19話 野営
道路から外れて、草原に荷駄に積んである要所をステンレスで補強された大きな箱(空間拡張されたもの)から野営用大型テントを次々と取り出し、僕達が【(中級魔法)アースウォール】で5メートル程の壁を造ってその周りを囲み、野営地を形成した。
鍋に【ピュア・ウオーター】で水を出して具材を入れ、魔力を込めると高温になる石を入れてしばらく煮ると夕食が出来る。
野営地のあちこちから良い匂いが立ち昇って風に流され…匂いに釣られてフレイムリザード達が集まって来た。
そのフレイムリザード達を各分隊から選出されていた火属性に強い者達があっさりと倒し、その場で解体し各自で分配して分隊に戻って行った。
(前の世界ならそこそこ強い部類に入るフレイムリザードが完全に雑魚扱いか…さすが『絶望の大陸』と言われるだけはあるね)
わざわざ壁の外で食事を作って何をするのか興味を持った僕達は、その結果の光景を【(中級魔法)ロケーション】で見ながら思った。
「あのまま残ったモノを放置していると、それ目当てに更に魔獣とかが寄ってくると思うのだけど、埋めたりしなくていいのかしら?」
小首を傾げながら姉上が疑問を口にした。
「寄ってきたモノも倒して食糧とかにするんじゃないの?」
それに食事を食べ終わったアルが答えた時、
「その通りですな。狙いはトレンチワームでしょうが、これだけ人数が居るとなかなか寄って来ないでしょうから、来るとすればヘルハウンドでしょう。ただ、ヘルハウンドはあまり美味しくないので、放置して今日は終わりでしょう」
天幕に入って来たグレンディルが途中から話を聞いていた様で、解説しながらテーブルの前に立った。
そしておもむろに、
「明日の事ですが、ボルネ大河を渡河するのに本当に船を集めなくて良かったのですか?」
と訊いてきた。