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異世界ってやっぱり異国よりも言葉が通じないよね!?  作者: 月媛(*'―'*)♪
駅前から自宅まで約8分の間に迷子になりました
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12.凄いよ、魔法! 早く私も使いたいよ~


 昼ご飯も、串焼きの獣肉を囓りながら、ペットボトルに詰め替えた川の水を飲む。


 夜の寒さに対して昼間は暖かく、魔力操作の練習と距離を稼ぐために足を止めないせいで、ジワッと汗をかく。


 川岸で、手拭いっぽい生地の借り物のタオルを固く搾り、首筋と脇の下の汗を拭う。

 ふと気づいたが、こんなに暖かいのに、ジュードさんは爽やかそうなのだ。

 いや、私は、年齢的に更年期障害が始まる頃合いかもしれないけど、男性の方が、基礎代謝高くて、汗かきやすいはずでは?

 聞くと、勿論、汗はかくが、クリーンや浄化の魔道を使っているという。


「えーずるいぃ。私も使えたらいいのに~」

 ジュードさんが言うには、クリーンの魔道は、水や風などの媒体を使って表面を洗い流す魔術で、浄化は病原菌や汚れ、不純物を取り除いて、在るべき姿に戻す事と、もう一つ、純粋な魔力や霊力で、汚れ、不純物、穢れなどを焼き払う魔術があり、更には上級者向けのものに、対象に在るべき姿の記憶を再現して、本来の正常な状態に()()する術もあり、それはさすがに魔道省の大魔道士や、神殿の奇跡を行う大神官でも難しいらしい。


「そうは言うたかて、ヴァニラ、まだ魔術使われへんやん。俺は、森や山で狩りをすんのに、風呂入られへんから、必要に迫られて覚えただけや。そのうち、ヴァニラにも使えるようになるて」

 そりゃ、幾らクリーン魔法使えたってお風呂に入らなければ、いずれ表在細菌感染症で臭ったり病気になるけど、数日の凌ぎにはなるやん。いーなー。

「川の水をしぼって拭いても、体はともかく、頭痒くなるのはどうしょうもないやん。羨ましい」

 言いながら、ジュードさんに近寄って、気づく。

「そっか、だから、ジュードさんは平気なんだ…」

「平気? 何が?」

「んー、聞いても気を悪くしんといてや」

 一応保険に、先に断っておく。

「私な、花粉症やねん」

「へー。そうか。ここらは杉・檜はないで」

「杉・檜は大丈夫「ほな、なんや」雑草。(よもぎ)やブタクサ、稲科、菊系統」

「結構多いな。クリーンのおかげで俺の服や髪についてないって事か?」

「それもあるけど。

 その花粉症のせいで、多くの果物とかタラの芽や芹、生の葱類などの一部の植物性の食べ物は胃痛、痺れや動悸、呼吸困難なんかのアレルギー反応おこすねんけど…」

そこまで言うと、ジュードさんはギョッとして怒鳴る。

「そ、そんなん最初にゆえや! (めし)用意する時に入れてたらどないすんねん。俺、抗アレルギー剤なんか持ってへんで!!」

「ごめん、こっち来てから症状出てなかったから失念してた。

 んで、その関連なんかな?キツい臭いとかカビなんかを吸い込むと、普通の人より過剰反応おこすねん。咳ごんで止まらんとか、鼻水ポタポタ滝のように落ちるとか、涙が滂沱とか…」

「アッチでの生活、苦しそうやな…」

「そやねん。電車の中で香水臭い女の人おったら、コイツヤバい病気なんちゃうかって周りの人が席を立つくらい止まらんし、接客中に体臭キツいオジサンとか、押し入れから出したまま虫干ししてないジャケット着てんのかってオニーサンとか来たらもう大変や」

 遠い目をして語る。ジュードさんも何か感じるのか自身の肩を摩って身を縮める。

「でも、ジュードさんと一緒に居ても、1度もそんな事なかったから、全然気にしてなかった。ちゃんとクリーン魔法使ってたからやねんね」

「俺、臭ないか?」

「うん、大丈夫みたい」

 聞かれたから、もう1~2歩近寄って、肩の辺りを嗅いでみる。


 NHKのティーン向けの番組やったかな、十代の恋愛事情の特集みたいなので、ふたりの同じ男子生徒に片思いの女の子の、成就した方と駄目だった方との違いを検証していた。

 それの1つに、匂いがあった。


 人間の記憶に深く残りやすい情報に『嗅覚』があげられるのは他の番組でも見た事がある。

 好感の持てる匂いとその人物への好意とが、深く結びつきやすいとの事。

 他にも、声の質や、特定のちょっとした仕草などあったが、見た目が美少女で、髪を艶々にしてみたり、甘えてみたり優しくしたり、素の良さを生かしたメイクで可愛らしさをアピールした少女よりも、好ましい香りをさり気なく漂わせた(ここ大事。好みの匂いでもキツいと逆効果)、その男性にとって愛らしいと感じる仕草と聞き心地のよい声で話すだけの少女の方が、男子生徒に好印象だったという結果に。

 匂いが好みでないと、相性が良くないと思われるようだ。


 フェロモンをはじめ、匂いには、いろんな情報が詰まっているものなのだ。


 その法則でいくと、ジュードさんとは一緒に居ても不快でない、仲良く出来る人物だと言う事になる。

「なるほどな。匂いかぁ。特に気にした事ないけど、そう言われてみたらそうやな」


 関西人と関東その他の人との比較番組でも見たけど、美味しそうな物を見た時、初めて見る食べ物を見た時、目で判断する人が多い中、関西人はまず、臭い嗅いでた。美味そうな匂いか、不味そうな臭いか。そうかな? 他の地方の人もにおってみぃひんのかな?

 ちなみに私は、におう方です。お行儀悪いかもね。


 しかし、やっぱり、羨ましい。

「クリーン魔法「魔道、あるいは魔術な」魔術、難しいん?」

「そこそこかな? 生活魔道の1つとして、使える人は多いで」

「ウー、早くニンゲンになりたい~じゃなくて、人並みになりたい」

「ハイハイ。んなら、取り敢えず、頭(あろ)たろか?」

「ホント!? やってやって!!」


 わ~い。私は髪が長いからか年齢からか、頭皮に皮脂が溜まりやすいらしく、2~3日洗わないでいると痒くなってくるのだ。そろそろヤバかったんだよね。シャンプーも無いし、川の中に頭まで浸かって頭皮をしごくように水だけで洗ってみるか迷い中だったのだ。さすがに夜は寒くて即決出来なかった。


 ジュードさんが呪文らしき言葉を謡うように呟き始めた。

 川から霧がたち、ふよふよと私に近寄ってくる。後は、特に呪文はなく、ジュードさんは真剣な顔で、私の頭を見下ろしていた。

 霧が髪の毛の間に浸透してくるのが感じられた。

「なんか、冷たくて気持ちいい」

「そうか…。お湯にするのは、別の術が必要で、俺はまだ2つ同時に扱うんは無理や。寒くなってきたら、先に湯を沸かしてからやらなあかんようになるけどな」

「全然、今はいいよ! 冷たくても汚れとか皮脂とか、臭い菌の(もと)、とれるかな?」

「そこは魔道や、普通に水で洗うんとはちゃうて」

「ふぅん?」


 なんか、美容院で指でマッサージするように洗って貰うのとちょっと感じが似てる。霧だけなのに不思議。でも、スッキリするね。


「ねえ、歯ブラシ、持ってないよね? してる所見た事ないし」

「ないな。地元の人らはちょい硬い刷毛みたいなんで擦ってるみたいやで。

 但し、獣毛とか繊維やのうて、木や固めた革を細かく裂いたもんみたいやから、歯茎切れそうでよう使わんかったんや」

「それは怖いな。私もよう使わんかも。

 ね! この術で、私の歯も磨ける?」

「ううぇえ? 歯、歯も磨くんか? 俺が?」

 何故か、ジュードさん真っ赤に。なんでや?


「えー、だって歯ブラシないんでしょ? 私にクリーン魔法…魔術使えるようになるまで! ね? なるべく早く使えるように頑張るから」

 う、だの、あぅ、だの、なんか、歯切れ悪い。ジュードさんらしくないな。

「こんな所で虫歯出来ても、歯医者さんあるの?」

「ないな。俺は見た事ないし、医者も内科と薬師(くすし)の中間みたいなんしかない。そもそも、魔道が使えるから治癒魔法(ヒールやリカバリー)で怪我やちょっとした病気は治してまうからな」

「だったら! それに虫歯出来ても歯垢溜まっても、口臭いオバハンになってまうやん」


 私のおねだり勝ちというか、根負けしたというか、同じか?とにかく、やってくれる事になった。


 頭を洗った霧は1度霧散し、新たな霧が漂い始める。魔力とか精神力とか疲労とか、大丈夫なんかな? 聞くと苦笑して答えてくれる。

「自分のんでも、頭(あろ)た霧で口濯ぐん気持ち悪いやろ?」

 確かに…。ホント、気遣いさんだなぁ。


 軽く口を開くと、霧が躊躇(ためら)いがちに…表現おかしいかもしれないけど、本当にそんな感じで、頭の時みたいにサアッとは入ってこないで、おずおずとって感じで、霧がゆっくりと口の中に侵入してくる。

 少し唇を撫でるような感じがくすぐったい。

 やがて次第に歯と歯の間や歯の表面をゆるゆると磨き始める。

「なるほど、このままやったら虫歯出来まくりやな。とりあえず、食べカスと歯垢、取るわ」

 さっきよりもなお赤い顔で、ジュードさんは丁寧に歯を磨いてくれる。

 口を大きく開けたりイーしてみたり。別に、キス顔見せる訳やあらへん…んにゃ、訳じゃないのに、今までと違って随分恥ずかしがるなぁ。昨日は干してた下着見ても笑って突っ込んでたやん。


「終わったで。後は、うがいし」

「コレ、お腹や胸の下とか汗溜まるところも出来るん? やっぱり服濡れるからアカンの?」

 あ、ジュードさんめっちゃ咳込んでる。純粋に疑問を述べただけやん。なんで?


「か、体は自分でしぼりタオルで拭けるやろ! 出来る事は自分でしぃや」

 ハイ、ごもっとも。手のかかるオバチャンで申し訳ありません。

「ごめん、甘え過ぎやった」

「ん。…はよう、クリーン覚えてや」

 スミマセン。


 そんなやり取りのせいか、森を出て町に着くギリギリの辺りで暗くなり始めてしまった。


「こら、アカンな。町の入り口にたどり着く前に夜中になるわ。

 しゃあない、もう一晩野宿して、明日は、朝飯もそこそこに明るくなり出したらすぐ出よか」

 川沿いの道の標識を見ながら、ジュードさんが肩を落とす。

 これが、この国の文字かぁ…。……読めん。アルファベットみたいな、表音文字かな。ヤバい、覚えられんかもしらん。


「ごめん、変なこと頼んだから…」

「いや、ヴァニラには必要な事やったやろ。しゃあないて。

 旅行なんてな、なんもかんも予定通りに進むことなんか稀やで。そこをうまくすんのが、俺らの仕事や。気にすんな」

 もうツアコンじゃないのに、そう言ってくれる。ありがたいけど、本当に申し訳ない。

 狩りの予定も変えさせて、元々面倒見る筋合いのない他人なのに、優しくしてくれる。

 本当に頭が上がらないなぁ。


「あ、私ね、起きてから2~3時間は食べない方が体楽やねん。嘘ちゃうで。

 中年入って、運動不足か年齢か判らんけど、消化吸収出来るん、体が暖まってからやねん」

「年寄りか(笑)

 わかった。ほな、明日の朝は、起きたらすぐ(めし)も魔力操作訓練もナシで、真っ直ぐ町目指すで」



次回、第12話 愛猫とぬくぬく、夢の中?

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