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36話 ケッセリング

カルサア渓谷を通過し、その後も道を舗装しながら時に橋を架け、時にトンネルを掘りながら、これまでの南部国境の町までの道のりを大幅に短縮し、途中、第五師団と合流し2万4千となった軍と共に会談日時まであと2日の夕方に国境の町へ到着した。


兵士達には国境の『町』なので英気を養う場所はないが明日1日の休息を出して、僕達は街や町に居る時に恒例となった会食に向かう。


この町と周辺の長は元は『夜と月の王国』の下級貴族であり、上司の不始末の責任を被せられて、処刑されそうになって亡命して来たケッセリングという名のノーブルバンパイアだそうだ。


町の中央にある領館に入ると、見た目は30歳前という落ち着いた青年が先頭で恭しく礼をして出迎えた。


「皆様方、ようこそいらっしゃいました。

私、この町並びに周辺を統轄させていただいておりますケッセリングと申します」


僕達3姉弟が挨拶を返し、続いてグレンディルが、

「久しぶりですな、ケッセリング殿。

早速ですが向こうの状況を聞かせていただいてもよろしいですか?」


「分かりました。では夕食の前に一通りお話ししますのでこちらへどうぞ」

グレンディルの求めに応じて、ケッセリングが一同が集まれる部屋へと案内する。


恐らくここで会食が行われるだろう部屋で席に着き、全員が着席したのを見計らってケッセリングが口を開く。

「先日詰問状を持った使者からの伝達により、『夜と月の王国』の動向を探っておりましたが、第一王子は自派閥である王国北部の兵をかき集めております。

それにラムケ公爵の軍が合流し、およそ3万5千前後が今回出てくるものと思われます」


「こちらより1万近く多いですな…南部から兵が来る様子はありますか?」

グレンディルが問いかけると、

「第一王子があくまで自分で片付けて手柄にしたい事と、期限が短く準備が難しいためか、南部で兵を動員する動きはあまり見られない、との報告が来ております」

とケッセリングは答えた。


「あまりという事は、少しは動員されている訳ですよね?目的は何か分かりますか?」

引っ掛かりを覚えた僕が尋ねると、

「これは私の推測なのですが、南部で動員されているのは第二王子派の中でも国王との繋がりが深い者達ですので、第一王子が出陣している間に第一王子派の拠点を押さえるつもりではないかと…」


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