2話 望楼にて②
「やあ、姉さん。…ひょっとして誰か仕掛けて来るの?」
「そうなの。南のラムケ公爵がまだ旗幟を明らかにしてなかったでしょう?
彼が『夜と月の王国』から刺客を引き込んで、明日の夜に襲撃に来るのが視えたの」
「そうなると、来るのはエルダーバンパイアになるかな?」
「明日は満月だから、【血の隷属】を使って私達を傀儡にしようという魂胆ね」
僕は少し考え、
「誰が来るのかも分かる?」
そう姉に訊くと
「調べたらオットー・スコルツという第一王子の側近で、側近なのだけど随分汚れ仕事ばかりさせられているみたいよ」
「いざという時は切り捨てられそうだね…分かった、アル達と一緒に話し合おう」
「じゃあ、アル達を執務室に連れて行くから、また後でね」
そう言うと、姉は弟達を探しに降りていった。
その後ろ姿を見ながら伯父が、
「今の話は【未来視】で見た事なのだね。そんなに色々判るとは凄いものだね。
しかし、レティシアちゃ…レティシアがあんなに綺麗だとは思ってなかったよ。魔道具で平凡な見た目に変えていたとは思いもよらなかったよ」
と言った。
確かに、長身にきめ細やかなプラチナの髪に碧の目、芸術品の様に整った顔立ち、まだ13だから発展途上とは言え、抜群のプロポーションの身体を持つ者は滅多にいるものではない。
「もし姿を変えていなかったら、好色なかの王様に無理矢理奪われるのは目に見えてましたからね。対策は早めにやっておくに限ります」
僕がそう言うと、伯父は遠くを見ながら、
「昔はあそこまで酷くは無かったのだが、あの男が陛下に取り入ってから全てが狂ってしまったな…いや、最早違う世界なのだから言っても詮無い事だが…」
言葉を切ってこちらに振り向き、
「いやすまない、つい愚痴になってしまったな。そろそろ執務室に行った方が良いかな」
「そうですね、行くとしましょう」
こうして2人で望楼を降りて行った。




