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異世界ってやっぱり異国よりも言葉が通じないよね!?  作者: 月媛(*'―'*)♪
優しい大きな人達に、子供扱いされる私は中年女
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20.影に潜む野獣?


 お世話になってる人達だし、ルーシェさんに子供扱いされた所で私に大きな不利益がある訳でなし、諦めて、みんなの視線で求められる「公爵様の可愛がってる近所の子(私の考える予想図)」を演じることにした。


 確かに不利益は生じないけれど、羞恥心とか四十余年生きてきた成人女性としての矜持とか、色々精神的なものがゴリゴリ削られていく気もするのですが……


 助けを求めて周りを見ても、3日ぶりに見た執事さんとか、妙ににこにこしてるマーサさん達は、目で、そのままルーシェさんのするようにされてろと圧をかけてくる。

 なんなんだ……


 私の事、本当に子供だと思ってるなら、もしかしてのまさかのマジなロリコンじゃないよね?

 いやいや、そうなら、私が気に入られてる事になるしそこまでのことはないか……


 デザートも美味しく、時々ルーシェさんの手ずから食べさせて貰い、ご馳走さまする。

 と、フィンガーボウルならぬ魔力で溜めた水球が目の前に現れる。ルーシェさんが、魔法が使えない私のために出してくれたものらしい。

 宙に浮かぶ水球で手を洗い、魔力のお水は普通のお水と違うのか、手を抜くと濡れてなかった。


 ルーシェさんは、私を抱き直して安定性を確かめると立ち上がり、お母様とルーティーシャさんに挨拶をすると、食堂の隣のサンルームに移動した。



 明るいお部屋の、庭に面した硝子扉の1つが観音開きに開け放たれていて、そこからテラスに出る。いつもより少し早い時間で、太陽もまだ低い位置にいた。


 テラスに用意されているテーブルセットの椅子に1人で座らされ、ルーシェさんは向かい側に座られた。ほっ。やっと幼児扱い時間から開放されました。


「ヴァニラ、ウィッヒヴァンヴェルグルビんクァンドンベリヒ……(以下略)」

 あ~あ、サッパリさっぱり、サッパリ妖精さんがまた日の丸扇子持って踊り出したよ。


 ──起きたすぐはなんで通じてたんだろう? 

 まぁ、通じてたと言うより、脳内で自動変換されてたっぽいけど。


 起きたすぐの状況。今の状況。違いは?

 体をくっつけてるくっつけてない? それならお父さん抱っこ中やお膝の上でも同じだから違うか。第一それが理由だったら、話したい相手に毎回べったりひっつかないといけないなんて、嫌すぎる。


 手を繋いでたからかな? ルーシェさんが強い魔法使いだから、接触テレパシーみたいな感じで通じ合ってた、とか? 試してみようかな?


 そっとルーシェさんの手を握ってみる。

 手の甲は、お貴族様らしく滑らかで手入れの効いた綺麗なお手々だけど、掌の指の付け根や指の節が案外ゴツゴツしてる。弟が剣道してた時の感じに似てる。魔法使いでも、貴族のご子息らしく剣を嗜むのかな?

「ヴァニラ? ファッティアールィヴ?」

「あ、ごめんなさい、なんでもないです」

 ルーシェさんは嫌がったり気持ち悪がったりせず優しく、何かを訊ねてくれる。

 恥ずかし。手を握っても、通じなかった。そりゃそうか……


 お母様とルーティーシャさんもにこにこして、テラスに出て来た。すぐ後ろにメイドさん達も居て、ワゴンにお茶セットが用意されていた。


 1人1人に、温められたティーカップが用意されている間、することなくて持て余し、俯いて足元を見る。お部屋から抱っこで移動したので、靴を履いてないのだ。お部屋まで、また、お父さん抱っこで帰るのかな? メイドさんに裸足の足を指さして見せれば、持ってきてくれるかな?


 ふと、足元の影に、違和感を感じた。ルーシェさんと私の影が少しだけ繋がっている。

 影なのに、ちょんちょんと黄水晶(シトリン)のように光るものが2つ。ネコ科のお目々みたいな?

「みるうぉーびぃ?」

「バニラ?」

ルーシェさんやお母様達が一斉にこちらを見る。

「にゃんにゃん、みるうぉーびぃ?」


 ルーティーシャさんが、首を横に振る。

「ごめんなさいね、この国には猫はいないのよ」

 アレ!? また、言葉が解る? どうなってんの?

「にゃんこ、いないの?」


 お母様も、微笑んでお答えしてくれた。

「愛玩用の小さな猫は、森の向こうの山を越えた神獣王國にはいっぱい居るのだけど、この国にはいないのよ。

 魔獣系でもよければ、雷獣やサーベルタイガーなら居るわよ? 森の奥にだけど。猫が好きなの? 飼いたい?」

「実家では二匹飼ってました」


 ルーシェさんも身を乗り出すようにして訊いてくる。

「飼いたいのか?」

「いないんでしょう?」

 私は首を左右に振った。第一、ここは本来私の居る場所じゃないのに、飼い始めてもこの先飼い続けられるかわからないし、もし日本に帰れるとしても連れて帰られないかもしれないのに、飼いたいとか、我が儘で無責任な事は言えないよ。


「それに、本来ここにいないものを無理に飼うのに、必要なものを用意するの大変でしょう?」

「まあ、そうだが…… 定期的に用意できないこともないが?」

 これは、どう解釈すればいいのだろう?


 飼ってもいいって事? てか、飼うって事は、私はまだしばらくここにいるって事?


 考え込みながら俯くと、また、影の中に光るものと、目が合った。


 ──光と目が合う?


 不思議に思ってじっと目を凝らすと、影の中に猫が座っていた。


「なんだ、黒猫か……ここに居るじゃないですか。可愛い、触ってもいいですか?」

「ヴァニラ?」


 異世界の猫は尻尾が2本あるのね? 猫又みたいに先が分かれてるんじゃなくて、お尻に2本生えてる。お髭も長くて、肩にもある? 触手? 厳密には猫じゃないのかな?

 にゃんこは目を細めてにあ~とひと鳴きして私の足の指を舐めた。か~あいい♡

 私が椅子の上から手を伸ばし、黒いにゃんこを撫でようとすると、ルーテーシャさんの優しい声と、ルーシェさんの鋭い声がした。


「猫なんかどこに居るの?」

「ヴァニラ! ダメだ!触るな!!」

「へ? ダメなの? 可愛いのに……」


 影と同一化してたようだったけど、一度猫が居ると認識したら段々そうと見やすくなって、にゃんこがちゃんと立体的に浮き上がって見える。

 さっきは飼いたいなら飼ってもいいって感じの話だったのに、この子は触っちゃダメなの?

「私、この子でいいのに……」


「くっ…… なぜだ。まさか昨夜からずっと私の影に(ひそ)んでたのか?」

 ルーシェさんは、何か苦しそうな、よくない感じで唸るように呟いた。


「影に(ひそ)む……この国の猫は、忍者なん?」

「ニンジャ? かどうかは判らないけど、この子は雷獣の一種みたいね?」

 お母様がのほほんと答えてくれるのが、ルーシェさんの鋭い声と真逆で、緊張感がない。


 らいじゅう……って、雷獣? 肩の触手から雷飛ばしたり、鋭い爪で切り裂いたりする、SFのクァールとか幻獣とかの雷獣? この子が?


 ルーシェさんはそっと、まだ握ってた私の手を離し、後ろに下がりながら立ち上がって、影の上に座って首を巡らし周りを観察する雷獣を、警戒するように睨みつける。


 にゃんこはゆっくりと伸びをした後、ゆらりと立ち上がる。

 あ……れ? なんか、急に大きくなった?


 影の上に座ってた時は仔猫みたいな大きさだったのに、影から出ると、動物園で見るチーターくらいの大きさになってた。どーゆー事? 異世界の猫は伸び縮みするん?


 厳しい目をしたルーシェさんと睨み合って、黒猫改め雷獣が地に響く、虎かライオンみたいな咆哮をあげた。


 え? 何? 公爵邸に、モンスターが出たの?


挿絵(By みてみん)

次回 第2章 21話

 猫は猫でも、猛獣ですか?

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