34.ひらひらがハタハタしてキラキラは素敵要素
サンルームからテラスに出て私が見たもの。
ルーシェさんが、長い翠の髪と魔道士のローブやガウンコートを翻し、時折魔力弾を飛ばしながら、護衛騎士の一人と、剣で試合ってたのだ。はうっ♡
こーゆー絵好き♡
て言うか、お国一の魔道士だと聞いたけど、剣術もいけるんだ!?
剣道やフェンシングと違って、もっと実用的な、殺りに行く感じの重い剣。にも拘わらず、演武か映画のワンシーンのようにキラキラして見えた。
ヤバい。惚れそうやん。いや、惚れへんけど。
でも、本当に格好いい。ドキがむねむねってベタなギャグ入れないと間が持たないくらい。
いわゆる吊り橋効果的な、どきどきが熱い。呼吸が乱れて苦しい。
昔から、ああいう髪もコートも、翻る感じがドキドキして頰に熱が集まって、乙女声で「いや~ん格好いい♡」とか叫びたくなるくらい好きなのだ。
韓ドラの時代劇を見るのも、腰をキュッと引き締める帯より下から裾に向けてが、流れるようにはためくアクションが、ストーリーはどうでもいいから(いいんかい)とにかく格好よく見えて、見ずにいられないからだ。
落書きも、アニメキャラにありがちな実際にやると苦しい印象的なポーズで、はためく裾や髪が体を追うような動きを、格好いいと思って描いてる。
ビョーキと言われてもいい、とにかくひらひらがハタハタするのが好きなのだ。
勿論、「ルーシェさん格好いい~♡ 頑張って!!」なんて叫ばないし、テラスのガーデンチェアの陰から黙って見てる。
邪魔しないようにしないとね。気が散って手元が狂って怪我したら大変だもの。
そして、邪魔だからと追い払われないように、でもある。
首から下を見なければ美女でもあるルーシェさんの事、美女剣士みたいでもあって、お一人で何粒も美味しいお得美形だぁ。
しかも、剣術が出来るとあまり思ってなかったくらい(剣胝はあったから貴族の嗜み程度かと)細身で、ガチムチ筋肉じゃないから動きもしなやかで、ああ、スマホの電池があれば、動画に撮りたい!
オッサンや筋肉ムサイオニーサンの汗は遠慮したいが、なんか、ルーシェさんが飛ばすと、朝陽にキラキラして、宝石なんじゃないかって……え? 言い過ぎ?
映画も漫画もアニメもないこの世界、久々に眼福なアクションを見たよ!
時々やってるのかな?
くふくふ笑いながら(傍から見たら変な女かもしれない)ガーデンチェアとテーブルの間に隠れて観てたのに、急に、
ちゅどーん
って書き文字入れたい爆裂音と共に、テラスの、綺麗なタイルの階段が一部破壊された。
……び、びっくりしたぁ。私が、公爵邸に来てから2回目だよ? テラスがぶっ壊れるの。
パラパラと崩れていく階段を見てると、後ろから抱き寄せられる。ぽふんと柔らかい感触は、Eカップのルーティーシャさんだな。
「ヴァニラ、グァルファンデル、ヴィッヒンデルバル……」
ちょっと怖い顔してる。心配かけたからか、ルーシェさんの邪魔になるからか、或いはその両方?
ど、どうしよう、謝らないと……通じなくても、ごめんなさいしないと。
「あ、あのっ、ごめんなさい! 邪魔するつもりはなかったの、ただ、見てただけなの」
「それは判るからいいわ。それより、どこも怪我はなくて?」
「あ、はい! な、ないです」
……あれ? また通じてる? 法則がわからん。
そうこうしてると、ルーシェさんが、駆け寄ってくる。
「ヴァニラ!? なぜこんなところに? 怪我はないか?」
こ、怖い。お綺麗なお顔が怒ってると怖いっす。黒百合の鬼姫だよ。震えるっ。(たぶん、言い過ぎ)
「ごっ、ごめんなさい!! もうしましぇん」
お二人の答えも聞かずに飛び出し、埃っぽいままサンルームを抜けてエントランスの正面階段を駆け上り、途中2回踏み外したの脛と膝が痛かった。
そのまま勢いに任せて与えられたお部屋に駆け込む。
「ヴァニラお嬢様、そのお姿は?」
マーサさんやメイドさん達が寄って来て、風属性や水属性の洗浄術かけたり髪を整え直したりしてくれる。
「ヴァニラ」
さすが、足の長さが違う。ルーティーシャさんとルーシェさんが、お部屋に入ってきた。
私は、漫画のように飛び上がり、
「ごめんなさい!」
謝って頭を下げると、奥の寝室に駆け込んだ。
後ろ手に扉の錠をかける。
更に奥まで進み、天蓋付きベッドに飛び込んだ。
チチチッ
さっき私の頭や肩に集まった小鳥さんたちがまだいて、ベッドサイドの窓枠に並んで、毛繕いをしていた。
うちの一羽が頭にとまり、もう一羽が手の上に飛んでくる。
毛繕いしたばかりのふわふわな温かい小鳥さんをそっと両手で包み、匂いを嗅いで落ち着けようとする。
怒られる! 困らせた! 嫌われる!?
すごく動悸がして呼吸もなかなか落ち着かない。少し震えてるし。
どうしよう。もの凄くお世話になってる人達なのに、更に迷惑をかけてしまった。
今すぐ追い出される事はないとは思うけど。それでも、こういう事を続けたら、嫌な子だな、面倒だなって思われて、いつかは追い出される。
自分で、迷惑かけたくないからここを出て王都で仕事を探すとか言っておきながら、いざ、向こうから縁を切られそうになると、恐ろしくて、扉の向こうでルーシェさんが何か言ってるのもよく聞こえなかった。




