の海
空母の上に並んだ垂直離着陸機とヘリコプター達が、一斉にプロペラの回転数を上げていく。
「よし行くぞ!!
失われた世界へ上陸だ!!」
そして、それらが一斉に飛び立っていくのだった。
***




